鳳凰の部屋

鳳凰の部屋/『サプライズ』

では前回に続き、瀬戸熊の八万白打ちの謎の検証に入ります。
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どちらも一瞬の間でしたが、瀬戸熊が考えたことは確かです。目線が手に落ちたから間違いありません。
ボクは勝負の最中は、相手3人の視線を追い、それも推理の材料にします。目の条件反射や輝きには、嘘がないので当たる確率は相当高いと見ます。
瀬戸熊が13巡目に、ドラの四筒を掴んだときの手牌はこう。
四万四万四万六万八万六筒六筒  ポン一万 上向き一万 上向き一万 左向き  ポン西西西 ツモ四筒
途中三万を切らず六筒を落としてマンズに染める手順もありましたが、ボクの親落としを優先したのです。
それはそれで間違いではありません。瀬戸熊はトップ目で、相手のボクが沈んでいますから、オヤ落としをかける手は当然のことです。
瀬戸熊から見れば、ボクの両面の鳴きはタンヤオのドラドラかドラ3枚の仕掛けと見ていますから、だからこのドラは打てない。
手牌も染め手でないので、手が安いという弱みがあります。なので、ここは受けに回り打八万
受けと攻め…知らぬ間に立場が逆転していたのです。あの一瞬の間は、これだったのです。
この後、ボクが二万を打ち出した時の手牌はこうです。
二万は瀬戸熊に対しては強い牌です。
六万七万八万四筒四筒四筒南南南白  チー七索 左向き五索 上向き六索 上向き
そして河がこう。
西一筒 上向き北八筒 上向き中八索 上向き
三索 上向き一索 上向き九索 上向き九索 上向き東九筒 下向き
二万 上向き
瀬戸熊の八万切りの後の二万ですから、強打です。
麻雀には伏せられた手牌と未知のツモがありますから、読みや推理が外れることも間々あります。それがこの局です。
しかし、そこで読みの限界を悟りあきらめてはいけない。大事なのはそこから先です。
それには日常の鍛錬で、読みと推理の精度を高める努力をすること、これが大事なのです。
瀬戸熊は1巡凌いでも、次の安全牌がないから苦しい展開が続きます。そして最後のツモで白
瀬戸熊の決断は、ボクの手を食いタンと呼んだ以上、白を切るべきと考えたに違いありません。
これが2度目の間だったのです。
自分が信じた読みの継続の一打ですから、一貫性のある正しい姿勢といえます。
これは責められない放銃でしょう。
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前回、瀬戸熊の精気が消えた…と述べましたが、本当にボクにはそう見え感じたのです。
(このシリーズの瀬戸熊は終わった―)
これはボクだけでなく、対局者も見ているすべてのプロも感じたはずです。
ところがこの後、瀬戸熊は1,000・2,000をツモり、次のラス親でこれをアガリます。
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これが、瀬戸熊の根性であり精神力なのでしょう。再びボクを沈めてトップに返り咲いたのです。
驚きました。これが2度目のサプライズ。そして1本場、3度目の驚きがこれです。
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12巡目に右田のリーチを受けます。ボクは浮くことがこの局のテーマですから、すぐに引くわけにはいかない。
押しながら引きながら打っていたら、結果がコレです。
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牌姿も受けも変わりましたが、うまくアガれたのは自分でも驚きです。これもサプライズでしょう。
この時、ボクは初めて優勝を意識しました。
このシリーズを振り返れば、ボクはオーラスに強かった印象があります。
麻雀はアガリも打ち込みも、連動します。けれど、サプライズも連動するとは思いもしませんでした。
そしてその驚きは、視聴者にきっと感動を与えることでしょう。
しかしこの日、瀬戸熊の踏ん張りもここまでした。
彼は14回戦にラスを引きます。
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続く15回戦でもラスを食らいます。
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あの瀬戸熊が…冴えない。やはり白打ちで、体に毒が回っているのだと思いました。
これで3日目が終了。そして総合得点がこうです。
荒+99.2P  右田+48.9P  瀬戸熊▲57.8P  望月▲90.3P
この時点でボクの見立ては、望月は圏外。瀬戸熊もほぼ圏外。
ボクの理想は、瀬戸熊に最終日までに80Pの差をつけることでしたから、目的は達したといえます。
いや、デキすぎかも知れません。
明日は右田と一騎打ちになる、と予想しました。
ボクにとっては理想の展開です。
ところがその予想に反し、最終日は思わぬ方向へと麻雀が動いたのです。
(以下次号)