北海道プロリーグ 成績表

第51期 北海道プロリーグ 決勝レポート

「結果自然成」この言葉の解釈は、

人は誰もが成功や勝利を求めて生きる。そしてより良い「結果」を求める。
しかし「結果」のみを重要視したり、あからさまに「結果」に自分の利益のみを優先させる、そういった態度はとても醜いものだが、正しい目的に向かって日々たゆまぬ努力を続ける人には、必ずそれ相応の「結果」が現れる。
その結実はまるで季節が巡れば自然に果実が熟するように人間の思惑や計らいを離れている、という意味合いである。

第51期北海道プロリーグ、6節(24半荘)終了時の成績上位4人が得点持ち越しの上、決勝卓(4半荘)に進出。

3月11日に行われた決勝に進出した選手は以下の通り。

*敬称略

喜多清貴(28期 二段)
連盟入会期は遅いが北海道の麻雀業界を支えてきた功労者の1人。
入会後はコンスタントに上位争い、3度目の決勝進出で初の優勝なるか。

野々川博之(6期 六段)
こちらも北海道で麻雀の普及活動に力を注いできた1人。
北海道本部の年功者、35期以来の優勝を目指す。

三盃志(19期 五段)
北海道プロリーグ参戦者の中で年長者だが、速度のある麻雀が特徴。
過去2度の優勝経験があり、通算3度目の優勝に手が届くか。

石田雅人(26期 四段)
前節+90オーバーの成績で決勝に滑り込み。
ポイント的に厳しい戦いになるであろうが、持ち前の粘りと、高打点の手組で2度目の優勝をもぎとれるか。

これまでの成績は

喜多+210.1P
野々川+169.2P
三盃+140.5P
石田+120.8P

持ちポイント的には喜多が有利だが爆発力のある石田が4番手に控える。
野々川、三盃は喜多をこれ以上走らせないような展開に持ち込めるかが勝負の肝になりそうである。
どのメンバーも厳しく長年麻雀に対して努力と研鑽を続けてきた。

誰の想いが「結果」となって実るか。
それぞれが素晴らしい「結果」を求めて戦う火蓋が切って落とされた。

 

1回戦 (起家から、三盃・喜多・野々川・石田)

東1局 ドラ三万

勝負の入りを重要視する打ち手が多い中、一番の配牌を貰ったのはトータルトップ目の喜多。
3巡目に

二万四万六万六万七万五索六索七索二筒三筒中中中  ドラ三万

この形の1シャンテンになる。
すんなりドラを引き入れるようだと今日は喜多で決まりかなと思うような牌姿ではあったが、思うように手が進まないまま14巡目に親の三盃からリーチの発声。

一万一万六万六万七万七万五索五索白白発発西  リーチ

先にテンパイを入れていたのは野々川。

二万四万九万九万五索六索七索三筒四筒五筒六筒七筒八筒

12巡目に5枚目の四筒を打たれて喜多もチーテンを入れた。

一万二万四万四万五索六索七索中中中  チー四筒 左向き二筒 上向き三筒 上向き

2人が終盤オリに回って流局。
喜多にとっては貰った配牌の形から考えるとなんとなく感触の悪い滑り出しとなった。

東1局1本場3巡目。
前局のリーチは不発に終わったが、親の三盃が積極的に仕掛ける。
上家から打たれた五索をチーして

三万三万一索二索三索三索三索八索九索六筒  チー五索 左向き四索 上向き六索 上向き  ドラ九筒

その後要牌を引き入れ

一索一索二索三索三索三索三索七索八索九索  チー五索 左向き四索 上向き六索 上向き

この高め跳満テンパイを入れる。一気に突き抜けるかに思われたが、親の河を警戒して序盤からピンズのホンイツに向かっていた石田が六筒を切るとロンの発声

西家・野々川

六万七万八万六索七索八索三筒四筒五筒七筒八筒九筒九筒  ロン六筒

8,000は8,300のアガリで今日最初のアガリをものにした。

東2局、現状2番手の野々川に先行される立ち上がりになった喜多だが15巡目、

三万三万三万四万五万六索七索八索白白白中中  ツモ三万  ドラ北

この1,300オールをツモる。
ドラも見えていない三暗刻変化のある手牌だが、六万が場に3枚出とはいえリーチの選択肢もあったのではないか。
喜多は南2局の親番で苦悩を迎えることになる。

