プロ雀士インタビュー

プロ雀士インタビュー/第85回:二階堂亜樹

085
天空麻雀10 女性大会を優勝した
二階堂亜樹プロ

夏も真っ盛りの或る日、編集部から一本の電話が入る。
吉田「どうしました?」
編集部「亜樹さんのインタビューやって欲しいんだけどどう?」
吉田「自分がですか!?」
編集部「嫌ならいいけど。」
吉田「嫌なわけないじゃないですか。ただ緊張して喋れないかも。」
編集部「直が緊張するわけないじゃん。」
吉田「実はこう見えて人見知りなんですけど・・」
編集部「うーん何言ってるかわからないけど(サンドウィッチマン風)宜しくね。」
まぁ自分が人見知りに見られないのは慣れているのでそれはいいとして、取りあえず情報収集に入るか。
7月某日、都内の喫茶店で亜樹さんと待ち合わせることに。
吉田「今日はお忙しい中わざわざ来ていただいてありがとうございます。」
亜樹「こちらこそ宜しくお願いします。」

085 085

この日、亜樹さんは来年の日本プロ麻雀連盟カレンダーの撮影帰りとのこと。
よく考えたら2人きりで喋るのは初めてだなと考えていたら緊張で頭が真っ白になってきた。
とにかく話を切り出さなければ。

吉田「記念すべき第10回天空麻雀優勝おめでとうございます。」
亜樹「ありがとうございます。」
吉田「清水香織プロ、お姉さんの二階堂瑠美プロに続き3人目の連覇となりましたね。」
亜樹「はい。すごく嬉しいです。」
吉田「しかし、意外なことに第7回の天空麻雀まではなかなか決勝まで辿りつけず苦しんでいましたよね。麻雀のスタイルを変えてみたりしたのでしょうか?」
亜樹「はい。以前は守備型だったんですが、最近は少し攻撃的に攻めるようになって、それからだんだん成績が良くなってきたかなって思います。」
吉田「なるほど。それが今の強さに繋がってるんですね。確かにこの前のリーグ戦の時、攻撃的な亜樹さんに圧倒されてアガリ逃しをしてしまいました。」
亜樹「アハハハハ。」
吉田「それでは早速ですが質問していきたいと思います。」
亜樹「はい。」

「天空麻雀」

085
吉田「6巡目に高宮さんが切った東をポンテンに取りませんでしたが、普段から鳴きませんか?」
亜樹「並ばれたのでこの手を5,200にしたくないのと、マンズの形が良かったので鳴きませんでした。2枚目は仕方なく鳴くと思います。」
吉田「なるほど。そして2巡後に高宮さんからリーチが入り、次巡、五筒八筒のテンパイが入りましたが、リーチの選択はありませんでしたか?」
亜樹「私が東を鳴かなかったからテンパイが入ってしまったという状況を踏まえて、いやもちろん鳴いていてもテンパイは入ったかも知れませんが、
ここでの選択肢って色々あると思うんですよ。リーチするのか、ヤミで押すのか、2枚目の東が出た時にポンして南を捨てて五筒八筒の両面にするのか、
六筒七筒を捨ててホンイツに向かうのか・・・ただ、この時は2枚目の東が出てもポンできない雰囲気でしたね。
だからリーチにいってもいいのですが、リーチにいくには自分の中で納得いかないテンパイで、ドラを捨ててまでこのテンパイなのみたいな。
私の中でドラの比重って結構高いので。」

吉田「亜樹さんの『ドラは恋人』説は聞いたことあります(笑)」
亜樹「結局、北野さんが押してきたのでやめちゃいましたね。」
吉田「その局は高宮さんが5,200をアガリ、トップを逆転されたんですよね。」
亜樹「トップは逆転されましたが、そんなに点数が離れてないのと、この局真っすぐいってても当たり牌を掴んでなかったという事が確認できたので、
まだいけるかなって特に焦りはなかったです。あと、和泉さんはラス親ということでアガリやめがあるので常にマークしていましたね。」

動画再生
吉田「この局が優勝に大きく近づいた1局だったと思うのですが、テンパイ即リーチにいかなかったのはどうしてですか?」
亜樹「確かに即リーチしたいのですが、六万切りリーチだと五万八万 は出にくいと思い、次にマンズ以外を持ってきて空切りリーチに行きたくて1巡待ったのですが、
次巡持ってきたのは三万で、空切りするのも変なのでツモ切りリーチに行きました。」

吉田「ああそうだったんですね。その後、終盤までもつれてアガれないのかなと思っている時に、和泉さんがドラの八筒を勝負!実はこの時、採譜ルームでは盛り上がっていました(笑)」
亜樹「染め手だとは思っていましたが、後で牌譜を見てここまで高いとは思いませんでした!早く掴んでって願ってましたね(笑)」
吉田「自分の中で、優勝できるかもって感じた瞬間はありましたか?」
亜樹「確信できる瞬間って全くなくて、後で振り返ってみると勝負手がアガれて致命傷になる振込みがなかったので、総合的にみてツイてたなって思います。実は決勝よりも予選の方が強く印象に残っています。」
吉田「えっ決勝よりもってそれは興味深いですね。では予選のオーラスを振り返ってみますか。」
動画再生
亜樹「2着まで勝ち上がりのシステムなので、オーラス500・1,000ツモか2,600以上の出アガリという条件でもらった配牌は悪くないなと。」
吉田「確かに。」
亜樹「3巡目に七対子も見える手になってきたのですが、七対子にはあまりしたくなくて、それよりもドラが出たらどうしようかと考えている時に、
北野さんからドラが出たので、鳴けってことなのかなと思いチーしたんですよね。」

