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プロ雀士インタビュー

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第150回:第1回麻雀プロ団体日本一決定戦優勝記念インタビュー ~前編~

2016/10/25
インタビュアー:日吉 辰哉


麻雀ファンはもちろん、麻雀プロでさえこの日が来ることを待ち望んでいたことだろう。

インターネットの普及により、対局を目にしない日はない。
プロ団体が乱立する昨今、一体どこの団体が一番強いのか。数多の麻雀プロは自身の所属団体が一番強いと確信しているだろう。
最古のプロ団体が設立され30年以上。しかし、これまでそれを決するステージはなかった。

8月10日。各団体の誇りを胸に、集いし32名の猛者。2ヵ月間に及ぶ全128半荘の対局。
絶対王者・日本プロ麻雀連盟という想像を絶するプレッシャーを跳ね除け、堂々の帰還を果たした選ばれし8名。持ち帰ったその看板には傷ひとつなかった。

 

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どこの団体が一番強いのか。その長き論争に終止符を打った激闘と選抜選手の想い。このインタビューではその舞台裏に迫ってみたいと思う。今回はそんな選ばれし8名の内、4名に話を伺った。

 

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【そういうのいらないから!】

 

10月某日 9:55 新宿

日吉「おはようございます。今日はよろしくお願いします」

一同「集合時間が早いよ!」

(なんか機嫌悪そうだな…)

日吉「それでは改めまして、インタビューを開始させていただきます」

一同「堅苦しいよ!そういうのいらないから!」

(はーい…)

 

 

【出番が来たなと思ったよ】

 

日吉「選抜選手8名の選出方法を教えてください」

勝又「まずは直近の鳳凰位4名(勝又、前田、藤崎、瀬戸熊)が選ばれて、その後は4名と、会長含めた数名と相談した結果だね」

瀬戸熊「会長は30、40代で勝つことに意味があるって。これからは君たちの時代だから、将来をそして未来を自分たちの手で勝ち取りなさいって」

日吉「なるほど」

瀬戸熊「日本プロ麻雀協会の伊達さんは、連盟が勢いのある若い選手を選抜したこと、更に結果を出したことに驚いていましたね。協会は過去の実績、ネームバリューで選抜した側面があったって」

日吉「ウッチー(内川幸太郎)は今の話聞いてどうかな?」

内川「活躍の場を提供してくれたのはもの凄く嬉しかった。同時に実績がない自分が選ばれた以上、負けることだけは許されないと思いました。自分が結果を出せなくて日本プロ麻雀連盟(※以降、連盟)が負けたら自分のせいだし。それから僕が頑張ることによって若い子に対してモチベーションになると思ったね」

(ウッチーは選抜選考の際、当落線上だったらしいしな。しかも8名の中では一番実績がないわけだ。ある意味では一番プレッシャーを感じていたんだろうな)

日吉「猿川は?」

猿川「出番が来たなと思ったよ。不調もあったんだけど、色々な対局(RTD、天鳳位VS連盟プロ、麻雀日本シリーズ等)で選抜されなかったから。連盟の若手に抜かれている感もあるし、その人たちにも負けられないと思ったね」

「若手に抜かれている感もある」
意外だった。猿川の言葉だとは思えなかった…

私と猿川の付き合いは15年ほどになる。『適当な男』を絵に描いたような男だった。そんな彼とは価値観が合ったり、合わなかったり。何度も衝突し、そして何度も助けられた。
今回の団体戦。私は彼を一番応援していた。そして信じていた。あの時と同じように…

2008年。麻雀マスターズ決勝戦。晴れの舞台での対局。最年少の猿川は孤軍奮闘していた。
しかし3回戦終了時点で2回のラスを押し付けられ、とんでもない劣勢。会場中の誰もが、そして猿川本人でさえも優勝は厳しいと思い始めていたはずだ。
私は今でも確信している。そんな会場の中でただ一人、私だけは彼の優勝を信じて疑わなかった。

