鳳凰の部屋

鳳凰の部屋/『手牌を折る』

勝負は2日目の第2戦に入ります。
前の半荘は運よくオーラスで瀬戸熊のトップを捲り、トップを拾うことができました。
麻雀ではよくある出来事のようですが、一発と裏なしの競技麻雀では現れる頻度が違います。
おそらく半分以下でしょう。
瀬戸熊にすれば、一番マークしていたボクからのマクリですから、つらい展開となります。
当然、次からボクをマークしてくるはずです。
瀬戸熊の麻雀はボクの目から受ける印象は、王道です。
謙虚に配牌とツモを見据え、アガリに向かって邁進する。
もちろん、行くときは行くがオリるときはきっちりオリる。
小手先の技は使わず正々堂々、大技で勝負する。
ただ、他の打ち手と違うのは、攻めの強さと折れない心を持っているところでしょうか。
攻めの強さはピカ一です。攻めと心…これが両方とも素晴らしい。
そして年齢的に打ち盛りであること。彼が今、トップの座でいられる理由は、ここにあるのだと思います。
第7戦は、瀬戸熊がボクの上家、当然、ボクに対しての牌の絞りはきつくなると予想できます。
しかし気にすることはありません、麻雀というゲームは相対で戦う場合、上家より動ける分、下家が有利なのです。
牌は絞られる側より、絞る側の方が不利です。
なぜなら、その仕掛けが空仕掛けやブラフであっても、牌を絞る必要があるからです。
しかしボクは、めったにブラフは使いません。仕掛けて動くからには、必ず理由があるときです。
しない理由はブラフを多用する者は、ブラフで崩れることが多いからです。
東1局のボクの配牌がこう。
二万四万七万八万二索八索一筒四筒七筒南西白中 ドラ二万
これが9巡目にこうなりました。
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配牌からツモは伸びた方ですが、しかし巡目が遅くイマイチ気に入らない。
マンズの形が重く感じます。でも、2枚のドラがあり、これは何としても生かしたい。
なので、オヤの七筒にポンの声を発し、一度手牌を折ります。
手をタンヤオの動ける手に切り替えるのです。先制攻撃と2枚のドラの活用です。
考えて鳴いているのではなく、これは瞬間動作で体の反応です。
ボクはプロの道に入って37年なります。
その間、濃度も打チャン数でも誰にも引けはとらないと思っています。
そこで培った感性を信じて打つ、これがボクの麻雀です。
ボクが動きを見せた途端、すかさず瀬戸熊がツモ切りリーチで圧力をかけてきました。
これが彼の麻雀の決断力とキレの良さです。
向こうはテンパイでこちらは1シャンテンですが、もうこうなったら気合いで真っ向勝負です。
押し込まれてはいけない。
頼みの綱は彼がヤミテンしていたことで、好形テンパイなら即リーチのはずです。
ですから強行突破、こちらの武器は2枚のドラです。
14巡目にやっと追いつき、引き勝つことができました。
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この結果は、前の半荘の流れがそのまま続いているように感じました。
しかし、この半荘のトップは右田です。でもこれでいい、大事なのは瀬戸熊との差なのです。
彼を押さえなければボクの勝ちはないと思っているだけで、右田を軽視しているわけではありません。
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右田は滝沢和典と同期で千葉県在住。歳は少し右田が上です。
麻雀を始めたのは高校1年で、2年のときは仲間にはほとんど負けなかったと云います。
フリーのデビューは18歳と早熟です。A1まで上るのに8年、今期で4年目となります。
これは立派な成績と云えるでしょう。
A2まで上がるのもメディアに登場するのも滝沢の方が速かったはずですが、滝沢も今はB1に陥落。
これも勝負の世界の明暗なのです。
しかしそれは、人生と麻雀の途中経過に過ぎず、真のゴールはずっと先にあるでしょう。

回戦、ボクの予知した通り、この回にやっとボクの風が吹きました。

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まず親満で、主導権を握ります。
大事なのはこの後でいくら加点できるかにあります。
この後、小さなアガリでしたが9種倒牌が2度あり、6本積んでボクのオヤが流れます。
さらに満貫のツモ。
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もうこうなれば、仕上がった状態と云えるでしょう。
そしてこの半チャンの結果はこうです。
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さあ、このまま決まるかと思ったのですが敵もさる者、そう思い通りにさせてなどくれませんでした。
この後のボクは小さいながら2ラスを引きます。
麻雀の女神は、またボクに試練を与えます。
そして10回戦の総合成績がこう。
荒+53.6P
右田+44.8P
瀬戸熊▲23.9P
望月▲72.5P
瀬戸熊との差は約80P…まだ安心はできません。
次の対戦は1週間後。体を休め万全の体調で臨まなくてはなりません。