麻雀マスターズ レポート/第26期マスターズ ベスト8トーナメントレポート 小車 祥
2017年05月12日
第26期麻雀マスターズのベスト8トーナメントが夏目坂連盟スタジオにて行われた。
決勝という夢の舞台への階段もあと1つというところまで来た。
対戦カードは以下の通り。
A卓:村上淳(最高位戦)vs西野拓也(連盟)vs武藤武(連盟)vs四柳弘樹(連盟)
B卓:忍田幸夫(麻雀連合)vs矢島亨(協会)vs佐月麻理子(協会)vs松崎良文(連盟)
日本プロ麻雀連盟WRCルール(一発・裏ドラありの世界大会ルール)での対局。
同一メンバーで半荘3回戦を行い、トータルポイント上位2名が決勝へ進出となる。

A卓
1回戦(起家から、武藤・四柳・西野・村上)
東1局1本場、11巡目の四柳の手牌。












ツモ
ドラ
場にはすでに
が4枚切れていて、あまり嬉しくないテンパイに見える。
普段の四柳のイメージからも、ここはテンパイ取らずとする打
や
のツモ切りとなるかと思ったが、数秒考えた四柳は
を切りリーチを打つ。
この数秒間に何を思ったか定かではないが、このリーチを打つことで対戦相手がどう出てくるのかを早い段階で見ておきたいというのもあったのかもしれない。
ほどなくして
をツモ。1,000・2,000は1,100・2,100のアガリ。
東2局1本場、親の四柳がリーチを打ち1人テンパイで流局した次の局。
13巡目という遅い巡目に四柳がテンパイしてリーチ。












リーチ ドラ
安目ではあるものの、
を一発ツモ。裏ドラは
。
4,000は4,100オールの大きなアガリで四柳が抜け出す。

東4局、親は村上
まずは10巡目に武藤がリーチ。












ツモ
リーチの発生の後、ドラの
を切る。そのリーチ宣言牌を村上が仕掛けテンパイ。









ポン


さらに西野、仮テンのようなテンパイだったところから以下の勝負手になる。












ツモ
武藤の河には
が切られていて、スジの
を切るかと思ったが、西野の選択は打
であった。
ドラを切ってリーチした者よりも、ドラを仕掛けて勝負に出た親の村上の方を強くケアすれば、安全度は
よりも
の方が高いように見える河だったのは確かだ。
武藤の待ちが見えているこちらからは一瞬「ん?」と疑問に思ったが、よく見てみるとなるほど確かにそうかもなという繊細な選択を西野はしていた。
しかし想定の範囲内であったとしても、武藤のリーチに手役が絡んでおり、さらには裏ドラが
で8,000の放銃になってしまったことは、西野にとっては痛手となってしまった。

四柳リードの展開で迎えた南4局、村上の親番。
最初にテンパイを入れたのは西野。西野は現状4着目で3着目の村上とは1,300点差。












ドラ
西野はヤミテンに構える。そしてオーラス連荘して2着、トップと目指していきたい村上がリーチ。












リーチ
このリーチの直後、武藤もテンパイ。












ツモ

が村上の河に置かれていて、出ていく
もそこまで目立たない牌。
武藤はヤミテンを選択した。
西野が
をツモ切り、武藤が12,000をアガって1回戦が終了。
1回戦成績
四柳+40.7P 武藤+20.0P 村上▲19.2P 西野▲41.5P
2回戦(起家から、村上・四柳・武藤・西野)
東1局、親は村上。
1回戦で大きなリードを持った四柳が6巡目に先制リーチ。












ドラ
直後、村上がリーチ。












リーチ
しかしすぐに村上が
を掴む。裏ドラは
で、四柳8,000のアガリ。
東2局、四柳の親番。
10巡目に四柳がリーチ。












リーチ ドラ
同巡、武藤もテンパイ。












ツモ
は場に1枚。
は生牌。四柳の第一打が
だったので、どちらの選択も有力に見える。
武藤の選択は打
の
単騎のヤミテン。次巡
をツモアガリ。2,000・4,000。
1回戦ワンツーだった2名がリードを広げる展開で2回戦の序盤は進んでいく。
東3局、村上が1シャンテンから
を暗カン。










暗カン


ドラ

村上はここから
ではなく打
とする。
が2枚切れだということが要因だろうか。
10巡目、親の武藤がテンパイ。













裏ドラを2枚見られる状況であってもしっかりとヤミテンに構える。
ここで村上が
を引き入れ
待ちでリーチ。
そう、村上は1シャンテンで
を切っていなければ、ここで
が武藤への放銃となっていたのである。
2巡後、武藤が
を掴む。
は見た目にもかなり危なそうな牌。
がリーチした村上の現物で、自分は7,700のテンパイ。どうするか見ていたが、武藤は少考の後
をツモ切った。









