鳳凰の部屋

~入院~ 藤崎 智

2018年7月、麻雀界ではMリーグ発足の話題で盛り上がっており、ドラフト会議を直前に控えていた。
そんなとき連盟チャンネルで1つのニュースが流れる。「藤崎長期入院!」。

このときの自分の状況は、とりあえず現状命にかかわる状態ではないのだが、このまま放置するのは危険で、しっかりと治療してしまえば完治もするし再発の心配もほぼないということだった。
ただし入院の期間は2ヶ月から半年くらいかかるとのこと。とにかくいつ退院できるのか全く見当がつかっなかったが、治療を始めてみると思いのほか経過は良好で、もしかしたら1ヶ月くらいでの退院もありえるといったかんじだったため、ある程度退院のめどがたってからファンの皆さんに現状報告しようと思い、丸々1ヶ月何の情報も発信しなかった。

11人での変則開催となったA1リーグの生配信を病院のベッドで見て、コメントで藤崎重症説が飛び交っていたのもわかっていたのだが、「ご心配をおかけしてすいません。もうすぐ情報発信できると思いますのでもう少しお待ち下さい。」と思っていた。

約1ヶ月後にTwitterで現状報告したときのファンの皆さんの温かい反応は、おそらく一生忘れないと思うし、「麻雀プロ藤崎智」の一生の財産になった。
そして、何度もお見舞いに足を運んでくれた沢崎プロをはじめ多くの先輩方、毎日のようにLINEで連絡をくれた瀬戸熊プロをはじめ多くの仲間達に、そしてシーズン中のために多大な迷惑をかけてしまったにもかかわらず、誰1人として僅かな愚痴さえもこぼれなかったらしいA1の面々と運営・スタジオ関係の方々にあらためて感謝したい。「自分は恵まれている。人にも環境にも。」これがこの入院で強く思ったことである。

さて、ここまではカッコよく自分を着飾ってみたが、自分も基本ただのおっさんである。聖人君子でもなければ滝に打たれて精神修行をした経験もない。自分勝手ではあるが心配事もたくさんあった。

まずはリーグ戦の事。過去Aリーグでは前例が無い事なので、会長を含めた競技部で随分話合ってくれたらしい。いつ退院できるかわからないため入院の長さによって色々なケースの決定がなされたのだが、自分にとっては全てのケースにおいて恵まれた決定になっていた。結果的には50日の入院で2節欠場。欠場1節につき▲30ポイントで2節で▲60ポイント。正直1節でも欠場した時点で失格も覚悟していたし、もし2節欠場で戻っても、1節につき▲50ポイントが妥当かなと今でも思う。この優しい決定に対してA1の11人が誰も反対しなかったとも聞いた。本当に恵まれていると思う。

次に十段戦。このとき自分は十段位だった。しかし入院した時点で欠場は覚悟していた。そして決定戦の開幕には間に合わなかった。十段位決定戦は5人打ちである。従って1人欠場となっても4人打ちで開催可能な試合である。にも関わらず決定戦まで勝ち上がった4人全員で開幕を延期しても5人での開幕を希望してくれたらしい。マジか、、、。ここでもやはり恵まれていた。

最後にMリーグにも少し触れておく。今となっては実際ドラフトで指名されていたかどうかはわからない。しかし指名候補に名前を挙げていてくれていたチームがあったようである。入院直後は正直へこんだ。本当にツイてないとも思った。しかし開幕してからのMリーグの盛り上がりを見ていて思ったのだが、もし指名されてから入院してしまったら、もっとひどいのが、もし指名されていて開幕してから入院していたら、、、。
麻雀界にどれほど迷惑をかけていたかわからない。よくよく考えたらやはり恵まれている。そして翌年も参加させてもらっている。もう我ながらツキの塊である。

リーグ戦の話に戻す。数字だけみれば欠場のペナルティの▲60ポイントでも残り4節、残留は難しくない状況だった。しかし2ヶ月近く麻雀から離れてしまって感覚が全く戻らなかった。ここから負け続ける。
やはり感覚が戻らない状態でまともにポイントキープできるリーグではなかった。

最終節も最終戦の南4局まで近藤プロと熾烈な残留争いを繰り広げる。
最終節は降級を覚悟する局面が何度もあった。たまたま残留することはできたのだが、このまま入院前のような麻雀は二度と打てないかもしれない。そんな予感も漂っていた。

明けて2019年4月。不安を抱えたまま36期開幕。決して降級したら引退というわけではないのだが、自分の中では背水の陣に近い覚悟があった。
5節まではとにかく苦しかった。自分の中では決して悪くない感覚でも数字はマイナス。それまでは1節単位でいえば自分の調子をみてある程度ポイントは予想できた。

悪くない感覚で打っているときには、だいたいはプラスのポイントでまとめられていた。ところがマイナスが続く。とにかく数字以上に苦しんでいた。
とにかく勝てる気がしないのだが、「今期A1で打てているだけでラッキー」というポジティブな気持ちだけは持ち続けていた。

ということで今回はここまで。次回復活します。