対局番組レポート

特集企画/森山茂和新会長就任記念特別座談会

201307新会長就任記念特別座談会:森山茂和 瀬戸熊直樹 滝沢和典 山井弘

 
3月24日の「第四回麻雀トライアスロン・雀豪決定戦」で、森山茂和新会長就任のサプライズ発表があり、6月4日には帝国ホテルで祝賀会が開催された。
正式な就任は4月1日からで、すでに若手向け麻雀勉強会の開催や、ニコ生の「日本プロ麻雀連盟チャンネル」「ロン2ネットTV」の開設など精力的に新たな事業に取り組んでいる。
また、麻雀最強戦2013鉄人プロ代表決定戦で優勝するなど、プレーヤーとしての活躍もめざましい。
そんな絶好調モード(?)の森山会長を、次世代のプロ連盟を担う(はずの)新進気鋭のプロ雀士3名が囲む座談会を開催。
これからの麻雀業界はどうなっていくのか。あるいはどうなるべきか。
また、今後のプロ連盟はどのような活動を行っていくのか。
麻雀界の未来について語っていただいた。
 
『離脱の後…』

森山「今日はインタビューじゃなくて座談会か。こういうのいいね。」

滝沢「いいですか?」

森山「いや、私1人で所信表明演説みたいなことしたって面白くないでしょう。それに、こっちが独りで突っ走ったって、後から皆がついてきてくれないと意味がない。いや、ついてきてっていうより、一緒に走ってくれないと何も生み出せないよ。」

山井「なるほど。」

森山「だから次の世代を担うべき人たちと一緒に話せる方がいいねって。そういう意味です。」

瀬戸熊「森山さんたちの世代は、若手の時からずっと、自分達で苦労しながら麻雀の世界を作り上げていったわけですよね。」

森山「もちろん、初代会長の小島武夫プロ、二代目の灘麻太郎プロ。他にも諸先輩方のお世話にもなってきましたが、やっぱり、自分のことは自分でやらないといけない。口をあけていれば誰かがエサを入れてくれるなんてことあり得ない。世間も先輩もお母さんじゃないから、自分で何かして稼ぐしかない。その上で自分だけじゃなくて、プロ連盟という団体のことを考えていかないといけない。それが必ず自分に跳ね返ってくるからね。」

瀬戸熊「そうやってきてすでに32年が経ちます。様々な苦労があったと思いますが、一番大変だったのはいつですか?」

森山「それは…やっぱり日本麻雀機構のトラブルだろうね。かなりの人数が辞めて機構に行ってしまった。」

山井「中堅もかなりいましたからね。」

森山「それぞれに理想や思惑があってのことだから仕方ない。まさか連盟を捨てる人がいるなんて勿体無いと思ったし可哀想に思えた人もいたけど、どうしようもないよね。
ただまぁ、彼らは結果的に可哀想だったけど、どの世界にもケジメというものがあるからしょうがない。まぁこっちにはほとんどダメージはなく、逆に連盟内部がまとまって、若手がグングン伸びて来たのは連盟の底力なのかな。雨降って地固まったね。」

滝沢「連盟は土台がしっかりしているので、頑張っていれば、それだけで活躍できる土壌がありましたから。」
瀬戸熊「やっぱり麻雀格闘倶楽部の存在が大きいですね。」

森山「それはもう、日本プロ麻雀連盟の根底をなしているからね。でも最初、コナミさんから来た話は、ゲームを推薦してほしいという依頼だけだったんだよ。」

山井「そうなんですか?」

森山「とっかかりはね。でも、最初のバージョンの開発に際して、麻雀のプロとして色々とアドバイスをさせてもらった。気づいたことを言わせてもらって。で、公認だけではなくて、プロ雀士が参戦する企画を提案した。その方が面白くなると思ったからね。それがバージョン2の形になって、2年目からプロが参戦するようになった。」

滝沢「それがなかったら日本プロ麻雀連盟もここまで大きくなっていないでしょうね。」

森山「でも、世の中そういうことだらけでしょ。麻雀と一緒で、ちょっと対応が違うだけで将来は大きく変わる。色々な偶然や必然が重なって今こうなっているんだからね。私は当時、神戸まで足を運んで、コナミさんの開発チームの方と色々なお話をさせてもらったけど。そういうのを大変だからとか面倒とかいって手を抜いていると、こういう結果はないけれど、ラッキーもあったね。」

