プロ雀士インタビュー

第212回:プロ雀士インタビュー 柴田吉和  インタビュアー:福光聖雄

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柴田「“振り切ったな”と思っても、内川さんが強くて、全然引き離せなくて、“やっぱ強いな”って思ってずっとやってましたね。」

柴田「残り2、3戦になって、内川さんとほぼ1対1の競りで卓内のプレッシャーもあったんですが、押せるところは押せたので、その部分でちょっとは前回(5年前)よりは成長できたのかなあと。」

これは優勝直後のインタビュー。プレッシャーから解放された安堵の表情が見える。

本インタビューは、柴田くんの一番の練習相手の私、福光が担当する。

福光「ん?僕の一番の相手が柴田くんであって、逆はそうとは限らないのか?(笑)」

柴田「いや、一番かな。あなた暇だからよく捕まる。あと刀川さん。」

このインタビューも練習を終えてからの開催だ。

福光「早速、決定戦の話に。ずっと気になってたことがあって…」

福光「内川さんが(伊藤)優孝さんに5,800点を放銃して、かなり優勝が見えてきたところ、『まだまだ気を抜くな』のようなこと呟いてそうなんだけど覚えてる?」

 

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(6:15:15付近。放銃でスコアが以下の状況になったところ)
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福光「大舞台慣れしている柴田くんでも、そういう緊迫した状態になるのね。」

柴田「え?そんなことしないでしょ。次局終わったらトイレ行かせてください、って言ったんじゃない?」

福光「なんだー。気になってたのに。そんなオチか。(笑)」

福光「では改めて…決定戦を振り返ってどうですか?」

柴田「1回戦から優孝さんの六万止めを見せられて、“ホント凄いな”って楽しくなっちゃった。」
(決定戦初日観戦記の真ん中付近を参照)

柴田「最初の十段戦は、これを獲ったら麻雀プロ人生が変わると結構気負っちゃったけど、今回は獲ってもそんなに変わらないからね。決勝戦を楽しむことができたよ。」

ただただ羨ましい。
我々麻雀プロは、“タイトルを獲って有名になりたい”もあるが、“強い相手と大舞台で痺れる麻雀をしたい”という欲求も強い。
聞いてはいないが、彼もそのタイプの打ち手と確信している。

福光「勝ったと思ったときはあった?」

柴田「無いよ。(笑)」

福光「そうだよね。」

11回戦南4局、このまま終われば50ポイント近いリードで最終戦を迎えられたところ、内川のこのアガリを含む連荘で一時は逆転される。最終戦は、ほぼ着順勝負に。

 

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(伊藤のリャンメン待ちより多く残っている三索単騎待ち。このアガリも凄い。)
 

閑話休題。柴田くんと僕の関係について触れよう。
柴田くんとは、それこそ毎週のように練習しているのだが、私生活の会話はほとんどしたことがない。
LINEもスケジュール調整しかやり取りがない。こんな感じだ。

 

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飲みに行ったり、ご飯を食べに行くのも、実は初めて。
今日は、会話が盛り上がるか不安で、彼と同期の菅原(千瑛)さんにも参加してもらっている。
柴田「お酒飲めないし、飲み会はあまり好きじゃないからね。」

だからといって、無口であったり、話しづらかったりするわけではない。麻雀に対する熱い想いがあるし、気は利くし、常識もある。
ややマイペースな気質はあるか。(よりマイペースの僕が言えたものではない…)

LINEを振り返って思うが、彼は本当によく練習している。

福光「放送対局もよく見てるよね。先に着いて待っているときはだいたい見てる。熱心だわ。」

柴田「いやいや。趣味がないだけだから。」

福光「どういう点に着目して観戦してるの?」

柴田「うーん。解説聞いて取り入れることが多いかな。勝又さんの解説大好き。」

ここで過去のインタビューを紹介しよう。

2014年新人王/インタビュアー:松岡 千晶

初々しい。(笑)

2015年十段位/インタビュアー:菅原 千瑛

希望の星。

2019年第19回モンド杯/インタビュアー:ケネス 徳田

負けた時の印象が薄い。(笑)

2020年第14期女流桜花決定戦 最終日観戦記 柴田 吉和

最後の熱い20行。

さて、意を決して踏み込む時間帯だ。

福光「彼女はいるの?」

柴田「いないよー。」

菅原「長く付き合ってた人は?」

柴田「だいぶ前に別れちゃった。」

柴田「30代は結婚とか興味なかったんだけど、独り身が寂しくなってきたので…結婚したい。」

福光・菅原「へー、意外。」

福光「どんな相手がいいの?」

柴田「麻雀を知らない人!」

柴田「家では麻雀の話をしたくないんだよね。何切るの話になったら部屋に籠もりたい。」

福光「なるほど。」

柴田「でも、出会いがないんですよ。」

菅原「ですよ。」

福光「それ、みんな言ってるね。(笑)」

柴田「募集中です。よろしくお願いします。」

“いい人いたら紹介してください”と書いておいてって…
ここまで彼の魅力が伝わるよう頑張ってはみたが、いかがだろうか?
書く方も麻雀の話ばかりになるし、読む人も麻雀が好きな人だぞ。無理な話だ。(苦笑)

1回目の十段位が、最終局に国士無双での大逆転だったこともあり、柴田くんの戦前の評価は低かった。

第37期十段戦 優勝者予想

他に目立った実績もないし当然じゃない?と本人は意に介していなかったが、僕は自分事のように悔しかった。
僕の期待通り、覆してくれてありがとう&戴冠おめでとう!
そうだ、冒頭の優勝直後のインタビュー。彼らしい一言を書き忘れたので追記しておく。

柴田「明日からまた稽古して、しっかり(リーグ戦で)昇級できるように頑張ります。」