前述の通り、最近の猿川は不調だったと思う。最強戦等で活躍はしているが、とても本来の力が発揮できてるとは言い難い。
自分を追い越していく若手を横目に眠れない夜もあったはずだ。その時に見えてきたであろう、自分自身の立ち位置と存在価値。
あの頃と何一つ変わらない風貌。結婚を機に芽生えてきた責任感。画面には『適当な男』とは程遠い、連盟代表としての男が映し出されていた。

(気合入っていたよな。対局中はこれまでで一番良い顔してたよ)

日吉「勝又さんは鳳凰位として臨んだ今大会の心境はいかがでしたか?」

勝又「まずは自分が出来ることをしっかりやろうと。鳳凰位としては、連盟が優勝したとしても自分が負けたら鳳凰位の看板を汚すことになる。これまで鳳凰位を獲得された先輩方にも申し訳ないしね。連盟も勝たなきゃいけないし、自分も勝たなきゃいけない。プレッシャーは他の対局よりもあったよ」

日吉「瀬戸熊さんは過去に鳳凰位3度獲得、絶対王者としての心境はいかがでしたか?」

瀬戸熊「選ばれた以上は自分の役割をしっかりやろうと思ったね。若い子達は勝った時はいいけど、負けた時の喪失感を考えると少しでも良いムード作って対局させなきゃいけないなと思ってたね」

 

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【団体戦だけど個人が頑張るしかないんだよ】

 

日吉「大会のルール、システムはどのように決まったのですか?」

瀬戸熊「連盟はルール、システムは全てお任せ。ただ、実力の証明はしたいから対局数、対局者数はなるべく多い方が良かった」

日吉「連盟はリーグ戦でAルール(一発、裏ドラなし)を採用しておりますが、今回はBルール(一発、裏ドラあり)。相手の土俵で対局するわけですがそのあたりについては?」

瀬戸熊「普段AルールでやっているからこそBルールの応用が効くんだよ。協会の鈴木たろうさんは、連盟は手役を絡めた高い手をアガる。ワンパンチが重かったってコメントしてたよね」

(Aルールをやっていることで、常に手役を狙える麻雀が身に付くってことかな?)

日吉「団体戦で勝利するための、チームとしての作戦はありましたか?」

勝又「チームとしては特にないよ。個人それぞれが考えたことが一番良いことだよ。僕個人の考えは調子の良い人がポイント伸ばして、悪い人は抑えるってことかな」

瀬戸熊「ポイントで競っていた最高位戦はマークしたよ。僕は個人レベルで意識したけどチームとしても解っていたこと。打ち合わせ、言葉はなくても全員ね。団体戦だけど個人が頑張るしかないんだよ」

(団体戦とはいえ最後は個の力が大事なんだな。サッカー日本代表の本田選手も言ってた気がする)

内川「僕も同じ。個人的には調子が良かったからポイントは伸ばそうと思った。あと、勝又さんがいてくれることに安心感はあったね。終始心強い言葉を言ってくれたから。任せろって感じがあったね」

猿川「僕個人は調子が良くなかった。ただ、その時のライバルチームは意識して打っていたよね」

瀬戸熊「対戦カードが決まっていたから、複数回当たる相手には最初から強く打って、戦い辛い印象を与えるようにしたね」

勝又「そうですね、序盤は複数回当たる相手からの情報を集めたよ。同時に強い印象も与えたかった。相手が真っすぐな打牌が出来なくなればこっちが有利。初日の10ポイントより、後の1ポイントの方が大事だしね」

 

 

【安心して行け】

 

日吉「ポイント倍で行われる大将戦については?」

瀬戸熊「みんなは勝又に着順勝負の責任は負わせたくなかったはずだよ。やっぱりチーム戦だからね。勝又の功績で勝った時は良いけど、もし負けて勝又が戦犯みたいになるのは本意ではなかったよね」

勝又「自信はあったけどリードはあればあるだけくださいと思っていましたね。瀬戸熊さんが全員で300ポイント差つけてバトン渡すから安心して行けって言ってくれた。そしたら367ポイント差つけてくれたんだよね。ありがとうございますって思ったよ(笑)」

