プロ雀士インタビュー

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第95回:前原 雄大
「これを伝えていくのが、”伝統”でもあるから・・・」

2013/06/27
インタビュアー:杉浦 勘介


2003年9月某日、今でこそ通い慣れた対局会場に初めて足を踏み入れた私は、ほどよい緊張の中、プロテストの実技試験に臨んでいた。

『あなたは頑張ればモノになるかもしれないな~・・・。』

ふと、背後から声をかけられた。
それは、その名の如く雄大なたたずまいを初めて見上げた瞬間でもあった。

私の立場から前原との出会いを記すならば、さらに4年ほど遡らなくてはならない。
大学に入ったばかりの私は、前原の「勝手にしやがれ」というエッセィを月刊誌で読み、一瞬にしてその世界観に惹き込まれた。
以前のインタビューで、佐々木寿人プロが、「このエッセィとの出会いが私の人生を大きく変えたといっても決して大げさではないような気がする。」と書いているが、当時を知る麻雀人ならば、”勝手にしやがれ”と聞いて、沢田研二ではなく、セックス・ピストルズでもなく、このエッセィを真っ先に思い浮かべる人も少なくないだろう。
たった今、思い出したようにノスタルジアを感じている読者もいるかもしれない。
麻雀界においては、まさしく伝説の連載と言っても過言ではないと思う。

その風采以上に大きな存在を背中に感じる。
そう認識してからの試験や面接の内容はほとんど覚えていない。
もしかしたらと思い、当時のことを前原に聞いてみたことがある。

前原「プロテストの時でしょ?覚えてないなぁ・・・。」

自意識過剰がなんとも恥ずかしくなってくる。
前原にしてみれば、毎年多くの受験生を見ているわけなので、当然といえば当然のことなのだ。

『前原さんが第7回名人戦を優勝いたしましたので、インタビュアーをお願いしたいのですが・・・。』

2013年5月某日、編集部から一本のメールが届いた。
実は少し前に、前原からインタビューの話は投げかけられていた。

前原「いずれ、正式に依頼が飛ぶと思うんだけどね・・・。今度何か取ったら、インタビューは勘介にお願いしようと思っているんだよ。」

杉浦「私にですか?」

前原「というのも、つい最近またアレを読んだのよ。」

アレというのは、私が以前担当していた中級講座のことである。

前原「やっぱりよく書けているよ。膨大なエネルギーと時間を使ったでしょう?」

アレの話になると、前原は毎回同じようにほめてくれる。
ほめられてうれしい気持ちはもちろんあるが、恥ずかしい気持ちの方が強いというのが事実である。
文章を読むのは好きだが、書くのは苦手だし、今自分で読み返してみても形式ばってわかり辛い。

杉浦「努力はしましたが、前原さんのような文才はないですから・・・。」

愚かな私は、こう答えるより他に術を知らない。

前原「バカだな~(笑)懸命に尽くすってことがすでに1つの才能なんだから。才能ってことなら私もね、自分で人をめっけんのうまいって思ってるとこあるのよ。勘介にしてみたって、入ってきた時の記憶はともかく、アレを読んで会いたいな~って思っていたら、やっぱり会えるわけだから。ということで今度のインタビューは、労を惜しまないであろうあなたに(笑)」

とにもかくにも、私が前原の連載に出会って14年、途中で前原も私を見つけてくれた。
すぐに編集部に承知の旨を連絡し、インタビューの日程を調整した。

ある日の勉強会を終えて・・・。
インタビューを控えた我々は、中央線の快速に乗り込んだ。
インタビューは前原の自宅で行う予定になっている。
ところが、目的地まであと2駅というところで、前原はおもむろに電車を降りた。
周りには仲間達の笑顔がある。

前原「ここで降りたら帰りはタクシーになっちゃうじゃないか~(笑)」

前原自身も、なぜだかわからないが満面の笑みである。
というわけで、仲間を交えての酒席にて、インタビュー開始。

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前原雄大プロと杉浦勘介プロ
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同席した宮内こずえプロと

