プロ雀士インタビュー

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第89回:前原 雄大
「自分の麻雀を見直す・・・」

2012/12/29
インタビュアー:勝又健志


鳳凰位2期、十段位5期と輝かしい実績を持つ前原が新たな勲章を手に入れた。
それは、インターネット麻雀日本選手権。圧倒的な強さを見せ優勝した。
その、前原の麻雀への熱い想いを、読んで下さる皆様に少しでもお伝えできればと思う。

勝又「第1回インターネット麻雀日本選手権優勝おめでとうございます。」
前原「ありがとう。」
勝又「ニコ生での決勝戦で、僕は解説させてもらったんですけど4人の意思が伝わってくる素晴らしい戦いでしたね。」
前原「ありがとう。でも、3回戦以降は取りこぼせないというプレッシャーでリアル麻雀より緊張していたよ。」
勝又「えー意外です。」
前原「2回戦が終わった段階で勝ちを意識したからね。半荘の間は毎回トイレに行ったよ。
それと、寿人も緊張していたのが伝わってきたね。」

私は、“チームがらくた"の2人に緊張なんて無縁なものだと思っていた。
チームがらくたの麻雀は圧倒的な経験則や、研究があるとはいえ、絶対的な自信と覚悟、そして強靭な精神力がなければ打ち切ることはできない。そんな2人が緊張したというのだから、優勝への想いが窺い知れる。

勝又「では、いくつか質問させて頂きますのでよろしくお願いします。」
前原「こちらこそよろしく」
勝又「前原さんはいつも決勝前はかなりの稽古をされるとよく伺いますが、今回はどんな準備をして臨んだんですか?」
前原「インターネット麻雀だからとか関係なく普段着の麻雀をって心がけていたよ。
だからいつも通り稽古をして迎えた。あっでも、いつもより事前の調査には時間が掛かったかな。」

勝又「それは、相手の牌譜を見る時間が長かったってことですか。」
前原「そう。寿人とダンプは何度も対戦したことがあるから、ある程度打ち筋を理解しているけど、いちのせ@さんとは、初対戦だったからね。いちのせ@さんの牌譜は良く調べた。」

(決勝戦のメンバーは佐々木寿人プロ、ダンプ大橋プロ、いちのせ@さん、そして前原雄大プロ)

勝又「牌譜を見る時は、どんな所に注目するんですか。」
前原「一番は、相手のオリるタイミングだね。次に仕掛けかな。
いちのせさんは仕掛けが多かったからその点が心配になって、何度も読み返していた。」

勝又「相手の打ち筋を知った後はどうされるんですか。」
前原「次は、レース展開のシミュレーション。ここに時間がかかったんだよね。
一番怖いパターンは、寿人が先手を取る展開。そこで、いちのせさんの仕掛けが入った時。」

勝又「どんな結論になったんですか。前原さんの今後の戦いもあるので、言える範囲でお願いします。」
前原「これは、いつもそうだけど1局単位で考えないこと。5回戦で見て攻めるべきか、受けるべきかを判断しようと。後は、行くにしても引くにしても見切りは早くつけようと考えていたよ。」
勝又「事前の研究が活かされての優勝だったんですね。」
前原「予選の時からだけど、いちのせさんがとても成長されていたこともあって、
中々シミュレーション通りの展開にはならないね。」

勝又「確かにいちのせさんの麻雀も素晴らしかったですね。18歳と聞いて驚きましたもん。」
前原「真面目な方なんだろうね。色がついていないうちにさらに頑張ってほしいと思うよ。
こういう強い人が増えてくれればプロとして嬉しいね。」

勝又「本当そうですね。」
前原「後ね、これは瀬戸君(現十段位・瀬戸熊プロ)から学んだことなんだけど、自己管理には注意した。
『心技体』を意識して規則正しい生活を送っている。朝起きたら、ゴミ出しまですませ、その後に牌譜。そして稽古。夜は、22時から26時の間は必ず寝るようにしていたね。
そして、対局の6時間前には起きる。」