南2局、流局と小さなアガリで局が消化され迎えた喜多2度目の親番3巡目に、

六索七索八索六筒東南西西北白発中中  ツモ六索  ドラ二万

ここからホンイツへ一直線。
9巡目、持ち点が14,400になっていた石田からリーチが飛んでくる。

この時すでに喜多は

二索三索四索四索六索六索七索八索西西中中中  ドラ二万

このメンホンテンパイがはいっていた。すぐに九索を引いて

二索三索四索四索六索六索七索八索西西中中中  ツモ九索

ここで選択の機会。場には五索六索西も放たれていないが喜多の選択は九索(リーチ者の現物)。
その後、裏目の西をツモってしまう。石田の河には一索四索も出ていないが、西もツモ切りとなった。
このまま終盤まで全部の牌を押し、当然のように三筒もツモ切ると石田の手牌が倒される

二万三万四万六索六索七索八索九索三筒四筒四筒五筒五筒  ロン三筒

高めの三筒で7,700の放銃。この時喜多は何を思ったのか。
トータルトップ目の喜多が、ラス目の石田に放銃した事で野々川の士気も上がる。
その野々川の親番。

南3局、三盃が仕掛けて

四万一索二索三索六索七索九索中中中  ポン白白白  ドラ八万

野々川
五万五万七索八索四筒五筒六筒七筒八筒九筒  チー八万 左向き七万 上向き九万 上向き

ここから八索を引いて打五万とした。ホンイツ気配の三盃をケアして迂回する選択だが、三盃は比較的全員に安全そうな四万を残して字牌を先切りしテンパイ気配を出していた。
終盤手出しで四万としたのを見て

野々川
七索八索八索九索四筒五筒六筒七筒八筒九筒  チー八万 左向き七万 上向き九万 上向き  ツモ一索

この一索も最終盤にツモ切りとして結果1人テンパイ。アガリ同等の1,000オールとした。
細かい所までのケアが行き届いている。当たり前の打牌を当たり前のように。思っている事をしっかりと反映させる野々川らしい一打だった。
次局は石田のリーチに3人がオリてオーラスを迎える。

南4局2本場
持ち点は、野々川36,100 三盃34,400 喜多24,400 石田24,100

ラス目のラス親でここを落とすと更に苦しくなる石田にチャンス手。

三万四万五万六万七万三索三索四索三筒三筒五筒六筒六筒  ドラ三筒

しかし今日の石田はなかなか有効牌を持ってこない。終盤にかけてなんとか2つ鳴いて、

三万四万五万三筒三筒六筒六筒  チー八万 左向き六万 上向き七万 上向き  ポン三索 上向き三索 上向き三索 上向き

最終ツモは七万。当然のように河に置くも、下家の三盃が静かに静かにそっと開いた手牌は、

一万二万三万五万六万七万八万九万白白白東東  ロン七万  ドラ三筒

8,000は8,600で大事な初戦を制した。

1回戦成績
三盃+22.3P 野々川+10.1P 喜多▲9.6P 石田▲22.8P

1回戦終了時
喜多+200.5P 野々川+179.3P 三盃+162.8P 石田+98.0P

 

2回戦 (起家から、喜多・野々川・石田・三盃)

初戦を終えて野々川と喜多の差はおよそ20ポイント。
三盃と喜多も40ポイントとかなり肉薄してきた。
喜多としてはこの2回戦で、また突き放したいところであるが、最初の親番は手が進まないまま流局となってしまう。

勝負が動いたのは東3局。前局300・500をツモアガった三盃が、

六万七万八万五索六索七索六筒七筒八筒発中中中  ドラ発

このテンパイをすぐにツモりあげ2,000・4,000。
1回戦トップの三盃がこのまま連勝となれば更に勝負はもつれるが、次局三盃に親番は野々川が動いて300・500。

喜多が親番でテンパイ流局連荘したあとに、1,000は1,100オールをツモった後の南1局2本場、野々川が以下の形でリーチ。

七万八万六索七索八索一筒二筒三筒六筒七筒八筒西西  リーチ  ドラ八万

高目の六万もまだ山に生きていたが、九万をツモって1,300・2,600は1,500・2,800のアガリ。

七万八万六索七索八索一筒二筒三筒六筒七筒八筒西西  リーチ  ドラ八万  ツモ九万

南3局も積極的に動いていた野々川が、

二万三万一索二索三索五索九索  チー二筒 左向き一筒 上向き三筒 上向き  ポン発発発  ツモ四万  ドラ二万

この九索単騎のテンパイ。
喜多もタンヤオの渡りがある形式テンパイに向かうが、九索が浮いている。
単騎をケアして放銃はなさそうであるが、無事に六索と振り替わらないまま終盤の野々川

