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プロ雀士インタビュー

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第23期チャンピオンズリーグ優勝特別インタビュー:中村 慎吾
「いざ闘牌開始しちゃえば ・・・」

2013/02/26
インタビュアー:嶋村 泰之


中村慎吾(なかむらしんご)
先日行われた、第23期チャンピオンズリーグ決勝戦にて、見事優勝の栄冠を手にした27歳の新鋭プロである。これを読む大多数の人は、おそらく彼のことを知らないだろう。
それもそのはず、彼はまだプロ入りして2年に満たないルーキーなのだから。

だが、彼のことを知っている者たちの彼への評価は総じて高い。
今まではあくまで「知る人ぞ知る中村慎吾」であったが、今回のインタビュー記事を通して、中村の魅力を広く世間に伝えていけたらと思う。

インタビュアーは私、26期生の嶋村泰之が務めさせていただきます。

2月某日、東京は中野の居酒屋にて。

嶋村「わざわざ中野まで呼び出しちゃってゴメン。仕事帰りだよね?お疲れ様。」
中村「完全にいつものメンバーだね。祝勝会なんだからもっと声かけて人を集めてくれても良くない?」
嶋村「中村君は誰か誘ってないの?」
中村「俺が呼ぶの?俺の祝勝会に来てくれって?おかしいでしょ。」
嶋村「とりあえず乾杯しよう。中村君、チャンピオンズリーグ優勝おめでとう!」

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瀬戸熊プロ(現鳳凰位・十段位)命名、『雑魚軍団』。左から中村、犬見、嶋村、吉野

嶋村「早速だけどインタビュー始めていこうかな。じゃあまずは簡単に自己紹介をお願いします!」
中村「中村慎吾、東京本部27期生で所属リーグはD2。茨城県出身の27歳。仕事は麻雀店従業員です。」
嶋村「茨城から出てきたんだよね。いくつの時に東京に引っ越してきたの?」
中村「25歳の時かな。」
嶋村「全然最近だね。ちなみにそれは、麻雀プロとして生きていくと決めての上京?」
中村「いや、プロ試験を受ける前だよ。それと茨城は関東だからね。東京へ出るのに上京とか言わないから。怒られるよ。」
嶋村「麻雀プロになろうと思った、大きなきっかけはあるの?」
中村「当時働いていた麻雀店に常勤の麻雀プロがいて、その人の影響が大きいかな。
麻雀プロの世界がすごく魅力的に感じたんだ。って言うかさ、さっきから必死にメモっているけど、
インタビューなんだからボイスレコーダーを使えば良くない?持ってきていたよね?」
嶋村「うーん…中村君、すごく滑舌が悪いから、ボイレコだと録れないかもと思って…」
中村「そんなわけないでしょ!そもそも俺、滑舌悪くないし!」
嶋村「いや、かなりのものだよ。早口だし噛みまくるし喋りながら笑い出すから…
正直、こないだの決勝戦でも、発声がちゃんと出来るか心配してハラハラしたよ。」
中村「麻雀中の発声って、ポンとかツモの二文字じゃねぇかよ。」
嶋村「センサンビャク・ニセンロッピャクとかの長い発声もあるからさ。」
中村「長くないよ!余計な心配だよ!」
嶋村「冗談だよ。メモは念のためだよ。」

アルコールが入っているせいか、今日の中村慎吾はいつも以上に滑舌が悪い。
ボイスレコーダーではなくメモを主体にしていて本当に良かった。

嶋村「麻雀は毎月どれくらい打っているの?」
中村「お店やセットで打つのと、公式戦で打つのを足せば、200半荘くらいは打っているかな。
それプラス、3人麻雀やネット麻雀も打つし。」

嶋村「けっこう打ち込んでいるね。」
中村「日頃から牌にたくさん触っておくことは大事だからね。瀬戸熊さんも『20代のうちは、とにかくボロボロになるまで麻雀を打て』って昔ブログで書いていたし。」
嶋村「なるほど。じゃあ次の質問だけど、尊敬するプロは?今ちょうど話に出た瀬戸熊さんかな?」
中村「もちろん瀬戸熊さん。何よりも麻雀がカッコイイ。人柄も素晴らしいし。尊敬もだけど目標かな。
いつかあの人みたいな麻雀プロになりたい。」

嶋村「瀬戸熊さんには憧れるよね。さて次の質問、趣味は?」
中村「プロレス観るのが好き。あと将棋かな。」
嶋村「中村君、将棋やるの?」
中村「たいして強くはないけど、将棋は小さい頃から続けているよ。毎週日曜のNHKの将棋番組はかかさず録画しているし。それに、将棋ってどこか麻雀に通じる部分があるよ。」

確かに、将棋や囲碁の上級者は麻雀も強いという話は良く聞く。実際、将棋のプロ棋士の方たちの中にも雀豪は多い。中村慎吾の麻雀の強さの基礎力となるものも、幼い頃から慣れ親しんだ将棋によって培われてきたものなのかもしれない。