杉浦「まずは、名人戦にあたって準備したことはありますか?」

前原「とにかく早起き!と、ゴミ出しね(笑)それと、数年前からモンドTVをよく観るようになったな~。今50代で一番モンド観ているのは私だって言い切れるよ。」

杉浦「どんなところに注目して観るんですか?」

前原「”人を識る”っていうことだね。こういう局面ならこういう対処の仕方をするんだな~とかね、相手の思考だったり、何より”背景”だよ。全く同じ局面は訪れなくても、同じようなパターンは必ずあるから。打ち手の輪郭が生み出す局面という意味では、麻雀ってそれほど種類はないと思うよ。」

杉浦「今回の名人戦では、予選7戦・決勝2戦の9回戦すべてオール連対での優勝!まさに圧勝でしたね。」

前原「そうなの?それは今聞いて初めて知ったな~。私の場合、主導権を取りに行く麻雀で、踏み込みも深い方でしょ?だから、怪我をすることもあるんだけど、そういう場面が少なかったというのは、今回は全体を通してツキに恵まれたっていうことなんだろうね。」

杉浦「終始安定した戦いぶりでしたが、実際には何か意識したことはありますか?」

前原「今回はファン牌の一鳴きを極力封印したんだよ。」

杉浦「なぜですか?」

前原「これも研究した結果導いた方法論なんだけど、主導権を取りに行って仕掛けた時、やっぱり打点に折り合いがつかないのよ。それでも私の場合、性格上、全部行っちゃうじゃない?(笑)そのやり方は、やっぱりリスキーだよ。一発・裏ドラのあるモンドルールは、とくに面前を主体にした方が勝ちにつながりやすいよ。」

杉浦「そういえば、ダブ東のポンテンを取らずに、すぐにテンパイを入れてリーチをかけた局もありましたね?」

前原「そうそう。もちろん、手役や打点が絡む場合や状況判断で動くことはあるよ。でも、基本テーマとして、”きちんと放銃してきちんとアガる”っていうのがあるから、目の前の手牌は確かなものでなければならないっていうことかな。」

杉浦「その姿勢が、優勝という最高の結果につながりましたね?」

前原「出た結果については、僥倖だったと思う。勝った時だって反省は尽きないよ。」

杉浦「どのような反省点があったのですか?」

前原「名人戦に限ったことではないけど、自分の対局をテレビで観ていて思うのは、打牌が遅い!」

杉浦「ところどころではありますが、時間を使うシーンはありました。でも、迷っているというより、損得ではない”何か”に身を委ね、殉ずるような・・・。」

前原「どうしてわかったの!?カメラが回って卓に着くでしょ。それから、いつも自分で自分に問いかけてるっていうところはあるよ。”お前は何者なんだ?お前は前原雄大だろ?”って。
”強くありたい自分”と”勝ちにこだわる自分”が混在していて、それぞれが違う答えを導く時があるんじゃないかな~。」

杉浦「なるほど。」

前原「前に”ライバルは誰ですか?”っていう質問があって、すぐに答えが浮かばなかったから、”マエハラユウダイ”ってカタカナで出したことがあったのよ。もちろん、もう1人の弱い自分を想定しているんだけどね。画面越しに”マエハラユウダイ”が出てきた時は、やっぱり反省するよ(笑)」

杉浦「掲載時には牌譜再生も使えるのですが、印象深い局や、優勝につながった局などはありますか?」

前原「う~んどうだろう・・・。タッキー君どう?」

前原は、隣にいた滝沢和典プロに意見をもとめた。
滝沢プロは、魚谷侑未プロと共に、決勝ステージのゲスト解説を務めている。
きっと、インタビューへの着手を滝沢プロのいる酒席に決めたのも、前原なりの配慮なのだろう。

