プロ雀士インタビュー

第183回:プロ雀士インタビュー 魚谷 侑未  インタビュアー:大和

3月下旬
新しい歴史がまた一つ刻まれた。
日本プロ麻雀協会主催「第16回日本オープン」にて初の女流プロ戴冠を成し遂げた。

魚谷侑未 日本プロ麻雀連盟25期生
これまで数多くのタイトルを獲得してきたプロ連盟のトッププロである。
男女混合のタイトル戦は「モンド王座」で優勝しているが主要団体のオープンタイトルは初。キャッチフレーズは「最速マーメイド」

私と魚谷プロの接点は・・・無い。
彼女の印象はストイックで研究熱心、彼女のライフスタイルから全てにおいて麻雀に通ずるものがあるような人。
一度、勉強会で指導された事がある。
ふわふわした私の答えに喝を入れられて、正直悔しい思いをさせられた。
でもそれは自身の甘さであり、同じプロとして恥ずかしかったが魚谷プロの意識の高さを同時に知る機会にもなった。

今回は魚谷プロの「プロ意識」を織り交ぜて皆様に伝えていければ良いと思う。

 

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新橋某所にて

大和「今日はよろしくお願いします!そして日本オープン優勝おめでとうございます!」

魚谷「ありがとうございます!」

大和「まずは決勝戦で印象に残っている場面とか教えて下さい!」

魚谷「最終戦の東4局と南3局かなぁ・・」

やはりそうだった。私もその2つの場面は強烈に脳裏に焼き付いている。

まずは東4局 親番で先制のテンパイが魚谷に入る。
くっつきテンパイで絶好の3面張になった。
魚谷は当然リーチをして優勝へのダメ押しとなるリーチを選択するかと思ったが、ここはヤミテンを選択する。

 

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大和「ここはノータイムでリーチかと思いました。」

魚谷「ポイント的にも5,800の加点は大きくて迷っちゃったんだよね。リーチの選択ももちろんあったのだけど、この時に勝ちを意識してしまったの。」

大和「うんうん。」

魚谷「ホントは渋川さんの七筒鳴こうと思ったけど、さすがにそれはこの手でダメだと思って踏みとどまった直後にひいた三索だが今度はリーチをするか?どうすればいいのか迷った。この時に勝ちたいって思った結果がね・・渋川さんが放銃で最悪とまではいかなかったけど正直負けを受け入れたよ。」

麻雀とは本当に不思議である。

たった一瞬、勝ちを意識した。
全然そう思ってもおかしくないポイント状況。
そして決勝の舞台での1つのリーチ判断。

魚谷「ポイント的にも有利だったけど、この1局で正直負けると思った。桜井さんの追いかけリーチの牌姿を見て、そしてリーチしていたら私のアガリがあったのも見えて・・・」

大和「なるほど。」

魚谷「私は諦めないタイプだから、アガリを拾うのではなく掴み取る選択をするべきだったな。だから今なら180パーセントリーチするべきだったね。でも逆にこの1局で開き直る事ができたの。」

それが南3局での魚谷にしかできない、執念のそして決定打となる大きなアガリをモノにすることになる。

 

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この配牌が優勝へ導くためのアガリを生む。

大和「これは本当に凄かったです。」

魚谷「そうかなぁ?まぁ確かに九索を鳴く人はそんなに多くないかもね。でも渋川さんの親番だったしこの局はポイントになると思った。ただ結果は一番良い方向に転がったね。2枚目の九索だったし、手牌的にもトイトイ本線だったから自然に声がでたよ。」

 

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この状況、ポイントを踏まえて九索に声をかけられる人が何人いるのだろうか。

魚谷「もう私が自分で切り開かなきゃダメだと思ったの。」

確かに鳴いた後のツモは絶好だったし、トータルトップになっていた渋川からの直撃がとれたのも結果論である。
でもこれは魚谷のプロとしての諦めない気持ちが牌に伝わったのだと私は思う。
これまで数々の修羅場を潜り抜けてきて培ってきた麻雀がこの1局に凝縮されているかのようだった。

 

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魚谷「決勝5回戦で本当に展開にも恵まれていたと思う。勝ちを意識することが一番ダメなのは分かっていたのに、それが麻雀の中で出てしまったのだけど、それがあって諦めずに戦いきれたことは本当に大きかったよ。」