暗カン


ロン
裏

裏ドラが4枚乗り、16,000のアガリ。
リードしている立場の武藤はオリる選択もあっただけに、結果としては最悪となってしまった。
ここまでかなり苦しい展開が続いていた村上だったが、ここに来てワンチャンスをものにした。
この瞬間、順位点も入れると2.8P村上が武藤を捲る。

南3局1本場、親は武藤。
村上はこの2回戦トップを取りたいところだったが、そうはさせなかったのは四柳。



ポン

ポン

ポン

ツモ
ドラ
3,000・6,000は3,100・6,100。
この2回戦の道中も、四柳はリードしている立場としての立ち回りをうまく見せていた。
その中でしっかりと大物手をアガリきり、自身のリードを大きく広げる。
そのまま四柳が2連勝。自身の勝ち上がりをほぼ確実のものとした。
2回戦成績
四柳+34.5P 村上+3.9P 武藤▲13.3P 西野▲25.1P
2回戦終了時
四柳+75.2P 武藤+6.7P 村上▲15.3P 西野▲66.6P
最終戦(起家から、西野・武藤・村上・四柳)
決勝行きのチケット2つの内、1つは四柳。
もう1つのチケットをめぐって武藤と村上が戦う。
そこに西野が大逆転を狙うという構図。
東1局、親は西野。
村上が6巡目に先制リーチを打つ。












リーチ ドラ
待ちも打点も良いとは言い難いが、やはり最終戦のギリギリの戦いではこういう手はリーチをしてアガリたいところ。
大量リードの四柳、特にリーチに対して安全牌もなく自然と手を進めて10巡目にテンパイ。













村上、この四柳のテンパイ直後に
をツモ切り8,000の放銃となってしまう。
東2局、親の武藤がアガリを決めて村上を引き離す。












リーチ ツモ
ドラ
2,600オール。

東3局3本場、追う立場となってしまった村上の親番。
南場にも親番は残っているとはいえ、ここは連荘して粘らなければならなくなった。
村上は深い巡目にテンパイ。













ドラ
場に
が1枚、
が4枚場に切れていた。そうじゃなくともツモって三暗刻になるシャンポン待ちにしたかもしれないが、
待ちにする理由がほぼなくなっていた。
自然とシャンポン待ちにしてリーチを打つ村上。
ならツモっていたが、これは致し方ないところか。
東3局4本場、村上のアガリ。












ロン
ドラ
2,000は3,200。
東3局5本場、村上は5巡目に十分な形の1シャンテン。












ドラ
しかし16巡目まで一切テンパイできないまま、役なしテンパイを取っていた四柳のツモアガリとなる。












ツモ
500・1,000は1,000・1,500のアガリ。
村上がテンパイさえできてリーチと言っていれば、おそらくこのテンパイは維持できていなかったであろう四柳の手。
村上は開けられた手牌を見てどう思ったか。
南3局1本場、大きな動きはないまま迎えた村上最後の親番。
村上は早い巡目で七対子に決めた手牌進行。ドラ含みの七対子1シャンテンで、良い単騎探しをしていたところだったが、10巡目にツモ切った
が四柳への放銃となる。












ロン
ドラ
2,000は2,300。
オーラスは全員ノーテンで終了し、リードを守り切った2名の勝ち上がりとなった。
最終戦成績
武藤+26.8P 四柳+11.3P 村上▲12.1P 西野▲26.0P
最終結果
四柳+86.5P 武藤+33.5P 村上▲27.4P 西野▲92.6P
A卓決勝勝ち上がり
四柳弘樹 武藤武
西野「地方リーグチャンピオンシップの時に映像対局の緊張がありましたが、今回は自分らしく麻雀が打てたのでよかったです。また出直します」
村上「後悔はないですね。精一杯やりました」

