プロ雀士コラム

第3回リーチ麻雀世界選手権レポート 和泉由希子

「ウィーンでのレポートをお願いできませんか?」

編集部からのLINEを二度ほど既読スルーしたんですけど。
よっぽど人がいないのか三度目の打診。

「和泉さんはウィーン初めてじゃないでしょ?ちょうど良いかと思って」

何がちょうど良いのか知らんけど3回目はもう断わりづらい。
仕方ないので渋々引き受けることにしました。

二度目と言っても前回は17年ほど前。
ピンクワゴン1つの貧乏旅行だったので、ちゃんとした観光も出来ず。
当時の旅の仲間は歯科医師だったりパティシエだったり多種多様な面々でしたが、今回は麻雀プロだらけの旅となったのです。

 

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まずは12時間かけて経由先のドーハへ。
ドーハ空港での待ち時間が4時間あったので買い物でもしようかとも思ったのですが、到着した時間が現地時間で朝の4時過ぎということもあり、空いているお店がまあ少ない。
行きから荷物を増やすのも億劫な気がしてきたので買い物は帰りにすることにして、空港に飛んでいるフリーWi-Fiを接続して龍龍(ロンロン)を数プレイ。
この段階では「世界のYUKIKO」に向けて準備を開始していたのですが、わたしは予選2日間で+7.5Pの73位。
3日目のトーナメントに進むことが出来ず、悔しい結果に終わってしまいました。

 

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「29QAR(1QARは約38.5円)…これ1,116円って高すぎやせんですか?」

道中で物価の違いに驚く本田さん(写真左)からレッドブルを買って貰い、給油された飛行機と共に充電を完了させてウィーンへ再出発した日本チーム一行は

 

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日本を出てから丸1日近くかけて目的地インターコンチネンタルウィーン(大会会場のホテル)に無事到着しました。

 

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到着した日の夜はドーハ経由組で決起会という名のお食事会。
食事の前に山井さんから

「みなさん無事に来られて良かったです。試合頑張って、出来ればこの中から優勝者が出ると良いなと思っています。」

そう優勝を期待する挨拶がありましたが、だいたいこういうのってダメなほうのフラグになる気がしています。

古橋・ガース→ベスト16敗退
本田・越野→ベスト32敗退
亜樹(35位)日吉(68位)和泉(73位)齋藤(127位)→予選敗退
瑠美さんと山井さんは初日が終わって体調不良のため棄権。

一番成績が良かった古橋さん(予選1位通過)も

「ベスト32で黒木さんと同卓して調子がおかしくなった」

そう敗戦の弁を残してトーナメントベスト16で散りました。

このお店ではオーストリアの伝統料理シュニッツェルを堪能。
仔牛の薄切り肉にパン粉を付けて揚げたもので、日本でいうカツレツといった感じ。

 

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レモンをかけるのがオーソドックスな食べ方みたいです。

 

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出発前は食の印象が全然無かったウィーンですが美味しいものだらけ。食べ過ぎ飲み過ぎで、だいぶ太って帰ってきました。

たまに口に合わない料理が出た時、それを食べた人たちがみんな揃って「うーん、なるほどー」って言うのが面白かったです。
マズイと言えない日本人よ。

会の途中で山井さんが「なんと!今日は会長に出していただけることになりました!」と言い出したので、遠慮なくシャンパンを追加注文。うまうま。
おかげさまで長時間の移動の疲れがだいぶ回復しました。
ウィーン初日終了。

 

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ウィーン2日目。
「Registration=登録」のことですね。

 

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選手登録を終えてインタビュー。
この時はまだ世界を獲る気満々で喋っていました。

早々に負けた私に替わって、第3回リーチ麻雀世界選手権を優勝したのは現マスターズの奈良圭純。

 

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連盟チャンネルの裏方でも大活躍の奈良ちゃんです。

「Drei(ドライ※ドイツ語で3の意味)からVier(フィアー※ドイツ語で4の意味)」

インタビューでは4つめのビッグタイトル奪取することをドイツ語で宣言して見事達成。
大勝負に強い奈良ちゃんのパワーがウィーンでも出ました。

 

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開会式はWRC会長ジェマ(写真左)とウィーン大会運営の代表レナ(写真右)の挨拶からスタート。
ジェン(写真中央)は英語を日本語に、日本語を英語に通訳しながらの進行役でした。
ジェンはこの大会中ずっと大活躍で、試合では3日目のトーナメントで惜しくも負けてしまったけども、大会3日目の午後に開催されていた勉強会では各卓へ通訳に走り回り、ずっと献身的に働いてくれました。

 

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4日目の勉強会では浴衣姿で登場しました。
めちゃ綺麗です。

 

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ジェマとレナの次は森山会長の挨拶。

「日本の選手が今回も優勝したいかな?(外国の選手からブーイング)だけども、前回から5年たち世界のレベルもすごく上がっていると思うので、是非今回は日本以外の選手が優勝して今後の大会も盛り上げて欲しいと思います(外国の選手から歓声)。わたしはパリ大会の時に抽選で一番を引きました。そして今回も一番を引きました。絶対に勝てないと思います(笑い)ですから優勝は狙えないかもしれませんがベストは尽くしますので、みなさん楽しみながら最善のプレーを心がけましょう。みなさん頑張ってください。」

 

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WRCの元会長マーティンさん。
詩のような挨拶で世界大会の素晴らしさを語っていました。オシャレです。

 

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古橋さんの英語力を心配そうに見つめていたのはUSPML(※アメリカの麻雀団体。第2回ラスベガス大会の責任者)会長のデービッドさん(写真右)。
開会式場にお酒を提供してくれました。サンキューデービッド。

 

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デービッドから提供されたお酒を楽しむ2人。

 