滝沢「七対子の局なんかどうですか?」

前原「あ~あれね!」

前原は、すぐに了解したように相槌を打った。
決勝最終戦、わずか3巡で倍満をアガった局である。

前原「第一打がポイントになってるよね。」

滝沢「あの一索は手筋ではなく、手順と言ってもいいかなと。」
杉浦「詳しくお願いします。」

前原「まず、ドラを2枚持った攻めの七対子の1シャンテンとして考えた場合、序盤の捨牌はなるべくおとなしくするべきだよね。」

杉浦「五筒六万からの切り出しでは、読みの材料になってしまうからですね。」

前原「よって、第一打は一索九万の選択になるんだけど、ここにも差があるんだよ。」

滝沢「待ち牌になった時の差!」
杉浦「なるほど!後の六万切りを想定すれば、九万は待ち牌候補になるのか~。メンツ手の手順とは逆の発想で面白いですね。」

前原「それで、残して重なった五筒が裏ドラになったでしょ?これは感触あったな~。」

杉浦「このアガリで優勝がグッと近づきましたね。」
滝沢「この局は取り上げるべきだよ。」

前原「そういえば、タッキー君のマスターズ観戦記はよかったね~!」

その後、話はいろいろな方向に脱線し、宴もたけなわとなったところで閉店の時間に。
店を出て乗り込んだタクシーの車中は、もっぱら前原の家族の話題だった。
「息子が・・・義娘が・・・」と話す前原は、目を細めて至福の表情を浮かべている。
「超獣」でも「歌舞伎町のモンスター」でも「地獄の門番」でも「閻魔大王」でもない、1人の優しい父親の姿がそこにはあった。

自宅に着くと、まず前原は私の布団を用意してくれた。
数度泊めていただいたことがあるが、以前に比べると、部屋も台所も格段にきれいになっている。
そこには、温かい家庭の日常があふれていた。

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ご自宅にて

前原「まだ寝ないでしょ?モンドの録画あるから観る?」

杉浦「はい。是非解説をお願いします!」

前原「私が喋らなくても、タッキー君と魚谷さんの解説が的確だから。2人とも打ち手の思考をよく理解しているよ。ホントよく見てんな~って感心するね。」

杉浦「これは決勝の初戦ですね。」

前原「この東場は苦しかった。金子さんの4,000オールで開局するんだけど、これが6,000オールだったらもっとキツかったかもな~。状態が悪いのはわかっているけど、何とか前に進もうとして、もがき苦しんでいる感じだね。」

杉浦「南1局が1つの分岐点でしたよね。」

前原「配牌をもらった瞬間は、もちろんアガれる気はしてないよ。」

杉浦「カン二筒を入れて、マンズが伸びて・・・。ツモは悪くないですよね?」

前原「ストレートに手を進めてはいるけど、ツモに踊らされているのかな~という感じもあったよ。」

杉浦「そして7巡目、三色と一通とドラの選択になりました。」

前原「ここで七筒を放したってことは、やっぱり打点を見ているんだろうけど、九万は2枚切れているし、今振り返っても微妙かなって思う。どちらにしても、状態がよろしくないわけだから、このまますんなりテンパイが入るとは思ってないけどね。」

杉浦「このタイミングで、近藤プロが白をポン。さらに、親の金子プロからリーチが入りました。」

前原「牌譜では伝わらないことだけど、この時、金子さんはかなり時間を使ってのリーチだったのよ。」

杉浦「映像で観るとその間がよくわかりますね。」

前原「金子さんは正直な方だから、このリーチに読みを入れるとしたら、やっぱり待ちはピンズなんだろうな~って。カン五筒とかドラ絡みが本線だね。もう1つ、別の角度から見た場合、近藤さんの仕掛けに対応を要求する意図もあるんだろうな~って思ったよ。」

