鳳凰の部屋

鳳凰の部屋/「揺らぐ気持ち」 前田 直哉

3日間を終え、ついに残すは最終日のみとなった。
昨年鳳凰位となった藤崎プロは、リードをしての最後の1週間はとても長く感じたと言っていた。
そんな私も幸運に恵まれリードしてこの1週間を過ごした。
私の職場には、麻雀をよく知る者はほぼいないので対局を見てもいないし興味も無い(笑)おかげでいつも通りの会話をし、いつも通りに仕事をして1週間を過ごすことが出来た。
若干寂しさもあるが、かえってありがたかったように思う。どんな立場であれ自分は挑戦者だ。最後まで優勝争いを出来る位置にいられればよしと、そのくらいの軽い気持ちで当日を迎えることが出来たのは幸運であった。
さあ!最後まで油断せずにいこう!とにもかくにも後1日が終わればゆっくり出来るのだから。
12回戦終了時
前田直哉+111.2P 藤崎智+38.3P 勝又健志▲56.1P 瀬戸熊直樹▲93.4P
13回戦(起家から前田、藤崎、瀬戸熊、勝又)
まず開局は藤崎プロが1,000・2,000をアガリ好スタートをきった。
東2局は2巡目にテンパイを入れるも、役もドラも無いのでヤミテンにするが、三万六万をツモるどころか場にも姿を見せないまま、またも藤崎プロのアガリとなった。
100
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親の勝又プロが連続でアガリをものにして迎えた東4局2本場、同巡に切られた東を藤崎プロがポンをする。捨て牌は派手だが、2枚目のポンなのでドラの発がトイツ以上である可能性は薄いということは推測出来る。
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そこへ9巡目に親の勝又プロからリーチが入る。そのリーチに対して仕掛けていた藤崎プロが親の安全牌である発を切ってきたので、1シャンテンになった私は、今ならまだ間に合うと思い四索に手をかけた…
安めではあったがこれが藤崎プロのホンイツに突き刺さった。
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点数こそ3,900だったが点数以上の痛手に感じた。
ここまでの展開からして、この半荘はなかなか手が入らないであろうと感じていたからである。
そして、まだ1シャンテンであろうと読み違えていたことで、まだまだ苦労しそうだと思った…。
その予想通りに南1局の親ではメンチンの1シャンテンから1,300に放銃し、次の南2局では2巡目に三色ドラ1のテンパイを入れるも、喉から手が出るほど欲しかった五万は場に放たれることは無かった。
そして南2局1本場ではホンイツで仕掛けるも、勝又プロに5,200を放銃した。
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実を言うとこの辺の記憶をあまり憶えていない…こうして牌譜データを見ながらこの原稿を書いているのでわずかな記憶だけを頼りになんとか書いている。
それほどこの時は気持ちが揺らいでいたのかもしれない。ただ唯一の救いは、この時大打撃となるほどの放銃が無かったことである。
残された牌譜を眺めていると自分のこととはいえ、まるで他人の牌譜を見ているほどに冷や冷やもんである(笑)
ただ、まだリードしている立場だったので焦りはあまり無かった。
むしろこれで面白くなってきたじゃないか!もう1人の自分が対局している自分に語りかけていた。
もうこの半荘のラスは受け入れよう、そう思っていたがオーラスになんとか3着を狙えそうな手牌になり、ダメもとで仕掛けを入れた。
2つ仕掛けてこの形となる。
一索二索五筒六筒七筒中中  ポン七索 上向き七索 上向き七索 上向き  ポン南南南  ドラ一索
ダブ南ドラ1でアガればなんとか3着にはなるが、もちろんアガれる気など全く無い。ただ全員がノーテンで終わってくれることをひたすら願った。
結果1人テンパイ。これでなんとかこの半荘は3着で終わることが出来たが、こんな麻雀打っているようではいずれ逆転されるであろう…
もっと集中しろ!もっとアンテナを張り巡らせろ!そう自分に言い聞かせた。
13回戦成績
藤崎智+21.1P 勝又健志+12.7P 前田直哉▲14.8P 瀬戸熊直樹▲19.0P
13回戦終了時
前田直哉+96.4P 藤崎智+59.4P 勝又健志▲43.4P 瀬戸熊直樹▲112.4P
これで藤崎プロとのポイント差は30を切ったが、最終戦を迎えて同じポイントくらいでもかまわないと思っていたので焦りは無かった。
結果はどうあれいよいよ終わりが見えてきた!