大和「タイトルはたくさん取っているけど久々なんだよね?」

魚谷「そうなの。決勝までは残るんだけど。ただ自分の中でも少しずつ変化は感じてるよ。もちろん意識して変えていってるんだけど。だからこの優勝は本当に嬉しいよね。」

具体的には魚谷と言えば「最速マーメイド」のキャッチフレーズだが仕掛けを多用しゲームを支配してコントロールしていくというイメージだった。

魚谷「仕掛けは大分減ったよ。まぁ普通の人よりは全然多いと思うけど(笑)公式ルールとかWRCルールってやっぱり素点がホントに大事なんだよね。どうしても着順の意識が強くてそこに壁を感じたんだ。最近はポイントを叩く事にも慣れてきて丁度手応えを感じていたところだったの。」

大和「じゃあプロ協会のルールとかは好きなんだね!うらやましいなぁ。でも本当にストイックというか当たり前だけど努力を怠らないというか、プロだなぁって思います。」

対局の後でしばらく体調を崩していた魚谷を心配すると

魚谷「いつも対局が終わると死にそうになるくらい疲れるし、頭も痛いし身体がボロボロになるんだよね。だから休みの日はしっかりリフレッシュするためにマッサージや趣味に時間を使ってる。対局前日も仕事が終わったら真っすぐ帰ってしっかりと準備するし。」

大和「普段の生活からストイックなんだな・・・」

もう少し聞いてみた

大和「麻雀以外って何か好きな事とかやりたい事ってないの?」

魚谷「基本的には麻雀を一番にしたいからね!楽しい事ってたくさんあるけど麻雀は絶対疎かにしたくないの。前にポーカーをちょっと教えてもらったんだけどホントに面白かったんだよね。でもこれを追及していったらヤバいと思った。だからゲームとかアニメも好きなんだけどあくまでも麻雀をしっかりやっていくための息抜きなんだよね。」

麻雀が無かったら普通の女の子で終わっていた。
だから麻雀に出会えて本当に良かったと。

大和「でもこれでまたタイトルも増えて更に活躍の幅がひろがりそうだね!」

魚谷「うん、男女混合のタイトルを勝てたのは本当に嬉しいし・・・でも悔しいこともあったよ。やっぱり和久津さんの活躍は意識するよね。もちろんプライベートでは仲良しだし活躍はホントに嬉しいんだ!でもなんで自分が選ばれないんだって事もあるし・・・大和君はそういうの悔しいとか思わない?」

大和「そりゃ悔しいとはおもうけど・・・」

魚谷「女流プロってくくりでいろんなチャンスを掴めないってのはやっぱり悔しいよね。もちろん女流だから出られる対局もあるけど麻雀プロとして最前線に出ていたい。だから和久津さんに負けたくないけど尊敬してる。そしてチャンスを掴んだら相手が誰であろうと絶対自分が勝つんだって思わなきゃだめだよ。」

ストイックでハングリー精神も併せもっているのが魚谷侑未なんだな・・・
みんな思っている「理想」みたいな考えを常に実践している。
麻雀プロが魚谷のような麻雀との向き合い方をしたらもっと全体のレベル、意識も変わってくるんだろうなと思った。

魚谷「私、麻雀以外はうっかり屋さんだし忘れっぽいんだよね。」

大和「それが凄いよね。麻雀以外って言える事が。じゃあ麻雀は自信ありますか?」

魚谷「うーん、自信っていうと難しいけど努力の積み重ねだからそれが形として結果を残せているのは自信になるよね。でも目標は鳳凰位だからね。もっともっと努力しなきゃダメだし継続していきたい。」

インタビューでも最後まで麻雀プロだった。
今の若手には本当にお手本となるような麻雀プロの1つのモデルだと思う。

そんな魚谷もプロ連盟入会直後は劣等生だったという。
麻雀だけは誰にも負けたくない。強くなりたい。
その思いが今の魚谷を創り上げているのだろう。

今日も若手の模範で在り続け、麻雀と真摯に向き合い戦い続けるマーメイドは次のタイトルにそして鳳凰位という目標に向かって泳ぎ続けていく。

魚谷プロ本当におめでとうございます!
 

 

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