プロ雀士インタビュー

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第111回:灘 麻太郎

2014/09/29
インタビュアー:吾妻 さおり


「警戒心が強くて、いざという時やけっぱち。これが麻雀に一番向いている性格なんだよ」
灘麻太郎名誉会長は言う。

【警戒心】麻雀の相手は3人。自分の思いだけではどうしようもない時もある。
常に3者に注意をはらい、点棒状況や場況による相手の心理を読む必要がある。

【やけっぱち】「投げやり」ではなく「大胆」という意味。
勝負処で大胆不敵に攻められる度胸を併せ持つ者が勝者となる。
一度も戦わずに勝つ事は出来ないのが麻雀なのだ。

「麻雀は心理を読み合う競技。見える部分だけでなく、見えない部分について深く考えなければならない。
ただオリるのではなく、今切りたいこの牌がアタリなのか読むことが大切なんだよ」

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灘の天空麻雀15の優勝インタビューの依頼を受け、事前にスタジオで対局を観させて頂いた。
半荘2回の短期決戦。1半荘目の南局で灘はラス目。トップ目の荒正義プロとの点差は44,600点。
ここまでの展開は非常に厳しい。配牌に恵まれず、ツモも利かず手牌が動かない。
鳴きたい牌も持ち持ちで場に放たれず鳴けないような状態。

そんな中でも灘には一本の道が見えていた。それは最短で優勝に繋がっていたのだ。
カミソリ灘は健在だった。仕掛けもアガりも鋭かった。何より1回のチャンスをものにする爆発力が凄かった。

①灘の麻雀に対する思考
②灘流仕掛け論
③短期決戦に強い秘訣

この3点を読者の皆さんに簡潔にお伝えしたいと思う。

 

gpmax2012

 

①灘麻太郎の思考

吾妻「グランプリMAX、麻雀トライアスロン、そして今回の天空麻雀15と、立て続けに決勝進出が続きました。好調は意識されていましたか?」

灘 「特にそういうのはないね。普段通りだよ。」

吾妻「天空麻雀15の序盤の展開は厳しかったですよね。観ていてここからどう優勝するのだろうと思いました。あの時はどのような事を考えていたのでしょうか?」

灘 「親番もあるから、特に気にしていなかったよ。【親は連荘、子はぺちゃん】という格言がある。親番があれば10万点叩く事だって出来るという自信を持って打つ事が大切なんだよ。」

【親は連荘、子はぺちゃん】
親が大連荘すれば、子方は為す術もないという意味だ。

吾妻「その自信がメンタルを支え、焦らず集中力を保つのに必要なのですね。1回戦南3局の親番でやっとリーチが打てましたが、1シャンテンが長くて観ている私がジリジリしました。入り目も六筒でしたから、ピンフもイーペーコーも消えてしまいましたし。」

南3局 親

三万四万四万五万六万七万八万九万七筒七筒八筒八筒九筒??ツモ六筒??ドラ八万

灘 「あれは連荘第一のリーチだから。ここまでアガリがないから、まずはアガるきっかけが必要なんだよ。」

荒から3,900を直撃して親連荘に成功した灘。次局は早い巡目での先制リーチ。
カン五筒、カン三索と急所を引き入れ、三筒を暗刻にしてあっという間のテンパイだった。
これを受けた荒は、前局の放銃が3,900で済んだ事を受けてもう一度真っ向勝負。

ベタオリして灘に主導権を渡してはいけない。好きなだけアガらせてからの再逆転は難しい。
リードしている今こそ戦うべきだ。止めるなら今だ!きっとそう思ったのだろう。
早くも勝負処である。

結果は一瞬だった。

南3局1本場
六万七万二索三索四索九索九索三筒三筒三筒四筒五筒六筒??ロン八万??ドラ三筒

たった1局で態勢は入れ替わってしまった。
親満放銃の荒は、ドラ暗刻の手を見て何を思っただろう。

 

gpmax2012

 

②灘流仕掛け論

そこからは灘の独壇場だった。
東をポンしてマンズのホンイツ5,800。

一万二万二万三万三万四万五万六万八万八万??ポン東東東??ロン四万

オタ風の西からポンでソウズのホンイツ親満ツモ。

二索三索四索四索五索五索赤五索南南南??ポン西西西??ツモ四索

仕掛けにより次々有効牌が集まり、誰も追い付けない。
一気に6本場まで積み上げ、53,300点にもなった。

吾妻「ドラ3をアガった後は、仕掛けもアガリも灘さんらしさ全開でしたね。」

灘 「鳴きでどんどん手が良くなる。これが本来のスタイルなんだよ。」

吾妻「仕掛けはメリットも多いですが、リーチを放棄したり手牌が少なくなってオリにくいといったデメリットもあると思います。そのリスクに対してはどのようにお考えですか?」

