第81回『自分を識るパートⅡ』

 

『自分を識るパートⅡ』

http://archive.archive2020.ma-jan.or.jp/title_fight/10dansen24-fin.php

身近な存在である、滝沢和典が今を遡ること6年ほど前に記した観戦記である。
今でもハッキリと覚えているが、滝沢君に出したメールとは裏腹に、プロリーグの遅刻欠席は心に重く抱えたままだった。

勿論、ペナルティは課せられるのだが、私はプロリーグの対局者に申し訳ない気持ちで一杯だった。
それは、プロであるならばこの日のために調整を重ね、その日に合わせベストの状態に自分を導く。
それが別日対局になるわけだから、相手のモチベーション、負担などを考えれば、対局者に対して、そして、麻雀プロを名乗っていることに対して、申し訳ない気持ちになり、許されざるべきことだと思っていた。

しかし、そう考えてしまうことが私の欠点でもあり、当然、その気持ちが対局にも反映されてしまう。
良い、悪いは別としてペナルティを課せられた以上、そこで心を切り替えるのがプロとして、ハートの強さに繋がるようにも思える。

いずれにしても、自分の気質、性格の弱さは個人差はあるが、自分の弱い部分をしっかり把握しておくことは肝心なことである。

この時の十段戦は幸運にも優勝が叶ったが、多くのことを学ばされた。
一番は体力の衰えである。何しろ当時50歳前後であったのだから、体力が落ちて当然である。
尚且つ、私は腰に爆弾を抱えていた。
それにも拘わらず、当時の体重はマックスで118kg。
20代の頃は77kgをキープしていたわけだから、40kgの負荷を抱えて長時間の戦いは想像以上に身体だけでなく精神にも異常を来す。この対局後、私は1年をかけて、16kg、3年で30kgほど体重を落とした。

私はそうせざるを得ない状況だったから、そうしたまでだが、瀬戸熊直樹は違う。
まだまだ、若いし、体力もある40代である。
それでも大きな対局に備え、走り込みや、体力作りに専念するのは麻雀プロとしての自覚がそうさせるのだろう。

「麻雀だけ打っていても麻雀は強くはならないように思える」

故阿佐田哲也さんの言葉であるが、意味合いは多少違うが、至言だと思う。

 

【変容するということ】

長丁場の戦いであるならば、東1局はある程度の手材料に恵まれたならば、攻めを中心に考える。
何らかの結果、放銃であれば、そこから麻雀の組み立て方を考えれば良いと思う。
アガリという結果に恵まれたならば、そこから、攻めをさらに強くしていけば良いと考える。
その部分は昔からあまり変わっていないように思う。

要は自分の状態を計るためである。悪ければ悪いなりに頭を下げてチャンスを待つ。
良ければ真っ直ぐに打ち進めれば良いだけの事である。
怖いのは受けに走りすぎて、自分の手牌が死んでしまうことである。

滝沢が観戦記を記した時の十段戦は、初日を終えた時点でほぼ勝負の結末は見えていた。
何しろ、4回戦を終えた時点で2位との点差が110P以上あった。
それを大混戦にしてしまったのは、取りこぼしはできないという気持ちから、放銃を(受けを)意識し過ぎ、自分で自分を窮地に追い込んでしまったためである。

2日目を迎えるにあたり、110P差を200P差にしようという意識があったならば、あれほど苦しまずに済んだのに・・・。
この十段戦では、そのことが良い勉強になった。

数か月前の勉強会での一コマ。
東1局、南家7巡目。

一万二万三万四万四万一索二索三索一筒二筒三筒七筒八筒  ドラ白

状況は、私以外は明らかに遅く、各者が九筒を2枚、六筒を1枚場面に飛ばしており、私の目からは六筒九筒が3枚見えていたことと、このあと数巡の間に誰が九筒を掴んでも打ち出される可能性の高い場面であったこと、つまりは、私の河が平凡であったという状況である。

私は「リーチ」の発声と共に、対面に坐していた山井弘に問うた。
「終局後、私のこのリーチに対する貴方の考え方を聞かせてほしい」
「わかりました」
結果は流局。

九筒を打ち出していた下家の手牌に九筒が2枚あった。{勉強会では終局時、全員が手牌を公開する}
リーチを打たねば打ち出されていた可能性が高い。

「僕はリーチを打ちます。アガれれば最良ですし、流局しても手牌を公開するだけでも意味があると思います。」
「貴方なら、そう答えてくれると思ってはいたのだけど・・」

不思議そうな顔をして山井は私を見ていた。
多分、このカタチでリーチを打たない私を見たことがないのだろう。

私はこの半荘、成す術なくラスを引いた。
勿論このアガリ損ないが、原因の全てではないと思うが。

次局私の親番で、本来ならば、前局九筒で放銃していた可能性の高い下家が、満貫のツモアガリでこの半荘を決めた。私が山井に尋ねたのは、私の普段の麻雀フォームを知っているから、自分自身で分からない部分を確認するためである。

私の武器は何と言っても親番のブレイクである。
その為には、如何に良い親番を迎えるかに掛かっている。やはり、南家のアガリは欲しい処ではある。
難しいのは、ヤミテンで3,900を拾いに行くことが良いのか、それとも自分らしく空振り覚悟でリーチを打つべきことなのかである。

一番の問題は、4月辺りからバイオリズムが下降線に入っていることを感じていた。
昨年の夏にヒサトに言ったことがある。
「好調期に入ったようだ」
「それは良かったですね」
先月に記したが、20代の私は夏が低迷期だった。30代にそれを克服したくて麻雀を打ちまくった。
夏がダメということは無くなったが、良い時期もあれば悪い時期もある。
今は、7ヶ月から8ヶ月くらい波の高さは違っても好調の時期が続く。
私の思い込みかもしれないが。

ただ、全てがそうだと思うが良い時がずっと続く人生が無いように、麻雀にも波があると私は思っている。
このことはプロ、アマチュアに関係なく、20代の若い人はとにかく、打って、打ち続けそして、至らない部分、欠けている部分をきちんと反省し考えることが大切だと思う。
それが、40代を過ぎた頃からの経験値の財産となるからである。

私に関して言えば、「連盟チャンネル」「ロン2チャンネル」をかなり観ており、新しい発見や、忘れかけていた肝心なモノを思い出させてもらっている。ロン2もよほどのことがない限り、ほぼ毎日、プレイする。
以前は、プレイした日にチェックしていたが、どうしても感情が入り良くないので、翌日の朝にできるだけ丁寧にチェックしている。その方が客観的に自分を識ることが出来るからだ。

強くなる方法論は幾らでもあるだろう。
無理をせず、自分に合った方法論を見つけることをお奨めする。
それは、例えば日々の麻雀の勝ち負けだけでも良いから、ノートに1年間記し続けるだけでも良いと思う。
それをやり続けられる人は、間違いなく1年後には強くなっていると思う。
小さなことかも知れないが、それが自分を“識る”始めの一歩にはなるものである。

上級/第81回『自分を識るパートⅡ』

 
『自分を識るパートⅡ』
http://archive.ma-jan.or.jp/title_fight/10dansen24-fin.php
身近な存在である、滝沢和典が今を遡ること6年ほど前に記した観戦記である。
今でもハッキリと覚えているが、滝沢君に出したメールとは裏腹に、プロリーグの遅刻欠席は心に重く抱えたままだった。
勿論、ペナルティは課せられるのだが、私はプロリーグの対局者に申し訳ない気持ちで一杯だった。
それは、プロであるならばこの日のために調整を重ね、その日に合わせベストの状態に自分を導く。
それが別日対局になるわけだから、相手のモチベーション、負担などを考えれば、対局者に対して、そして、麻雀プロを名乗っていることに対して、申し訳ない気持ちになり、許されざるべきことだと思っていた。
しかし、そう考えてしまうことが私の欠点でもあり、当然、その気持ちが対局にも反映されてしまう。
良い、悪いは別としてペナルティを課せられた以上、そこで心を切り替えるのがプロとして、ハートの強さに繋がるようにも思える。
いずれにしても、自分の気質、性格の弱さは個人差はあるが、自分の弱い部分をしっかり把握しておくことは肝心なことである。
この時の十段戦は幸運にも優勝が叶ったが、多くのことを学ばされた。
一番は体力の衰えである。何しろ当時50歳前後であったのだから、体力が落ちて当然である。
尚且つ、私は腰に爆弾を抱えていた。
それにも拘わらず、当時の体重はマックスで118kg。
20代の頃は77kgをキープしていたわけだから、40kgの負荷を抱えて長時間の戦いは想像以上に身体だけでなく精神にも異常を来す。この対局後、私は1年をかけて、16kg、3年で30kgほど体重を落とした。
私はそうせざるを得ない状況だったから、そうしたまでだが、瀬戸熊直樹は違う。
まだまだ、若いし、体力もある40代である。
それでも大きな対局に備え、走り込みや、体力作りに専念するのは麻雀プロとしての自覚がそうさせるのだろう。
「麻雀だけ打っていても麻雀は強くはならないように思える」
故阿佐田哲也さんの言葉であるが、意味合いは多少違うが、至言だと思う。
 
【変容するということ】
長丁場の戦いであるならば、東1局はある程度の手材料に恵まれたならば、攻めを中心に考える。
何らかの結果、放銃であれば、そこから麻雀の組み立て方を考えれば良いと思う。
アガリという結果に恵まれたならば、そこから、攻めをさらに強くしていけば良いと考える。
その部分は昔からあまり変わっていないように思う。
要は自分の状態を計るためである。悪ければ悪いなりに頭を下げてチャンスを待つ。
良ければ真っ直ぐに打ち進めれば良いだけの事である。
怖いのは受けに走りすぎて、自分の手牌が死んでしまうことである。
滝沢が観戦記を記した時の十段戦は、初日を終えた時点でほぼ勝負の結末は見えていた。
何しろ、4回戦を終えた時点で2位との点差が110P以上あった。
それを大混戦にしてしまったのは、取りこぼしはできないという気持ちから、放銃を(受けを)意識し過ぎ、自分で自分を窮地に追い込んでしまったためである。
2日目を迎えるにあたり、110P差を200P差にしようという意識があったならば、あれほど苦しまずに済んだのに・・・。
この十段戦では、そのことが良い勉強になった。
数か月前の勉強会での一コマ。
東1局、南家7巡目。
一万二万三万四万四万一索二索三索一筒二筒三筒七筒八筒  ドラ白
状況は、私以外は明らかに遅く、各者が九筒を2枚、六筒を1枚場面に飛ばしており、私の目からは六筒九筒が3枚見えていたことと、このあと数巡の間に誰が九筒を掴んでも打ち出される可能性の高い場面であったこと、つまりは、私の河が平凡であったという状況である。
私は「リーチ」の発声と共に、対面に坐していた山井弘に問うた。
「終局後、私のこのリーチに対する貴方の考え方を聞かせてほしい」
「わかりました」
結果は流局。
九筒を打ち出していた下家の手牌に九筒が2枚あった。{勉強会では終局時、全員が手牌を公開する}
リーチを打たねば打ち出されていた可能性が高い。
「僕はリーチを打ちます。アガれれば最良ですし、流局しても手牌を公開するだけでも意味があると思います。」
「貴方なら、そう答えてくれると思ってはいたのだけど・・」
不思議そうな顔をして山井は私を見ていた。
多分、このカタチでリーチを打たない私を見たことがないのだろう。
私はこの半荘、成す術なくラスを引いた。
勿論このアガリ損ないが、原因の全てではないと思うが。
次局私の親番で、本来ならば、前局九筒で放銃していた可能性の高い下家が、満貫のツモアガリでこの半荘を決めた。私が山井に尋ねたのは、私の普段の麻雀フォームを知っているから、自分自身で分からない部分を確認するためである。
私の武器は何と言っても親番のブレイクである。
その為には、如何に良い親番を迎えるかに掛かっている。やはり、南家のアガリは欲しい処ではある。
難しいのは、ヤミテンで3,900を拾いに行くことが良いのか、それとも自分らしく空振り覚悟でリーチを打つべきことなのかである。
一番の問題は、4月辺りからバイオリズムが下降線に入っていることを感じていた。
昨年の夏にヒサトに言ったことがある。
「好調期に入ったようだ」
「それは良かったですね」
先月に記したが、20代の私は夏が低迷期だった。30代にそれを克服したくて麻雀を打ちまくった。
夏がダメということは無くなったが、良い時期もあれば悪い時期もある。
今は、7ヶ月から8ヶ月くらい波の高さは違っても好調の時期が続く。
私の思い込みかもしれないが。
ただ、全てがそうだと思うが良い時がずっと続く人生が無いように、麻雀にも波があると私は思っている。
このことはプロ、アマチュアに関係なく、20代の若い人はとにかく、打って、打ち続けそして、至らない部分、欠けている部分をきちんと反省し考えることが大切だと思う。
それが、40代を過ぎた頃からの経験値の財産となるからである。
私に関して言えば、「連盟チャンネル」「ロン2チャンネル」をかなり観ており、新しい発見や、忘れかけていた肝心なモノを思い出させてもらっている。ロン2もよほどのことがない限り、ほぼ毎日、プレイする。
以前は、プレイした日にチェックしていたが、どうしても感情が入り良くないので、翌日の朝にできるだけ丁寧にチェックしている。その方が客観的に自分を識ることが出来るからだ。
強くなる方法論は幾らでもあるだろう。
無理をせず、自分に合った方法論を見つけることをお奨めする。
それは、例えば日々の麻雀の勝ち負けだけでも良いから、ノートに1年間記し続けるだけでも良いと思う。
それをやり続けられる人は、間違いなく1年後には強くなっていると思う。
小さなことかも知れないが、それが自分を“識る”始めの一歩にはなるものである。

第21期東北プロリーグ 第5節レポート

Aリーグレポート:青木武

東北リーグ戦も今回が5節で折り返しになる。
後半戦に向けて1節1節が大事になってくる。

1卓(粕谷、吉田、遠藤、工藤、東)
1回戦から打撃戦となる。遠藤が高い手を連発。東がハイテイで四暗刻をツモ。
吉田は箱下になった。抜け番の粕谷はラッキーと思っていたかも知れない。
2回戦から入った粕谷は1着・1着・3着・3着と+39.3Pとポイントを伸ばした。
しかし、もっとポイントを伸ばしたのは遠藤だった。
1回戦も四暗刻が出たにもかかわらず、2万点近くの2着。そのあとも3着・1着・1着と+67.6P。
トータル1位をガッチリキープした。

2卓(皆川、泉、杜、佐藤)
トータル2位の佐藤・3位の皆川・4位の泉・11位の杜の対局。
杜は、これまで不調だが意地を見せ、1回戦は杜の1人浮き1着。
2回戦、佐藤がリーチ ダブ東 ドラ3の18,000を皆川からアガリトップ。
3回戦は泉のトップでこの時点で皆川の1人沈み。
4回戦は皆川の意地のトップ。杜は痛恨の4着で▲2.9Pに終わった。

全員がトップを1回ずつとったが、皆川は▲37.3Pでトータル5位に後退した。

3卓(青木、高橋、渡部、今)
現時点でマイナスの4人だが、残りを考えるとこれ以上のマイナスは厳しくなる。
1回戦 青木が渡部にダブ東 ホンイツを放銃。お返しとばかりに青木が親の時にメンホン 中 を渡部からアガリ返す。結果 渡部の1人沈みで1回戦は終わった。
2回戦 小場を青木が制し連続トップ。3回戦 渡部が大きなトップで巻き返す。
4回戦 起家の青木がピンフ ツモ 三色 の2,600オール。次局 高橋から7,700は8,000をアガるなどで、高橋は途中4,000点くらいしかなくなる。
南場 高橋の親番でリーチ ドラ3を出アガリ、連荘を重ねプラスの2着で終わった。高橋の粘りが見られた半荘だった。青木は+63.6Pで今節初めてのプラス。

次節からの後半戦は更に厳しい対局になるだろう。

Aリーグ

順位 名前 1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 8節 9節 10節 合計 順位
1 遠藤昭太 94.6 73.8 ▲ 24.3 ▲ 23.6 67.6 188.1 1
2 佐藤大介 ▲ 5.8 17.1 57.6 47.3 14.8 131.0 2
3 泉亮多 ▲ 4.6 9.9 40.5 4.1 25.4 75.3 3
4 粕谷勇吉 ▲ 11.2 18.4 ▲ 27.7 44.5 39.3 63.3 4
5 皆川直毅 42.8 ▲ 34.2 69.4 ▲ 1.2 ▲ 37.3 39.5 5
6 工藤宏紀 1.8 1.7 8.4 25.3 ▲ 33.8 3.4 6
7 渡部稔 55.1 25.6 ▲ 37.9 ▲ 56.1 ▲ 1.4 ▲ 14.7 7
8 青木武 ▲ 31.5 ▲ 6.5 ▲ 30.3 ▲ 16.7 63.6 ▲ 21.4 8
9 東幸一郎 12.7 19.6 ▲ 100.0 19.4 5.8 ▲ 42.5 9
10 今貴聡 ▲ 20.4 12.6 ▲ 43.9 34.9 ▲ 29.6 ▲ 46.4 10
11 平田孝章 9.1 ▲ 35.7 21.7 ▲ 23.6 ▲ 50.0 ▲ 78.5 11
12 杜麻沙也 ▲ 57.5 ▲ 14.6 1.6 ▲ 13.5 ▲ 2.9 ▲ 86.9 12
13 高橋清隆 ▲ 58.6 ▲ 20.9 ▲ 0.4 ▲ 50.8 ▲ 32.6 ▲ 163.3 13
14 吉田勝弥 0.6 ▲ 63.7 ▲ 36.7 5.0 ▲ 78.9 ▲ 173.7 14