B卓
1回戦(起家から、松崎・矢島・忍田・佐月)
東1局、親の松崎にテンパイが入る。












ドラ
ヤミテンに構えた松崎。次に忍田が以下のテンパイ。














選択肢はいくつかある中、忍田は強気な
切りリーチを選択。
忍田の河には
が切られていて
はスジになっていたが、宣言牌が
ではその効力は弱いように思う。
忍田自身そんなことは当然わかっている。それでもこの開局に最高打点でリーチすることに、意味を持たせようとしたのかもしれない。
すぐに
を掴んだ松崎。現物の
と入れ替えることはできたが、それだと三色が崩れてしまう。
さらにはリーチしている忍田の河には
が切られていた。
切りリーチで
が危ないとわかっていながらも、松崎は
をツモ切った。
裏ドラは
で8,000のアガリとなった忍田。
それぞれの思惑、思考が1つの結果に繋がっていく様が、1回戦目の1局目から名勝負の予感をよぎらせた。
![]() |
![]() |
東3局、親の忍田。
その証拠に……。これは東1局の最後の文章に繋がる言葉である。
忍田が12巡目テンパイ。












ドラ
タンピン確定三色をヤミテンに構える。
その巡目の松崎の手牌。












ツモ
もちろん本人にはわからないが、
が放銃となってしまいそうな手牌だっただけに助かったツモ。
そのままドラを切りリーチを打つ。松崎は
を切っていて、場にマンズは安かった。
一発で忍田が
を掴む。現物の
とスライドして入れ替えることはできたが、忍田は
をツモ切る。
裏ドラは
で8,000の放銃。
その証拠に……まるで東1局の人を入れ替えただけのような出来事が起こる。
親の確定三色ヤミテン。スライドできたがしなかった牌での放銃。
いきなり展開がドラマチックである。
東4局、親の佐月が先制リーチ。












ツモ
ドラ
裏
4,000オールで1人抜け出す。
東4局1本場。
松崎は仕掛けを入れてドラ3のテンパイを入れていた。









ポン

ドラ
そこへ矢島がリーチ。












リーチ
松崎、一発で
を掴むがこのテンパイでは止まらない。
矢島、8,000は8,300のアガリ。

南3局2本場、親の忍田がリーチ。












リーチ ドラ
以下、矢島の手牌。












ツモ
矢島は

を河に切っている。忍田のリーチへの現物は
のみ。
がスジだった。
1枚しかないが現物を切る手もあるし、
を切って迂回する手もあると思う。
矢島は1シャンテンキープの打
。矢島の目から
が3枚見えていてワンチャンス。仮に放銃してもドラではない方で安目になる可能性が高い。確かにその選択もある。
しかしこれが忍田に高目の手痛い放銃となってしまう。裏ドラは
。
12,000は12,600。
1回戦は佐月が逃げ切る形で終了。
1回戦成績
佐月+30.6P 忍田+16.4P 矢島▲15.5P 松崎▲31.5P
2回戦(起家から、矢島・忍田・松崎・佐月)
東1局、親は矢島。
10巡目、最初にテンパイしたのは松崎。












ドラ
は場に2枚。
は場に1枚。松崎はヤミテンに構える。
次に忍田が仕掛けてテンパイを入れる。









チー


続いて親の矢島も仕掛けてテンパイを取る。









チー


更に佐月もポンをしてテンパイ。なんと全員テンパイとなる。









ポン


流局が近づいてきた頃、あとは決着か流局を待つばかりかと思ったが、忍田がさらに
をポンして打
とする。






ポン

チー


忍田の目から
は4枚見えていて、場に1枚切られている
は絶好の待ちに見える。
三色を見切ってあえて
単騎に受けたことには当然理由があるのだろう。
ピンズの一色手をやっていそうな松崎が少考して
を切った。松崎が
を2枚以上は持っていそうに見える。全員が前に出てきているこの状況で
がここまで出てこないのは、おそらく松崎が固めて持っているからではないか。だとすれば場に2枚切れている
単騎の方がアガリが見込めそうな上に、危なそうな牌を持ってきても1巡はほぼ安全にテンパイをキープすることができる。
その仕掛けを忍田が入れなければ忍田がツモっていた
を松崎がツモ。
結果は偶然だが、繊細な思考が放銃を回避する。












ツモ
1回戦ラスの松崎は3,000・6,000のアガリから2回戦を気持ちよくスタートする。
南1局、東場は流局が多い展開。
佐月はピンズの一色手で仕掛け、自分のツモでテンパイを入れた。









ポン

ドラ
そこに2つ仕掛けを入れていた忍田から
が出る。
佐月、8,000のアガリ。

南3局、矢島が8巡目にリーチ。












リーチ ドラ
追いついた忍田もリーチ。












リーチ
軍配は矢島に上がる。
を忍田からロン。5,200のアガリ。
南4局、親は佐月。
13,200点持ちで苦しい忍田。3着の矢島との差も15,200点と、跳満ツモでも変わらない。