(大将として戦う勝又さんにチーム全員の想いを367ポイント差という形にして託したわけだ)

瀬戸熊「大将戦2回戦のオーラスで、阿部さんを押し上げるリーチあったでしょ。並びは最高だったんだけど、あのリーチに関してはそれ以降(大将戦3、4回戦)の対局に一抹の不安はあったね」

(ん?どういう意味かな?言っている意味がわからないぞ。先輩たちの話はいつも難しいんだよなぁ)

猿川「僕は勝又のリーチは好判断だと思いますね。最終日ってのも大きいかな。自分の勢いも大事だけど、あの日の大将戦は同一メンツでの対局で、相手の心理的にそっちの方が効くかなと思ったし。でも相手が瀬戸熊さんだったらやらないけど」

勝又「瀬戸熊さんと大将戦の対局者とは戦い方が違うからね」

瀬戸熊「僕が教わってきたのは勢いを大事にする麻雀だからね。だからオーラスの阿部さんを押し上げるリーチは怖いんだよね」

(ポイント差で有利になる状況を作りあげたのに、怖いって…)

瀬戸熊「勝又がリーチをした瞬間は良し!と思ったよ。さすが勝又、緻密に計算しているなって。ただ、ポイントはリード出来ても勢いを失うリーチにも見える。1回戦は9万点トップ、2回戦も最高の並び。もちろん勝又はポイントをプラスでまとめると思っていたけど、この後みんながフワッとした気持ちでいるとやられると思って気を引き締めたね」

(総合ポイントを考えたらリーチをした方が得、心理的に相手も嫌がる。ただそれ以上に自分が勢いを失ってしまうことが怖いってことかな?ヤミテンの方が勢いを失わないってことなのか…)

瀬戸熊「勝又は3回戦でラスを引くんだけど、要因はそのリーチにあると思うんだ。観戦していた会長と前原さんも同意見だった」

大将戦の最終戦を残すだけとなり、別会場での対局を終えた瀬戸熊が本会場に戻ってきた。応援に駆け付けていた森山会長、前原と言葉を交わす。
350ポイント以上のリード。連盟の優勢は変わらない。しかし、あれほど好調だった勝又が3回戦で4着となる。その原因は2回戦オーラスのリーチにあると、3者の見解はピタリと一致していた。

内川「僕はリーチを打った方が良いと思っています。対局者に隙がない印象を与えるかなと。ただ、そのリーチが勢いを失速させてしまうことに繋がってくるのかもしれない。僕にはまだ難しいところですね」

勝又「どこでポイント差を広げるかってことですよね。僕は2回戦オーラスでリーチを打ち、理想的な着順でポイント差を広げた。ただ、勢いを重視する先輩方は、僕が1回戦の9万点トップの場面で、僕より攻め込んで12万点のトップを取ってポイント差を広げるんでしょうね」

(話が難しすぎる…あの場面は自然に打ち続けることが良いってことなのかなぁ)

日吉「ポイント大量リードで迎えた4回戦(大将戦は3回戦)でかなりポイント差を詰められましたが、油断や慢心などがあったのでしょうか?」

瀬戸熊「油断や慢心は一切ないよ。でも、あれが若い8名で構成されたメンバーの弱点だと思う。先輩たちから教わっている、勢いを意識した麻雀を打っていれば相手のリーチにも向かって行けるのに、着順を意識して打つから失速したんだと思う」

日吉「ええ」

瀬戸熊「麻雀の流れ、勝負の流れとして見た場合、既に勢いの差があった。だから全員がトップを目指せばいいのに、ここは2着で良いなとか、この団体より着順上ならOKとか、3着でも素点は守るぞとか、そういう思考になった瞬間にやられるわけよ」

(勢いがある時は更に攻める。僕も普段から何度も言われていることだな…)