Bリーグレポート:遠藤昭太

前半戦の終わりとなる第5節、今まで調子の悪い者もここらで巻き返しておきたいところ。

1卓(佐々木、早坂、斎藤、佐藤)
今回はこれまでマイナスが続いていた早坂、佐々木が好調。
早坂は初回トップを飾ると、続けて1着、3着、1着。佐々木も4連続浮き2着で初のプラス成績を収め、これまでの鬱憤を晴らした。

2卓(新田、安ヶ平、三井、大里)
1回戦目、安ヶ平が調子を上げトップになると、2回戦目はプロクイーンでベスト8までいき惜しくも敗れた大里が1位。3回戦目には、ここまで2ラスだった三井が+27.4Pの1人浮きで巻き返した。4回戦は安ヶ平が再びトップで1・2・2・1と文句なしの結果を収めた。
上位陣の三井、新田と同卓した安ヶ平が2人を押さえ込み、首位の三井に2.1P差と急接近。トップの点数が100を切り、現在マイナスの者でもチャンスが出てきた。
5節を終え、後半戦になると自分の立ち位置を意識した立ち回りが要求される。
リーグ戦初体験の新人面々は肝に銘じて頑張って欲しい。

Bリーグ

順位 名前 1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 8節 9節 10節 合計 順位
1 三井光一 ▲ 13.8 36.9 ▲ 4.5 89.3 ▲ 21.1 86.8 1
2 安ヶ平浩希 ▲ 14.5 24.3 10.0 10.6 54.3 84.7 2
3 新田大輔 37.2 0.2 65.8 ▲ 19.5 ▲ 39.8 43.9 3
4 佐藤晃大 3.3 18.0 2.5 18.9 ▲ 63.7 ▲ 21.0 4
5 早坂和人 ▲ 17.6 ▲ 22.7 ▲ 6.2 ▲ 7.0 32.5 ▲ 21.0 5
6 大里奈美 18.1 ▲ 60.9 61.5 ▲ 51.3 ▲ 3.4 ▲ 36.0 6
7 斎藤智大 ▲ 7.9 ▲ 1.8 ▲ 74.0 15.9 ▲ 33.9 ▲ 101.7 7
8 佐々木啓文 ▲ 15.0 ▲ 49.0 ▲ 57.1 ▲ 56.9 45.1 ▲ 132.9 8

東北プロリーグ レポート/第21期東北プロリーグ 第5節レポート

Aリーグレポート:青木武
東北リーグ戦も今回が5節で折り返しになる。
後半戦に向けて1節1節が大事になってくる。
1卓(粕谷、吉田、遠藤、工藤、東)
1回戦から打撃戦となる。遠藤が高い手を連発。東がハイテイで四暗刻をツモ。
吉田は箱下になった。抜け番の粕谷はラッキーと思っていたかも知れない。
2回戦から入った粕谷は1着・1着・3着・3着と+39.3Pとポイントを伸ばした。
しかし、もっとポイントを伸ばしたのは遠藤だった。
1回戦も四暗刻が出たにもかかわらず、2万点近くの2着。そのあとも3着・1着・1着と+67.6P。
トータル1位をガッチリキープした。
2卓(皆川、泉、杜、佐藤)
トータル2位の佐藤・3位の皆川・4位の泉・11位の杜の対局。
杜は、これまで不調だが意地を見せ、1回戦は杜の1人浮き1着。
2回戦、佐藤がリーチ ダブ東 ドラ3の18,000を皆川からアガリトップ。
3回戦は泉のトップでこの時点で皆川の1人沈み。
4回戦は皆川の意地のトップ。杜は痛恨の4着で▲2.9Pに終わった。
全員がトップを1回ずつとったが、皆川は▲37.3Pでトータル5位に後退した。
3卓(青木、高橋、渡部、今)
現時点でマイナスの4人だが、残りを考えるとこれ以上のマイナスは厳しくなる。
1回戦 青木が渡部にダブ東 ホンイツを放銃。お返しとばかりに青木が親の時にメンホン 中 を渡部からアガリ返す。結果 渡部の1人沈みで1回戦は終わった。
2回戦 小場を青木が制し連続トップ。3回戦 渡部が大きなトップで巻き返す。
4回戦 起家の青木がピンフ ツモ 三色 の2,600オール。次局 高橋から7,700は8,000をアガるなどで、高橋は途中4,000点くらいしかなくなる。
南場 高橋の親番でリーチ ドラ3を出アガリ、連荘を重ねプラスの2着で終わった。高橋の粘りが見られた半荘だった。青木は+63.6Pで今節初めてのプラス。
次節からの後半戦は更に厳しい対局になるだろう。
Aリーグ

順位 名前 1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 8節 9節 10節 合計 順位
1 遠藤昭太 94.6 73.8 ▲ 24.3 ▲ 23.6 67.6 188.1 1
2 佐藤大介 ▲ 5.8 17.1 57.6 47.3 14.8 131.0 2
3 泉亮多 ▲ 4.6 9.9 40.5 4.1 25.4 75.3 3
4 粕谷勇吉 ▲ 11.2 18.4 ▲ 27.7 44.5 39.3 63.3 4
5 皆川直毅 42.8 ▲ 34.2 69.4 ▲ 1.2 ▲ 37.3 39.5 5
6 工藤宏紀 1.8 1.7 8.4 25.3 ▲ 33.8 3.4 6
7 渡部稔 55.1 25.6 ▲ 37.9 ▲ 56.1 ▲ 1.4 ▲ 14.7 7
8 青木武 ▲ 31.5 ▲ 6.5 ▲ 30.3 ▲ 16.7 63.6 ▲ 21.4 8
9 東幸一郎 12.7 19.6 ▲ 100.0 19.4 5.8 ▲ 42.5 9
10 今貴聡 ▲ 20.4 12.6 ▲ 43.9 34.9 ▲ 29.6 ▲ 46.4 10
11 平田孝章 9.1 ▲ 35.7 21.7 ▲ 23.6 ▲ 50.0 ▲ 78.5 11
12 杜麻沙也 ▲ 57.5 ▲ 14.6 1.6 ▲ 13.5 ▲ 2.9 ▲ 86.9 12
13 高橋清隆 ▲ 58.6 ▲ 20.9 ▲ 0.4 ▲ 50.8 ▲ 32.6 ▲ 163.3 13
14 吉田勝弥 0.6 ▲ 63.7 ▲ 36.7 5.0 ▲ 78.9 ▲ 173.7 14

Bリーグレポート:遠藤昭太
前半戦の終わりとなる第5節、今まで調子の悪い者もここらで巻き返しておきたいところ。
1卓(佐々木、早坂、斎藤、佐藤)
今回はこれまでマイナスが続いていた早坂、佐々木が好調。
早坂は初回トップを飾ると、続けて1着、3着、1着。佐々木も4連続浮き2着で初のプラス成績を収め、これまでの鬱憤を晴らした。
2卓(新田、安ヶ平、三井、大里)
1回戦目、安ヶ平が調子を上げトップになると、2回戦目はプロクイーンでベスト8までいき惜しくも敗れた大里が1位。3回戦目には、ここまで2ラスだった三井が+27.4Pの1人浮きで巻き返した。4回戦は安ヶ平が再びトップで1・2・2・1と文句なしの結果を収めた。
上位陣の三井、新田と同卓した安ヶ平が2人を押さえ込み、首位の三井に2.1P差と急接近。トップの点数が100を切り、現在マイナスの者でもチャンスが出てきた。
5節を終え、後半戦になると自分の立ち位置を意識した立ち回りが要求される。
リーグ戦初体験の新人面々は肝に銘じて頑張って欲しい。
Bリーグ

順位 名前 1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 8節 9節 10節 合計 順位
1 三井光一 ▲ 13.8 36.9 ▲ 4.5 89.3 ▲ 21.1 86.8 1
2 安ヶ平浩希 ▲ 14.5 24.3 10.0 10.6 54.3 84.7 2
3 新田大輔 37.2 0.2 65.8 ▲ 19.5 ▲ 39.8 43.9 3
4 佐藤晃大 3.3 18.0 2.5 18.9 ▲ 63.7 ▲ 21.0 4
5 早坂和人 ▲ 17.6 ▲ 22.7 ▲ 6.2 ▲ 7.0 32.5 ▲ 21.0 5
6 大里奈美 18.1 ▲ 60.9 61.5 ▲ 51.3 ▲ 3.4 ▲ 36.0 6
7 斎藤智大 ▲ 7.9 ▲ 1.8 ▲ 74.0 15.9 ▲ 33.9 ▲ 101.7 7
8 佐々木啓文 ▲ 15.0 ▲ 49.0 ▲ 57.1 ▲ 56.9 45.1 ▲ 132.9 8

第3期 広島リーグ(前期) 最終節成績表

順位 名前 プロ/アマ 1節 2節 3節 4節 5節 6節 合計 順位
1 清水 真志郎 プロ ▲ 24.5 45.9 90.0 ▲ 12.6 ▲ 20.2 135.0 213.6 1
2 寺戸 彬 アマ 6.9 ▲ 3.6 ▲ 2.5 73.6 15.0 82.3 171.7 2
3 神門 直樹 プロ 23.6 53.0 72.3 65.5 ▲ 18.2 ▲ 38.3 157.9 3
4 沖田 賢一 プロ 47.2 ▲ 1.0 16.7 25.8 22.5 32.9 144.1 4
5 安田 純 アマ 5.3 ▲ 15.3 20.6 34.2 58.0 ▲ 76.9 25.9 5
6 上利 大輝 アマ ▲ 40.0 71.9 ▲ 12.7 34.5 12.2 ▲ 40.0 25.9 6
7 木村 尚二 アマ 26.3 0.9 23.1 19.3 ▲ 94.1 ▲ 11.5 ▲ 36.0 7
8 豊内 雄二 アマ ▲ 23.4 37.9 ▲ 27.7 24.2 23.9 ▲ 75.2 ▲ 40.3 8
9 松浦 篤 アマ ▲ 28.1 ▲ 54.0 8.0 ▲ 40.0 31.9 23.6 ▲ 58.6 9
10 藤原 海斗 アマ ▲ 20.5 ▲ 26.2 ▲ 9.4 2.6 14.3 ▲ 49.3 ▲ 88.5 10
11 荻巣 健人 プロ 59.3 5.2 ▲ 68.9 ▲ 23.7 ▲ 40.0 ▲ 40.0 ▲ 108.1 11
12 井筒 弘至 アマ ▲ 60.2 23.2 9.4 ▲ 42.9 ▲ 13.5 ▲ 40.0 ▲ 124.0 12
13 根石 宣昌 アマ ▲ 22.7 50.0 ▲ 39.6 ▲ 18.1 ▲ 32.7 ▲ 62.9 ▲ 126.0 13
14 田中 晶太郎 アマ ▲ 54.3 ▲ 44.8 ▲ 22.2 ▲ 21.4 ▲ 13.9 10.8 ▲ 145.8 14
15 亀井 貴之 プロ ▲ 79.9 ▲ 89.4 ▲ 8.4 ▲ 124.9 32.2 ▲ 40.0 ▲ 310.4 15
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広島リーグ 成績表/第3期 広島リーグ(前期) 最終節成績表

順位 名前 プロ/アマ 1節 2節 3節 4節 5節 6節 合計 順位
1 清水 真志郎 プロ ▲ 24.5 45.9 90.0 ▲ 12.6 ▲ 20.2 135.0 213.6 1
2 寺戸 彬 アマ 6.9 ▲ 3.6 ▲ 2.5 73.6 15.0 82.3 171.7 2
3 神門 直樹 プロ 23.6 53.0 72.3 65.5 ▲ 18.2 ▲ 38.3 157.9 3
4 沖田 賢一 プロ 47.2 ▲ 1.0 16.7 25.8 22.5 32.9 144.1 4
5 安田 純 アマ 5.3 ▲ 15.3 20.6 34.2 58.0 ▲ 76.9 25.9 5
6 上利 大輝 アマ ▲ 40.0 71.9 ▲ 12.7 34.5 12.2 ▲ 40.0 25.9 6
7 木村 尚二 アマ 26.3 0.9 23.1 19.3 ▲ 94.1 ▲ 11.5 ▲ 36.0 7
8 豊内 雄二 アマ ▲ 23.4 37.9 ▲ 27.7 24.2 23.9 ▲ 75.2 ▲ 40.3 8
9 松浦 篤 アマ ▲ 28.1 ▲ 54.0 8.0 ▲ 40.0 31.9 23.6 ▲ 58.6 9
10 藤原 海斗 アマ ▲ 20.5 ▲ 26.2 ▲ 9.4 2.6 14.3 ▲ 49.3 ▲ 88.5 10
11 荻巣 健人 プロ 59.3 5.2 ▲ 68.9 ▲ 23.7 ▲ 40.0 ▲ 40.0 ▲ 108.1 11
12 井筒 弘至 アマ ▲ 60.2 23.2 9.4 ▲ 42.9 ▲ 13.5 ▲ 40.0 ▲ 124.0 12
13 根石 宣昌 アマ ▲ 22.7 50.0 ▲ 39.6 ▲ 18.1 ▲ 32.7 ▲ 62.9 ▲ 126.0 13
14 田中 晶太郎 アマ ▲ 54.3 ▲ 44.8 ▲ 22.2 ▲ 21.4 ▲ 13.9 10.8 ▲ 145.8 14
15 亀井 貴之 プロ ▲ 79.9 ▲ 89.4 ▲ 8.4 ▲ 124.9 32.2 ▲ 40.0 ▲ 310.4 15
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第30期プロリーグ A1 第6節レポート

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いよいよ第6節と後半戦が始まった。
まだ残り4節あると自分の麻雀を貫くのか、それとも現在のポイントを踏まえ思いきった策にでるのか。
そういったところも見所のひとつである。

東1局、A卓でいきなりの大物手が炸裂。
親の近藤がリーチ後に八万をツモ切ると、沢崎からロンの声が。

八万八万白白発発発中中中  暗カン牌の背六万六万牌の背  ロン八万

ホンイツ三暗刻トイトイ小三元の三倍満であった。
(Aルールではダブル役満はなく、白をツモっても32,000点となる)

続く東2局も沢崎が、

二万二万三万三万四万四万二索三索四索三筒四筒八筒八筒  ドラ八筒  ロン二筒

このタンピン三色イーペーコードラ2の跳満。
このまま沢崎が突き抜けると思われたが、百戦錬磨の荒と古川は数々の技を繰り出し、しっかりとプラスをキープした。一方、厳しい24,000点の放銃スタートとなった近藤は、箱を割った1人沈みのラスとなってしまった。

A卓は、沢崎が1回戦のリードを守って+30.6Pとし、トータルでも+121.9P。決定戦争いで一歩リードした。

近藤は2回戦で1人浮きのトップを取り返したものの、3、4回戦に繋げることができず▲27.6P。
降級ボーダーと約55P差と厳しい位置になってしまった。

続いてC卓3回戦。1、2回戦を連勝とした望月が、東1局に伊藤とのリーチ合戦に競り勝ち1,300・2,600を引き、今半荘もリードしていく。続く東2局の親でも、藤崎の三色リーチを掻い潜り3,900のアガリ。持ち点は早くも40,000点を越え、望月の独壇場となりつつあった。しかし、伊藤がこれに待ったをかける。
東3局1本場。先手を取ったのはここまで不調の猿川。本手が入り6巡目にリーチ

二万三万四万七万八万四索五索六索五筒五筒七筒八筒九筒  ドラ五筒

ここまで、リーチにはしっかりと対応していた伊藤だったが、相手が不調の猿川ならと全面対決にいく。
7巡目

三索五索七索八索九索一筒八筒北北白白中中

ここから中をポン。すぐに北もポンして追い付く。

三索五索七索八索九索白白   ポン北北北  ポン中中中

次巡、二索を引き万全の形になって押していく。決着は16巡目、猿川が一索を掴んで伊藤のアガリとなった。

二索三索七索八索九索白白
ポン北北北  ポン中中中  ロン一索

仕掛けた瞬間は形が苦しいのだが、大局を見極めた素晴らしいアガリとなった。
伊藤はオーラスにも

一筒二筒三筒四筒四筒四筒五筒五筒六筒六筒六筒七筒八筒  ロン六筒  ドラ西

このアガリを決めトップとなった。
続く4回戦でも伊藤は1人浮きのトップを取り、この日+57.3P。一気に決定戦圏内に浮上した。
4回戦でも伊藤の戦い方で興味深い局があった。西家の藤崎が、一万ポン、西ポンと仕掛けたところで、伊藤の手牌は以下。