吉田「なんか寿人っぽいですね(笑)」
亜樹「私もあまりしないタイプなんですが、このオーラスに限り宮内さんと清水さんは前に出てくると思うので、南が持ち持ちじゃなければ出てくるだろうし、
南が鳴けなくてもタンヤオに向かえるので、条件をクリアーできるドラは鳴きました。」

吉田「理屈は分かりますが、反応できるのは凄いなって思います。やっぱりそれだけ思考を巡らせているってことですね。
南が鳴けた後に親からリーチが入りますが、すぐにツモアガって勝ち上がりを決めたんですよね。」
亜樹「親からリーチが入って寒いと思いましたが、すぐにアガれたので良かったです。」
吉田「こうやって改めて見ると、亜樹さんが印象的だったというこの1局は、本当に優勝に繋がる1局だったんですね。」

「プロリーグ」

吉田「現在、日本プロ麻雀連盟のA2リーグで戦っているわけですが、Bリーグとの違いって何か感じましたか?」
亜樹「そうですね。役牌の出方だったり、リーチの対応だったり、場に放たれる牌などすべてが辛いなって感じますね。」
吉田「確かに自分も同じようなことは感じました。では同じA2で戦っている黒沢さんにライバル視的なものってありますか?」
亜樹「ライバルとかそういうのではなくて、ただ、自分じゃなくてもいいので早く女性でA1にあがる人がでて欲しいと思っています。だから、黒沢さんが首位に立った時は昇級して!って思っていました。」
吉田「えっ自分じゃなくていいんですか?」
亜樹「もちろん自分があがるのが一番嬉しいです。リーグ戦に参加している以上、常に昇級を目指して戦っていますし、目標は鳳凰位なので。
ただ、A1の壁って高いですよね。今の雀力じゃあがってもすぐに降級するだろうから、もっと力をつけてからあがりたいです。」

吉田「まあ元々A1に居た方は別として、亜樹さんじゃなくてもやはりA1とA2では遥かに実力が違うと思うので、A2から昇級した人が降級候補になって当然だと思います。もしかして亜樹さんってネガティブですか?」
亜樹「プライベートはポジティブなんですが、麻雀はネガティブですかね。うーん、ポジティブぶってるネガティブみたいな(笑)
自分の思考的にはポジティブに打ちたいんだけど、実際打っている時、考えている時はネガティブなことが多いですね。」

吉田「納得です。ではお互い上を目指して頑張りましょう。」
亜樹「う〜ん。現在A2では厳しい位置にいるので降級しないように頑張ります。」
吉田「やっぱりネガティブですね(笑)」

「プライベート」

吉田「最近お仕事のほうはどうですか?」
亜樹「おかげさまで充実していますね。麻雀以外ではパチンコ屋さんのお仕事なんかも多くなりましたね。」
吉田「大変なことってありますか?」
亜樹「仕事は凄く楽しいんですが、移動が結構大変ですね。」
吉田「そんなに飛び回ってるんですか?」
亜樹「最近、関西方面が多いんですが、例えば、大阪→和歌山→神戸→仙台→東京に戻ってきて、麻雀とかそんな感じなので、どこでもドアがあったらいいなって思っちゃいます(笑)」
吉田「(可愛い♪)では幾つか質問させていただきたいのですが、麻雀で亜樹さんの苦手なタイプっていますか?」
亜樹「苦手っていうか、仕掛ける人は好きじゃないですね。」
吉田「それは対応させられるからでしょうか?」
亜樹「対応するかはその時によって違うので分かりませんが、私はやっぱり重い場が好きなので、安い遠いみたいな人は嫌ですね。」
吉田「自分も以前は守備型だったのでその気持ちは凄く分かります。」
亜樹「ただ、私もそういう人を見習って1年ぐらい前はしなかったような仕掛けもするようになりましたね。」
吉田「なるほど。そうやって引き出しを増やして成長しているんですね。」
亜樹「成長してればいいですけど。」
吉田「謙虚ですね。では次の質問にいきましょう。二階堂姉妹と言えばすごく仲がいいことでも有名ですが、
もし2人で一緒の休みがとれたら何処に行きたいですか?」
亜樹「富士急ハイランドです!!」
吉田「即答でしたね。」
亜樹「はい。2人共富士急が大好きで何回行ってもまた行きたいみたいな。だから、2人で休みが合ったら行きたいねっていう話しはするんですけど、中々休みがあわなくて・・・。なんか富士急とかだと前日に早く寝て、朝から車で行って1日中遊んで帰ってきてって考えるんですけど、そしたら次の日も休みたいじゃないですか。そうすると日程を合わせるのは難しいんですよね。」
吉田「なんかそのハリキリ具合を聞いているだけで、凄く好きなのが伝わってきます(笑)。
じゃあ亜樹さんお勧めの富士急ハイランドに今度行ってみようかな。」
亜樹「絶対行ったほうがいいですよ。」
吉田「今日は長い時間お付き合いいただきありがとうございました。」
亜樹「こちらこそありがとうございます。」

別れた後、電車でふと今日の亜樹さんとのやりとりを思い返していた。
麻雀の話をしている時の彼女の真剣な眼差し、話の内容などは女性というより1人の麻雀プロたるものだった。
ルックスがいいのはもちろんだが、麻雀の実力も人気の理由の1つなのだろうと改めて感じた。

そして、ここ何年かで女流プロが急増したのは、二階堂亜樹という存在があったからではないかと思う。
彼女の目標である「鳳凰位」。その羽ばたく姿を見てみたいと切に願う。

tv-triathron3

(このインタビューは2012年8月現在のものです)