瀬戸熊「調子が良いんだから攻めれば良いんだよ。勢いを大事にする先輩たちなら、3回戦まで調子が良いんだから、4回戦は当然攻めるよ」

勝又「決めるときに決めに行きますからね」

瀬戸熊「普段教わっていることをしっかり出来たら、勝又の大トップを契機に最後まで加点するこが出来ていたと思うよ」

日吉「最終戦については?」

瀬戸熊「リードはしていたけど、勝負事は最後まで何があるかわからない。もちろん勝又の実力は信じているんだけどね。ただ相手も一流だから何があってもおかしくない。大将戦の1回戦と同じことを相手にやられたらわからなくなるからね。最終戦に関しては、ツモられ続ける展開だけが心配だった。だから1回でもアガれたら優勝できると思ってたよ。あの一万四万ツモッた時に優勝を確信したね」

日吉「実際対局されていた勝又さんの心境は?」

勝又「これで逆転されたら鳳凰位返上して退会だなと(笑)。僕としては一局一局、自分が出来る最善を尽くすだけでしたね」

(顔は笑っていても目は真剣。いつもの勝又さんだな…)

第3節で失速し総合順位3位に後退。最終節のみを残した連盟は厳しい状況に置かれていた。
最終節の大将戦はポイント倍で行われる。チームの勝敗を大きく左右する対局。その1回戦でチームを鼓舞するような9万点の大トップ。更に個人成績も第4位。
現鳳凰位として、その名に恥じぬ獅子奮迅の活躍をみせた。

鳳凰位を獲得し連盟の頂点に上り詰めた勝又。実況者としても連盟内では図抜けた存在である。
私は勝又に麻雀と実況、両方のアドバイスをもらうことが多々ある。そんな時、冗談交じりで

「俺が出来るんだから、誰でもできるよぉ(笑)」
と笑いながら話す。そして直後に、決まって言うセリフがある。

「出来ないってことは努力が足りないよね。やってないだけ」
と真剣な表情で話す。

勝又の発言と実績には、我々の知られざる影の努力に裏打ちされた、自信と誇りが感じられる。

 

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瀬戸熊「とにかく9万点トップが大きかった。こっちの士気は上がったし、相手は戦意喪失したのが分かったから」

内川「そうそう。あれを一発目に持ってきてくれて、やることがより明確になったしね」

 

 

【とにかく元気に】

 

日吉「それぞれチームの一員としての役割はありましたか?」

勝又「キャプテンの藤崎さんがチームの雰囲気を良くしてくれて、副キャプテンの瀬戸熊さんが鼓舞してくれたのは間違いない」

今からおおよそ10年前…
麻雀業界に激震が走った。日本プロ麻雀連盟から、当時のエース格が数名離脱。

次代を担うであろうと目されていた瀬戸熊。これ以降、プレイヤーとしても運営面においても瀬戸熊にかかった負担は想像を絶する。
先輩たちに助けられ、アドバイスをもらい、連盟の屋台骨を支え続けた。そんな中での鳳凰位、十段位の獲得。
その後、その座を譲ることなく連盟のトップに君臨する。瀬戸熊は名実ともに絶対王者の称号を手にした。
今日では若手に対して麻雀プロとしての在り方を、背中で語る兄貴分。

あの日から10年。激動の連盟史の生き字引である瀬戸熊。今大会では連盟の精神的支柱としてチームを支え、鼓舞し続けた。そして、自身の歴史が正しかったことを、団体戦優勝という成績をもって証明した。

内川「2人には阿吽の呼吸があったね」

勝又「瀬戸熊さんが、お前らはいつも通りやれって。ポイントは俺と藤崎さんでまとめるからって言ってくれたんですよ。ホントに心強かったですね」

猿川「俺はまじめにしてたなぁ」

(絶対ウソだな…)

勝又「僕個人は内川、白鳥の2人とは沢山話をしたね。不安があるなら相談乗るし、自慢したいなら聞いてあげるよって。藤崎さん、瀬戸熊さんは年齢も離れているから僕の方が話しやすいだろうし。半荘終了後は意識して話してたね」