二万三万四万一索二索三索九索  チー二筒 左向き一筒 上向き三筒 上向き  ポン発発発  ツモ二万

待望のドラを持ってきて、高目のドラで7,700に変化。
ドラはまだ生きていたがアガリは生まれずにオーラスを迎える。

南4局2本場は、親の三盃が先制でリーチを打って1人テンパイ。
これによりオーラスの持ち点が
喜多27,800 野々川35,200 三盃37,300 石田17,700こうなった。

南4局3本場 供託2.0
ここも三盃が九万ポンから動いて

三万三万五万六万六万北発  ポン西西西  ポン九万 上向き九万 上向き九万 上向き  ドラ中

としたが、全員が被せ気味の打牌になった道中、南家・喜多

一万一万四索五索六索七索七索八索八索南南南西  ドラ中

ここから三索をチーしてテンパイ。
石田から九索で2,000は2,900と供託の2,000を取りきって浮きの3着を確保した。

一万一万六索七索七索八索八索南南南  チー三索 左向き四索 上向き五索 上向き  ロン九索  ドラ中

2回戦成績
三盃+15.3P 野々川+8.2P 喜多+3.7P 石田▲27.2P

2回戦終了時
喜多+204.2P 野々川+187.5P 三盃+178.1P 石田+70.8P

 

3回戦 (起家から三盃・石田・野々川・喜多)

東1局野々川が、

四万五万八万八万九万東東白白白  チー三万 左向き一万 上向き二万 上向き  ドラ七万

ここから六万をツモって九万を切ってテンパイだが東は三盃がトイツ。
喜多もテンパイ取るが終盤オリにまわり、野々川が1人テンパイ

東2局1本場、野々川が先制リーチしてツモ。

一万二万三万六万六万二索三索四索五索六索四筒五筒六筒  ツモ四索  ドラ三万

1,300・2,600は1,400・2,700。

東3局は喜多が300・500をツモアガリ。

東4局、三盃がピンズのホンイツに向かうが道中、意図的にホンイツ臭を消した手組にしていたところに、絶好のツモ八筒で以下の形。

一筒四筒五筒六筒七筒八筒八筒  ポン西西西  ポン白白白  ツモ八筒  ドラ四筒

野々川から六筒で7,700。

南1局は喜多が300・500をツモり迎えた南2局。
親番を迎えた石田、ただ黙っている訳にはいかない石田がここで魅せる。

一万二万三万二索三索四索七索八索八索八索九索一筒二筒  ドラ二索

このペン三筒テンパイから三筒をツモり、フリテンの高目6,000オールリーチを敢行する。
石田はこのリーチがアガれずに親権を流してしまう。
ここまで苦しい戦いを強いられている石田だが最後までしっかりと自分の打ち筋を貫いていた。

今期の決勝はこのリーチがアガれなかった時点で、4回戦があるとはいえほぼ終戦となったように思えた。

南3局は喜多が

四万五万六万四索四索七索八索四筒五筒五筒六筒六筒七筒  ツモ九索  ドラ九索

これをツモで1,300・2,600。

そして大事なオーラスを迎えて点棒状況は
喜多32,900 三盃30,700 野々川29,500 石田26,900

オーラスの親番は前局のアガリでトップ目に立った喜多。
良いとは言えない配牌の中、局を捌きに行くが、野々川が中盤に

二万三万四万六筒六筒発発  ポン中中中  カン九索 上向き九索 上向き九索 上向き九索 上向き  ドラ発

このテンパイを入れる。喜多も粘りに粘って発単騎のテンパイ。
山には六筒が2枚、発が1枚生きていた最終盤に野々川若干トーンの高い「ツモ!」の発声。

二万三万四万六筒六筒発発  ポン中中中  カン九索 上向き九索 上向き九索 上向き九索 上向き  ツモ六筒  ドラ発

値千金の2,000・4,000は当面の敵喜多を沈みの2着にしての1人浮きトップ。
野々川の日々真摯に取り組んだ想いが牌に「結果」として伝わったツモアガリだった。

3回戦成績
野々川+19.5P 喜多▲2.1P 三盃▲4,3 石田▲13,1

3回戦終了時
野々川+207.0P 喜多+202.1P 三盃+173.8P 石田+57.7P

いよいよ第51期北海道プロリーグ決勝も最終節最終戦となった。
上位3人に優勝の可能性が残る。野々川と喜多はほぼ着順勝負、三盃は両者より上の着順になった上で3万点近く差をつければ優勝である。
石田が150P以上離された位置で、どのようにプロらしさを表現していくのかも注目したい。
それぞれの思惑が交錯する中最後の挨拶が交わされた。

 

4回戦

連盟規定に乗っ取り席順が決定(起家から、喜多、三盃、石田、野々川)

