プロ雀士インタビュー

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第107回:西島 一彦
「僕の人生はね、流れてきた人生なんだよ・・・」

2014/06/26
インタビュアー:小車 祥


第23期麻雀マスターズを優勝した西島一彦プロのインタビューを務めさせて頂きます。
第22期麻雀マスターズを優勝した小車祥です(笑)。
よろしくお願い致します。

まずは西島プロへ、インタビューの日程や場所などの確認のためメールを送る。
西島プロが言うには「津田沼まで来てくれれば美味しい料理とお酒をごちそうしますよ」と。
美味しい料理もお酒も大好きな私は、喜んで千葉県の津田沼駅まで向かうことにした。

実を言うと、私は西島プロとはほとんど話をしたことがない。
何度かプロリーグの日に一言二言、会話を交わした程度だった。
西島プロは67歳。私の父親が60歳なので、それよりも年上ということになる。

「うまくインタビューできるんだろうか……」
「ちゃんとお話しできるだろうか……」

私は、行く前からそんな不安に駆られていた。
津田沼駅に着くと、改札の前で西島プロが待っていてくれた。

西島「遠いところよく来たね!さあ、こっちこっち!」

まるで田舎のおじいちゃんが、夏休みに遊びに来た孫を迎えるかのようなテンションで待っていてくれた。
それまで抱えていた私の不安は、一瞬にして吹き飛んだ。

連れて行かれたのは、西島プロ行きつけだという和食料理のお店。
料理のメニューもお酒の種類もとても豊富な落ち着いたお店だった。

西島「こないだもね、ここで祝勝会してもらったんだよ。」

私にも経験があるからわかる。
自分の喜びを一緒に喜んでくれる仲間がいる嬉しさ。
席に着き、一通り注文してから本題に入る。

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小車「西島さん、まずはマスターズ優勝おめでとうございます」

西島「ありがとう!すごく嬉しいよ!小車君の時はどうだったの?」

小車「僕ですか?僕の時はですね……」

なぜか開始から10分ほど、私のインタビューになってしまった。
いやいや、それじゃダメでしょうと、こちらから話を振る。

小車「実際どうですか?マスターズ優勝して、実感はありますか?」

西島「いやー、全然ないね!小車君の時はどうだったの?」

小車「僕ですか?僕の時はですね……」

いやいやいや。
西島さんはとっても気さくな人だった。
僕が何か質問すると、関係ないことまでたくさん陽気に話してくれる。
しかしそれではインタビューにならないので、なんとか話を本筋に戻す。

小車「今回のマスターズ、振り返ってどうでしたか?」

西島「マスターズね、優勝できるなんて夢にも思ってなかったんだよ」

小車「そうなんですか?」

西島「うん、そもそも決勝に残った時点で、目標達成しちゃってたからね」

小車「目標達成?」

西島「そう、フランス!世界選手権!」

7月にフランスのパリで行われる第1回リーチ麻雀世界選手権。
希望すれば誰でも出れるというわけではない。
限られた枠の中で、選ばれたプロだけが参加することができる。
西島プロは、この世界選手権にどうしても出たいと藤原プロにお願いしたのだという。
しかし、藤原プロから西島プロに伝えられた出場するための条件は厳しく、「マスターズの決勝に残れば権利が与えられます」と言われたのだそうだ。

西島「だからね、決勝は逆にリラックスして打てたのが良かったのかもしれない」

小車「どんな気持ちで決勝に臨んだんですか?」

西島「そうだね、勝ち負けよりも、きちんと麻雀を打とうと思ったよ」

小車「きちんと……というのは?」

西島「なぜその牌を切るのかちゃんと説明できるように。なんとなくの打牌をしないようにね」

決勝5回戦というのは、短いようでとても長い戦いだ。
長い戦い故、集中力を常に高めておくというのは並大抵のことではない。
しかし、その並大抵のことではないことが、当たり前にできる人間ばかりが集まる。
それが決勝の舞台だ。

小車「4回戦目は長丁場になりましたね」

西島「あー、あれね!きつかったー!」

小車「南2局の西島さんの親番で大連チャン!6万点台のダントツトップまで行って西島さんのトップで間違いないかと思ったら、オーラスの和久津さんがまた大連チャンするっていう」

西島「最後は中西さんのツモに助けられる形でトップ取れたけどね。和久津さん、しぶといんだもん。まいっちゃうよ」

西島プロは常に謙虚な姿勢で、対戦相手への敬意を忘れずに話を進める。
少しでも自分を褒めるような発言は出てこないのがとても印象的だった。
私はどうしても勝ちに酔いしれた西島プロの一面を見たくて、酒を勧めながら話を振った。

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小車「そして最終戦、すごかったですね」

西島「オーラス親の和久津さんに満貫ツモられた時はダメだと思ったけどね!」

思ったけど?どうなんですか西島プロ!

小車「でもオーラス1本場、満貫ツモ条件をアガリ返すのはすごい!」

西島「三索チーは飛びついたけど、九索がポンできたのはすごくラッキーだったよ!決勝の舞台ではみんないろんなものと戦ってるから、予想外なことがたくさん起こる。それがたまたま自分に良い方に転がっただけ。いやー、ついてたなー!」

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どれだけ煽っても、西島プロから驕りのような発言は出てこず、どこまでも謙虚だった。
謙遜とかそういうことではなく、自然体でこういう人なのだろう。
私は西島一彦という1人の人間にどんどん興味が湧いていった。

小車「西島さん、これからもどんどん活躍しちゃうんじゃないですか?」

西島「いや、それはないよ!最初で最後のタイトルだと思ってるから!」

小車「いやいや!マスターズ優勝しましたから、十段戦もかなりいいところからのシードがもらえるはずですし、王位戦やグランプリMAXや来年のマスターズシードもありますよ!」

西島「もちろん頑張るけどね、勝負は水物。人生ってそういうものじゃない」

小車「人生?」

突然の話の飛躍に少し驚いたが、興味深い内容に耳を傾ける。

西島「僕の人生はね、流れてきた人生なんだよ。いや、僕に限らなくて誰の人生にも当てはまると思うんだけどさ」

小車「流れてきた人生……」

西島「そう。人のミス、自分のミス、その複合が人生。それを大事にして、その後の人生を生きていくことが大事なんだよ。勝ったり負けたりとかは1つの結果だけど、何を大事にして生きていくかは揺るがない部分だからね」

そう言いながら、西島プロはまた一口酒を呑んだ。

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いつも明るくて気さくで優しくてニコニコしている。
だけど時に、ハッとさせられるような深い言葉を投げかけてくる。
自分に厳しく他人に優しい。
「こんな大人になりたい」
心からそう思わされるような人だった。

一選手として、偶然にも鳳凰位戦も同じリーグにいる私としては負けていられない。
美味しい料理と焼酎と麻雀プロとしての刺激までご馳走になり、インタビュアーの私の方がゲストのような時間となってしまった。

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本人は最初で最後なんてことを言っていたが、間違いなくいろんな場面でまだまだ活躍するだろう。
今後の西島プロの活躍に期待しつつ、私だって!と意気込みながらペンを置くことにしよう。