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鳳凰の部屋

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第29期鳳凰戦の軌跡~契機~

2013/06/26
執筆:瀬戸熊 直樹


第29期鳳凰位決定戦7回戦東2局。
親の荒プロのリーチを受けて以下の手牌。

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初日をトップで終え、6回戦も浮きでまとめた時、ついに弱気の虫が顔を出してきた。
決め通りに戦うなら、打三筒として次巡ツモ一万で打五万しておけば、すぐにアガリがあった。
何に怯え逃げているのだろう。
あれ程「勝負しろ」と自分の決め事としてもっとも重要視していたのに、まだ序盤の戦いのこの場面で、トータルトップを意識した逃げの麻雀。読めないなら読まずに感じろと言いたい。
全20回戦で最も恥ずべき一打。

「またお前は昨年の恥ずかしい麻雀をやるのか?」

自分の弱い心に檄を飛ばす。
負けてからの1年間に考えた教訓の1つに、
「放銃しても自分の畑のこやしになるなら良い。でも気持ちが揺れて、相手の畑にまいてはならない」
というものがある。

この一局を境に僕の心は大きく揺れて行く。
「またやってしまった」開かれた荒さんの手牌を見て、天を仰いだ。

人はそれぞれの与えられた時代を生きて行く。自分が生まれた時代を変える事は出来ない。
荒さんと前原さんは昭和を生きてきた。藤崎さんと僕は、昭和と平成を生きてきた。
僕は、荒さんに憧れ、前原さんの強さに驚愕し、藤崎さんの巧さに嫉妬した。
3人のようになりたいと思った。でも、そうはなれない事に気付く。

なぜなら、各々が生きてきた環境、時代までは、絶対に真似できないのだからである。
今後、平成だけを生きてきた新しい世代が、この4人と同じ麻雀を打とうと思っても、同じにはなれないのである。
でも、受け継ぐ事は出来る。それは「イズム」だ。
そのイズムを各世代が受け継いでゆく事こそが、使命なのではないだろうか。
だからこそ、連盟最高峰にふさわしい戦いをしなければならない。
次に続く者たちに見せなければならない。
腕で劣り、気力で戦う僕が、荒さんのリーチに逃げてはならない。
この一局をどこで取り戻すのか。早い段階で戦場へ戻ることが急務となった。

第29期鳳凰位決定戦8回戦東4局1本場。

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7回戦で、引くべきラスを引き、迎えたこの場面。もう一度自分に与えられたチャンス。
八筒。すべての想いを込めて切った牌。僕の生命線である勝負する麻雀。
この牌を切る意味があるの?と思う人も多いであろう。もう理屈ではない場面。
分りやすく述べるなら、

八筒が通る牌なら、切って一歩前進しなければならない。ただし、リーチは無茶な攻めになるのでヤミテン。

八筒で、ロンがかかったなら、やはり暴牌となるので切ってはならないが、先を考えると、打九索、打三筒よりは良しと言える。

※打九索、打三筒はクレバーな打ち方だが、瀬戸熊直樹を保つのが難しくなる。今後の戦い方、特に2日目のこの後3回の半荘の戦い方に、迷いが生じる。

結果は、前原さんがツモアガリ、勝負してもしなくても同じ結果となる。
でも、そうじゃない事を理解して欲しい。
これが切れたという事が、次に繋がるのである。(もちろん僕のスタイルならだが)

人は限られた時間の中を生きている。
時(トキ)を止める事は出来ない。
だからこそ、声を大にして言える。

「流れは必ずある!」

僕は、僕の流れを作る為に、八筒を切った。いや、打たなければならなかった。
自分の為に。そして応援してくれる人の為に。

藤崎さんの先打ちの六筒(先打ちしなければ前原さんに間に合ってしまう)。
荒さんの気迫のリーチ、前原さんの勝負強さ。
この一局こそが、連盟最高峰の戦いであり、これを次世代へ伝える事が、伝統と歴史を生むのだと僕は信じる。

この一局を契機に、また自分を取り戻して行くのであった。

第29期鳳凰位決定戦の軌跡 ~体感~へ続く。