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プロ雀士コラム

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第30期後期プロテスト~その先に希うもの

2014/02/17
執筆:杉浦 勘介


きっかけはほんの些細なことだったが、タイミングとしては他になかったのかもしれない。
私が日本プロ麻雀連盟のプロテストを受験したのは2003年の9月。
現在の第3次試験にあたる研修期間を経て、連盟員証と初段の免状を受け取ってから10年の月日が流れた。

その間に失ったものは数知れないが、享受したものもまた果てしない。
とても決断などと呼べるものではなかったが、あの機会を逸していたら今の私がいないことだけは確かだ。

振り返ってみると、当時は10年後の麻雀界、そしてそこに関わる自分自身を全く想像できていなかったように思う。プロの世界を目指す立場として、未来をイメージすることはとても大切なことであるはずなのに・・・。

そして、愚かな私は数年間を何の自覚も持たないままに過ごした。
頭髪はだらしなく伸び、寝間着のような格好でも全く気を遣わずに外出することもあった。
こういった意識の低さに加えて、麻雀プロは麻雀好きの集合体というような奇妙な連帯感(これはある意味では間違いではないのだが)を曲解してしまい、時に礼節を欠くこともあった。

あれは5年程前のことだったと思う。
ある対局の後、帰りの列車を待つ駅のホーム上での1コマを忘れることはできない。
「今のままじゃダメだよ。」
声の主はプロテスト講師陣の1人でもある滝沢和典プロである。
その時、私に投げかけられたのは決して麻雀の内容ではなく、姿勢に対する言葉だと直感した。
そう感じたのは、どこかで楽をしていた後ろめたさがあったからなのかもしれない。
麻雀好きの代表選手だと勝手に考えていた滝沢プロの言葉だからこそ、私には痛烈に響いた。

そしてさらに時間が経過し、今こうしてプロテスト実行委員会の一員として受験希望者を迎える立場でコラムを書いている。
「勘介は変わったよ。」
このコラムの依頼を受けた際、私などが担当して良いものかと問うたら、こちらも講師陣の1人、紺野真太郎プロからただ一言返ってきた。

私としては、本質は容易には変わらないと思っているし、気楽に生きたい不精な自分をその場しのぎで取り繕っているような収まりが悪い心持ちもある。
ただ、育成のスペシャリストとして、何百人もの受験者や新人プロを支えてきた紺野プロの見立て、そしておそらく、麻雀の質も込みの言葉だと捉えれば、気付かない間に何かが変わっていたのかもしれない。

確かに、以前はプロテストに関わることを考えたこともなかったし、そんな私に、実行委員会から声がかかることなどなかったとも思う。プロになってからの数年間が、全く無駄だったとは思わないが、もう少し早く何かに気付いていればという反省もある。

だからこそ、私がプロテスト受験を考えている方に一番伝えたいことは、試験を通過することよりも、その後を考えてほしいということだ。第3次試験に入って、厳しい合格基準が示されるようになると、どうしても個々の目的がプロテスト合格にすり替わってしまうことがある。
本人としては、それでも精一杯なのかもしれないが、審査する側に立てばその差は一目瞭然なのである。

プロになった先に目指すものがあるならば、ライセンスの取得はあくまでも通過点と捉え、プロを志望する熱い動機や将来への展望を深く心に刻み込んでおいてほしいと思う。

数年前から、プロテストは年2回に分けて行われるようになった。
これによって受験者はより良いタイミングでのチャレンジが可能となり、講師陣も年間を通してプロテストに携われるため、反省点を活かしすぐに内容に反映させることができる。
こうしてより良い方法を模索しながら改良を繰り返している段階ではあるが、ここで現在のプロテストのシステムを簡単に紹介したい。

【第一次審査】
第一次審査は書類審査となる。
※必要書類については連盟ホームページより新人募集要項を参照のこと
私がそうだったように、履歴書を書いたことがないという方もいるかもしれないが、審査の対象となることを忘れずに丁寧に書いていただきたい。

【第二次試験】
第一次審査通過者を対象に行われる、いわゆるプロテスト本番である。
今回(第30期後期)の試験日は3月8日・9日の2日間となっている。
2日間にわたって、筆記試験、面接、実技試験がそれぞれ行われ、第二次試験の通過者のみが第三次試験に進むことができる。
※筆記具については各自必ず持参すること
※服装についてはスーツ着用など節度あるものにて臨むこと

