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鳳凰の部屋

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「~未知なる世界~」 吉田 直

2019/05/30
執筆:吉田 直


遂に連盟の最高峰のA1リーグに辿り着いた。思い返せばここに来るまでに様々な出来事や壁に幾度となくぶつかった。何回やめようと思ったかはわからない。
その度にいつも自分に問いかけた。
本当に自分の限界まで努力したのか?
全ての時間を麻雀だけに注ぎ込んでいるのか?
答えは当然ノーだ。
仲間と飲みに行ったり遊んだり、仕事以外の時間を全然麻雀に使っていなかった。
それで辞めたいとか言っているなんて麻雀プロを馬鹿にしてるにも程がある。簡単な世界ではないとわかって戻って来たんだ。長く険しい道の先に何があるのかを見たくて。

自分の中でこんな葛藤を繰り広げた後に頭の中に流れるフレーズ。

「高ければ高い壁の方が登った時気持ちいいもんな」

そうだよなと心の中でいつも思い前に進んで来た。
これからも変わることはないだろう。

連盟に戻って来て12年という歳月は長いようで短かった気がする。
もちろんA1に来る事が最終目標ではないが、ここで戦えると思うと正直嬉しかった。
しかしその嬉しさでウキウキしていたからなのか、リーグ戦開幕の2ヶ月前に右足を脱臼骨折して全治半年と診断される。
いい事があれば嫌な事も起こるものだ。ただそこはポジティブに考え、半年も暇になったということは好きなだけ麻雀に打ち込めると思い、入院中からずっと昨年、一昨年のA1リーグを中心に動画を見ていた。

そして待ちに待った開幕戦を迎えた。対戦相手は伊藤優孝、沢崎誠、瀬戸熊直樹。
優孝さんは漢塾などで麻雀やメンタル面などを教えてもらった。とても暖かく一本ビシッと筋が通っていて、正に男の中の漢という見た目そのままだ。笑

沢崎さんは自分が強いと思う麻雀プロの中でも1、2を争うと思う。昔は沢崎さんや藤原さんが近所に住んでいて、お酒の席にお邪魔してはまだまだ未熟だった自分の麻雀話を真剣に聞いてくれた。涙
思えば連盟にまた戻って来たきっかけとなったのは藤原さんだった。一度辞めて何年か経ち、サラリーマンをやりながら仕事終わりに藤原さんがゲストに入っている雀荘に遊びに行き、麻雀の話をしながら酒を飲むという週に2、3回の憩いのひととき。とても楽しかった。飲みの席の熱い会話もそうだが、真剣に麻雀をするのがこれ程楽しいのかと久しぶりに思っていた。
そんなある時、よく一緒に麻雀を打っていた石川正明プロに「連盟に戻らないの?」と聞かれ「まだプロになる自信がないので」と答えた自分に「プロになる気があるなら絶対早い方がいいよ」と言ってくれた。
いつもストレートになんでも言ってくれる石川さんのその言葉が胸に響き、数日後にもう一度連盟の門戸を叩く決意を決めた。

そして、連盟に戻りたての頃の自分の麻雀スタイルは、当然守備型!?
藤原さんの、受けて受けてまた受ける、いつ攻めるんですか?(笑 )と思うような麻雀が大好きだった。
ところがある時、現世界チャンピオンのともたけさんと出会い藤原さんと真逆の麻雀に魅了され、この2人を足した麻雀最強なんじゃないかと考えた。
それからテレビ番組や勉強会などで小島先生や森山会長の手役派に憧れ、瀬戸熊さんの強靭なハートに近づきたくてメンタルを強く保つ訓練をした。
今の自分の面前手役攻撃型のスタイルはこの様な経緯で作られてきた。
もちろんまだまだ未完成なのでこれからもっと進化して行きたいと思う。

最後は憧れの瀬戸熊さん。私生活でも大変お世話になっていて、若い頃から何十回とセットに付き合ってもらっている。
麻雀のスタイルは全く違うのだが、強い時の瀬戸熊さんが本当にカッコよくて、ある時からこの人の背中だけを追っていた気がする。
公式戦でほとんど打ったことがないので、リーグ戦で瀬戸熊さんと打てるのは本当に楽しみだった。

そして遂に初めてのA1リーグの開幕だ。ある程度2人を知っているからなのか、自分のメンタルが成長したからなのかはわからないが、そこまで緊張する事なく対局に臨めていた。
しかし2回戦目の沢崎のアガリを見てから次第に飲まれていった気がする。

2回戦東3局親沢崎

六万七万七万五索五索三筒四筒五筒五筒五筒八筒八筒八筒  ドラ七万

北家の自分が9巡目に五筒を切ると少考後三筒四筒でチー手出し六万!!
二筒が2枚切れで自分の目からは五筒が1枚目。高打点を作ってくる沢崎ならこの巡目の両面チーは間違いなくチーテンのドラ2以上。だから三色がらみの待ちなど候補を絞っていた。
そこに、沢崎の仕掛けでテンパイを入れた瀬戸熊が二万切りリーチ。

一万一万四万四万八万八万九万九万南南白白発

瀬戸熊の捨て牌は明らかにマンズの一色手。発は2枚切れだがこちらも勝負手。しかし瀬戸熊にツモ番が回る事なく沢崎が七万をあっさりツモ。

七万七万五索五索五筒五筒五筒八筒八筒八筒  チー五筒 左向き三筒 上向き四筒 上向き  ツモ七万

なんとツモり三暗刻の高めのドラをツモって6,000オール。
これを見て自分の甘い五筒を反省した。
自分は配牌が悪かったので、初めから受けを意識しながら七対子になればいいかぐらいの気持ちで進めていたのに、9巡目に1シャンテンになり

九万九万八索八索九索九索三筒三筒七筒七筒東西中  打五筒

東が生牌、西1枚切れ、中2枚切れで親の沢崎の現物が西中。アガれるとは思っていないのに、テンパイ料が欲しいために簡単に五筒を切ってしまった。
もっと集中してアンテナを働かせ、誰に手が入っているとかシャンテン数など見極めて先の先まで見えるようにならないと、ただ単にテンパイ気配がないからと五筒を切っているようじゃA1で戦っていくのは本当に厳しいなと思わされた。

そして親番が終わった沢崎が、東4局に今度は面前で伊藤から12,000をアガる。

三万三万三万四万四万四万五万六万七万七万七万九万九万  ロン九万

仕掛けても面前でも大物手をバシバシ決めてくる沢崎に気持ちは萎縮していたのだろう。
南2局の親番で瀬戸熊、伊藤が仕掛けていて誰が本物とか全くわからず受けさせられ痛恨の1人ノーテン。
伊藤はきっちり相手の手を読んで終盤にドラを切っている。
流石A1、レベルが全く違った。

3回戦に運良く4,000オールをツモり今節は▲25Pで済んだが、やはり一筋縄ではいかないA1リーグ。ちょっとした気持ちの揺れや押し引きの判断ミスなどを見逃してはくれず一気に畳み掛けてくる。
本当に一瞬も気が抜けない真剣勝負に嬉しさと悔しさを感じた。

2節目は前回の敗戦を生かし、どうにかプラスで終えてトータルを一桁のマイナスまで戻した。
今の時代になって良かったと思うのが、すぐに映像を見ることが出来るということ。
もちろん相手にも研究されるのでお互い様だが、相当なお宝が眠っているので有難い世の中になったなぁと思う。