四万五万七万九万一索一索二索四索二筒三筒四筒五筒白中  ドラ三索

ここから白を打ち出していく。藤崎の2フーロを考えれば到底攻められる牌姿ではない。
しかし、相手との距離感を見極められているからこその攻めである。
流局となりアガリには結びつかなかったが、伊藤の最終形は、

四万五万一索一索一索二索三索三索四索五索三筒四筒五筒

ここまでに育っていた。伊藤のその判断力は見るものを惹き付けるすばらしいものであった。

来月に行われるプロリーグ第7節からは、ニコニコ生放送で配信予定となっている。
これまで麻雀番組といえば、タイトル戦の決勝戦がほとんどであった。決勝戦は誰もが優勝を目指した攻めと攻め、意地と意地のぶつかり合いが醍醐味だが、リーグ戦は12人中3位になるための戦いである。

荒の言葉を借りれば「いかに1年をまとめるか」。そういった戦いである。
その中には、勝ちにいく戦いだけでなく「負けない戦い」といった、これまでの決勝戦にはなかった面白さが詰まっている。

トッププロがその全てを懸けて戦うリーグ戦は、間違いなく熱いものになるであろう。

プロリーグ(鳳凰戦)レポート/第30期プロリーグ A1 第6節レポート

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いよいよ第6節と後半戦が始まった。
まだ残り4節あると自分の麻雀を貫くのか、それとも現在のポイントを踏まえ思いきった策にでるのか。
そういったところも見所のひとつである。
東1局、A卓でいきなりの大物手が炸裂。
親の近藤がリーチ後に八万をツモ切ると、沢崎からロンの声が。
八万八万白白発発発中中中  暗カン牌の背六万六万牌の背  ロン八万
ホンイツ三暗刻トイトイ小三元の三倍満であった。
(Aルールではダブル役満はなく、白をツモっても32,000点となる)
続く東2局も沢崎が、
二万二万三万三万四万四万二索三索四索三筒四筒八筒八筒  ドラ八筒  ロン二筒
このタンピン三色イーペーコードラ2の跳満。
このまま沢崎が突き抜けると思われたが、百戦錬磨の荒と古川は数々の技を繰り出し、しっかりとプラスをキープした。一方、厳しい24,000点の放銃スタートとなった近藤は、箱を割った1人沈みのラスとなってしまった。
A卓は、沢崎が1回戦のリードを守って+30.6Pとし、トータルでも+121.9P。決定戦争いで一歩リードした。
近藤は2回戦で1人浮きのトップを取り返したものの、3、4回戦に繋げることができず▲27.6P。
降級ボーダーと約55P差と厳しい位置になってしまった。
続いてC卓3回戦。1、2回戦を連勝とした望月が、東1局に伊藤とのリーチ合戦に競り勝ち1,300・2,600を引き、今半荘もリードしていく。続く東2局の親でも、藤崎の三色リーチを掻い潜り3,900のアガリ。持ち点は早くも40,000点を越え、望月の独壇場となりつつあった。しかし、伊藤がこれに待ったをかける。
東3局1本場。先手を取ったのはここまで不調の猿川。本手が入り6巡目にリーチ
二万三万四万七万八万四索五索六索五筒五筒七筒八筒九筒  ドラ五筒
ここまで、リーチにはしっかりと対応していた伊藤だったが、相手が不調の猿川ならと全面対決にいく。
7巡目
三索五索七索八索九索一筒八筒北北白白中中
ここから中をポン。すぐに北もポンして追い付く。
三索五索七索八索九索白白   ポン北北北  ポン中中中
次巡、二索を引き万全の形になって押していく。決着は16巡目、猿川が一索を掴んで伊藤のアガリとなった。
二索三索七索八索九索白白
ポン北北北  ポン中中中  ロン一索
仕掛けた瞬間は形が苦しいのだが、大局を見極めた素晴らしいアガリとなった。
伊藤はオーラスにも
一筒二筒三筒四筒四筒四筒五筒五筒六筒六筒六筒七筒八筒  ロン六筒  ドラ西
このアガリを決めトップとなった。
続く4回戦でも伊藤は1人浮きのトップを取り、この日+57.3P。一気に決定戦圏内に浮上した。
4回戦でも伊藤の戦い方で興味深い局があった。西家の藤崎が、一万ポン、西ポンと仕掛けたところで、伊藤の手牌は以下。
四万五万七万九万一索一索二索四索二筒三筒四筒五筒白中  ドラ三索
ここから白を打ち出していく。藤崎の2フーロを考えれば到底攻められる牌姿ではない。
しかし、相手との距離感を見極められているからこその攻めである。
流局となりアガリには結びつかなかったが、伊藤の最終形は、
四万五万一索一索一索二索三索三索四索五索三筒四筒五筒
ここまでに育っていた。伊藤のその判断力は見るものを惹き付けるすばらしいものであった。
来月に行われるプロリーグ第7節からは、ニコニコ生放送で配信予定となっている。
これまで麻雀番組といえば、タイトル戦の決勝戦がほとんどであった。決勝戦は誰もが優勝を目指した攻めと攻め、意地と意地のぶつかり合いが醍醐味だが、リーグ戦は12人中3位になるための戦いである。
荒の言葉を借りれば「いかに1年をまとめるか」。そういった戦いである。
その中には、勝ちにいく戦いだけでなく「負けない戦い」といった、これまでの決勝戦にはなかった面白さが詰まっている。
トッププロがその全てを懸けて戦うリーグ戦は、間違いなく熱いものになるであろう。

第30期プロリーグ A2 第6節レポート

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突然の話ではあるが、プロ連盟では10月のリーグ戦からA1、A2リーグ共に、ニコニコ生放送での配信が決定した。(A2リーグは一部の対戦)

※現在のところ配信は予定となっております。
決定後、詳しくは日本プロ麻雀連盟ホームページで発表いたします。

予てからリーグ戦の最高峰であるAリーグの対局を放送するような時代が来ることを熱望していた私にとっても、プロの公式戦を中々目の当たりにすることが出来なかった麻雀ファンにとっても、この試みは画期的であり且つ非常に有意義なモノになることは間違いない。

モンドから始まった麻雀番組も、ついにリーグ戦の模様を全国の皆様へ生放送でお伝えできるようになったかと思うと、プレーヤーの1人としては非常に身の引き締まる想いでいっぱいである。

これもひとえに、先人たちがここまで麻雀界を絶えることなく引っ張ってきてくださったことと、諸先輩方の尽力のおかげだという事に、感謝しても、し尽せないくらいだ。このような時代に一プレーヤーとして対局出来ることに、私は多くの幸せを感じ、そしてまたこの流れを継続させていく事が出来る様に、更なる精進を重ねて行く事が必要だという事を痛感している。

時代が映像媒体へと移り変わることに対して多くの期待感があることは間違いない。
そういった現実に対し、去りゆく文化があることもまた、事実なのである。
それは、観戦記やレポートといった活字媒体。
このA2リーグレポートも同様である。

これからの時代は、画面を飾るプレーヤーを成長させていくのは視聴者の皆様の声である。
誤魔化しのきかないプレーや、リアルな視聴者の皆様の反応に、番組も、選手も、そして業界も成長させられるのである。

しかし、活字媒体で選手を光らせるのは、選手のパフォーマンスを生かす書き手の個性と能力。
上げるも下げるもその書き手の意思1つだった。
事実私も、選手の良い所を光らせたく、多くの凡プレーには目を瞑ってきたこともままある。

ペンの力は偉大である。持ち上げることも、貶めることも、自由自在。
それは、このレポートを楽しみに読んでくださっているファンの皆様に、Aリーグの対局の素晴らしさを伝える一心だったことをここに詫びたい。

プロ連盟を愛するが故に、選手を輝かせたいが故に、麻雀の面白さ、素晴らしさを伝えたいが故に、若干の脚色が入っていた部分もあるだろう。

しかし…

これからは誤魔化しが全く効かない。
選手の能力と個性、そして想いをどのようにして伝えるかは選手個人の力量にかかっているし、解説が入っていたとしても、それを判断するのは最終的には視聴者の皆様なのだ。

良い部分を光り輝かせ、負の部分をオブラートで包みこむ。
そのような文法を使ってきたことに私は強く反省している。しかしこれからは各選手のレベルが白日の下に晒されることになるのだ。そうなれば、現在私が感じている真実をここに記す必要性があるだろう。

A1リーグで戦っている私が感じている事。それは、A2リーグのレベルの格差。
上位で昇級を競い合い、A1で戦うことに夢焦がれている者。また、この世界で生き抜くことを心に決め、人生を掛けてこの世界で勝負しようと考えている者。そういった想いの下戦っている選手たちと、一般の選手達とはいろいろな意味で大きな違いがあることは事実である。

それらは今後、映像を目にした視聴者の皆様の方が強く感じることなのかもしれない。
普段からプロ意識を持って映像媒体で活躍している選手と、今後初めて映像に映る選手とは、いろいろな意味で大きな差があることだろう。

最初は罵倒されることもあるかもしれない。
選手間で大きな格差を感じるかもしれない。

しかしこれを機に、多くの選手たちの意識が変わってくれることを願いたいのだ。
プロであるということの自覚と責任を。
自分の打牌の裏側に、多くのファンの声援があるという事を意識してほしいのだ。

そういった経験を経て各自がさらにレベルアップすることが、この世界が支持される絶対条件になり得るのだから。

映像を見て、さらにAリーグを夢見る選手が増えることは間違いない。
多くの麻雀ファンの中から、麻雀プロを志す者も今以上に多くなるはずだ。
そういった『目』に育てられることを選手は意識して、これからのリーグ戦を戦っていってもらいたいと願っている。

話は大きく逸れてしまったが、今節注目したのは首位の勝又の卓。
共に昇級を争い上位につける前田と白鳥、さらには元A1の右田と、今期苦しむ滝沢が相手だ。
この卓では、各自の個性が十二分に発揮された内容となった。

まずは東1局、右田と滝沢の個性がぶつかる。
親・右田の配牌。

四万四筒七筒八筒九筒二索二索五索六索六索八索八索発発  ドラ七万

この配牌から何と右田は打四筒!そして次巡ツモ西で打五索
右田曰く「緑一色を見据えて」とのこと。この牌姿、どこからでも仕掛けていくということだ。

これを映像で見た視聴者にはどう伝わるだろうか?
良し悪しは別として、この強烈な個性と右田の想いが、画面越しに伝えることができるだろうか?

これに対し、滝沢は正確な手順で応戦する。

視聴者が見ても惚れ惚れするような手牌進行で歩を進めると、ロスなく7巡目にリーチ。
六筒を暗カン後、最速手順で満貫をツモ。

五万六万七万七万八万七筒八筒九筒北北  暗カン牌の背六筒六筒牌の背  リーチ  ツモ九万  ドラ七万

誰が見ても納得する華麗なアガリを見せた滝沢と、自らの想いを打牌に乗せた右田のフォームはまるで対照的だ。どちらを支持するかは見る人それぞれだろう。そういったぶつかりあいを見ることが出来るのがAリーグの魅力だろうし、これから視聴者の皆様に注目してほしい部分でもある。

続いては首位を走る勝又の思考と対応に触れよう。
東2局、親・勝又の6巡目、

五筒六筒七筒七筒三索三索四索六索六索八索八索九索九索  ツモ四筒  ドラ六筒

この七対子1シャンテンにツモ四筒で、2シャンテン戻しの打九索。タンヤオに柔軟に移行出来るのも首位に立つ余裕なのか。さらにツモ四筒九索、ツモ三筒四索としたあと、滝沢の切った三索をポン。手を決めてしまう七対子より、柔軟な形を求めた勝又。この局をテンパイと連荘を果たすと、続く1本場はしっかりとヤミテン。

四万五万六万六万七万八万四筒五筒六筒六索七索八索八索  ロン五索 ドラ八索

僅か5巡での11,600。首位を走る勝又にとっては十分なリードとなった。
この手に飛び込んでしまったのは滝沢。滝沢の手もテンパイで、

四万五万六万七万三筒四筒五筒三索三索五索七索八索九索  ツモ四万  打五索  ドラ八索

手順が正確な故の放銃。致し方ないと言えばそれまでだが、これが今期好調の勝又と不振に喘ぐ滝沢との勢いの差か。滝沢の手順は全く問題がないのだが、少しでも手順を外せば逆に放銃を免れたというのは皮肉としか言いようがない。こういった細かい部分を今後目の当たりに出来ることも映像の魅力の1つだが、結果だけ追ってしまうと滝沢の魅力に気が付く事無く過ぎ去ってしまう可能性も否定できない一瞬だった。

勢いに乗る勝又は続く東2局2本場は5巡目にリーチ。

三万四万五万七万八万四筒四筒四筒六索七索八索九索九索  リーチ  ドラ西

先程のヤミテンがあるだけに、3者共踏み込めず流局。
こういった押し引きの強弱も勝又の強みなのだろう。

勝又の戦いはこの日も終始安定。
仕掛けとリーチ、ヤミテンのバランスが抜群で、相手の攻勢にも余裕を持って対応している所が印象的だった。
例えば2回戦南3局親番で、

二万二万一索一索五索六索六索七索七索七索八索八索九索  ドラ東

この1シャンテンから四索をチーすると、次巡ツモ五索ですぐに清一色のテンパイ。
七索をツモ切ると白鳥から六索が出て12,000。

また続く3回戦では東1局6巡目に、

九万九万三索四索五索七索七索七索東東東発発  ドラ一万

すぐにでもホンイツに移行しそうなこの手を即リーチ。
一発でドラ表示牌の九万を引きアガリ2,000・4,000。
さらには東4局、

七万八万九万四索四索四索五索六索七索八索九索二筒三筒  ドラ四索

ドラが暗刻のこの手はスッとヤミに構え、すんなりと2,000・4,000を引きアガる強さ。
今節もポイントを77Pも積み上げ、1人独走の+226.7Pと悲願のA1昇級に一歩前進した。

勝又と同卓の前田と白鳥は終始我慢の展開。2人ともポイントを減らしたものの、何とか昇級前線に踏みとどまった感があるだけに、次節以降の戦いに注目したいところだ。

2位・石渡と、5位・四柳の卓では、佐々木が初戦から大爆発!東2局の親番で7本場まで積み上げ、一気に七万点越え。このトップで昇級争いに絡んだかに見えたが2回戦以降失速。しかし5回戦オーラスに、

一索一索九索九索発発発  ポン東東東  ポン北北北  ロン九索

この24,000で何とか持ちこたえた格好になったが、本人としてはまだまだ納得のいかないところだろう。

もう1つの卓では非常に面白い局面があったのでここに紹介したい。
1回戦オーラス、5万点を超えるトップ目の山田が2フーロでテンパイ。

五万六万八万八万五索六索七索  チー五万四万六万  ポン白白白  ドラ五筒

この仕掛けに対し山井がリーチ。

九万九万五筒六筒七筒八筒九筒一索一索二索二索三索三索  リーチ  ドラ五筒

このリーチを受け、山田が掴んだのは山井の当たり牌四筒。この四筒を山田は冷静に抑え打五万と放銃を回避。
すると、ここに北家・仁平は打二筒と勝負を挑む。
この二筒を親の黒沢がチーすると、仁平は意を決してツモ切りリーチを敢行。

終局するかと思われたが、ホウテイ牌は山井の下へ。
山井が六筒をツモ切るとこれが仁平に捕まる。

二筒三筒四筒五筒五筒六筒六筒七筒七筒七筒北北北  リーチ  ロン六筒

この12,000で仁平は浮きに回り、山井の1人沈みに。
この放銃が引き金となったか、山井はこの日大きくポイントを減らすこととなり、昇級争いから一歩後退する結果となってしまった。

対局後山井は、「局面を長引かせるリーチは、アガリ逃しと同じ」と、このリーチを打ったことを深く反省していた。しかし映像での対局を得意とする山井だけに、ここからの巻き返しも十分に考えられるのではないか。

この日の結果で勝又が1人大きく抜け出し、縦長の展開となってしまった。
しかし、残り一枠の昇級争いと、降級争いはさらに混戦模様に拍車がかかった格好となっている。

こうなると残り3節、対戦時間と環境が変わる中での戦いだという事が大きく結果に左右するのではないかと推測する。初めて映像に映る選手の戦い方に注目して、来節以降はニコ生での観戦を楽しみたいと個人的には考えている。
※現在のところ配信は予定となっております。