山井「麻雀格闘倶楽部は空前の大ヒットで、麻雀の歴史だけじゃなくてゲーム史にも残るような結果になったわけですよね。」

森山「ここまでの大ヒットは誰も想像してなかったと思うけど。でもミラクルだったね。その幸運を終わらせずに、結局10年以上もお客さんの好評を得ているわけだから。これを連盟の将来にずっとつなげていかないと。そういう意味でも、若手のみんなに頑張ってもらわないとね。」

瀬戸熊「頑張ります。」

森山「瀬戸熊プロは麻雀の頑張りはもう言うことなし。これからも精進して最強の横綱になっていってほしい。運営の仕事も頑張ってくれているけど、さらに上のレベルのこともやってくれるようになると嬉しいね。」

瀬戸熊「上のレベルとは、どういうことですか?」

森山「麻雀プロの使命は、自分が麻雀で生活するのは当然として、やっぱりファンのためにやっている仕事だからね。どうしたら麻雀ファンの方が喜んでくれるか。業界全体が良くなるか。常にそういうことを考えて麻雀の仕事に取り組んでもらいたい。それが結局、プロとしての自分に全部返ってくるから。あ、瀬戸熊プロだけじゃなく、若手プロの全員にそういう意識を持ってほしいって意味でね。」

滝沢「麻雀のトレーニングをするだけでも大変ですけど…。」

森山「でもそれをやんなきゃいけない世界なんだからやるしかない。私達の世代もそうやってやってきた。それでも、まだまだ若い人には負けない麻雀を打っているつもりだよ。ただ麻雀打っているだけで生活の面倒を見てもらえるほど、世間は甘くないよ。」

 
『若い世代の麻雀』

滝沢「我々を含めて、今の若手プロは恵まれていると思います。」
山井「麻雀格闘倶楽部、MONDOTV天空麻雀ロン2近代麻雀…活躍の場がたくさんありますよね。」
滝沢「ただ、森山さんから見て、今の若手プロの麻雀の技量についてはどうですか?」

森山「今プロとして活躍できてる人たちは、以前と比べれば格段によくなっているなぁと思う。でも、まだまだの人もたくさんいるのが現状かな。」

山井「麻雀勉強会を開催していただいて、小島先生や森山会長、前原雄大プロら、先輩方に稽古をつけてもらってから、自分は伸びたと思っています。」

森山「そうだね。特に瀬戸熊プロは十段位を連覇するわ、鳳凰位も連覇するわで。今は十段位と鳳凰位の二冠でしょ? ちょっと強くしすぎたよね(笑)。いや、しすぎたっていうのはアレで、本人の努力なんだけど。」

瀬戸熊「まぁでも、あの勉強会で色々なものを盗ませていただきました。」

森山「そうそれ! 盗むというのが大事。教えてもらおうとかじゃなく、自分でどんどん吸収していかなきゃ。私達が若かった頃、小島さんも灘(麻太郎)さんも、麻雀を若手に教えるということはあり得なかった。プロ同士なんだから、教えてどうすんのって。」

滝沢「プロ連盟員とはいえ、個人競技ですからね。お互いに敵でもあるわけで。」

森山「だから自分だけが頼りだったけど、今は優しい先輩がいて良かったね(笑)。しかも無料で!(笑)」

山井「本当にありがたいです。」

森山「それは冗談だけど。さっき滝沢君が言ったけど、卓上ではお互いに敵。でも、麻雀は1人では打てないわけで。それに、麻雀って勝てばすべてOKというものじゃない。お互いにハイレベルな戦いをして、ファンの人に凄いなぁ、面白いなぁと思ってもらわないといけない。だから弱い相手やヘタな相手では困るんです。ましてや連盟の仲間でもあるんだから、どんどん強くなって、我々世代なんて歯が立たないというぐらいになってもらいたい。そう考えて勉強会をやり始めたんだけど、成果も出ていて、やっぱりやってよかったよ。」