内川「僕はとにかく元気に。甘えさせてもらいました」

勝又「藤崎さんの精神力はすごいよ。成績が良くない場合って、普通はどうしようってなるじゃない。でも俺たちのことばっかり考えてくれた」

瀬戸熊「今日も俺に貢げよ、とか言ってたね。俺のマイナスポイント補填しろって(笑)」

内川「そうやって盛り上げてくれた。連盟の成績が落ちてトップの座を明け渡したとき、みんな気分が落ちていたんだけど明るい雰囲気を常に作ってくれましたね」

私は実況、解説の場で藤崎と一緒になることが多々ある。そんな時も、冗談を混ぜつつ笑顔で接してくれる。
放送前に緊張している私は、徐々にリラックスしていくのが実感できる。
藤崎は普段から優しい。若手のことを気にして声をかけてくれる。そんなキャプテンにはみんな頼りたくなるよね!

勝又「今は公式戦の休憩時間って選手同士の会話って禁止でしょ。瀬戸熊さんはそのルールができる前から話しかけにくい雰囲気があったんだよね。もちろん開始前と終わった後は気さくなんだけど。ただ対局が開始すると休憩時間も瀬戸熊さんには話しかけらんねーなみたいな」

(めっちゃわかります!戦闘モードになると、人を寄せ付けない見えない壁を感じます!怖いっす!)

勝又「でも今回は休憩時間に瀬戸熊さんから声をかけてくれたんだよね」

瀬戸熊「サルが初日の1回戦終わった時に瀬戸熊さん話しかけられないモードになっているんでしょって言ってたんだけど全然そんなことなくてね。僕と藤崎さんは良くも悪くも周りに影響を与えちゃうから。悲壮感だけは出さないようにしてたね」

勝又「藤崎さん悲壮感は少しもなかったよね」

日吉「努めてそうしていたんですか?」

瀬戸熊「努めていたわけではないけど、やっぱりそれがチームだよ」

(チームかー、良いなー、球拾いでいいから俺も入りてー)

勝又「でも僕たちが今日ダメだ、とか言うと愚痴聞いてくれましたけどね。すぐ今日ダメだーとか言ってたもんね(笑)」

内川「良いチームだったんですよ」

(ウッチーはチームの一員か、若いのに大したもんだよ。羨ましいぞ!俺も頑張らねーと)

勝又「藤崎さんと瀬戸熊さんは対局終わっても着順とか聞いてこないんだよ。俺たちはそればっか話してたよね。俺と内川なんて聞かれる前に言ってたもん(笑)」

瀬戸熊「それだけ信用していたってことだよ」

勝又「トップ取った時は嬉しいからむしろ聞いてよって思ってたもん(笑)」

瀬戸熊「勝又は調子良かったからキープするのはわかっていたよ。後は調子悪い人をケアするだけだよ」

勝又「トップ取ったから褒められたいのに」

(鳳凰位は意外と子供だな…)

瀬戸熊「日吉がいたら毎回聞いてたよ(笑)」

(ブハッ)

勝又「瀬戸熊さんは何度も有言実行していましたね。麻雀はどんな結果になるかわからないから抽象的なことを言うでしょ。頑張りますとか。でも瀬戸熊さんは言い切るのよ。この半荘トップ取るって。そして取って帰ってくる」

日吉「チームを鼓舞するために敢えて言っていたんですか?」

瀬戸熊「いやそうじゃなくて、みんなを信用してたし、なんとなく気づいた時に言ってたかな」

勝又「瀬戸熊さんがここはトップ取ってくるって言うでしょ、そうすると藤崎さんが俺は小さめのラス取ってくるって言うのよ(笑)」

 

 

【個人成績よりもチーム成績】

 

日吉「他団体で強いと思った方は?」

勝又「たろうさん。(鈴木たろうプロ、日本プロ麻雀協会)」

内川「達也さん。(鈴木達也プロ、日本プロ麻雀協会)」

猿川「水巻さん。(水巻渉プロ、最高戦日本プロ麻雀協会)」

瀬戸熊「佐藤聖誠さん。(最高戦日本プロ麻雀協会)気合入ってたよ。」

猿川「それぞれが対局した時の調子、相性もあるけどね。みんな強かったよ」

日吉「個人の順位、成績は気になりましたか?」

猿川「自分の順位は気にしてないね。大体これぐらいかなとは思っていたけど。あんまり興味なかったかな。もちろん最終成績は見たけど」

(おー意外だな)