東1局、喜多の親番は石田が

三万四万五万七万八万九万七索八索九索七筒九筒白白  ツモ八筒  ドラ四万

この2,000・3,900をツモ。
終始苦しかった石田に最後に軽く安い手が入るのもまた麻雀か。

その石田が親権を維持した東3局1本場にリーチ

三万四万七万八万九万四索五索六索一筒二筒三筒五筒五筒  リーチ  ドラ二万

その時喜多も以下の形でテンパイしていた

一万二万二万二万三万三万五万五万六万七万  ポン白白白  ドラ二万

ここからツモ一万でツモ切り、カン四万のまま押し切るも終盤石田が五万をツモって1,300は1,400オール。
これをアガればという喜多のホンイツだったが実らず。勝負は南場にもつれる。

南2局1本場、親の三盃がペン三万待ちの一通でリーチ。

一万二万四万五万六万七万八万九万六筒六筒八筒八筒八筒  リーチ  ドラ八索

このゲームここまでラス目の喜多が

三万四万二索三索四索五索五索六索七索八索二筒三筒四筒  リーチ

これでリーチ。道中、ホンイツとの岐路も役牌2種を見切って最高形に。
次巡、二万をツモリ3,100・6,100で一躍トップ目に。

喜多、初優勝まであと2局!しかし次局に落とし穴が。

南3局10巡目

野々川
三万三万六万六万三索四索五索三筒四筒五筒  ポン八索 上向き八索 上向き八索 上向き  ロン六万  ドラ八索

ドラを手放したのは1シャンテンの石田。その是非はあえて問うまい。

五万六万六万七万六索七索一筒二筒二筒三筒四筒五筒六筒六筒

喜多はこの形から野々川に六万で7,700を放銃
安全策の一筒切りで粘る手もあったが。
野々川がラス親、残り巡目も考えるとこの結果は淡白すぎではなかったか。

南4局 ドラ三万
野々川36,100 石田33,400 喜多26,700 三盃23,800

喜多の逆転優勝の条件は

ツモアガリなら、1,600.3,200。出アガリなら12,000。
(野々川からの直撃なら5,200)

喜多8巡目

五万一索一索二索二索三索五索五索九索九索七筒七筒七筒

ツモ四万で喜多本日最後の何切る?
ちなみに六万は自身のフリテンで3枚切れ。ドラと五万は生牌。三索四万は1枚切れ。四索は4枚とも切れている。

喜多はここで七対子に見切りをつける。
今局は選択を間違えることなく、ドラを引いて待望の再逆転のリーチを打つ。

三万四万五万一索一索二索二索三索五索五索七筒七筒七筒  リーチ  ドラ三万

野々川も役牌を仕掛け喜多の現物待ちで1,500テンパイ。
喜多のリーチだけに、出たら連荘するしか術はない。

この後、両者のアガリ牌が場に顔を出すことはなかった。
最後のツモが河に置かれて優勝者が決まると同時にどこからともなく拍手が。

野々川博之が「結果」を最高の物として戴冠。
優勝おめでとう。

4回戦成績
野々川+13.1P 石田+6.4P 喜多▲5.3P 三盃▲15.2P

最終成績
野々川+220.1P 喜多+196.8P 三盃+158.6P 石田+64.1P

さて冒頭の一句には対句がある。

「一華開五葉」という言葉で解釈は以下の通り。

「一つの花がある。その花が五つの花びらを開いた、という意であるが、この花はあなたが生まれたときからあなた自身の深いところに咲いている花だ。
もしあなたが「五つの花びら」の意味を知りたいのなら、道はたった一つ。自身が心の中を深く訪ねて自分の力でもってその意味を体得するしかない。
その行はあなたの心に美しさを与え、そしてあなたの人生を限りなく豊かにするに違いない。

麻雀道に終わりはない。

昨年WRCリーグに出た時に同卓した今年鳳凰位を大観された前原プロも、「全節消化はできないが、麻雀を強くなりたいから参加した。それ以外に意味があるのか?」という類の事をおっしゃっていた。
結果を求めるためには研鑚を積むしかない。麻雀を強くなるためには沢山見て、沢山学んで、沢山打ってを繰り返すしかない。
いつか自分の花びらが「結果」となって開くか分からないが、これからも連盟の一員として麻雀道をしっかりと進みたいと思う。
また今期決勝の最後を盛り上げた2人は副本部長として新しい北海道本部を作る2人であった。両者の戦いを見て私は勿論の事、観戦者も皆胸に秘めた物があるのではないか。

次はこの場所でこの2人と、そう思える対局を見れた事に感謝の気持ち、対局を作った4人に感謝の気持ち、そしてこの対局を自分が文字にできることへの感謝の気持ちを込めて最後を締めたいと思う。

筆:真光 祐尚