勝又「6時間前はすごいですね。」
前原「僕は何事も人の2倍時間がかかっちゃうからね。」
勝又「では、牌譜の研究をして、その後稽古になると思うのですが、ここではどんなことを意識して取り組んでいるのですか。」
前原「それは、毎回テーマがあるよ。」
勝又「これも言える範囲でどんなテーマがあるか教えて頂けると…」
前原「最近のテーマでは迷った時は逃げないというのがあったね。でもこれもインターネット麻雀のおかげなんだよね。ロン2が始まってから、自分の麻雀を見直す機会が増えた。
だから、しっかりとテーマを持って稽古に臨むことができるね。」

勝又「僕は自分で稽古の仕方が一番の課題と思っているので、とても勉強になります。」
前原「かっちゃんは、数字なら一番でしょ。それに洞察力に長けているから、後は、大局観を磨くことだよね。」
勝又「ありがとうございます。」
前原「理屈でなく、指にピリッとくる感覚あるでしょ。あれは稽古でのみ養われる部分だからね。」
勝又「わかります。」
前原「後、5回戦だったり6回戦をまとめる力を磨いているね。」
勝又「以前、前原さんがグランプリを優勝した時に、僕は観戦記を担当させて頂いたんですけど、牌譜を見れば見るほど5回戦をまとめることの難しさや、前原さんのその力がわかりました。」
前原「本当に難しいことだと思う、だからこそ日々稽古を積んでいく必要があるんだよね。」

追いかけている相手が、明らかに自分よりも麻雀に真摯に向き合い努力している。
これでは、追いつけるはずがない。自分がどうすべきかを教わった貴重な話であった。

勝又「次は、インターネット麻雀の魅力について教えてください。」
前原「やっぱり自宅でいつでも出来るっていうのはすごい魅力だよね。それに、色々な方と対局できる。
これは素晴らしいことだよね。特に僕は、人から学ばせてもらうことが多いから、インターネット麻雀で成長させてもらった部分は大きい。」

勝又「そうですよね。それにロン2はすぐに牌譜を見られるのはすごく嬉しいです。」
前原「そう。さっきも言ったけど、自分を見つめ直すチャンスが増えたのは大きい。
それがなかったら取れなかっただろうね。」

前原「でも、残念なこともある。連盟の中でもまだロン2をプレイしていない人もいる。
自分のためにもなるし、麻雀界の普及にもつながるのに、これは本当に残念に思うよ。」

終始明るく話を聞かせてくれた前原であったが、この瞬間だけは本当に悲しそうであった。
心から、麻雀をそしてプロ連盟を愛しているのであろう。

勝又「では、今後のことを聞かせてください。次の目標や課題はなんでしょうか」
前原「やっぱり、若い人からの吸収が課題かな。
前の武器は通用しないから、新しい武器を模索しているんだよね。」

勝又「前原さん程の方でも、新しい武器を捜しているんですか。」
前原「もちろん、攻めるべき時はどこまでも攻める。オリるべき時は必死にオリるという、根幹となっている部分は変わらないよ。ある時からノートをつけ始めたんだよね。」
勝又「そのノート見せてもらいたいです。」
前原「その日の麻雀のことを書きとめているだけだよ。」
前原「基本を根気よく積み重ねている内に、今いい形が出来て喜んでいるんだよ。」
勝又「日々の研究であったり、稽古であったりの成果ですね。」
前原「僕は、先輩も後輩も本当に人に恵まれていることに嬉しく思うし、感謝しているよ。」
勝又「最後に今後の抱負をお聞かせください。」
前原「麻雀は頑張れば頑張るほどわからない。麻雀とは極められないものだと思う。
でも、麻雀を極めようという気持ちは持ち続けていきたいと思う。」

勝又「今日は長い時間本当にありがとうございました。」

こうしてインタビューが終わった。

私は、前原に話を聞かせて頂き、麻雀プロとして本当に格好いいと思った。
同時に、自分たちが何をすべきか、しなければならないかを教えて頂く貴重な時間となった。
技術や精神力では遠く及ばないが、麻雀に対する想いだけは負けていないつもりである。
尊敬する先輩に追いつくためにも、また先輩の若手への気持ちに応えるためにも、最大限の努力をすることをここに誓う。