嶋村「いつ将棋から麻雀にシフトチェンジしたの?」
中村「麻雀の楽しさに気づいたのは20歳くらいかな。でも、その頃はまだ仲間内だけのいわゆる家庭麻雀みたいなものだし、本格的に麻雀を打つようになったのはもう少し後かも。」
嶋村「そういえば、今まで聞いたことなかったけど、中村君は20歳前後の頃は何をしていたの?学生?それとも働いていた?」
中村「探偵の仕事をしたくて、探偵養成の学校に通っていたよ。卒業してから勤務にも就いていたし。」
嶋村「探偵?養成学校?え?なにそれ?勤務にも就いていた?探偵事務所とかで働いていたってこと?」
中村「あ、ゴメン。その話は今度のエッセィに自分で書くから今回は触れないで。インタビューはチャンピオンズリーグ決勝の話を中心で行こうよ。」
嶋村「出し惜しみ?決勝の観戦記担当は北野さん(北野由実プロ)だから、きっと凝った内容になっていると思うし、このインタビューは、プライベート中心で行こうかと思ったんだけど…」

前職が探偵だったという人に出会ったのは生まれて初めてだ。しかも目の前にいる男は、探偵という職業のイメージからあまりにも遠くかけ離れている。俄かには信じがたい話ではあるが、後日掲載される彼のリレーエッセィを楽しみにしておこう。

嶋村「じゃあ決勝の話を聞こうかな。中村君は今回がタイトル戦の初決勝だったわけだよね?
やっぱり緊張した?」
中村「始まる前はそれなりに緊張していたけど、いざ闘牌開始しちゃえば自分の世界に入れるよ。
自然体で麻雀を打てていたんじゃないかなと思う。嶋村さんから見てどうだった?」

嶋村「始まる前は明らかに硬かったね。対局前のコメントも弱気だったし。いつもはお喋りでお調子者の中村君なのに、借りてきた猫みたいに大人しくなっていたよ。」
中村「そうかなぁ。自分だとわからないね。コメントも弱気だった?普段通りの麻雀を打ちます、とか決勝まできたら後はもう4分の1です、とか言ったような気もするけど。」
嶋村「負けてもいい、みたいなこと言っていたよ。」
中村「さすがにそんなことは言わないよ。ちゃんとしたコメントしたよ。間違いない。」
嶋村「観戦記がアップされたら中村君のコメントも載るだろうし、その時にわかるよ。」

後日掲載された観戦記によると、中村のコメントは「トーナメントは負けて元々の気持ちで臨んだら、ベスト8まで非常に恵まれた展開で勝ち進むことができた。昨日で力を出し切ってしまったから、もう今日は4位になっちゃうんじゃないんですかね。」とある。

嶋村「決勝の相手について何か思うことはあった?対策を練ったりとかさ」
中村「3人とも明らかに俺より格上だし、そういう意味じゃ開き直ってぶつかっていけるよね。対策は特に立てなかったよ。」
嶋村「経験や技術の差は別として、今回の3人だと中村君はスタイルの問題で戦いづらいかなと思ったんだよね。」
中村「ああ、みんな門前手役派だもんね。俺はどちらかと言えば仕掛け多用派だし。それは確かに思ったけど、だからって相手によって打ち方を変えたりはしないよ。普段通りの麻雀を打つことが大事だし。嶋村さん記録係として俺の牌譜を採っていたじゃん?いつもの俺の麻雀だったでしょ?」
嶋村「そうだね。手組みもリーチ判断も、仕掛けも押し引きも中村君テイストな麻雀だったよ。よく場況が見えているなぁと感心する局面もあったし。2回戦目のオーラスが特に良かった。吉田幸雄プロのリーチに2をビタ止めしたよね。」

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中村「もちろん一点読みしたわけじゃないよ。マンズの4~7、ピンズの下、ソーズの1~6を引いたら即オリようと思っていたから。」

押し引きの判断は難しい。中村を凄いと思ったのは、当たり牌を止めたことにではない。そこまで組んでいた手を、逡巡なくノータイムで諦めたことにである。日頃から、実戦でかなりの打荘数をこなしていることが、こういった場面で如実に現れる。

嶋村「4回戦目の開局で、直さん(吉田直プロ)の親リーチに、ドラの四万で放銃したよね。
あそこでの12,000点は、かなり痛かったと思うけど、内心どうだったの?」

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中村「何も思わないよ。行くべき手で勝負して放銃しただけだし。はい次の局、って感じ。」
嶋村「でも、実際あの12,000点で優勝は遠のいたわけだからね。本当は膝ガクガクなってたんじゃなくて?次の局は、気持ち打牌もゆっくりになっていたようにも見えたけど。」
中村「ノーダメージだよ!瀬戸熊さんの言葉で「真っ直ぐ行っての放銃は致命傷にならない。点棒も後で返ってくる」っていうのがあるんだけど、俺も本当にそう思う。」
嶋村「終わってみれば、4回戦も浮きだったからね。それにしても中村君はホント瀬戸熊さん大好きだよね。」
中村「尊敬しているプロだからね。最初の頃は、嶋村さんたちが瀬戸熊さんに雑魚軍団(※)って言われてからかわれているのも羨ましかったし。」