Aリーグの生放送が始まることで、選手の意識レベルも、視聴者や解説者のレベルも飛躍的に向上することが予想される。そうなった時には、実力の無いものが自然淘汰されることになることもまた事実だ。

本物だけが生き残り、力の無いものが去る。
プロ連盟にとっても、選手たちにとっても生き残りをかけた戦いが始まる今、各自がどのようなことが問われているかを考えることから、これからの第一歩が始まることだろう。

来月から生放送が始まるが、選手たちの戦いは既に始まっている。
それは、選手間の争いではなく、自分自身の意識レベルの向上と、多くのファンに対しての勝負だということを選手自身は忘れてはならないはずだ。

これからの生き残りをかけた争いにぜひ注目してほしい。
きっと視聴者の皆様の心に訴えかけることの出来る戦いが繰り広げられるはずであるから。

プロリーグ(鳳凰戦)レポート/第30期プロリーグ A2 第6節レポート

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突然の話ではあるが、プロ連盟では10月のリーグ戦からA1、A2リーグ共に、ニコニコ生放送での配信が決定した。(A2リーグは一部の対戦)
※現在のところ配信は予定となっております。
決定後、詳しくは日本プロ麻雀連盟ホームページで発表いたします。
予てからリーグ戦の最高峰であるAリーグの対局を放送するような時代が来ることを熱望していた私にとっても、プロの公式戦を中々目の当たりにすることが出来なかった麻雀ファンにとっても、この試みは画期的であり且つ非常に有意義なモノになることは間違いない。
モンドから始まった麻雀番組も、ついにリーグ戦の模様を全国の皆様へ生放送でお伝えできるようになったかと思うと、プレーヤーの1人としては非常に身の引き締まる想いでいっぱいである。
これもひとえに、先人たちがここまで麻雀界を絶えることなく引っ張ってきてくださったことと、諸先輩方の尽力のおかげだという事に、感謝しても、し尽せないくらいだ。このような時代に一プレーヤーとして対局出来ることに、私は多くの幸せを感じ、そしてまたこの流れを継続させていく事が出来る様に、更なる精進を重ねて行く事が必要だという事を痛感している。
時代が映像媒体へと移り変わることに対して多くの期待感があることは間違いない。
そういった現実に対し、去りゆく文化があることもまた、事実なのである。
それは、観戦記やレポートといった活字媒体。
このA2リーグレポートも同様である。
これからの時代は、画面を飾るプレーヤーを成長させていくのは視聴者の皆様の声である。
誤魔化しのきかないプレーや、リアルな視聴者の皆様の反応に、番組も、選手も、そして業界も成長させられるのである。
しかし、活字媒体で選手を光らせるのは、選手のパフォーマンスを生かす書き手の個性と能力。
上げるも下げるもその書き手の意思1つだった。
事実私も、選手の良い所を光らせたく、多くの凡プレーには目を瞑ってきたこともままある。
ペンの力は偉大である。持ち上げることも、貶めることも、自由自在。
それは、このレポートを楽しみに読んでくださっているファンの皆様に、Aリーグの対局の素晴らしさを伝える一心だったことをここに詫びたい。
プロ連盟を愛するが故に、選手を輝かせたいが故に、麻雀の面白さ、素晴らしさを伝えたいが故に、若干の脚色が入っていた部分もあるだろう。
しかし…
これからは誤魔化しが全く効かない。
選手の能力と個性、そして想いをどのようにして伝えるかは選手個人の力量にかかっているし、解説が入っていたとしても、それを判断するのは最終的には視聴者の皆様なのだ。
良い部分を光り輝かせ、負の部分をオブラートで包みこむ。
そのような文法を使ってきたことに私は強く反省している。しかしこれからは各選手のレベルが白日の下に晒されることになるのだ。そうなれば、現在私が感じている真実をここに記す必要性があるだろう。
A1リーグで戦っている私が感じている事。それは、A2リーグのレベルの格差。
上位で昇級を競い合い、A1で戦うことに夢焦がれている者。また、この世界で生き抜くことを心に決め、人生を掛けてこの世界で勝負しようと考えている者。そういった想いの下戦っている選手たちと、一般の選手達とはいろいろな意味で大きな違いがあることは事実である。
それらは今後、映像を目にした視聴者の皆様の方が強く感じることなのかもしれない。
普段からプロ意識を持って映像媒体で活躍している選手と、今後初めて映像に映る選手とは、いろいろな意味で大きな差があることだろう。
最初は罵倒されることもあるかもしれない。
選手間で大きな格差を感じるかもしれない。
しかしこれを機に、多くの選手たちの意識が変わってくれることを願いたいのだ。
プロであるということの自覚と責任を。
自分の打牌の裏側に、多くのファンの声援があるという事を意識してほしいのだ。
そういった経験を経て各自がさらにレベルアップすることが、この世界が支持される絶対条件になり得るのだから。
映像を見て、さらにAリーグを夢見る選手が増えることは間違いない。
多くの麻雀ファンの中から、麻雀プロを志す者も今以上に多くなるはずだ。
そういった『目』に育てられることを選手は意識して、これからのリーグ戦を戦っていってもらいたいと願っている。
話は大きく逸れてしまったが、今節注目したのは首位の勝又の卓。
共に昇級を争い上位につける前田と白鳥、さらには元A1の右田と、今期苦しむ滝沢が相手だ。
この卓では、各自の個性が十二分に発揮された内容となった。
まずは東1局、右田と滝沢の個性がぶつかる。
親・右田の配牌。
四万四筒七筒八筒九筒二索二索五索六索六索八索八索発発  ドラ七万
この配牌から何と右田は打四筒!そして次巡ツモ西で打五索
右田曰く「緑一色を見据えて」とのこと。この牌姿、どこからでも仕掛けていくということだ。
これを映像で見た視聴者にはどう伝わるだろうか?
良し悪しは別として、この強烈な個性と右田の想いが、画面越しに伝えることができるだろうか?
これに対し、滝沢は正確な手順で応戦する。
視聴者が見ても惚れ惚れするような手牌進行で歩を進めると、ロスなく7巡目にリーチ。
六筒を暗カン後、最速手順で満貫をツモ。
五万六万七万七万八万七筒八筒九筒北北  暗カン牌の背六筒六筒牌の背  リーチ  ツモ九万  ドラ七万
誰が見ても納得する華麗なアガリを見せた滝沢と、自らの想いを打牌に乗せた右田のフォームはまるで対照的だ。どちらを支持するかは見る人それぞれだろう。そういったぶつかりあいを見ることが出来るのがAリーグの魅力だろうし、これから視聴者の皆様に注目してほしい部分でもある。
続いては首位を走る勝又の思考と対応に触れよう。
東2局、親・勝又の6巡目、
五筒六筒七筒七筒三索三索四索六索六索八索八索九索九索  ツモ四筒  ドラ六筒
この七対子1シャンテンにツモ四筒で、2シャンテン戻しの打九索。タンヤオに柔軟に移行出来るのも首位に立つ余裕なのか。さらにツモ四筒九索、ツモ三筒四索としたあと、滝沢の切った三索をポン。手を決めてしまう七対子より、柔軟な形を求めた勝又。この局をテンパイと連荘を果たすと、続く1本場はしっかりとヤミテン。
四万五万六万六万七万八万四筒五筒六筒六索七索八索八索  ロン五索 ドラ八索
僅か5巡での11,600。首位を走る勝又にとっては十分なリードとなった。
この手に飛び込んでしまったのは滝沢。滝沢の手もテンパイで、
四万五万六万七万三筒四筒五筒三索三索五索七索八索九索  ツモ四万  打五索  ドラ八索
手順が正確な故の放銃。致し方ないと言えばそれまでだが、これが今期好調の勝又と不振に喘ぐ滝沢との勢いの差か。滝沢の手順は全く問題がないのだが、少しでも手順を外せば逆に放銃を免れたというのは皮肉としか言いようがない。こういった細かい部分を今後目の当たりに出来ることも映像の魅力の1つだが、結果だけ追ってしまうと滝沢の魅力に気が付く事無く過ぎ去ってしまう可能性も否定できない一瞬だった。
勢いに乗る勝又は続く東2局2本場は5巡目にリーチ。
三万四万五万七万八万四筒四筒四筒六索七索八索九索九索  リーチ  ドラ西
先程のヤミテンがあるだけに、3者共踏み込めず流局。
こういった押し引きの強弱も勝又の強みなのだろう。
勝又の戦いはこの日も終始安定。
仕掛けとリーチ、ヤミテンのバランスが抜群で、相手の攻勢にも余裕を持って対応している所が印象的だった。
例えば2回戦南3局親番で、
二万二万一索一索五索六索六索七索七索七索八索八索九索  ドラ東
この1シャンテンから四索をチーすると、次巡ツモ五索ですぐに清一色のテンパイ。
七索をツモ切ると白鳥から六索が出て12,000。
また続く3回戦では東1局6巡目に、
九万九万三索四索五索七索七索七索東東東発発  ドラ一万
すぐにでもホンイツに移行しそうなこの手を即リーチ。
一発でドラ表示牌の九万を引きアガリ2,000・4,000。
さらには東4局、
七万八万九万四索四索四索五索六索七索八索九索二筒三筒  ドラ四索
ドラが暗刻のこの手はスッとヤミに構え、すんなりと2,000・4,000を引きアガる強さ。
今節もポイントを77Pも積み上げ、1人独走の+226.7Pと悲願のA1昇級に一歩前進した。
勝又と同卓の前田と白鳥は終始我慢の展開。2人ともポイントを減らしたものの、何とか昇級前線に踏みとどまった感があるだけに、次節以降の戦いに注目したいところだ。
2位・石渡と、5位・四柳の卓では、佐々木が初戦から大爆発!東2局の親番で7本場まで積み上げ、一気に七万点越え。このトップで昇級争いに絡んだかに見えたが2回戦以降失速。しかし5回戦オーラスに、
一索一索九索九索発発発  ポン東東東  ポン北北北  ロン九索
この24,000で何とか持ちこたえた格好になったが、本人としてはまだまだ納得のいかないところだろう。
もう1つの卓では非常に面白い局面があったのでここに紹介したい。
1回戦オーラス、5万点を超えるトップ目の山田が2フーロでテンパイ。
五万六万八万八万五索六索七索  チー五万四万六万  ポン白白白  ドラ五筒
この仕掛けに対し山井がリーチ。
九万九万五筒六筒七筒八筒九筒一索一索二索二索三索三索  リーチ  ドラ五筒
このリーチを受け、山田が掴んだのは山井の当たり牌四筒。この四筒を山田は冷静に抑え打五万と放銃を回避。
すると、ここに北家・仁平は打二筒と勝負を挑む。
この二筒を親の黒沢がチーすると、仁平は意を決してツモ切りリーチを敢行。
終局するかと思われたが、ホウテイ牌は山井の下へ。
山井が六筒をツモ切るとこれが仁平に捕まる。
二筒三筒四筒五筒五筒六筒六筒七筒七筒七筒北北北  リーチ  ロン六筒
この12,000で仁平は浮きに回り、山井の1人沈みに。
この放銃が引き金となったか、山井はこの日大きくポイントを減らすこととなり、昇級争いから一歩後退する結果となってしまった。
対局後山井は、「局面を長引かせるリーチは、アガリ逃しと同じ」と、このリーチを打ったことを深く反省していた。しかし映像での対局を得意とする山井だけに、ここからの巻き返しも十分に考えられるのではないか。
この日の結果で勝又が1人大きく抜け出し、縦長の展開となってしまった。
しかし、残り一枠の昇級争いと、降級争いはさらに混戦模様に拍車がかかった格好となっている。
こうなると残り3節、対戦時間と環境が変わる中での戦いだという事が大きく結果に左右するのではないかと推測する。初めて映像に映る選手の戦い方に注目して、来節以降はニコ生での観戦を楽しみたいと個人的には考えている。
※現在のところ配信は予定となっております。
Aリーグの生放送が始まることで、選手の意識レベルも、視聴者や解説者のレベルも飛躍的に向上することが予想される。そうなった時には、実力の無いものが自然淘汰されることになることもまた事実だ。
本物だけが生き残り、力の無いものが去る。
プロ連盟にとっても、選手たちにとっても生き残りをかけた戦いが始まる今、各自がどのようなことが問われているかを考えることから、これからの第一歩が始まることだろう。
来月から生放送が始まるが、選手たちの戦いは既に始まっている。
それは、選手間の争いではなく、自分自身の意識レベルの向上と、多くのファンに対しての勝負だということを選手自身は忘れてはならないはずだ。
これからの生き残りをかけた争いにぜひ注目してほしい。
きっと視聴者の皆様の心に訴えかけることの出来る戦いが繰り広げられるはずであるから。

第81回『麻雀界の未来』

記録的な猛暑が続いた8月のある日、全く思いがけない方から電話を頂いた。

「ヒサト先生ですか。先日はどうもありがとうございました。」

全く見覚えのない番号からの、全く聞き覚えのない声。
その声はひどく落ち着き払っていて、会話を重ねても一切の感情が伝わってこない。

「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
『貴方のファンです。』
「どこかで同卓しましたか?」
『いえ、私にそんな腕はありません。』

明らかに困り果てた私の様子を楽しむかのように、相手方は中々その名を名乗ろうとはしなかった。

『今から私が、マンズ、ピンズ、ソーズのどれかを頭に思い描きますから、貴方の得意な読みで当ててみて下さい。』
「いや、全くわかりません。」

正直、厄介な相手だなと思った。
だがそれでもこちらから電話を切ることはしなかった。
結局、愚かな私がその相手方が誰であるかを悟るまで、実に15分もの時間を要していた。

電話の主は、伝説の雀鬼と呼ばれる桜井章一さんだった。

きっかけはその1週間前に秋葉原で行われた、桜井さんの新刊出版記念のトークイベントだった。
私は、森山茂和会長、滝沢和典とともにイベント会場である書店へと足を運んだ。
森山会長が急遽壇上に上がり、司会を務めるというサプライズはあったが、2時間ほどのイベントは和やかな雰囲気のまま終了した。

その後我々も食事の席にお招き頂き、トークイベントでは話せないような中身も含めた桜井さんの大変興味深いお話を伺うことができた。

私にとってはこれだけでも貴重な経験だったのだが、まさか桜井さんから直々に電話を頂けるなど思いもしなかったことである。

『もっと若い人達に頑張ってもらわないとなぁ』

電話の内容はそこに終始した。

日本プロ麻雀連盟は、この4月から森山新体制となった。
そこを境に桜井さんとプロ連盟との関係も密になったように思う。
きっと桜井さんと森山会長の、麻雀界を良くしていきたいという共通の思いがそうさせたのだろう。

『オレはね、貴方達にとにかく良い麻雀を打って欲しいと思っているんだよ。
勝った、負けたは二の次でいいじゃないですか。』

瞬間、小島武夫最高顧問の言葉が頭に浮かんだ。
やはり先人達の思いは相通ずるのだ。

『最初に満貫振ったっていいじゃないですか。徐々に取り戻していけばいいんだから。
最初から考えようとするから迷いが生じるんです。』

自然に打つことを心がけなさい。
そうすることで結果は段々とついてくるものです。
桜井さんはそういうことを伝えたかったのかもしれない。

その電話から数日経った勉強会の日、初戦北家スタートの私はこんな手をもらった。

二万三万四万一索一索一索四索五索六索六索四筒八筒八筒  ドラ四万

わずか3巡目にしてくっつきの1シャンテンだ。
ところがここから場面が急激に動き出す。

まずは西家の荒正義さんが東を一鳴き。
続いて親の山田ヒロが北を暗カン。
そして再び荒さんが一筒をポン。
その2巡後には、山田がドラの四万を切ってのリーチである。
その時私の手牌は以下。

二万三万四万四万一索一索一索四索五索六索六索八筒八筒

2人に挟まれた格好ではあるが、どんな結果となってもしっかり攻め抜こう。
私はいつも以上に強く、そう心に決めていた。

親のリーチが入ったとは言え、2フーロの荒さんが引くケースはあまり考えられない。
ならば、私のテンパイの入り方によっては、2人に任せる選択肢も十分にあり得る。
結果だけに拘るなら、むしろそちらの方が無難だとも言える。

だがそれは本来の自分の麻雀ではないし、何より戦っていない。
桜井さんの言葉も大きかったように思う。
人間は皆、どこか背中を押されたがっている生き物なのかもしれない。