勝又「俺は気にしてたな。さっきも言ったけど鳳凰位としての看板もあるし」

瀬戸熊「サルと寿人の成績は常に気にしてた。ふり幅が大きいから。サルが5万点持ちから失速して3着になった時があったんだけど、次の半荘は気にしてたね。無理しちゃうかもしれないから声かけたほうがいいかな、とかね。でもお互いプロだからそこまで心配してなかったけどね」

(猿川はムラがあるし、寿人さんはすぐアレ出しちゃうからな)

猿川「そのあたりは団体戦だから我慢が効きましたね。」

勝又「藤崎さんは自身の成績こそマイナスだけど、ポイント競っていた最高位戦との成績はすごく良かった。並びづくりが上手いよね。ポイントまとめるって、こういうこというんだなって」

内川「自分の名前が上にあったのは気分が良かったね(笑)。でもそれに拘ってはいなかった。個人成績よりもチーム成績。個人成績を伸ばしたくて無理にトップを狙ったりはしなかったね」

瀬戸熊「それが良いほうに転がったかもね。上手く抑えがきいたかもしれないよ。普段トップ狙って、無理して押して着順落とすとかあるじゃない。麻雀のバランスとしてどっちが良いかわからないけど」

内川「俺、団体戦のほうが向いてるかな…」

整った顔立ち、さわやかな立ち振る舞い。そして誰にも劣らない向上心。まだ幼さが残る内川と初めて会ったのは、彼が連盟に入る前だった。長野県在住だった彼は勉強会に足しげく通い、連盟入りを目指していた。既に連盟入りしていた私は、熱心な彼の姿勢に将来性と同時に追い越される危機感を感じた。私はそんな彼に対してどこか斜に構えていた。

それから数年後、私は内川とリーグ戦で何度も対戦した。数多くの麻雀プロ。その中で栄光をつかみ取れるのは、ほんの一握り。明日のヒーローを夢見て切磋琢磨し、時に激しい火花を散らす。
そんな厳しい戦線の中から彼は上に抜け出し、私は埋もれていった。私の感じた危機感は的中した。

そして今大会では、僅か8枠しかないシートを自らの手で掴み取る。個人成績でも連盟最上位の第2位という成績を収め、チームの勝利に大きく貢献した。私の感じた将来性は確かだった。

今大会での内川の活躍は、若手の連盟員にとって刺激になったはずだ。
ウッチーおめでとう。あの日、先輩というだけで斜に構えていた自分が恥ずかしいわ。いつかまたウッチーと戦える日まで頑張るわ。

 

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【ホントに信用してるってこと】

 

日吉「他団体と比べて連盟が良かったところは?」

猿川「仲良かったことかな」

内川「総合力!」

勝又「ホントに信用してるってこと。誰が何切って何点放銃しても、あなたがそれ打つならみんな打つでしょって。どうぞ打ってください、みたいな感じかな。だから麻雀の内容について話すことなんて自慢と愚痴(笑)。あの打牌はないでしょ、とかそんな細かい技術的な話は一切なかったよ」

連盟内ではライバル関係であり、競い合っていた相手。だからこそ解り合える相手の実力。その力を疑う余地は一切なかったはずだ。
初めて味方として戦うことになった今大会ではホントに心強かっただろう。