リーチ ドラ
それでも忍田は少しでも素点を稼ぐため、上記手牌でリーチを打つ。
しかしここはアガリまでは辿り着けずに流局。
最終戦は佐月が抜け出し、松崎・忍田・矢島の三つ巴となった。
2回戦成績
松崎+26.6P 佐月+9.8P 矢島▲7.6P 忍田▲29.8P
2回戦終了時
佐月+40.4P 松崎▲4.9P 忍田▲13.4P 矢島▲23.1P
最終戦(起家から、忍田・矢島・佐月・松崎)
東1局、矢島が4巡目に先制リーチ。












リーチ ドラ
10巡目の佐月の手牌。












ツモ
ここまでは比較的安全な牌を切りながら立ち回ってきた佐月だったが、ここで不要牌は全て無スジになる。
ドラドラの1シャンテンとはいえ、リスクは取らずに現物である
や
を切る手もある。
しかしここで佐月は
をツモ切り。自分の目からドラが2枚見えていて、矢島のリーチは安い可能性もあるという判断か。佐月、ここは強気に出る。
その気持ちに呼応するかのように次巡の佐月のツモは
。さらに矢島に無スジの
を切って追っかけリーチを打った。
矢島からすると「君は大人しくしててくれよ」なんて気持ちになったかもしれない。
しかしそこは勝負の世界。それぞれがリスクやリターンと対話しながら戦っているのだ。












リーチ ロン
裏
佐月、矢島から5,200のアガリ。これで佐月はさらに盤石な位置へ。
東4局、完全に追う立場となった矢島が2巡目テンパイ。












ドラ
ここはヤミテンとし、ツモ
で打
、ツモ
で打
のリーチを打つ。












リーチ ツモ
裏
1,300・2,600。
南2局、松崎が先制リーチを打ち、ツモアガリ。












リーチ ツモ
ドラ
裏
1,300・2,600のアガリで優位に立つ。
南4局1本場、供託のリーチ棒が1本。親は松崎。
点数状況は以下の通り。
佐月31,300
松崎30,600
矢島29,200
忍田27,900
松崎は現状トータル2位だが、最低でも着順が忍田より上でなければならず、矢島とも着順が2つ下だと捲られてしまう。
忍田の条件は、矢島・佐月からは1,600点以上のアガリ。それ以外は何点をアガっても松崎より上になるので勝ち上がり。
矢島の条件は、ツモなら何点でもOK。佐月からだけは1,000点でもアガると松崎の着順が佐月よりも上になってしまうので、跳満以上でないと佐月からはアガれない。しかし松崎・忍田からは1,000点でもアガれば勝ち上がり。
最終戦オーラス、3名にかなり現実的な条件が残るというシビれる展開に。
こうなると親番の松崎が、一度アガって連荘しなければならない分、現状上にいるはずなのに少し不利に見える。
最初に仕掛けたのが矢島。









チー

ドラ
スピード勝負のオーラスだからこその仕掛け。
忍田も仕掛け返していく。









ポン


忍田さらに
をチーして打
。重ねた
をポンしてテンパイ。



ポン

チー

ポン


矢島、2フーロ目を入れて1シャンテン。






チー

チー


そしてここで松崎がメンゼンテンパイ。












ツモ
リーチ棒を出すと、忍田はどこからでも1,000点のアガリができるようになる。
ドラも切れていて、忍田は明らかに1,000点の仕掛けを入れているだけにリーチは躊躇われる。
しかし自分の勝ち上がりのためには打点のあるアガリをしなければ、連荘したとしても次の局も他者にそこそこの条件を残してしまうことになる。
数秒考え、決意を秘めたまなざしで松崎はリーチ宣言。
待っていたのは2巡後の
ツモ。裏ドラは
で乗らず。しかし大きな2,000は2,100オール。
このアガリで勝負あり。
南4局2本場は矢島の1人テンパイで終了。
最終戦成績
松崎+21.9 矢島+5.1 佐月▲6.8 忍田▲20.2
最終結果
佐月+33.6 松崎+17.0 矢島▲18.0 忍田▲33.6
B卓決勝勝ち上がり
佐月麻理子 松崎良文
矢島「負けました。また頑張ります」
忍田「ここまで残れて嬉しいですけど、せっかくなんで決勝残りたかったですね」
観戦記者としてというより、一麻雀打ちとして胸が熱くなる対局を見せつけられた1日だった。
勝者の胸にある期待や不安が詰まった熱い思い。
敗者の胸にある悔しさや来年こそはという野望の詰まった熱い思い。
それぞれに共感しながら、観戦者としての熱い思いを私も秘め、決勝の舞台を楽しみに待つことにした。
カテゴリ:麻雀マスターズ レポート





























