この巡、私は四索を引いてテンパイ。

二万三万四万四万一索一索一索四索五索六索六索八筒八筒  ツモ四索

迷うことなくドラの四万を切ってリーチと出た。
次巡、二筒を持ってくると、荒さんがこれをポン。
そして引かされた九索が、山田の3,400に刺さった。

六万七万八万六索七索八索九索四筒五筒六筒  暗カン牌の背北北牌の背  ロン九索

荒さんの最終形はこうだった。

二索二索中中  ポン二筒二筒二筒 ポン一筒一筒一筒 ポン東東東

四万にくっつけば即放銃、また荒さんの二筒ポンがなくても山田のツモアガリ。

「この局はどうやっても勝ち目がなかったな。」

私の心境は何事もなかったかのようにあっさりとしたものだった。
きっと荒さんに満貫を放銃したとしてもそうだったのだろう。
別にまたやり直せばいい、私のポジティブな思考は普段に増して強くなっていた。

桜井さんは電話の最後にこう仰った。

『麻雀界は、囲碁、将棋の真似しようったって無理なんだよ。全く別のものなんだから。
無理矢理近づけようとするからいびつになる。決して間違った方向には進まないようにな。』

有難く、そして考えさせられるメッセージだった。

100年後、200年後、麻雀界はどうなっているのだろう。
大衆の娯楽としてまだ受け入れられているのだろうか。
それとも完全に衰退してしまっているのだろうか。

どっちに転ぶにせよ、それらは全て我々にかかっていると言っても過言ではない。
今が良ければそれで良しとはならないのだ。
ではそのために何をしなければならないか。

それは、我々がプロフェッショナルとしての確固たる地位を築き上げることだ。
プロの競技たるや、やはりファンあってこそのもの。
今以上に魅力ある世界を作りあげるために、我々がどんな麻雀を魅せられるか。
全てはそこにかかっているのである。

中級/第81回『麻雀界の未来』

記録的な猛暑が続いた8月のある日、全く思いがけない方から電話を頂いた。
「ヒサト先生ですか。先日はどうもありがとうございました。」
全く見覚えのない番号からの、全く聞き覚えのない声。
その声はひどく落ち着き払っていて、会話を重ねても一切の感情が伝わってこない。
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
『貴方のファンです。』
「どこかで同卓しましたか?」
『いえ、私にそんな腕はありません。』
明らかに困り果てた私の様子を楽しむかのように、相手方は中々その名を名乗ろうとはしなかった。
『今から私が、マンズ、ピンズ、ソーズのどれかを頭に思い描きますから、貴方の得意な読みで当ててみて下さい。』
「いや、全くわかりません。」
正直、厄介な相手だなと思った。
だがそれでもこちらから電話を切ることはしなかった。
結局、愚かな私がその相手方が誰であるかを悟るまで、実に15分もの時間を要していた。
電話の主は、伝説の雀鬼と呼ばれる桜井章一さんだった。
きっかけはその1週間前に秋葉原で行われた、桜井さんの新刊出版記念のトークイベントだった。
私は、森山茂和会長、滝沢和典とともにイベント会場である書店へと足を運んだ。
森山会長が急遽壇上に上がり、司会を務めるというサプライズはあったが、2時間ほどのイベントは和やかな雰囲気のまま終了した。
その後我々も食事の席にお招き頂き、トークイベントでは話せないような中身も含めた桜井さんの大変興味深いお話を伺うことができた。
私にとってはこれだけでも貴重な経験だったのだが、まさか桜井さんから直々に電話を頂けるなど思いもしなかったことである。
『もっと若い人達に頑張ってもらわないとなぁ』
電話の内容はそこに終始した。
日本プロ麻雀連盟は、この4月から森山新体制となった。
そこを境に桜井さんとプロ連盟との関係も密になったように思う。
きっと桜井さんと森山会長の、麻雀界を良くしていきたいという共通の思いがそうさせたのだろう。
『オレはね、貴方達にとにかく良い麻雀を打って欲しいと思っているんだよ。
勝った、負けたは二の次でいいじゃないですか。』
瞬間、小島武夫最高顧問の言葉が頭に浮かんだ。
やはり先人達の思いは相通ずるのだ。
『最初に満貫振ったっていいじゃないですか。徐々に取り戻していけばいいんだから。
最初から考えようとするから迷いが生じるんです。』
自然に打つことを心がけなさい。
そうすることで結果は段々とついてくるものです。
桜井さんはそういうことを伝えたかったのかもしれない。
その電話から数日経った勉強会の日、初戦北家スタートの私はこんな手をもらった。
二万三万四万一索一索一索四索五索六索六索四筒八筒八筒  ドラ四万
わずか3巡目にしてくっつきの1シャンテンだ。
ところがここから場面が急激に動き出す。
まずは西家の荒正義さんが東を一鳴き。
続いて親の山田ヒロが北を暗カン。
そして再び荒さんが一筒をポン。
その2巡後には、山田がドラの四万を切ってのリーチである。
その時私の手牌は以下。
二万三万四万四万一索一索一索四索五索六索六索八筒八筒
2人に挟まれた格好ではあるが、どんな結果となってもしっかり攻め抜こう。
私はいつも以上に強く、そう心に決めていた。
親のリーチが入ったとは言え、2フーロの荒さんが引くケースはあまり考えられない。
ならば、私のテンパイの入り方によっては、2人に任せる選択肢も十分にあり得る。
結果だけに拘るなら、むしろそちらの方が無難だとも言える。
だがそれは本来の自分の麻雀ではないし、何より戦っていない。
桜井さんの言葉も大きかったように思う。
人間は皆、どこか背中を押されたがっている生き物なのかもしれない。
この巡、私は四索を引いてテンパイ。
二万三万四万四万一索一索一索四索五索六索六索八筒八筒  ツモ四索
迷うことなくドラの四万を切ってリーチと出た。
次巡、二筒を持ってくると、荒さんがこれをポン。
そして引かされた九索が、山田の3,400に刺さった。
六万七万八万六索七索八索九索四筒五筒六筒  暗カン牌の背北北牌の背  ロン九索
荒さんの最終形はこうだった。
二索二索中中  ポン二筒二筒二筒 ポン一筒一筒一筒 ポン東東東
四万にくっつけば即放銃、また荒さんの二筒ポンがなくても山田のツモアガリ。
「この局はどうやっても勝ち目がなかったな。」
私の心境は何事もなかったかのようにあっさりとしたものだった。
きっと荒さんに満貫を放銃したとしてもそうだったのだろう。
別にまたやり直せばいい、私のポジティブな思考は普段に増して強くなっていた。
桜井さんは電話の最後にこう仰った。
『麻雀界は、囲碁、将棋の真似しようったって無理なんだよ。全く別のものなんだから。
無理矢理近づけようとするからいびつになる。決して間違った方向には進まないようにな。』
有難く、そして考えさせられるメッセージだった。
100年後、200年後、麻雀界はどうなっているのだろう。
大衆の娯楽としてまだ受け入れられているのだろうか。
それとも完全に衰退してしまっているのだろうか。
どっちに転ぶにせよ、それらは全て我々にかかっていると言っても過言ではない。
今が良ければそれで良しとはならないのだ。
ではそのために何をしなければならないか。
それは、我々がプロフェッショナルとしての確固たる地位を築き上げることだ。
プロの競技たるや、やはりファンあってこそのもの。
今以上に魅力ある世界を作りあげるために、我々がどんな麻雀を魅せられるか。
全てはそこにかかっているのである。

第27期新人王戦 決勝観戦記

shinjin27

 

日本プロ麻雀連盟の新人王戦は、予選と決勝を同日に行い優勝者を決める1DAYタイトル戦である。
ある者は挑戦のつもりで、又ある者は必勝を誓って、それぞれの思いを胸に全国より128人もの新人プロがここ新橋に集まった。
18時30分、予選7回戦が終了。
朝、128人の前に開けていた新人王への可能性は今、4人だけのものとなった。

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清水哲也
予選1位通過
28歳。東京本部所属28期生。
予選は終始安定した戦い方で堂々の1位通過。面前手と仕掛けのバランスが良く、また場況もしっかり見えているなといった印象。
『決勝も気負わずいつも通りの打ち方で臨みたいです。そして勝ちたいです。』

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大久保朋美
予選2位通過
23歳。関西本部所属29期生。
今回の決勝メンバー最年少にして唯一の女流プロ。予選での超攻撃型で全局参加型の麻雀を決勝でも見せてくれるのだろうか。
『自分の麻雀を打ち切れるよう頑張ります!』

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岡本和也
予選3位通過
32歳。静岡支部所属27期生。
手役重視の面前高打点型。他の3人が仕掛けを多用するタイプなので、面前派の岡本がどう戦うのかが楽しみでもある。
『昨年は6位で悔しい思いをしました。今年は決勝に残ることが出来ましたが、優勝を意識し過ぎず、しっかりとした内容の麻雀を打ちたいです。』

shinjin27

三浦智博
予選4位通過
26歳。東京本部所属28期生。
リーチや仕掛けが多く、打点や待ちよりも先手を取ることを重視するタイプか。予選ではリードを得てからの卓回しが絶妙であった。
『決勝では悔いの残らないよう精一杯頑張りたいです。』

【決勝1回戦】

起家から岡本、清水、三浦、大久保で決勝1回戦がスタートした。

shinjin27

東1局、ドラ一索で4人の配牌は

東家・岡本
一万三万四万六万八万九万三筒五筒六筒七筒七筒九筒西北

南家・清水
三万四万三索三索四索六索七索九索東東北白発

西家・三浦
一万一万二万一索四索八索八索二筒三筒南西白中

北家・大久保
四万九万一索五索一筒二筒三筒五筒六筒六筒九筒南西

こうである。北家の大久保が第1ツモでドラの一索を重ね、10巡目には、

四万五万六万一索一索一筒二筒三筒四筒五筒五筒六筒六筒  リーチ

この本手リーチを打つ。あっさりと高目をツモってしまいそうな予感がしたが、ここは流局で1人テンパイ。

大久保『あの四筒七筒待ちは自信があったので、アガれなかったのは感触として悪かったです。決勝戦の間それが気にかかってしまって…その後の押し引きに影響してきちゃったかもしれません。』

続く清水の親番、親の清水が8巡目に二索を両面で仕掛け

五索六索七索九索九索九索東中中中  チー二索 左向き三索 上向き四索 上向き  ドラ五万

この9,600テンパイ(連盟Aルールでは連風牌の単騎待ちは6符となる)。この清水の仕掛けに対し、北家の岡本は果敢にも白六索と押すが当たり牌の東だけはピタリと止め、しっかりと東単騎にし2人テンパイでの流局とする。

五万六万七万四索五索六索二筒三筒四筒東発

大久保、清水と本手を空振ったなか、初アガリは三浦。

二万二万二筒四筒六筒七筒八筒  チー五万 左向き六万 上向き七万 上向き  ポン七索 上向き七索 上向き七索 左向き  ツモ三筒  ドラ七万

2つ鳴いてのカンチャン待ちの2,000点ではあるが、中盤を過ぎていて面前で仕上げるのが難しくなってきたことと、親の清水の捨て牌からタンピン系で手がまとまっていそうとの読みを入れてのかわし手か。
東3局に、中のみの1,000点を岡本からアガリ親番を迎えた大久保。

七万九万九万四索五索五索六索二筒三筒四筒四筒五筒八筒西 ドラ四筒

この好配牌。9巡目に

七万八万九万九万四索五索六索二筒三筒四筒四筒五筒六筒

こうなるが六万九万がそれぞれ1枚切れのためヤミテンを選択。3巡後、二筒を持ってきて打九万とし待ち変えをするが、ここでもヤミテンを続行。次巡、七万を空切り。九万七万と手出しになったことで、他家からは親はカンチャン外しでまだノーテンと見えたか、岡本からの二筒で5,800点の出アガリとなる。

同1本場は、岡本が清水の1,300点は1,600点に放銃となり南入。親は現状1人沈みの岡本。

二万五万八万二索二索三筒五筒六筒七筒七筒八筒九筒南南  ドラ六筒

仕掛けても南ホンイツドラ1の親の満貫クラスが見込める配牌である。何とかこの手を成就させ巻き返したいところだが、6巡目に西家の三浦から以下の形のリーチが入る。

二万二万三万四万五万一筒二筒三筒五筒六筒七筒八筒九筒  リーチ

岡本も南を仕掛けて三万六万待ち2,900点のテンパイを取るも、余った三筒が三浦への放銃となってしまう。打点こそ安目の2,000点ではあるが、親番の落ちた岡本はますます苦しい状況となる。

南2局、親番は清水。大久保から1,500点を出アガリし迎えた1本場。
清水は4巡目にして以下の1シャンテン。

四万五万六万八万八万三索四索五索八索二筒三筒四筒六筒  ドラ七索

ここは清水の連荘かと思うも、なかなかテンパイが入らない。そんな中、西家の大久保が、

五万六万九万九万四索四索五索七索三筒五筒七筒南南

ここから六筒を仕掛け、567の三色と南の二段構えの後付け。大久保らしい積極的な仕掛けである。
しかしこの局のアガリは岡本。

一万二万三万四万五万六万七万七万七万七索八索九索中 ツモ中

親と仕掛けに対応しながら役無し単騎をツモる。500・1,000ではあるが岡本にとっては待望の決勝初アガリである。

南3局は、三浦が清水に1,300点の放銃となりオーラスは大久保の親番となる。トップ目は大久保で34,500点。ただ現状では3人浮きのトップであり、2回戦へ持ち越すアドバンテージとしては弱い。この親番で加点をし1人浮きのトップになりたいところである。逆に、清水と三浦はこの局はトップを取りに行くことも大事だが、浮きのまま1回戦を終えることもまた重要なテーマである。岡本は何とかして1人沈みの状態からは抜け出しておきたい。オーラス、最初に動いたのは三浦。

二万四万四万七索八索八索三筒三筒五筒五筒七筒八筒八筒  ドラ八筒

タンヤオ七対子ドラ2の1シャンテンから八索をポン。窮屈な七対子よりも動きやすい食いタンへと移行する。しかしその後ツモが利かずシャンテン数が進まない。その間、1シャンテンまで進んだ親の大久保が終盤に一万をチーで

一索二索三索一筒三筒五筒五筒六筒七筒八筒  チー一万二万三万

この2,900点のテンパイを入れる。親の1人テンパイで続行かと思ったが、最後のツモで初牌の中を掴み、さすがにと思ったかオリを選択。結果、オーラスは全員ノーテンとなり、順位点を足した1回戦のスコアは以下の通り。

大久保+12.5
清水+5.6
三浦+2.2
岡本▲20.3

例年、新人王戦というと打撃戦となり高打点が飛び交うイメージなのだが、今年は4人中3人が仕掛け派ということもあってか1回戦は小場が中心となり、最高打点は大久保の5,800点であった。
その小場を制し現在首位に立つはプロ1年目、大久保朋美。ニューヒロインの誕生か?最終戦開始までの小休止中、にわかに会場がざわめく。

 

【決勝2回戦(最終戦)】

shinjin27

 

ついにこの1戦で第27期新人王が決まる。大久保、清水、三浦の3人はほぼ着順勝負である。岡本だけは1人浮きのトップもしくは素点で大きく叩いたトップが必要となってくるだけに少し厳しい。それにしても決勝メンバーの4人は予選から合わせて今日9戦目となるのだが、誰一人として疲労の様子は見られない。やはりタイトル戦の決勝というものは特別なものなのだと再認識させられる。厳かとも言える雰囲気の中、最終戦がスタートした。

東1局、南家・三浦が親の第一打の白をポン。これに応じるかのように北家・大久保も親の第二打の発をポン。最終戦も空中戦を予感させる開局となった。2人の仕掛けに挟まれた岡本だが、

一万二万三万二索三索七索八索九索一筒三筒九筒西西  ドラ西

この1シャンテンまでこぎつける。我慢を重ねていた岡本ついに大物手が炸裂か、と思ったのも束の間、大久保が三浦に1,000点の放銃となりこの局は決着となる。

東2局は、親の三浦が700オールをツモり連荘。1回戦から引き続き、三浦と大久保が小場のペースを作って局が進んでいるように感じる。同1本場、岡本からリーチの発声。

三万四万六万七万八万三索四索五索三筒三筒発発発  リーチ  ドラ四万

中盤に親の三浦から切られた発を鳴かずに、自力で引き入れてのリーチである。
しかし、このリーチも次巡、岡本の現物待ちでテンパイを入れた清水にかわされてしまう。
打点を作りに行くも、なかなか実らず苦しい展開が続いていた岡本。東3局の親番を迎え好配牌を授かり、

四万六万七万二索三索五索五索六索六索七索九索八筒八筒中  ドラ六索

岡本にしては珍しく仕掛けを2つ入れ、5,800点を清水から出アガる。

四万四万六万七万五索六索七索  ポン八筒 上向き八筒 上向き八筒 左向き  チー七索 左向き五索 上向き六索 上向き  ロン八万

面前派の岡本が親番とはいえ両面チーから仕掛けたことを考えると、最低でもドラはもう1枚隠れていそうである。清水自身も対局終了後に悔やんでいたが、私もこの放銃は少し淡白に思えた。