日吉「ちなみに一番自慢していたのは誰ですか?」

勝又「俺かな(笑)。愚痴は藤崎さん」

一同「アハハハ」

瀬戸熊「普段あまり交流のない連盟員が真剣に応援してくれていたね。いい団体だなと思いましたよ」

日吉「大会開催中のファンの反応は?」

内川「2ヵ月でフォロワー数700人増えましたよ!」

瀬戸熊「ファンや身内から、勝又を初めて心底応援したって言われたね。普段は敵同士で戦うからね。勝又は強いから、僕の周りから良い意味で嫌われてるよ(笑)」

勝又「普段は瀬戸熊さんの応援ですもんね。僕も皆さんから今までの何倍も応援してもらった実感がありますね」

瀬戸熊「これまで連盟を応援していた方は、連盟が最強と信じて疑わなかったと思うんだよね。今回の結果でその人達がホッとしてたことが僕もホッとした。その人たちが信じていたことを証明できたって」

(ファンあっての麻雀プロ。何よりの恩返しができたのかな)

 

 

【このメンバーで勝てたのはホントに良かった】

 

日吉「見事優勝という結果でしたが、開催中プレッシャーはありましたか?」

瀬戸熊「鳳凰戦の前夜は眠れなかったけど、今回はみんなを信頼していたから眠れた。緊張は分散されるのかなって。リラックスできてたよ」

内川「断食していました。食えなかったのもあるし、食欲がなかった。高揚していたかもしれないですな」

瀬戸熊「勝又は鳳凰戦と団体戦どっちが緊張した?」

勝又「団体戦ですね。団体戦の方が勝ちたかった。当然鳳凰戦も勝ちたかったけど、負けたら自分が弱いだけだから、また来年挑戦すればいい。だけど今回は負けたら次挑戦すればいいでは済まないから。一回で必ず結果出さなくてはならないと思っていたので何十倍も緊張しましたよ」

猿川「僕もそうだけど、みんな団体戦の方が緊張していたと思うよ」

勝又「周りに勝又は弱いねって言われるのはいくらでも受け入れられる。だけど自分が強いと思っている先輩たちが弱いと言われるのは受け入れられないよ。あんなに強い先輩たちが率いる連盟が、世間から弱いねって思われるのは受け入れらんないもん。しかもそれが自分のせいでそう評価されるんだよ。だって強いんだから、バケモノみたいに。普段は結果も大事だけど、内容の良い麻雀を打つことに充実感はあるんだよね。だけど団体戦はとにかく結果に拘った。ただのバカヅキでもいいから勝ちたいと思った」

(鳳凰位は意外と熱いんだな…)

瀬戸熊「僕はタイプ的に内容の良い麻雀を打つと結果がついてくる。内容がダメだと結果もダメ」

猿川「そういう意味でプレッシャーは普段の倍くらいあったな」

勝又「サルと俺が一番緊張していたよね。2人とも手が震えていたし。配牌ちゃんと取れなかったもん」

猿川「緊張したよね。空気が普段のタイトル戦より重い感じしたな」

 

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(意外な2人が緊張してたんだな。一番緊張しないタイプだと思ってた)

日吉「大会終了後の周りの反応はどうですか?」

瀬戸熊「優勝したことで連盟行事に行きやすいね(笑)。みんな明るいよ。負けていたらどんよりしてたんだろうなと思うと優勝できて良かった」

勝又「みんな褒めてくれるね。おめでとうございますっていうよりは、ありがとうございましたって感じで声かけてくれる」

猿川「もちろん他団体も強いんだけど、戦前から連盟が勝つと信じていた。実際勝ったのはすごいと思う。負けた場合、今後もし第2回がなかったら連盟は弱いで終わっちゃうし。このメンバーで勝てたのはホントに良かった」

内川「嬉しいですね。負けた時はそれを甘んじて受け入れるしかないんだけど」

(連盟員みんな喜んでたもんな、みんなの代表として優勝してくれたんだよなぁ)

 

 

【その言葉で思いっきり戦えましたね】

 

日吉「決起会の開催、更には会長からの激励のメールがあったと伺っていますが」

瀬戸熊「会長から選手それぞれに激励メールがあったんだよね。僕は会長への返信で、4位だったら会長辞めますと言わせてしまったのは情けないですって返信したんだよ。会長は連盟の礎を築き上げたメンバーで臨んだら、優勝しなかったら辞めますって言ったはずだから」

勝又「今の話を聞いて正直恥ずかしいです。4位になったら辞めますっていう会長の言葉で、僕たちは信用されていると思っていましたから」

猿川「でも優勝しなかったら辞めますって会長が言っていたら優勝出来なかったかもね(笑)。正直プレッシャーが大きすぎる。そうでなくても連盟内からのプレッシャーも大きいのに」

(猿川!本音を言い過ぎ!)