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音楽の都ウィーンらしく生演奏も盛り上がっていました。

 

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ビシッと決めている人たち。

 

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姉妹と一緒に。

 

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左から女子・女子・牛・女子。

 

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女流グループで。
和泉由希子(73位)蒼井ゆりか(65位)菅原千瑛(50位)山脇千文美(59位)
みんな惜しかったけど予選落ち。

 

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会場にはプリクラが設置されていて

 

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初代・二代目世界王者と一緒に撮ってゲンを担ごうとする人たちが集まりました。
お祭り気分でウィーン2日目は終了。

 

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ウィーン3日目。
やっと試合が始まりました。
ここから2日で10半荘を行い上位32名が勝ち上がるシステム。
過去の2大会に出場している選手たちの予想では、+80Pから+90Pぐらい浮ければ大丈夫なんて言われてましたが実際は

 

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こちらの結果。
特筆すべき点では、ウクライナから女性の選手が3人勝ち残っていることが挙げられます。

日本チームからベスト32に残ったのは

1位古橋崇志+220.6P
3位柴田吉和+189.5P
4位藤崎智+170.8P
8位早川林香+126.3P
12位ダニエル・モレノ+118.5P
14位HIRO柴田+114.8P
17位寺西真美+113.0P
18位ガース+108.7P
19位本田朋広+102.4P
21位ともたけ雅晴+90.6P
22位伊藤優孝+88.6P
26位山田学武+78.0P
27位ジェン+77.9P
30位奈良圭純+74.6P
31位越野智紀+69.0P
32位黒木真生+64.8P

この16名。
最終戦でトップを取った黒木さんが、思いのほか低くなったボーダーに助けられて32位に滑り込んでいました。

ウィーン5日目。
ベスト32からのトーナメントの裏で、敗れた日本チームの選手たちは外国人選手との勉強会を実施していました。

 

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各卓を周って質問に答えていきます。

オレンジ色のTシャツを来ているのがWRCの運営の方々。大会の予選中ずっと後ろで麻雀を見ていたためか、溜まっていた麻雀打ちたい欲があふれ出て質問が止まりませんでした。

 

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卓にも入って麻雀を通じて交流を広げる選手たち。

 

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第1回大会から精力的に勉強会を続ける森山会長。ずっと立ちっぱなしで驚きです。

 

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わたしも参加。英語は少ししか話せなくても麻雀のことならなんとか伝わるものですね。

 

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今大会でビッグボイスソーリーの名言を残した日吉さんは、色んな卓に動き回っては英単語一発で爆笑を取る無双状態に突入していて

「普段日本で講師してる時と同じスタイルでやってたんだけど、麻雀っていうゲームを通せば言葉の壁なんて全然感じなかったね。また外国の方を相手にこういった勉強会をやる機会がほしい」

と、新しい才能を開花させて世界に進出を狙っていました。

トーナメントの方で、日本チームから決勝まで勝ち上がったのが四冠を狙う奈良ちゃんと

 

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7回戦目の放送卓で四暗刻単騎をアガって4位で予選を通過した世界の忍者こと藤崎さんの2人。

他の決勝進出者は3人残っていたウクライナ代表の中からAnna Zubenkoさん、それとフランスからValentin Courtoisさんが決勝に進出しました。

この4名に加えて、ベスト8で惜しくも敗れた

 

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Kirill Khromovさん

 

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HIRO柴田さん

 

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Leung Sze Chun Stephenさん

 

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ダニエル・モレノさん。

以上の8名の選手は第4回のリーチ麻雀世界選手権の参加資格を獲得しました。

 

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決勝戦は解説が第2回リーチ麻雀世界選手権優勝のともたけさんと森山会長で、実況が日吉さん。

2回戦勝負で1回戦目に大きなラスを引いた藤崎さんが

 

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2回戦開局から親でホンイツ小三元の6,000オールをアガると、そこから一気に7万点オーバーと盛り上がる展開。

奈良ちゃん1.1ポイントリードで迎えたオーラス

 

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親のValentinさんがノーテンで流局。

 

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奈良ちゃんテンパイで逃げ切り優勝となりました!

 

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世界4位はAnna Zubenkoさん。
オーラスの逆転条件が奈良からの役満直撃かダブル役満ツモとスタッフに説明され、「It,s easy!」と返したそうです。めちゃおもろい。
楽しそうに打っている姿が印象的でした。

 

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世界3位はValentin Courtoisさん。
フランスの生んだヤングライオンって日吉さんが勝手に呼んでいましたが、独特なトイトイの仕掛けを何度も決めてカッコ良かった!

 

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大接戦の末に世界2位になったのが藤崎智さん。
予選放送卓での四暗刻単騎や、決勝での凄い追い込みで大会を一番盛り上げてくれました。
世界の忍者まであと一歩でしたね。

 

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そして優勝は奈良圭純さん。
前チャンピオンのともたけ雅晴さんからトロフィーの授与をされるシーンですが、激闘の疲れが見えますね。

 

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閉会式では特大の麻雀牌ケーキが登場。

 

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そしてケーキ入刀。
世界チャンプとしての初仕事をこなしていました。

 

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世界一直後の奈良ちゃんの四冠ポーズ。
本当におめでとう!
個人的に、奈良ちゃん大好きなのでとても嬉しい。

 

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大会終了後にちょっとだけ観光しました。
城とか劇場とか公園とか、なんかいちいちオシャレで、立っているだけで絵になる。

とりあえず「OK!」とか「イエースイエース!」とか「おーせんきゅー!」とか、適当な英語が口をつくようになったよ。

3年後に東京で行われる第4回リーチ麻雀世界選手権では、今度こそ世界のYUKIKOになろうと思います。

(文:和泉由希子)