杉浦「リーチを受けた近藤プロは、現物の一索八筒と手出しを入れていますね。」

前原「金子さんの思惑通りに進んだな~って感じ。近藤さんも、実際にはテンパイを維持しているんだけど、発を切ったのは、この手出し一索に対応を感じているからだね。」

杉浦「たしかに、発は直前までロン牌でした。」

前原「次に引かされたのが五筒でしょ。やっぱり簡単じゃないなと(笑)」

杉浦「それでも、さらに七筒を引き戻したところでリーチに踏み切ります。」

前原「読みを入れたピンズの本線と準本線を両方吸収したわけだから、リーチと(笑)これをハイテイでアガって裏ドラが3枚でしょ?もうマンガの世界だよこれは(笑)」

杉浦「局面をしっかり読めているからこそのアガリだと思います。」

前原「オマエはホントにマジメだな~(笑)」

杉浦「でも解説がなかったら、遅い・安い・待ちが悪いの三拍子揃った手で、行き当たりばったりに親のリーチと勝負しているようにも捉えられかねませんよね。」

前原「そういえば、さっき古橋も何か言ってたよな~。」

杉浦「事務局でも牌譜を作成しながらひっくり返ってました(笑)」

前原「よく間違えられるんだけど、こういうリーチはいわゆる”ガラリー”じゃないんだよな~。」

杉浦「がらくたリーチのことですね。それでは、”ガラリー”とはどんなリーチなのでしょうか?」

前原「”ガラリー”の定義としては、まず第一に、先手を取っているということだね。先手というのは手牌進行に限らず、精神的にも優位に立っているということも肝心だよ。そして、いわゆる悪形とされる待ちなんだけど、山に残っている目算があることも条件。もちろん、主導権を主張して相手に対応を期待するという意味もあるけど、一方で、状態を計るのにも”ガラリー”は有効な手段だと思う。出た結果によって、自分の立ち位置を知るみたいなね。」

杉浦「対応してもらった結果、アガることができれば最高なわけですね。」

前原「観ている方は、”何この待ちは?”なんて思うんだろうけど、それをツモアガることに、1つの快感はあるわね(笑)」

杉浦「快感ですか・・・。」

前原「あるある。それはある(笑)でも、今回のリーチは先手でもないし、逆に対応を余儀なくさせられた形から追い付いて、六筒が山にある確信もなかったからね。結果は最高だったけど、何でも突っ込んでいけばいいってわけじゃないから(笑)」

杉浦「そもそものところ、”がらくた”とは何なんですか?」

前原「もう遅いから・・・。というより、もう朝だから(笑)その話は起きてからということに。」

杉浦「了解です。おやすみなさい!」

早起きが日課というわりに、前原の寝起きが悪い。
電話を鳴らしても起きないので、無礼は承知で部屋に入ると、ようやく目を覚ました。

前原「勘介おはよ~。よく寝られた?」

何気ない気遣いの言葉が、既視感をいざなう。
前原と一緒に過ごし、朝まで語り明かしてしまうのは毎度のことだ。
インタビューということは抜きにしても、今のところ例外はない。
そして、明くる日の第一声は決まってこの言葉なのだ。
いつもは眠い目をこすりながら虚勢を張ってうなずくのだが、この日はなぜだか寝覚めがよかった。

杉浦「おはようございます!熟睡できました!」

前原「ところで今何時?」

杉浦「まもなく3時です・・・。」

我々は、急いで支度を済ませ、出発した。
前原が、「これだけは忘れるわけにはいかない!」と大切に抱えているのは、義娘さんに返却を頼まれたクレヨンしんちゃんのDVDである。
それでいて、「あれっ!携帯がない!」と言ってタクシーを停め、大騒ぎを始める前原を見て、本当にかなわないな、と思う。
携帯は、その雄大なる懐に、しっかりと収まっていた。
これから生放送の収録があるという前原に、打ち合わせ前の時間を融通していただき、インタビューの締め括りとなった。

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杉浦「まずは昨日の続きから、”がらくた”についてお願いします。」

前原「”がらくた”の根底にあるのは、”引かない”っていう姿勢、それから、”常に戦っている”ということかな。これは、自分の在り方や信念と言ってもいいかもしれない。観ている人からすれば、多少強引な戦い方、勝ち方に見えるかもしれないけど、そういう姿勢を評して、森山会長が、”がらくたで在り続けるのは大変だ”と仰ったことがチームの出発点になったんだよ。」

杉浦「退くことを許されないって、キツいですよね?」

前原「私にしたって、ヒサトにしたって、知識はそれなりにあるつもりなのね。ただ、その知識におぼれない、みたいなね。局単位で見れば損な突っ張りであっても、対人間のゲームである以上、”こいつは突っ込んでくるぞ”って思われる存在でありたいし、その方が相手も嫌なものだと思う。それに観ている人だって、リーチが入ったらベタベタベターとオリて、山との1対0の勝負になるのってつまんないでしょ?」

杉浦「もとめられるのは、やはり、ぶつかり合いだったり、ギリギリの攻防なんですよね。」

前原「どの世界であれ、”安全で”、”確実に”、成功するビジネスなんて存在しないんだから。麻雀も同じで、常にリスクは背負っていかなくてはならないって思ってるよ。こういう戦法は、外側から見ればハイリスクに映るんだろうけど、本人達からすれば、精神状態さえブレない限り、そんなにひどいことにならないだろうっていう見込みはあるのよ。ヒサトがどう思っているかは、聞いてないからわからないんだけどね(笑)」