勝又「決起会で会長がね、俺は連盟が負けるのが嫌なんじゃない、お前らが自分の麻雀が打てないのが嫌なんだって」

内川「連盟らしく打ってくれと言われてましたね」

勝又「勝ったらお前らの力、負けたら俺のせいだって。そんなわけにはいかないけど、その言葉で思いっきり戦えましたね。ありがたかったですよ」

(会長はホントに熱い人なんだな。喜ぶ時も怒る時もホントに相手と向き合っているし、連盟に対する愛情と麻雀プロ像に対するこだわりは誰よりも強いんだな)

瀬戸熊「決起会の会場は第1節で勝ったこともあって、毎回同じ場所でやったんだ。寿人は地和アガッたから座る場所も同じにさせたよ(笑)」

(寿人さんは運だけの男かな?)

 

 

【日本プロ麻雀連盟の伝統と歴史】

 

瀬戸熊「今回色々あったけど、寿人の地和も、猿の倍満も、勝又の9万点トップも連盟の伝統と歴史がアガらせたものなんだよ」

内川「先輩たちに教えてもらったことが正しかったことを証明できて良かった。リーグ戦で結果を出せばチャンスが来ることは間違いないですね。でも若い子たちには負けないよ」

猿川「他団体と連盟の実力差なんて同等なんだと思う。先輩たちが築き上げて来たものを崩さないで良かった。安心した気持ちが一番大きいですね」

勝又「先輩たちにはひやひやさせてしまった。もっと僕たち全員で力を付けて頑張ります」

瀬戸熊は大会終了から数日後、連盟員の本場所である鳳凰戦の会場で、麻雀プロ団体日本一決定戦の結果報告と共に、これまでの先輩たちのご指導、連盟員からの応援に感謝の意を述べた。
続けて「今後はこの中から選抜選手が出てくるはずです。これからも日本プロ麻雀連盟の伝統と歴史である攻めるときは攻める、守るときは守る麻雀を引き継いで、堂々と胸を張って戦えるよう、力を蓄えてください」という言葉で締めた。

 

 

【麻雀界のヒーローだぞー!】

 

12:25

日吉「今日はありがとうございました」

一同「こんだけ時間取ったんだから出来が楽しみだな」

(プレッシャーだな)

一同「仕上がりが不安だよ」

(まぁ確かに…)

一同「頑張ってやって。お疲れさん」

各団体の一流選手が集い行われた麻雀プロ団体日本一決定戦。日本プロ麻雀連盟は見事優勝という成績を収めた。
今日の麻雀業界を取り巻く環境の変化は非常に早く、成長も著しい。同時に選手個人の成長も急速に進んでいる。
他団体の選手は今回の雪辱を胸に、連盟が射止めたその座を虎視眈々と狙っていることだろう。

「他団体とそんなに差があるわけでもないのに天狗になっていると連盟は危ないよ」

実際に対局したものでなければ分からない感覚かもしれないこの言葉。
激戦を演じた対戦相手を敬い、尊敬しているからこその言葉であると思う。
応援席からは無傷に見えたその看板。それは8人が心身ともに傷だらけで守ったものだった。

雑踏の中を歩く4人の後ろを歩いてみた。とんでもないことをしたにもかかわらず、背伸びすることなく周囲の人と変わらない風貌と振る舞い。
卓上で見せた溢れんばかりの闘志。卓を離れている時はそのオーラを解除しているのだろう。
大きなことを成し遂げる人間こそ自分を大きく見せる必要がないのかもしれない。

この行き交う人の中にもヒーローが沢山いるのだろう。それでも道行く人に伝えたかった。叫びたくなった。

この人たちは連盟員の、麻雀界のヒーローだぞー!