続く1本場。親の岡本が観戦者を少し驚かせる手順で、

3巡目
二万三万四万四万六万七索一筒二筒三筒四筒六筒白白  ツモ五万  打一筒

8巡目にはこのテンパイを入れ、
二万三万四万四万五万五万六万二筒三筒四筒白白白  ドラ五万

またも清水から二万で討ち取り、7,700点は8,000点の加点。
こちらの牌譜データサービスもしくはロン2の牌譜で詳しく見られます。

これで岡本は、三浦を原点以下まで沈めることが出来れば優勝が現実的なものとなる。
逆に、2局連続の放銃となった清水は、優勝争いから少し後退となってしまった。

同2本場。北家・三浦、親に二筒の暗カンが入るもまだノーテンと読み、

二万二万四万六万二索三索四索三筒四筒五筒  暗カン牌の背西西牌の背  ドラ六筒

待ちは弱いがリーチと出る。これに南家・大久保も、

五万七万四索五索六索七索八索九索六筒七筒八筒南南

これで追いかけリーチ。対局終了後。このリーチの意図を聞いたところ

大久保『打点や待ちの良し悪しじゃなく、三浦さんか私のどちらかが岡本さんの親を落とさなきゃいけないと思いました。だから例え結果が三浦さんへの放銃となったとしても、このリーチの最低限の目的は果たせているからいいんです。私の親番は2回残っていますし。』

その判断の正誤はともかく、タイトル戦の初決勝という場面でここまで大局的な考え方を出来ることに驚いた。結果は、三浦と大久保の二人テンパイ。大久保の追いかけリーチが入らなければ岡本も押し返して親番を続けていた可能性も高い。岡本の親落としには見事成功したのだ。

流れ3本場となった大久保の親番では、清水が500・1,000は800・1,300をアガリ、東場は終了し最終戦もついに南入となる。

南1局、親は現状ラス目の清水。優勝のためにはこの親番で大きなアガリをものにしたいところ。
終盤に三色の崩れるあまり嬉しくないテンパイを入れリーチを打つも、

一万二万三万五万五万五万四索五索六索五筒六筒南南  リーチ  ドラ八万

西家・岡本に、

一索一索三索四索五索九索九索中中中  ポン七索 左向き七索 上向き七索 上向き  ツモ九索

片方の枯れているシャンポン待ちをあっさりとツモられてしまう。そして岡本はこの1,300・2,600のアガリによってトータルで首位に立つ。しかし続く南2局に親の三浦に2,000点の放銃。首位は三浦へと目まぐるしく入れ替わる。

南2局1本場、後の無い清水がタンヤオ三色の本手リーチ。

二万三万四万二索三索四索六索七索八索二筒四筒五筒五筒   リーチ  ドラ九筒

これをアガることが出来れば優勝の可能性はまだ残る。しかし清水の現物待ちでテンパイを入れていた岡本が大久保から2,000は2,300をアガリ、あとは岡本と大久保の親番を残すのみとなる。

南3局、親は岡本。大久保から2,000点をアガリ迎えた1本場。清水に逆転の手が入る。

一索二索三索発  ポン中中中  ポン西西西  ポン白白白  ドラ一万

発をツモることが出来れば西・小三元・ホンイツ・チャンタの倍満である。ただ、発単騎ではアガリ目が薄いと思ったか九索に待ち変え。これが痛恨の倍満逃がしとなる。そして岡本のノーテンで親は流れ、いよいよオーラスとなった。たらればの話になってしまうが、清水はここで倍満をツモると33,200点持ちのトータルトップ目でオーラスを迎えることができ、追う立場のトータル2着目岡本は清水を原点以下に落とすアガリ(直撃なら3,900以上、ツモだと4,000・8,000以上)が必要となり、清水の優勝がかなり濃厚となっていたのだ。
清水『白西と仕掛けているところに大久保さんが中を切ってきた。発は大久保さんに暗刻だと思いました。そして親の岡本さんも無筋を押してきた。発は絶対に出アガリ出来ないけど九索なら岡本さんから直撃出来るかもしれない。山に残っているのも九索だという自信があったんです。発切りは自分としては間違ってはいないと思います。思いますが…悔いは残ります。』

最終戦オーラス、親番は大久保。流れ2本場である。
ここで各自の現在の持ち点およびトータルスコアと優勝条件をお伝えしておこう。

三浦:30,900点  トータル +7.1P
岡本:48,300点  トータル +6.0P
大久保:20,900点 トータル ▲0.6P
清水:19,900点  トータル▲12.5P

三浦と岡本は1,000点でもアガれば優勝である。また、親がノーテンだった場合は三浦が原点付近の持ち点のため少し複雑となる。三浦がテンパイであれば三浦の優勝。全員ノーテンでも三浦の優勝。三浦ノーテンの岡本テンパイの場合、岡本の優勝。三浦、岡本ともにノーテンであっても清水がテンパイだった場合、岡本の優勝となる。大久保は満貫以上のツモもしくは岡本からの満貫以上の直撃で次局はノーテンで伏せることが出来る。清水は跳満以上のツモもしくは岡本からの跳満以上の直撃が条件となる。

サイコロボタンを押す大久保の指に力が入る。ドラは七筒。4人の配牌は、

大久保
二万五万九万九万三索四索四索七索八索九索三筒三筒八筒白

清水
一万四万二索二索五索八索一筒二筒五筒六筒北発中

三浦
五万六万一索一索三索五索三筒六筒九筒九筒東白発

岡本
五万六万七万三索五筒五筒東東南西北中中

岡本の配牌がいい。中頼みの手にはなってしまいそうではあるが、この局面で役牌を絞る者はいない。三索にくっつきさえすれば捨て牌一段目でのアガリもありそうだ。親の大久保も悪くはないが、岡本の方が早そうである。清水はこの手格好から跳満はまだ見えない。三浦もアガリ競争となると少し厳しいか。
岡本が五筒ポン、五索チーとし6巡目で

五万六万七万東東中中  ポン五筒 左向き五筒 上向き五筒 上向き  チー五索 左向き三索 上向き四索 上向き

このテンパイ。
しかし三浦もあの配牌から発を重ね、七索九索八索と引き、七万を入れる。そして8巡目に一索をポンして

五万六万七万七索八索九索九筒九筒発発  ポン一索 左向き一索 上向き一索 上向き

この執念のテンパイ。決勝最終戦オーラス、まさかのシングルバック対決となる。ただこの発中は清水が発を2枚に中を1枚抱え込んでいる。跳満以上が優勝条件の清水だが、現在の牌姿からではまだ跳満は見えない。そこへ三浦の一索ポン。役牌頼りであるのは濃厚である。優勝の可能性の低くなった清水からはこの発中も出ることはないのではないか。そしてふと親の大久保の手牌を見ると、

八万九万九万三索四索七索八索九索二筒三筒四筒七筒八筒

ピンフドラ1の1シャンテンである。大久保がアガって次局、三つ巴の3本場となるのか?そう思った次の瞬間、大久保が中を掴んだ。危険は百も承知、しかし切らなければ自身の優勝の可能性が無くなる。数秒の逡巡の末、河に放たれる中。岡本の『ロン、1,000は1,600』の発声。大久保は元気良く『ハイ!』と応えた。

 

4位 清水哲也
『 決勝も緊張せず打てました。東3局の5,800放銃と発単騎のアガリ逃がしはちょっとモヤモヤが残りますけど…。まぁ敗れはしましたが僕にはまだ来年もあります。今度こそ優勝ですよ。』
予選を見ていた時は決勝も清水が圧勝するのではないかというほどの安定した戦いぶりだった。タイトル戦の初決勝を緊張せずに打てたのはすごい。本当に来年も決勝に残っているのではないだろうか。

 

3位 大久保朋美
『予選は攻めしか考えてなかったのに決勝は変に守りも意識しちゃって…緊張している自覚はなかったけど、本来の自分じゃない麻雀になっちゃっていたのかも。せっかく予選で大三元アガったりで決勝に残れたのになー。決勝1回戦トップで優勝へのプレッシャー?それは全然なかったですよ。来年はリベンジです!』
優勝こそ出来なかったものの、その存在感は十分にアピール出来たのではないだろうか。出身は福井県で大学が関西だったため現在は関西を中心とした活動だが、今後は東京のリーグ戦や女流桜花への参戦も考えているという。まだ新人の大久保であるが、彼女が人気女流プロの1人となる日も近いかもしれない。

 

2位 三浦智博
『決勝も普段通りの早回しで行こうと思っていました。自分のスタイルで打ち切れましたから悔いはありません。最後にシングルバック対決で負けちゃったのは残念ですけど…来年、最後の新人王戦を頑張ります。』
今回の決勝、技術レベルだけで言えば三浦が優勝でもおかしくはなかったと私は思う。辛(から)い麻雀を打つなぁと思いながら観戦していた。三浦の出身は愛知県。麻雀プロとして一旗揚げるため、東京へ出てきたという。そして普段は麻雀店の従業員をしながら土日はタイトル戦やリーグ戦に参加している。淡々と作業のように打牌を繰り返す雀風と、その涼しげな外見から三浦のことを「最近の若者にありがちな、どこか冷めたところのある男」と私は思い込んでいた。しかしいざ話してみると熱く、意志の強い男であった。私は自身の勝手な先入観を心の中で三浦に謝罪した。

 

優勝 岡本和也
『優勝するなんて朝の時点では思ってもみなかったです。嬉しい限りです。僕は会社員と麻雀プロの二足のわらじなんですけど、会社員をしながらでも麻雀は強くなれるという証明も出来て良かったです。お世話になっている静岡支部の諸先輩方、最後まで観戦してくれていた皆さん、そして運営スタッフの皆さん、本当にありがとうございました。そして僕も日本プロ麻雀連盟の一員として、この麻雀界をより良いものとしていくべく努力と精進をしていきたいと思います。』
岡本が決勝に残った時、「あっ!」と思い出した。朝、誰よりも早く予選会場に着いて開場を待っていた選手だ。聞けば早起きして烏森神社に願掛けをしてから来たという。そして予選の観戦に来ていた堀内正人プロ(第27期十段位)が初見で『打牌のフォームが凛々しい。僕の推しメンだね。決勝に残るんじゃない?』と評していた選手でもあった。決勝を観戦していて、堀内プロの言うとおり岡本の打牌フォームはとても綺麗だと私も思った。日が経ってから岡本の決勝の牌譜を見返してみると技術面ではまだ少し粗削りなところも見つかってくるが、リアルタイムで観戦をしている時は、岡本のあの安定感のある牌捌きで打牌をされると疑問手も正嫡打に思えてしまうから不思議である。
その隙の無い物腰もあって大局中はある種の威圧感さえ漂わせている岡本だが、打ち上げの席では人の良さそうな無邪気な笑顔も見せ、また出席者1人1人にしっかりと挨拶とお礼の言葉をかける謙虚で礼儀正しい青年であった。

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こうして今年度の新人王戦も大きな盛り上がりを見せ、幕を閉じた。
第27期新人王 岡本和也プロ おめでとうございます!

 

 

新人王 決勝観戦記/第27期新人王戦 決勝観戦記

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日本プロ麻雀連盟の新人王戦は、予選と決勝を同日に行い優勝者を決める1DAYタイトル戦である。
ある者は挑戦のつもりで、又ある者は必勝を誓って、それぞれの思いを胸に全国より128人もの新人プロがここ新橋に集まった。
18時30分、予選7回戦が終了。
朝、128人の前に開けていた新人王への可能性は今、4人だけのものとなった。

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清水哲也
予選1位通過
28歳。東京本部所属28期生。
予選は終始安定した戦い方で堂々の1位通過。面前手と仕掛けのバランスが良く、また場況もしっかり見えているなといった印象。
『決勝も気負わずいつも通りの打ち方で臨みたいです。そして勝ちたいです。』

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大久保朋美
予選2位通過
23歳。関西本部所属29期生。
今回の決勝メンバー最年少にして唯一の女流プロ。予選での超攻撃型で全局参加型の麻雀を決勝でも見せてくれるのだろうか。
『自分の麻雀を打ち切れるよう頑張ります!』

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岡本和也
予選3位通過
32歳。静岡支部所属27期生。
手役重視の面前高打点型。他の3人が仕掛けを多用するタイプなので、面前派の岡本がどう戦うのかが楽しみでもある。
『昨年は6位で悔しい思いをしました。今年は決勝に残ることが出来ましたが、優勝を意識し過ぎず、しっかりとした内容の麻雀を打ちたいです。』

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三浦智博
予選4位通過
26歳。東京本部所属28期生。
リーチや仕掛けが多く、打点や待ちよりも先手を取ることを重視するタイプか。予選ではリードを得てからの卓回しが絶妙であった。
『決勝では悔いの残らないよう精一杯頑張りたいです。』
【決勝1回戦】
起家から岡本、清水、三浦、大久保で決勝1回戦がスタートした。

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東1局、ドラ一索で4人の配牌は
東家・岡本
一万三万四万六万八万九万三筒五筒六筒七筒七筒九筒西北
南家・清水
三万四万三索三索四索六索七索九索東東北白発
西家・三浦
一万一万二万一索四索八索八索二筒三筒南西白中
北家・大久保
四万九万一索五索一筒二筒三筒五筒六筒六筒九筒南西
こうである。北家の大久保が第1ツモでドラの一索を重ね、10巡目には、
四万五万六万一索一索一筒二筒三筒四筒五筒五筒六筒六筒  リーチ
この本手リーチを打つ。あっさりと高目をツモってしまいそうな予感がしたが、ここは流局で1人テンパイ。
大久保『あの四筒七筒待ちは自信があったので、アガれなかったのは感触として悪かったです。決勝戦の間それが気にかかってしまって…その後の押し引きに影響してきちゃったかもしれません。』
続く清水の親番、親の清水が8巡目に二索を両面で仕掛け
五索六索七索九索九索九索東中中中  チー二索 左向き三索 上向き四索 上向き  ドラ五万
この9,600テンパイ(連盟Aルールでは連風牌の単騎待ちは6符となる)。この清水の仕掛けに対し、北家の岡本は果敢にも白六索と押すが当たり牌の東だけはピタリと止め、しっかりと東単騎にし2人テンパイでの流局とする。
五万六万七万四索五索六索二筒三筒四筒東発
大久保、清水と本手を空振ったなか、初アガリは三浦。
二万二万二筒四筒六筒七筒八筒  チー五万 左向き六万 上向き七万 上向き  ポン七索 上向き七索 上向き七索 左向き  ツモ三筒  ドラ七万
2つ鳴いてのカンチャン待ちの2,000点ではあるが、中盤を過ぎていて面前で仕上げるのが難しくなってきたことと、親の清水の捨て牌からタンピン系で手がまとまっていそうとの読みを入れてのかわし手か。
東3局に、中のみの1,000点を岡本からアガリ親番を迎えた大久保。
七万九万九万四索五索五索六索二筒三筒四筒四筒五筒八筒西 ドラ四筒
この好配牌。9巡目に
七万八万九万九万四索五索六索二筒三筒四筒四筒五筒六筒
こうなるが六万九万がそれぞれ1枚切れのためヤミテンを選択。3巡後、二筒を持ってきて打九万とし待ち変えをするが、ここでもヤミテンを続行。次巡、七万を空切り。九万七万と手出しになったことで、他家からは親はカンチャン外しでまだノーテンと見えたか、岡本からの二筒で5,800点の出アガリとなる。
同1本場は、岡本が清水の1,300点は1,600点に放銃となり南入。親は現状1人沈みの岡本。
二万五万八万二索二索三筒五筒六筒七筒七筒八筒九筒南南  ドラ六筒
仕掛けても南ホンイツドラ1の親の満貫クラスが見込める配牌である。何とかこの手を成就させ巻き返したいところだが、6巡目に西家の三浦から以下の形のリーチが入る。
二万二万三万四万五万一筒二筒三筒五筒六筒七筒八筒九筒  リーチ
岡本も南を仕掛けて三万六万待ち2,900点のテンパイを取るも、余った三筒が三浦への放銃となってしまう。打点こそ安目の2,000点ではあるが、親番の落ちた岡本はますます苦しい状況となる。
南2局、親番は清水。大久保から1,500点を出アガリし迎えた1本場。
清水は4巡目にして以下の1シャンテン。
四万五万六万八万八万三索四索五索八索二筒三筒四筒六筒  ドラ七索
ここは清水の連荘かと思うも、なかなかテンパイが入らない。そんな中、西家の大久保が、
五万六万九万九万四索四索五索七索三筒五筒七筒南南
ここから六筒を仕掛け、567の三色と南の二段構えの後付け。大久保らしい積極的な仕掛けである。
しかしこの局のアガリは岡本。
一万二万三万四万五万六万七万七万七万七索八索九索中 ツモ中
親と仕掛けに対応しながら役無し単騎をツモる。500・1,000ではあるが岡本にとっては待望の決勝初アガリである。
南3局は、三浦が清水に1,300点の放銃となりオーラスは大久保の親番となる。トップ目は大久保で34,500点。ただ現状では3人浮きのトップであり、2回戦へ持ち越すアドバンテージとしては弱い。この親番で加点をし1人浮きのトップになりたいところである。逆に、清水と三浦はこの局はトップを取りに行くことも大事だが、浮きのまま1回戦を終えることもまた重要なテーマである。岡本は何とかして1人沈みの状態からは抜け出しておきたい。オーラス、最初に動いたのは三浦。
二万四万四万七索八索八索三筒三筒五筒五筒七筒八筒八筒  ドラ八筒
タンヤオ七対子ドラ2の1シャンテンから八索をポン。窮屈な七対子よりも動きやすい食いタンへと移行する。しかしその後ツモが利かずシャンテン数が進まない。その間、1シャンテンまで進んだ親の大久保が終盤に一万をチーで
一索二索三索一筒三筒五筒五筒六筒七筒八筒  チー一万二万三万
この2,900点のテンパイを入れる。親の1人テンパイで続行かと思ったが、最後のツモで初牌の中を掴み、さすがにと思ったかオリを選択。結果、オーラスは全員ノーテンとなり、順位点を足した1回戦のスコアは以下の通り。
大久保+12.5
清水+5.6
三浦+2.2
岡本▲20.3
例年、新人王戦というと打撃戦となり高打点が飛び交うイメージなのだが、今年は4人中3人が仕掛け派ということもあってか1回戦は小場が中心となり、最高打点は大久保の5,800点であった。
その小場を制し現在首位に立つはプロ1年目、大久保朋美。ニューヒロインの誕生か?最終戦開始までの小休止中、にわかに会場がざわめく。
 