杉浦「ヒサトさんも、新著『人生勝たなきゃ意味がない』の中で、前原さんと初めて同卓した時、リーチのみの悪形待ちを、悠然と一発でツモアガる姿に本物のプロを見たって書いていますよね。」

前原「”牌は人なり”って言葉に表されているように、生き方と麻雀って似ているところがあるから、きっと根本的に共通する、共鳴する部分があるんだろうね。」

杉浦「そんな根本の部分にある、”麻雀”への思いを聞かせてください。」

前原「これが答えになるかわからないけど、最近、麻雀と恋愛って似ているとこあるなって思うのよ。私が現在、恋をしているという意味ではないよ(笑)相手を好きになればなるほど、距離が近づけば近づくほど、わからなくなる。もちろんわかる部分も増えてくるんだけどね。」

杉浦「少しわかるような気がします。」

前原「これを麻雀に置き換えてみると、そこに存在しているのは、牌のメカニズムってことではなくて、その中に投影している自分自身なんだと思う。だから麻雀は、安易な言葉になってしまうかもしれないけど、”自分を知るためのツール”だとも考えられるわけ。私の場合も、麻雀を通して自分自身を知ったし、自分の弱さも知ったから。それで、弱い自分を消すことはできないけど、それを抱えながら麻雀と寄り添っていく、麻雀と戦っていくってことはできるんじゃないかなって思っているよ。」

杉浦「深イイ話ですね!ありがとうございます。」

前原「これで終わり?」

杉浦「はい。そろそろ打ち合わせの時間ですよね?」

前原「じゃあ最後に、後輩達へのメッセージを。」

杉浦「よろしくお願いします!」

前原「最近は、いろいろな場面で、メディアへの露出も増えているじゃない?」

杉浦「はい。麻雀界は急速に、”映像の時代”へと展開されていますよね?」

前原「そんな中で、若い人達が活躍していけばいいんだろうけど、”勝ちを追い求める”ことよりも、まずは”強くなること”を目指してほしいって思う。強くなれば、おのずと勝てるようになるから。不等号で表すならば、”強>勝”っていうことになるかな。全てを映像で撮られる以上、勝ったから強い(”勝>強”)っていう段階は過ぎているし、それはイコールでもないんだよ(”強=勝”)。」

杉浦「では、強くなるためにどうしたらいいのでしょうか?」

前原「当然ではあるけど、とにかく牌を握ること。それから、自分の長所を知ることだね。そうして、短所を矯正するよりも、長所を伸ばしていくことを考えてほしい。最後に挙げるならば、先輩からどんどん学んでいってほしいということ。連盟は教育の体制もしっかりしているから。森山さんにしても、荒さんにしても、全部を教えたい、みたいなね。それは、”麻雀の真理”だったり、”心の在り方”なんだけど、これを伝えていくのが、”伝統”でもあるからだよね。」

杉浦「普段教わっていることをうまく活かせないという、もどかしい思いもあります。」

前原「私は、”心の在り方”は同じでも、麻雀の表現方法はいくつあってもいいって思ってるのよ。その人にしか表現できない麻雀の彩りっていうものが、必ずあるはずなんだから。つまり、勘介は勘介の彩りを鮮やかにっていうことだよ。」

『頑張ればモノになる』

あれから10年、常に立ちはだかる大きな壁は、いまだ消えることがない。
いずれどこかに到達し、何かを捉える時がくるのだろうか?

前原の話を聞いていると、この壁についての認識が少し変わってくる。
読み切れない自分、押し切れない自分、変にバランスを取ろうとして崩れる自分。
悔しい思いをする時、おおよそ活躍する弱い自分自身。
前原は、”マエハラユウダイ”と付き合いながら、向き合いながら、常に戦っている。
もしかしたら、この壁は、乗り越えるためだけにあるのではないのかもしれない。

杉浦「彩りを鮮やかに・・・。今後の私の課題ですね。」

前原「いや課題っていうか・・・。”そのままの君でいて”みたいなところがあるよ。本当に(笑)」

杉浦「・・・。」