滝沢「本当は自分達からやり始めないといけなかったんですけどね。」

森山「その通り。だから今度はせめて、君達が次の世代を喚起していかなきゃ。今、ここにいる3人は、新人や若手の勉強会で教えることが多いんだよね?」

滝沢「はい。ただ…全員ではないんですが、「答え」を求めてくるんですよね。」
瀬戸熊「そう、はっきりとした「正解」が欲しいって言うんですよ。たとえば親がリーチしていて、こっちは四筒四筒六筒とあって四筒が現物。役はなくてドラもない。親は上り調子で、ここでアガったら絶好調モードに突入しそう。こんな時、何が正解ですかって言われても困るんです。」
山井「瀬戸熊さんなら、という答えはありますけどね。」
瀬戸熊「だから僕なら四筒切ってヤミにしますと答えるしかない。でも、四筒切りのリーチだって間違いじゃないし、と言うと「ハッキリしてほしい」と。それは自分で考えないと麻雀やる意味ないんですけどね。」

森山「麻雀を一局単位で考えるから、この場での正解が欲しくなるんだろうね。四筒切ってリーチかけて、その結果次第で次の局から対応を考えれば良いし。その前までの展開や打ち方から、この局の正解を導き出してもいい。実戦とはそういうものだから。」

山井「しかし、そういう世代にはデジタル麻雀がもってこいになっちゃいますね。」
滝沢「必ず正解がありますからね。それで結果がボロボロになっても、それは長い目で見ればしょうがないと。」

森山「確かに長い目で見ればそうかも知れんけど、麻雀のプロはその一打だけで人生が終わっちゃうケースもあるからね。極端な話だけど、初めてテレビ対局番組に出た時に、白発とポンしている人がいて、テンパイ気配。でもデジタル的に中を切ってリーチが正解と答えが出たら…その中を切れるんですか?って話。」

滝沢「その理論と心中はできないですね。やっぱり。」
瀬戸熊「僕も無理です。自分の読みで中を切るべき、と判断したら行きますけど。自分の読みとは心中するつもりで打ってますので。」

森山「これが正しいと主張したって、麻雀ファンに「何それ?」と思われたらダメなわけだし、キャスティングしてくれた人にも「二度と出したくない」と思われるんじゃないかな。それでも私が正しい! というのであれば、覚悟を決めて数値的に麻雀を解明するしかないでしょう。」

山井「その、数値的研究に意義はありますけどね。ただ、実戦で使えるレベルかどうかという問題はまた別だと思います。」

森山「麻雀は宇宙のように果てしなく奥が深いものだと思うので、私が生きている間には絶対に数字なんかでは解明できないと思うけどね。手筋なんかは限られているけど、人の精神や運というものは、本当に複雑ですよ。ましてやそれが4人分、絡み合うわけだから。」

瀬戸熊「ただ、僕は麻雀はアナログ派ですが、研究はデジタルを駆使していますよ。ロン2の牌譜再生システムを使って、対戦相手の麻雀研究をしていますので。」
滝沢「前原さんの?」
瀬戸熊「特にそうですね。やっぱり前原さんに勝てなくて、どうやったら勝てるのかって考えて。前は紙の牌譜を読んでましたけど、やっぱり時間がかかるし。それに対局数は、ロン2の牌譜が圧倒的に多いですから。」

森山「それでそんなに強くなったの!? なるほどねぇ!!」

瀬戸熊「僕の成績が伸びたのは、ロン2のサービスが始まってから数年後ですよ。」
山井「その前原さんも牌譜研究は熱心ですよね。ロン2での観戦も多いですけど、牌譜もよく研究されているようです。」
滝沢「この前のインターネット麻雀日本選手権準決勝の前日も、ツイッターで「明日対局するユーザーの牌譜を検証した結果、ガラリーは封じるかも」と発言してました。あ、ガラリーとはガラクタリーチのことです。ガラクタリーチとは、前原さんやヒサト(佐々木寿人)がよくかける、待ちが悪く点数も安い、見た目も汚いリーチのことです。」
 
『女流プロも実力の時代』
山井「女流プロについてはどう思われますか?」

森山「数が増えたこともあって、昔とは違ってきましたね。正直、昔は女性の麻雀人口自体が少なくて、女の子というだけで希少価値がありました。だから若くて可愛い子が普通に打てるだけでプロとして活躍できる時代があったけど、今はそういうわけにはいきません。」

山井「女子プロも実力の時代ですか。」

森山「そうなってきているし、今後どんどんそういう方向にいくでしょうね。女子プロは男性に比べて活躍のチャンスも多いだけあって、逆に競争も激しいところがあるから。かなり淘汰されたりと、厳しさもあるでしょう。」