【決勝2回戦(最終戦)】

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ついにこの1戦で第27期新人王が決まる。大久保、清水、三浦の3人はほぼ着順勝負である。岡本だけは1人浮きのトップもしくは素点で大きく叩いたトップが必要となってくるだけに少し厳しい。それにしても決勝メンバーの4人は予選から合わせて今日9戦目となるのだが、誰一人として疲労の様子は見られない。やはりタイトル戦の決勝というものは特別なものなのだと再認識させられる。厳かとも言える雰囲気の中、最終戦がスタートした。
東1局、南家・三浦が親の第一打の白をポン。これに応じるかのように北家・大久保も親の第二打の発をポン。最終戦も空中戦を予感させる開局となった。2人の仕掛けに挟まれた岡本だが、
一万二万三万二索三索七索八索九索一筒三筒九筒西西  ドラ西
この1シャンテンまでこぎつける。我慢を重ねていた岡本ついに大物手が炸裂か、と思ったのも束の間、大久保が三浦に1,000点の放銃となりこの局は決着となる。
東2局は、親の三浦が700オールをツモり連荘。1回戦から引き続き、三浦と大久保が小場のペースを作って局が進んでいるように感じる。同1本場、岡本からリーチの発声。
三万四万六万七万八万三索四索五索三筒三筒発発発  リーチ  ドラ四万
中盤に親の三浦から切られた発を鳴かずに、自力で引き入れてのリーチである。
しかし、このリーチも次巡、岡本の現物待ちでテンパイを入れた清水にかわされてしまう。
打点を作りに行くも、なかなか実らず苦しい展開が続いていた岡本。東3局の親番を迎え好配牌を授かり、
四万六万七万二索三索五索五索六索六索七索九索八筒八筒中  ドラ六索
岡本にしては珍しく仕掛けを2つ入れ、5,800点を清水から出アガる。
四万四万六万七万五索六索七索  ポン八筒 上向き八筒 上向き八筒 左向き  チー七索 左向き五索 上向き六索 上向き  ロン八万
面前派の岡本が親番とはいえ両面チーから仕掛けたことを考えると、最低でもドラはもう1枚隠れていそうである。清水自身も対局終了後に悔やんでいたが、私もこの放銃は少し淡白に思えた。
続く1本場。親の岡本が観戦者を少し驚かせる手順で、
3巡目
二万三万四万四万六万七索一筒二筒三筒四筒六筒白白  ツモ五万  打一筒
8巡目にはこのテンパイを入れ、
二万三万四万四万五万五万六万二筒三筒四筒白白白  ドラ五万
またも清水から二万で討ち取り、7,700点は8,000点の加点。
こちらの牌譜データサービスもしくはロン2の牌譜で詳しく見られます。
これで岡本は、三浦を原点以下まで沈めることが出来れば優勝が現実的なものとなる。
逆に、2局連続の放銃となった清水は、優勝争いから少し後退となってしまった。
同2本場。北家・三浦、親に二筒の暗カンが入るもまだノーテンと読み、
二万二万四万六万二索三索四索三筒四筒五筒  暗カン牌の背西西牌の背  ドラ六筒
待ちは弱いがリーチと出る。これに南家・大久保も、
五万七万四索五索六索七索八索九索六筒七筒八筒南南
これで追いかけリーチ。対局終了後。このリーチの意図を聞いたところ
大久保『打点や待ちの良し悪しじゃなく、三浦さんか私のどちらかが岡本さんの親を落とさなきゃいけないと思いました。だから例え結果が三浦さんへの放銃となったとしても、このリーチの最低限の目的は果たせているからいいんです。私の親番は2回残っていますし。』
その判断の正誤はともかく、タイトル戦の初決勝という場面でここまで大局的な考え方を出来ることに驚いた。結果は、三浦と大久保の二人テンパイ。大久保の追いかけリーチが入らなければ岡本も押し返して親番を続けていた可能性も高い。岡本の親落としには見事成功したのだ。
流れ3本場となった大久保の親番では、清水が500・1,000は800・1,300をアガリ、東場は終了し最終戦もついに南入となる。
南1局、親は現状ラス目の清水。優勝のためにはこの親番で大きなアガリをものにしたいところ。
終盤に三色の崩れるあまり嬉しくないテンパイを入れリーチを打つも、
一万二万三万五万五万五万四索五索六索五筒六筒南南  リーチ  ドラ八万
西家・岡本に、
一索一索三索四索五索九索九索中中中  ポン七索 左向き七索 上向き七索 上向き  ツモ九索
片方の枯れているシャンポン待ちをあっさりとツモられてしまう。そして岡本はこの1,300・2,600のアガリによってトータルで首位に立つ。しかし続く南2局に親の三浦に2,000点の放銃。首位は三浦へと目まぐるしく入れ替わる。
南2局1本場、後の無い清水がタンヤオ三色の本手リーチ。
二万三万四万二索三索四索六索七索八索二筒四筒五筒五筒   リーチ  ドラ九筒
これをアガることが出来れば優勝の可能性はまだ残る。しかし清水の現物待ちでテンパイを入れていた岡本が大久保から2,000は2,300をアガリ、あとは岡本と大久保の親番を残すのみとなる。
南3局、親は岡本。大久保から2,000点をアガリ迎えた1本場。清水に逆転の手が入る。
一索二索三索発  ポン中中中  ポン西西西  ポン白白白  ドラ一万
発をツモることが出来れば西・小三元・ホンイツ・チャンタの倍満である。ただ、発単騎ではアガリ目が薄いと思ったか九索に待ち変え。これが痛恨の倍満逃がしとなる。そして岡本のノーテンで親は流れ、いよいよオーラスとなった。たらればの話になってしまうが、清水はここで倍満をツモると33,200点持ちのトータルトップ目でオーラスを迎えることができ、追う立場のトータル2着目岡本は清水を原点以下に落とすアガリ(直撃なら3,900以上、ツモだと4,000・8,000以上)が必要となり、清水の優勝がかなり濃厚となっていたのだ。
清水『白西と仕掛けているところに大久保さんが中を切ってきた。発は大久保さんに暗刻だと思いました。そして親の岡本さんも無筋を押してきた。発は絶対に出アガリ出来ないけど九索なら岡本さんから直撃出来るかもしれない。山に残っているのも九索だという自信があったんです。発切りは自分としては間違ってはいないと思います。思いますが…悔いは残ります。』
最終戦オーラス、親番は大久保。流れ2本場である。
ここで各自の現在の持ち点およびトータルスコアと優勝条件をお伝えしておこう。
三浦:30,900点  トータル +7.1P
岡本:48,300点  トータル +6.0P
大久保:20,900点 トータル ▲0.6P
清水:19,900点  トータル▲12.5P
三浦と岡本は1,000点でもアガれば優勝である。また、親がノーテンだった場合は三浦が原点付近の持ち点のため少し複雑となる。三浦がテンパイであれば三浦の優勝。全員ノーテンでも三浦の優勝。三浦ノーテンの岡本テンパイの場合、岡本の優勝。三浦、岡本ともにノーテンであっても清水がテンパイだった場合、岡本の優勝となる。大久保は満貫以上のツモもしくは岡本からの満貫以上の直撃で次局はノーテンで伏せることが出来る。清水は跳満以上のツモもしくは岡本からの跳満以上の直撃が条件となる。
サイコロボタンを押す大久保の指に力が入る。ドラは七筒。4人の配牌は、
大久保
二万五万九万九万三索四索四索七索八索九索三筒三筒八筒白
清水
一万四万二索二索五索八索一筒二筒五筒六筒北発中
三浦
五万六万一索一索三索五索三筒六筒九筒九筒東白発
岡本
五万六万七万三索五筒五筒東東南西北中中
岡本の配牌がいい。中頼みの手にはなってしまいそうではあるが、この局面で役牌を絞る者はいない。三索にくっつきさえすれば捨て牌一段目でのアガリもありそうだ。親の大久保も悪くはないが、岡本の方が早そうである。清水はこの手格好から跳満はまだ見えない。三浦もアガリ競争となると少し厳しいか。
岡本が五筒ポン、五索チーとし6巡目で
五万六万七万東東中中  ポン五筒 左向き五筒 上向き五筒 上向き  チー五索 左向き三索 上向き四索 上向き
このテンパイ。
しかし三浦もあの配牌から発を重ね、七索九索八索と引き、七万を入れる。そして8巡目に一索をポンして
五万六万七万七索八索九索九筒九筒発発  ポン一索 左向き一索 上向き一索 上向き
この執念のテンパイ。決勝最終戦オーラス、まさかのシングルバック対決となる。ただこの発中は清水が発を2枚に中を1枚抱え込んでいる。跳満以上が優勝条件の清水だが、現在の牌姿からではまだ跳満は見えない。そこへ三浦の一索ポン。役牌頼りであるのは濃厚である。優勝の可能性の低くなった清水からはこの発中も出ることはないのではないか。そしてふと親の大久保の手牌を見ると、
八万九万九万三索四索七索八索九索二筒三筒四筒七筒八筒
ピンフドラ1の1シャンテンである。大久保がアガって次局、三つ巴の3本場となるのか?そう思った次の瞬間、大久保が中を掴んだ。危険は百も承知、しかし切らなければ自身の優勝の可能性が無くなる。数秒の逡巡の末、河に放たれる中。岡本の『ロン、1,000は1,600』の発声。大久保は元気良く『ハイ!』と応えた。
 
4位 清水哲也
『 決勝も緊張せず打てました。東3局の5,800放銃と発単騎のアガリ逃がしはちょっとモヤモヤが残りますけど…。まぁ敗れはしましたが僕にはまだ来年もあります。今度こそ優勝ですよ。』
予選を見ていた時は決勝も清水が圧勝するのではないかというほどの安定した戦いぶりだった。タイトル戦の初決勝を緊張せずに打てたのはすごい。本当に来年も決勝に残っているのではないだろうか。
 
3位 大久保朋美
『予選は攻めしか考えてなかったのに決勝は変に守りも意識しちゃって…緊張している自覚はなかったけど、本来の自分じゃない麻雀になっちゃっていたのかも。せっかく予選で大三元アガったりで決勝に残れたのになー。決勝1回戦トップで優勝へのプレッシャー?それは全然なかったですよ。来年はリベンジです!』
優勝こそ出来なかったものの、その存在感は十分にアピール出来たのではないだろうか。出身は福井県で大学が関西だったため現在は関西を中心とした活動だが、今後は東京のリーグ戦や女流桜花への参戦も考えているという。まだ新人の大久保であるが、彼女が人気女流プロの1人となる日も近いかもしれない。
 
2位 三浦智博
『決勝も普段通りの早回しで行こうと思っていました。自分のスタイルで打ち切れましたから悔いはありません。最後にシングルバック対決で負けちゃったのは残念ですけど…来年、最後の新人王戦を頑張ります。』
今回の決勝、技術レベルだけで言えば三浦が優勝でもおかしくはなかったと私は思う。辛(から)い麻雀を打つなぁと思いながら観戦していた。三浦の出身は愛知県。麻雀プロとして一旗揚げるため、東京へ出てきたという。そして普段は麻雀店の従業員をしながら土日はタイトル戦やリーグ戦に参加している。淡々と作業のように打牌を繰り返す雀風と、その涼しげな外見から三浦のことを「最近の若者にありがちな、どこか冷めたところのある男」と私は思い込んでいた。しかしいざ話してみると熱く、意志の強い男であった。私は自身の勝手な先入観を心の中で三浦に謝罪した。
 
優勝 岡本和也
『優勝するなんて朝の時点では思ってもみなかったです。嬉しい限りです。僕は会社員と麻雀プロの二足のわらじなんですけど、会社員をしながらでも麻雀は強くなれるという証明も出来て良かったです。お世話になっている静岡支部の諸先輩方、最後まで観戦してくれていた皆さん、そして運営スタッフの皆さん、本当にありがとうございました。そして僕も日本プロ麻雀連盟の一員として、この麻雀界をより良いものとしていくべく努力と精進をしていきたいと思います。』
岡本が決勝に残った時、「あっ!」と思い出した。朝、誰よりも早く予選会場に着いて開場を待っていた選手だ。聞けば早起きして烏森神社に願掛けをしてから来たという。そして予選の観戦に来ていた堀内正人プロ(第27期十段位)が初見で『打牌のフォームが凛々しい。僕の推しメンだね。決勝に残るんじゃない?』と評していた選手でもあった。決勝を観戦していて、堀内プロの言うとおり岡本の打牌フォームはとても綺麗だと私も思った。日が経ってから岡本の決勝の牌譜を見返してみると技術面ではまだ少し粗削りなところも見つかってくるが、リアルタイムで観戦をしている時は、岡本のあの安定感のある牌捌きで打牌をされると疑問手も正嫡打に思えてしまうから不思議である。
その隙の無い物腰もあって大局中はある種の威圧感さえ漂わせている岡本だが、打ち上げの席では人の良さそうな無邪気な笑顔も見せ、また出席者1人1人にしっかりと挨拶とお礼の言葉をかける謙虚で礼儀正しい青年であった。

shinjin27

 
こうして今年度の新人王戦も大きな盛り上がりを見せ、幕を閉じた。
第27期新人王 岡本和也プロ おめでとうございます!
 