灘 「不利だと思った事はない。仕掛けて思い通りにならないで失敗に終わる事もある。でも迷いはないよ。たらればを考えず、後悔しない事が大切。これ鳴こうかな?やめようかな?と思う人は仕掛けはしない方がいいね。それからアガリ切るつもりで鳴く事。仕掛けとツモによってどんどん手が動くのが麻雀なんだよ。」

吾妻「どんどん手を動かして、アガれる場を自ら作りあげるのが灘流なんですね。」

灘 「そう。そしてツモれる状況が作れたらリーチも打つ。灘麻太郎=仕掛けというイメージが浸透しているようだけど、実はリーチも一番多いんだよ。」

その統計から、灘がいかにアガリ回数が多い事が見て取れる。

 

gpmax2012

 

③短期決戦に勝つ秘訣

吾妻「決められた回数の中で、必要なポイントに持って行くコツを教えてくださいますか?」

灘 「まず、打牌を間違えない事。この積み重ねで勝利を手にするのがプロ。そして、時には打点をポイントに合わせたリーチや、フリテンリーチが必要な時もある。」

ポイント合わせの局とは、強い打ち手の必須条件【やけっぱち】の部分。勝つために大胆に戦う局である。

吾妻「今回の天空麻雀ですと、準決勝での七対子赤赤五万単騎のリーチですね。」

 

gpmax2012

 

灘 「これは、欲しい打点に合わせたリーチ。良い待ちではないけど、もしツモれたら決まりというリーチだよ。」

吾妻「あのツモで決勝進出への道が開き、今回の優勝に繋がったのですね。素敵でした!麻雀トライアスロンでは先行での圧勝、今回は大逆転での優勝を決められましたが、タイトル戦を勝ち抜く秘訣を教えてください」

灘 「これは俺のタイトルだ!って気持ちと、心理を読む集中力が大切だね。」

親番大連荘1回でほぼ勝負を決めてしまった。劣勢でも微塵も辛そうな表情を見せず、姿勢を全く乱さず。
その闘牌姿は灘の精神力の強さと、体力、集中力の持続を物語っていた。
「1回戦南3局、ここからどう優勝するのだろう?」の答えはここにある。

吾妻「ありがとうございます。では、麻雀をこれから始めたい皆さんに一言お願いします」

灘 「やはり、沢山麻雀を打つ事が上達の近道だと思います。」

麻雀を沢山打っていると、ふと湧いた疑問が成長に繋がったり、ある日突然ワンランクアップした自分を自覚する瞬間がある。皆さんにも是非その瞬間を体感してほしい。

吾妻「灘さんのような打ち手を目指したい皆さんのために、アドバイスをお願い出来ますか?」

灘 「麻雀は理屈で考える競技ではありません。頭で考えて打つ人は勝てない事もあるでしょう。車の運転と同じです。リズムで打つ、身体で反応する競技なのです。」

見えている部分を材料に頭で考えるのではなく、見えない部分を集中力と身体で感じて打つ事が大切だという。

灘 「麻雀にも定石はあります。例えば【第一打の反対側が危ない】(第一打が九索の時、ソウズは下の方が危険度が高い)とか、【早出の5切りにまたぎなし、遅出の5切りにまたぎあり】と言ったものです。これらの定石をマスターしてから駆け引きを覚えたら、勝てるようになると思います。」

吾妻「長時間のインタビュー、ありがとうございました。」

灘 「お疲れ様。」

インタビューをするのは2度目だった。その頃と今回、随所で同じ発言が見られた。
私などはまだまだ未完成。日々精進し、進化しなければならないが、はるか以前から完成された麻雀界の第一人者で有り続ける灘麻太郎。

一度目の頃は灘の対局を観られる機会は少なかったが、今は連盟チャンネルなどで沢山観戦出来る。
これからもその闘牌姿でメッセージを発信し、多くの麻雀ファンを魅了してほしいと思う。

インタビュアー:吾妻 さおり