14回戦(起家から前田、勝又、瀬戸熊、藤崎)
東1局は瀬戸熊プロが2,000・3,900をアガリまたまた親被りのスタート!予想通り(笑)また苦しい展開になりそうだ…。
そのまま瀬戸熊プロが好調に飛ばしていく。東場は全く手も入らずひたすら辛抱したが、放銃は無くともすでに持ち点は20,500まで削られていた。
そして迎えた南1局の親番でこの半荘初めてのアガリをものにする。
得点こそ700オールと安かったが、少しずつ感覚が戻りつつあるような感じがした。
そして次局の1本場、3巡目にこうなる。
一万一万四万三索七索九索四筒四筒東南白白発  ドラ二万
ハッキリ言ってバラバラだ!バラバラなのを自慢したいわけではなく、ドラが二万で捨て牌と表示牌と私の手牌を見ると既に一万四万が5枚見えている。
この時に一打目に一万を切っている瀬戸熊プロはドラがトイツ以上であるか好形であることが伺える。そうなると他2者は一万四万がかなり危険になるであろうと感じていた。
それは藤崎プロと勝又プロのどちらがあてはまるのか…全神経を集中させた。そして10巡目には私の手もここまで伸びていた。
一万一万二索三索九索九索九索四筒四筒四筒東東白白  ドラ二万
既に一万は2枚見えているのでアガリだけを見るなら一万を外したいところである。だが8巡目に藤崎プロが切った三万でほぼ一万四万待ちのテンパイが入っていると確信していた。
そのため不本意ながらも二索三索を外していった。ちなみに、実際は三万の後の二筒を切ったところでテンパイでした…まあそういうこともあるよね(笑)
そしてその二筒を切った次巡、藤崎プロがツモ切りでリーチをする。私も一万四万以外は全て行く!そう決めていたので迷うことなく1枚も切られていないソーズを河に並べていく。
こう書くととてもカッコ良く聞こえるが内心はビクビクである(笑)そして14巡目に私も追いつく!
一万一万九索九索九索四筒四筒四筒東東東白白  ドラ二万
ツモれば16,000オール、一万は無いので出ても18,000だ♪しかし白はどこかにトイツだろうと思っていたので流局でも良いと思っていた。
そこへ私のテンパイ打牌の八索を勝又プロがポン!そしてその手はすぐに開かれた。
四万四万五万五万六筒六筒六筒七筒七筒七筒  ポン八索 上向き八索 上向き八索 上向き  ドラ二万
5,200の1本場、放銃したのは藤崎プロだった。
後でタイムシフトを見ると…藤崎プロの一万四万は山に0枚、勝又プロは1枚、私の白は2枚残っていた!!
対局中の私はもちろん知らないので、藤崎プロより順位が上なら良しくらいにしか考えていなかった。
南2局まではまずまずの展開で進み迎えた南3局、3巡目に手牌がこうなった。
五万五万六万七万八万四索四索八索二筒三筒四筒六筒八筒中  ドラ中
マンズが高い場なのでいつもの私なら四索を切る。しかしこの時は八索を選択していた…。確かに得点の並びは悪くないので純粋に場を進めに行くのも有りではあるが、切ってすぐに「しまった!」そう思った。
そして皮肉にも次のツモが六索、数巡後には七筒を引いて本来ならタンヤオ三色のテンパイを入れていたところである。
結果この局は500・1,000をツモることは出来たが恥ずかしいアガリ形だったと今でも思い出す局だった。
そして迎えたオーラス。このまま終わればまだ良かったが、ミスの後はそう上手くいかないのが世の常である。
親の藤崎プロが6,000オールをツモリ一気に持ち点をプラスにする。
六万六万三索四索五索六索六索七索七索八索八索六筒七筒  ツモ八筒  ドラ四索
これで私の1人沈みとなった。さすがにラスは免れないなと思っていたが、次局私の仕掛けに対して藤崎プロが真っ向勝負。軍配はかろうじて私に上がった。
二筒三筒白白  ポン南南南  チー四索 左向き五索 上向き六索 上向き  チー七索 左向き八索 上向き九索 上向き  ドラ二万
この仕掛けに対してダブ南一筒まで切ってきたことは意外に感じたが、逆にここまで踏み込んでくる気迫を凄いとしか思えなかった。
しかし、結果は私が上の順位になることが出来、まずまずの結果でこの半荘を終えた。
14回戦成績
瀬戸熊直樹+12.5P 勝又健志+7.4P 前田直哉▲5.5P 藤崎智▲14.4P
14回戦終了時
前田直哉+90.9P 藤崎智+45.0P 勝又健志▲36.0P 瀬戸熊直樹▲99.9P
これで最終日も残り半分、たったの2回にも思えるがその2回がただただ長く思えた。
次回予告!
「終焉」
追伸
勝負に携わる人達はゲン担ぎや風水を信じる人が多いように思う。皆さんはどうだろうか?
私は全く信じることも実行することもなかった。
しかし人間とはいい加減なもので、あまりにも体調を崩したり、負けがこんだりしてくると、ついついそのようなものに頼ってしまったりする。
そんな私も春先から体調を崩すことが多かったので部屋の模様替えをしてみた♪なんと!それ以来体調はだいぶ良い。後はどうしたら麻雀が絶好調になるかである。
もし今後私が対局で10万点近いトップを取るような光景を目にしたら、その時の部屋のベッドはたぶん立てかけられているであろう。