瀬戸熊「本当の意味では、それがプロの世界ですよね。」

森山「その通り。ただ、雀力の部分では、男性プロと比較するとまだまだ。あくまでも女性の中での淘汰ですね。」

滝沢「本当は男子プロの中でそういう激しい競争がなければならないですね。」

森山「そうなっていくように努力しなきゃ。時代のせいかもしれないけれど、プロ入りした瞬間から「こいつ強いな」と思わせるようなホネのある男がなかなかいないのも事実。最近では佐々木寿人ぐらいかな? でも、人材がいないと嘆いたって仕方ないから、頑張って人を育てるしかないでしょう。」

山井「いずれにせよ我々は、必死に戦っている姿をファンに見てもらって、評価してもらうしかないですね。」

森山「そういうことです。」

 
『会長就任』

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滝沢「会長就任のパーティ、大変でしたね」

森山「まぁ我々も大変だったけど、それよりも本当、たくさんの方に来ていただいて、ありがとうございました。この場を借りて、改めてお礼申し上げます。」

山井「結局、森山会長が主役なのに一番走り回るような結果になってしまいまして。すみませんでした(笑)」

森山「まぁそれはしょうがないよ。日本プロ麻雀連盟も人材が多いとはいえ、パーティの仕切りはあんまり経験ないもんなぁ(笑)。でもああいうのも経験だから、色々な反省は今後に活かせれば良いんじゃないのかな。」

瀬戸熊「会長になられて、これからは具体的にどうしていきたいですか?」

森山「まぁ今までやってきたことと変わりはないんだけど。今の時代に合わせた活動を推し進めて行きたいですね。これはもう5年ぐらい前から言ってることだけど、映像の時代だから。今の麻雀プロは映像で活躍できなきゃいけない。これは私の持論だけど、麻雀プロ、イコール、映像の世界で生き残れる打ち手だよね。」

滝沢「でも若手のプロや視聴者の皆さんに勘違いしていただきたくないのは、映像向けに麻雀を打つという意味じゃないんですよね。テレビだからこう打ったというのはやめた方がいい。視聴者もシラけるし、打ち手としても…。」

森山「その通りです。テレビだからといって、普段打っている麻雀を急に変えられるほど雀力の高い人が言うならいいけど、そんな人ほとんどいないんだから。しかもそういうことを言う者に限って、視聴者が求める麻雀を打てていない。視聴者は結局、真剣勝負が見たいんだと思いますよ。違うかな?」

山井「それは当然ですね。プロである以上、普段の試合で、仮に誰も見ていなくても、意識を高く持って戦わなければなりません。」

森山「プロとは何かということを意識していれば自ずと答えは出ますけどね。プロはファンに凄いものを提供して、ファンに喜んでもらって、ファンに支えられて生活する者だから。それはどんな業界でも一緒じゃない? だから自分達の殻に閉じこもって麻雀の研究だけしてたってダメだし。ファンに提供するためには、自分達の技術を磨かなければならないし。実力をつけることと情報の発信の両方をやっていかなきゃならない。どっちが欠けてもプロじゃないです。」

滝沢「私が入ってきた頃と違い、今はファンの方に支えられて、自分達が生活できているという実感が、もの凄くあります。」

森山「でもまぁ、まだまだ物足りない。良い方向に行っているとは思うから、もっと大きな流れを作っていきたい。ファンの人たちにも、もっともっと麻雀の面白さを提供していきたいよね。ただ、そのためには、もっと選手達が麻雀を頑張ってくれなきゃ。いまメディアで活躍している若手プロたちをおびやかすような存在がどんどん出てきて欲しいね。」

瀬戸熊「日本プロ麻雀連盟チャンネルとロン2動画だけで見られる新番組『麻雀昇龍伝』では、新たなスター候補生たちが出場し、頑張りました。」

森山「本当に頑張れたかどうかを評価するのはファンの皆さんだけどね。」

山井「でもこうやって、自分たちで番組を作って配信していく作業をやっていく中で、新しいものが何か生まれないと意味がありませんから。」

森山「その通りだね。ただ、今はとにかくやるしかない。このような番組をはじめ、これからも日本プロ麻雀連盟はどんどん楽しく厳しい麻雀を提供していけるように努力して行こうよ。ファンの皆様もどうぞ日本プロ麻雀連盟を宜しくお願い致します。」