(※)リーグ戦では芽が出ず、集まればお酒ばかり飲んでいる私の周りのグループに対して、瀬戸熊プロが叱咤激励を込めてつけてくれたネーミング。おそらく軍団長は私。今回の中村慎吾を始め、雑魚軍団という名前のわりにはタイトル戦ではなかなか強かったりする。

嶋村「これで中村君は副軍団長だね。話を戻すけど、優勝だと思ったのはどの辺りから?」
中村「それはホント最後の最後だよ。麻雀の怖さは良く知っているし、途中で浮かれてられないよ。」
嶋村「吉田幸雄プロに、瞬間トータルポイントで逆転された時とか、奥歯ガタガタ鳴らしていたもんね。」
中村「鳴らしていません。嶋村さんが思っているより、俺メンタル強いからね。」

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酒も進み上機嫌の中村慎吾。
話す時に、人を指差すのはやめなさいと、以前から何度も注意しているのだが直らず。

嶋村「終わってみれば、決勝5回戦全てプラスの完勝劇だったよね。運にも恵まれていたけど内容も良かった。2年目の新人とは思えない麻雀だよね。普段から強い人たちに稽古をつけてもらっているっていうのも大きいのかな?」

中村「大きいよ。最近だと山井さん(山井弘プロ)やウッチーさん(内川幸太郎プロ)にセットで胸を貸してもらっているし、トーナメント前に相沢さん(相沢かおるプロ)と直さん(吉田直プロ)に調整セットを組んでもらって、俺の麻雀のダメなところを色々と言ってもらえたのも勉強になった。
強い人、巧い人と打つのは本当にためになるよ。」

通常、新人プロの稽古相手といえば、同期、もしくは近い代の先輩くらいである。日頃からベテランプロと接する機会の多い中村は、環境に恵まれているとも言える。ただ、その恵まれた環境は自然と出来たものではなく、中村自身が作り上げたものだ。自分から積極的に先輩プロに稽古を頼み、観戦可能な決勝や、上位リーグの対局はほぼ全てを観に行き、またどういった集まりのイベントや飲み会にも参加し(呼ばれてなくても)顔を売り人脈を広める。「ほんとコイツはどこにでもいるな」となかば呆れるほどである。

嶋村「ウッチーさんや直さんの名前が出て思い出したけど、中村君もその2人みたいに、ゆくゆくは麻雀教室の講師もやりたいって言っていたよね?」
中村「そう!今はまだプレイヤーとして基礎力を高めていくべき時期だけど、いずれは教室を持つ講師もしたい。競技者としてだけじゃなく、もっと総合的に麻雀プロとして活動していきたいんだ。」
嶋村「中村君のそういうところは本当に尊敬出来るよ。口で言うだけじゃなくすぐ行動に移すしね。ただ、講師の仕事は中村君には向いてないと思う。滑舌悪いから、生徒さんは話についてこれないよ。」
中村「滑舌悪くないからね。こないだのニコ生の放送でも、緊張していたけどちゃんと喋れていたし。
観てないの?」

嶋村「本当かなぁ。」

時間は終電近くになり・・

嶋村「そろそろまとめに入ろうかな。中村君は早くにタイトルをひとつ獲れてしまったわけだけど、今後の目標としては?」
中村「まずはCリーグ以上に上がりたいね。特別昇級リーグの出場権も得られたわけだし頑張るよ。それとグランプリMAX!こんなチャンス、今後もう無いかもしれないからね。勝ち上がっていきたい。」
嶋村「今年のグランプリMAXは、俺も新人王枠で出るから、中村君に頑張ってとは言えないなぁ。」
中村「人間が小さいねぇ。そうそう、新人王戦も次が3年目でラストチャンスだから絶対に勝ちたい。
もし獲れたら、今度は女の子にインタビューを受けたい。」

嶋村「打ち上げの席で、インタビュアーが俺に決まった時も不満そうだったよね。女の子が良かったって。残念だけど、中村君が勝ったらまた俺が書くよ。さて、今日は時間割いてくれてありがとね。」
中村「いえいえ。」
嶋村「最後に、この記事を読んでくれている人たちに何か一言もらえるかな?」
中村「今回優勝出来たのは、セットを組んで頂いた先輩方や応援してくれた仲間達のおかげだと思っています。まだまだ拙い麻雀だと思っているので、これからも勉強する姿勢を忘れず、更なる高みを目指して頑張っていきます。」

先程も少し触れたが、中村慎吾は自身を成長させることに対して努力を惜しまない。
純粋な雀力の向上はもちろん、麻雀プロとしての総合的な能力を高めるために。言葉は悪いがその姿勢は「貪欲」とも言える。今時の若者風といった外見に飄々としたキャラクター、ともすれば軽そうにも見られてしまう中村であるが芯は強く熱い。
今回のチャンピオンズリーグ優勝によって、中村の前にはたくさんの可能性が開けてくることだろう。
そして、このチャンスを無駄にするような中村でもないだろう。

これからの中村慎吾、要注目ですよ。