◎筆記試験
点数計算問題など麻雀における基本的な知識が問われる。
◎面接
5人1組など集団面接の形式で行われる。
麻雀に対する熱い思いを伝える大事な自己アピールの場でもある。

◎実技試験
半荘5回程度の実戦対局を行い、総合順位にて評価する。
ただし、結果だけではなく対局内容や所作動作なども審査の対象となり、これを加味した総合評価がなされる。

【第三次試験】
月に1回程度、計5回にわたって実技指導が行われ、プロとしての適性が見極められる。
多彩な講師陣により、フォームチェックなども含めた所作動作の指導や、練習対局を軸とした技術指導が実施される。
また、毎回決められたテーマで論文課題の提出が義務付けられており、これによって文章力はもちろん、プロとしての心構えも学ぶことができる。
なお、第三次試験の最終日には、再度筆記と実技による最終試験が行われ、プロテスト全体を通しての総合評価によって合否が判定される。

度々、受験者全体の何割が第三次試験に進み、最終的に何名程度合格するのかという質問があるが、毎回算出されるこれらの数字は全く当てにならないと言って良い。
日本プロ麻雀連盟におけるプロテストは、人員の確保ではなく、人材を見出すことを目的としているため、絶対評価を原則としていることがその理由である。
言い換えるならば、極端な例ではあるが、一定の基準に満たなければ全員不合格ということもありうるし、またその逆も然りとなる。
それゆえ受験する立場の心構えとしては、プロテストの場で周りの受験者と競争するのではなく、まずは自分自身と麻雀に真正面から向かい合うという意思を持つべきだろうと思う。

今、麻雀界は明確に映像の時代へと突入している。
日本プロ麻雀連盟においても、新たに日本プロ麻雀連盟チャンネルや夏目坂スタジオが設立され、タイトル戦はもちろん、Aリーグの対局も放送されるようになった。
このコラムが掲載される頃には、鳳凰位決定戦の結果も出ていると思うが、プロを志す方々には、ぜひこの最高峰の闘いを見ていただきたい。

リアルタイムで観戦できなかった方のために、日本プロ麻雀連盟チャンネルロン2ネットTVには動画が残っていると思う。そして、荒正義プロが執筆される観戦記を読んでいただきたい。
そこでは、正真正銘のプロ同士による究極の闘いが繰り広げられているだろうし、またそのドラマが描かれているはずである。

このように、現在の麻雀界は打ち手がクローズアップされる華やかな時代ではあるが、同時にある意味では厳しい勝負の時代であるとも思う。
ここで一般のファンの方にどのような内容を提供するかで、今後の麻雀を取り巻く環境が180度変わってくると考えられるからだ。

また、麻雀を取り扱うメディア媒体の増加に伴い、プロの世界に入って間もない新人選手にも、麻雀格闘倶楽部への出演や生放送の番組への抜擢など多くのチャンスが与えられるようになった。
だが、高度な対局を日常的に堪能することが可能な今、目の肥えた麻雀ファンの方は、新人だからという理由で大目に見てはくれないだろう。
個々にとってもその一瞬が勝負であると同時に、それは麻雀の未来にとっての勝負でもあることを忘れてはならない。

先日行われた第三次試験では、実技指導の内容に入る前にある動画が流された。
この動画は、昨年行われた麻雀最強戦2013にて、決勝に駒を進めた森山茂和日本プロ麻雀連盟会長へのインタビューコーナーからの一場面である。

ここで一般の方の『プロ麻雀界に必要な人材とは?』という質問に対して、森山会長は『能力の高い人』と即答している。さらには『納得できる麻雀をしっかり打てる人は大歓迎だが、中途半端な実力でプロの世界に入ってしまうことは、かえってその人の人生を不幸にしてしまいかねない。』と付け加えている。

幸か不幸かという価値観は人それぞれだろうが、プロテスト受験を考えている方々には、たった1つの選択が、自分のそして麻雀界の行方をも左右する可能性さえ秘めている、ということを銘記して取り組んでいただきたいと思う。

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