 

第14期九州プロリーグ A・B・Cリーグ 第6節レポート

Aリーグレポート:新谷翔平

A卓(西原×福田×大和田×小川×塚本)
B卓(浜上×青木×安東×小車)
C卓(藤原×中尾×新谷×柴田)

「なんか去年とはうってかわって調子いいよね。」
今年度に入ってよく私が言われる言葉である。確かに昨年度はスタートから下位に位置し、そのまま最後まで降級争いをしていた。今年は2~4節はどれも約+60Pとスコアとしては調子のいい面を見せたものだから、よく上記の言葉を聞く。
確かに多少は変わったかもしれない。
しかし、それ以上に重要なものがある。それはメンタルだ。

私、新谷の卓は、第5節終了時に2位だった私と、4位・中尾、5位・藤原、6位・柴田といった、決勝に残る4人の枠を争う中で絶対に負けられない者同士といった組み合わせ。
1回戦の東1局から私に手が入る。配牌は、

二万九万九万二索二索四索六索八索三筒六筒八筒西北  ドラ九万

ドラが2枚あるが形は苦しい。しかしツモが七筒九万七万六万といいツモ。
そして6巡目に六索をツモり、以下の形。

六万七万九万九万九万二索二索四索六索六索八索六筒七筒八筒

もし待ちが七索になった場合に仮にリーチをするなら、宣言牌が打四索になるよりも四索六索と切ったほうが少しは出やすいので、ここでは打四索を選択。
その直後、下家の柴田がすぐに七索を手出し。ここで一瞬嫌な予感はしたが、すぐに八万をツモったので私はリーチといく。が、その宣言牌の六索を柴田がチー。しばらくめくり合いが続いたが、軍配があがったのは柴田。
タンヤオのみの300・500だがツモられる。

ここから先は想像の話だが、打四索の時に打六索としていればそのときはチーできない形だったかもしれないし、できる形でもしなかったかもしれない。
いや、実際にはそんなこと考えても仕方のないことだが、逆だったらチーもされず1人旅だったのではないかとたらればの世界について考え、心が揺れる。

このとき私はこの1ヶ月、心身共に充実していなかったのだと認識した。おそらく充実していたらこのような思考に至らない。
事実、充実していた2~4節の間はすべての物事に前向きで、考えても仕方のない過ぎ去ったことに時間など割いていなかった。
この1ヶ月、自分自身で自信をもって充実していたと言い張れないからこそ、そんなことで揺れたのだと思う。そして一度心が揺れてしまうと平常心を取り戻すのは難しいのはよく知っている。

揺れたままだが、2回戦は1度もアガれずしかし放銃せずで、オーラスに28,600点から2,600をアガリ、なんとか原点確保。
そして3回戦に心が揺れているがゆえに大きなミスをする。
南3局、5巡目に以下の牌姿。

四万五万六万四索五筒五筒六筒七筒八筒九筒九筒九筒九筒西  ドラ九筒

是が非でもアガリたいこの牌姿だが、対面のトップ目の中尾がすでに2つ仕掛けている。
まだテンパイしていない可能性も十分あるし、後々四索が危険になりそうにみえたので打四索としてしまう。
「何をやっているんだ」
切った瞬間に思った。
確かに第5節終了時に2位にはいた。しかしまだ後リーグ戦は半分も残っていてまだ守りなんて考える所ではないし、ポイントでも守りに入るだけのアドバンテージなんて全くないのに、何を恐れているのだ。
この牌姿であれば仮に親からリーチが来てもアガリにむかうのだから、このタイミングで暗カンをしてうっかりリンシャン牌が三索五索ならしめたもの。そうでなくても、例えば五万をツモればかなり広くてよい1シャンテンになる。
それに他家よりも1回でも多くツモり早くテンパイを取りに行かないと行けないのに、これではテンパイの受け入れも狭くしている。
次巡、七筒をツモり結果オーライのリーチになるが、この局の結末は中尾のアガリとなる。

この出来事から考えても、やはりメンタルは重要である。
特に私は私生活が影響すると考えている。日ごろの行いや、心身が充実しているか。自分に嘘をついていないか。
例えば楽な方に流されるような怠惰な生活をしていると後ろめたい気持ちが出てくる。そして自分に自信が持てなくなる。心の底に不安なものがあると麻雀においても普段なら気にしない些細なことでも、それをいつまでも気にする自分が現れるのだ。上記の内容がいい例である。
逆に自分が満足のいく生活、人生を送れている人というのは、根拠のある自信で満ち溢れている。根拠のある自信ならば、仮に1度失敗をしたとしても次はできる、という思考につながる。たまたま起きた失敗を反省はすれこそ、引きずったりはしない。
このように私生活においても心身ともに充実させることが、メンタル面でよい作用を引き起こすのである。

私はというと、九州リーグの成績が物語っているように、2~4節の間は公私ともに非常に充実していたが、第5節あたりの時期から充実しているとはいい難くなってきた。
第7節の九州リーグは10月13日。
それ時に心身ともに最高の状態へと導き、最高のパフォーマンスの麻雀を見せつけてやる!

第7節組み合わせ予定
A卓(西原×新谷×福田×浜上×青木)
B卓(大和田×中尾×塚本×小川)
C卓(小車×柴田×安東×藤原)
(組み合わせは都合により変更になることもあります)

Aリーグ

順位 名前

1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 8節 9節 10節 合計 順位
1 大和田 篤史 40.3 27.3 ▲ 14.1 37.6 58.4 50.4 199.9 1
2 中尾 多門 16.7 81.1 ▲ 51.8 ▲ 7.0 41.0 55.1 135.1 2
3 西原 亨 1.8 39.7 71.4 61.2 ▲ 52.9 ▲ 15.5 105.7 3
4 新谷 翔平 ▲ 30.9 62.8 62.0 59.6 ▲ 27.8 ▲ 34.1 91.6 4
5 小車 祥 ▲ 2.5 18.1 2.2 ▲ 46.7 56.6 39.1 66.8 5
6 柴田 祐一朗 ▲ 18.0 ▲ 36.3 61.5 ▲ 14.3 46.5 9.7 49.1 6
7 藤原 英司 ▲ 2.7 13.6 19.2 ▲ 13.6 50.1 ▲ 32.7 33.9 7
8 青木 胤道 35.8 4.6 21.9 ▲ 5.3 ▲ 35.8 ▲ 20.4 0.8 8
9 浜上 文吾 31.6 ▲ 8.8 3.3 ▲ 26.5 ▲ 13.4 ▲ 7.0 ▲ 20.8 9
10 福田 正道 ▲ 38.1 ▲ 66.9 ▲ 37.5 13.8 10.3 4.7 ▲ 113.7 10
11 小川 善章 ▲ 6.7 ▲ 33.3 ▲ 5.3 26.0 ▲ 59.3 ▲ 40.3 ▲ 118.9 11
12 安東 裕允 ▲ 63.9 ▲ 21.9 ▲ 85.3 ▲ 2.2 ▲ 23.5 ▲ 11.7 ▲ 208.5 12
13 塚本 将之 15.6 ▲ 81.0 ▲ 67.5 ▲ 83.6 ▲ 50.2 0.7 ▲ 266.0 13

決勝進出者 4名   降級者 2名
決勝進出&降級ライン:順位枠内に表示

Bリーグレポート:山本江利香

A卓(藤井×服部×山本×福田)
B卓(下山×安永×伊東×菊池)
C卓(矢野×相本×古本×石原×氷室)
D卓(藤岡×弘中×陣野×宮崎×鶴)

今回Bリーグのレポートを担当させていただきます。
27期生の山本江利香です。宜しくお願いします。

Bリーグ、Cリーグは後期の第1節になります。そして、私はBリーグで初めての対局です。
絶対緊張すると思っていたのですが、これが自分でも不思議なぐらい落ち着いて対局に臨む事が出来ました。
私の最初の対戦相手は 服部学プロ、福田譲二プロ、アマチュアで参加している藤井祟勝さんの4人打ちです。

1回戦目、開始早々にテンパイを入れたのは私でした。

東1局、西家ドラ六筒で、配牌でドラと役牌のトイツ。
役牌をポンして3,900でも良いかと思っていたのが、リャンメンが先に埋まり先制リーチをしてみる事にしました。リーチ後に持ってきた東を親の藤井さんに鳴かれダブ東のみをツモられ最初のリーチは不発に終わりました。

まだ始まったばかりと気持ちを切り替えますが1,000は1,100オール、4,000は4,200オールと親の藤井さんに次々とアガられてしまい藤井さんの好調さが見て取れました。

その日は1日を通して仕掛けにしてもリーチにしてもほとんどのアガリをモノにしていた藤井さんは+60.4Pで、卓内トップで終了でした。
服部プロは+25.2Pと終始落ち着いて自分のペースで打っているのが印象的でした。
私は▲26.3P、福田プロは▲59.3Pと大きく差をつけられてしまいました。

昇級してすぐ降級なんて考えたくもないですがそんな事にならないように日々精進していきます。

Bリーグ

順位 名前 プロ/アマ

1節

2節 3節 4節 5節 合計
1 古本 和宏 プロ 86.2 86.2
2 菊池 豪 プロ 84.8 84.8
3 藤井 崇勝 アマ 60.4 60.4
4 下山 哲也 プロ 54.9 54.9
5 宮崎 皓之介 プロ 49.9 49.9
6 服部 学 プロ 25.2 25.2
7 藤岡 治之 プロ 19.8 19.8
8 弘中 栄司 アマ 15.0 15.0
9 相本 長武 アマ 9.7 9.7
10 石原 忠道 アマ ▲ 8.6 ▲ 8.6
11 山本 江利香 プロ ▲ 26.3 ▲ 26.3
12 氷室 哀華 プロ ▲ 29.4 ▲ 29.4
13 陣野 良貴 プロ ▲ 39.0 ▲ 39.0
14 鶴 浩昭 プロ ▲ 45.7 ▲ 45.7
15 福田 譲二 プロ ▲ 59.3 ▲ 59.3
16 伊東 宏倫 プロ ▲ 59.8 ▲ 59.8
17 矢野 拓郎 プロ ▲ 60.9 ▲ 60.9
18 安永 敏郎 アマ ▲ 79.9 ▲ 79.9

昇級者 未定   降級者 未定
昇級&降級ライン:順位枠内に表示
前期成績はこちら

Cリーグレポート:松尾樹宏

A卓(高野×佐藤×藤瀬×水町)
B卓(高末×久保×山本×西川)
C卓(公文×進×樋口×柴田)
D卓(河野まや×濱田×河野みのり×松尾)
E卓(北島×榎田×松本×友保)

まだまだ残暑の厳しい9月頭、後期九州リーグが開幕した。
たった5節、計20半荘で全ての決着がつくことを考えると、最初から少しでもポイントを叩き有利な立場に立っておきたい所。
特に現在のCリーグは所属人数も多く、昇級ボーダーが3桁を越えることも珍しくない。
ちなみにではあるが、前節の前期九州リーグ、1節目終了時の上位6名中5名が昇級している。
逆に、第1節でマイナスした者に昇級者はいない。第1節がどれだけ重要かが伺える。

さて、結果から言うと、私は卓内ラスだった。
内容ではなく結果に反省はしたりしないが、これで残り4節、非常に厳しい戦いになってしまった。
麻雀は運が絡む、いい内容でマイナスの時もあれば悪い内容でプラスの時もあるとよく言われるが、突きつけられるのはマイナスしたという事実のみ。非常に重い。

これから麻雀プロを続けて行く中で何度も同じようなことがあると思う。そんな時、自分の努力は間違っていないと胸を張って言えるようなプロでありたいし、そうなれるよう精進していきたい。

Cリーグ

順位 名前 プロ/アマ 1節 2節 3節 4節 5節 合計
1 松本 路也 アマ 55.7 55.7
2 佐藤 健治 プロ 50.9 50.9
3 西川 舞 プロ 40.2 40.2
4 樋口 徹 プロ 23.6 23.6
5 進 栄二 プロ 14.4 14.4
6 柴田 祐輔 アマ 14.3 14.3
7 河野 みのり プロ 4.9 4.9
8 藤瀬 恒介 アマ 3.6 3.6
9 水町 慎一 プロ 0.0 0.0
10 榎田 賢二郎 プロ ▲ 8.1 ▲ 8.1
11 山本 秋桜里 プロ ▲ 10.4 ▲ 10.4
12 久保 真輝 アマ ▲ 12.4 ▲ 12.4
13 河野 まや アマ ▲ 15.0 ▲ 15.0
14 高末 丈永  アマ ▲ 17.4 ▲ 17.4
15 北島 勇輝 プロ ▲ 22.1 ▲ 22.1
16 友保 美香里 プロ ▲ 25.5 ▲ 25.5
17 濱田 貴幸 アマ ▲ 35.0 ▲ 35.0
18 松尾 樹宏 プロ ▲ 36.9 ▲ 36.9
19 公文 寛明 アマ ▲ 54.3 ▲ 54.3
20 高野 翔太 アマ ▲ 54.5 ▲ 54.5

昇級者 未定   降級者 未定
昇級&降級ライン:順位枠内に表示
前期成績はこちら

九州プロリーグ レポート/第14期九州プロリーグ A・B・Cリーグ 第6節レポート

Aリーグレポート:新谷翔平
A卓(西原×福田×大和田×小川×塚本)
B卓(浜上×青木×安東×小車)
C卓(藤原×中尾×新谷×柴田)
「なんか去年とはうってかわって調子いいよね。」
今年度に入ってよく私が言われる言葉である。確かに昨年度はスタートから下位に位置し、そのまま最後まで降級争いをしていた。今年は2~4節はどれも約+60Pとスコアとしては調子のいい面を見せたものだから、よく上記の言葉を聞く。
確かに多少は変わったかもしれない。
しかし、それ以上に重要なものがある。それはメンタルだ。
私、新谷の卓は、第5節終了時に2位だった私と、4位・中尾、5位・藤原、6位・柴田といった、決勝に残る4人の枠を争う中で絶対に負けられない者同士といった組み合わせ。
1回戦の東1局から私に手が入る。配牌は、
二万九万九万二索二索四索六索八索三筒六筒八筒西北  ドラ九万
ドラが2枚あるが形は苦しい。しかしツモが七筒九万七万六万といいツモ。
そして6巡目に六索をツモり、以下の形。
六万七万九万九万九万二索二索四索六索六索八索六筒七筒八筒
もし待ちが七索になった場合に仮にリーチをするなら、宣言牌が打四索になるよりも四索六索と切ったほうが少しは出やすいので、ここでは打四索を選択。
その直後、下家の柴田がすぐに七索を手出し。ここで一瞬嫌な予感はしたが、すぐに八万をツモったので私はリーチといく。が、その宣言牌の六索を柴田がチー。しばらくめくり合いが続いたが、軍配があがったのは柴田。
タンヤオのみの300・500だがツモられる。
ここから先は想像の話だが、打四索の時に打六索としていればそのときはチーできない形だったかもしれないし、できる形でもしなかったかもしれない。
いや、実際にはそんなこと考えても仕方のないことだが、逆だったらチーもされず1人旅だったのではないかとたらればの世界について考え、心が揺れる。
このとき私はこの1ヶ月、心身共に充実していなかったのだと認識した。おそらく充実していたらこのような思考に至らない。
事実、充実していた2~4節の間はすべての物事に前向きで、考えても仕方のない過ぎ去ったことに時間など割いていなかった。
この1ヶ月、自分自身で自信をもって充実していたと言い張れないからこそ、そんなことで揺れたのだと思う。そして一度心が揺れてしまうと平常心を取り戻すのは難しいのはよく知っている。
揺れたままだが、2回戦は1度もアガれずしかし放銃せずで、オーラスに28,600点から2,600をアガリ、なんとか原点確保。
そして3回戦に心が揺れているがゆえに大きなミスをする。
南3局、5巡目に以下の牌姿。
四万五万六万四索五筒五筒六筒七筒八筒九筒九筒九筒九筒西  ドラ九筒
是が非でもアガリたいこの牌姿だが、対面のトップ目の中尾がすでに2つ仕掛けている。
まだテンパイしていない可能性も十分あるし、後々四索が危険になりそうにみえたので打四索としてしまう。
「何をやっているんだ」
切った瞬間に思った。
確かに第5節終了時に2位にはいた。しかしまだ後リーグ戦は半分も残っていてまだ守りなんて考える所ではないし、ポイントでも守りに入るだけのアドバンテージなんて全くないのに、何を恐れているのだ。
この牌姿であれば仮に親からリーチが来てもアガリにむかうのだから、このタイミングで暗カンをしてうっかりリンシャン牌が三索五索ならしめたもの。そうでなくても、例えば五万をツモればかなり広くてよい1シャンテンになる。
それに他家よりも1回でも多くツモり早くテンパイを取りに行かないと行けないのに、これではテンパイの受け入れも狭くしている。
次巡、七筒をツモり結果オーライのリーチになるが、この局の結末は中尾のアガリとなる。
この出来事から考えても、やはりメンタルは重要である。
特に私は私生活が影響すると考えている。日ごろの行いや、心身が充実しているか。自分に嘘をついていないか。
例えば楽な方に流されるような怠惰な生活をしていると後ろめたい気持ちが出てくる。そして自分に自信が持てなくなる。心の底に不安なものがあると麻雀においても普段なら気にしない些細なことでも、それをいつまでも気にする自分が現れるのだ。上記の内容がいい例である。
逆に自分が満足のいく生活、人生を送れている人というのは、根拠のある自信で満ち溢れている。根拠のある自信ならば、仮に1度失敗をしたとしても次はできる、という思考につながる。たまたま起きた失敗を反省はすれこそ、引きずったりはしない。
このように私生活においても心身ともに充実させることが、メンタル面でよい作用を引き起こすのである。
私はというと、九州リーグの成績が物語っているように、2~4節の間は公私ともに非常に充実していたが、第5節あたりの時期から充実しているとはいい難くなってきた。
第7節の九州リーグは10月13日。
それ時に心身ともに最高の状態へと導き、最高のパフォーマンスの麻雀を見せつけてやる!
第7節組み合わせ予定
A卓(西原×新谷×福田×浜上×青木)
B卓(大和田×中尾×塚本×小川)
C卓(小車×柴田×安東×藤原)
(組み合わせは都合により変更になることもあります)
Aリーグ

順位 名前

1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 8節 9節 10節 合計 順位
1 大和田 篤史 40.3 27.3 ▲ 14.1 37.6 58.4 50.4 199.9 1
2 中尾 多門 16.7 81.1 ▲ 51.8 ▲ 7.0 41.0 55.1 135.1 2
3 西原 亨 1.8 39.7 71.4 61.2 ▲ 52.9 ▲ 15.5 105.7 3
4 新谷 翔平 ▲ 30.9 62.8 62.0 59.6 ▲ 27.8 ▲ 34.1 91.6 4
5 小車 祥 ▲ 2.5 18.1 2.2 ▲ 46.7 56.6 39.1 66.8 5
6 柴田 祐一朗 ▲ 18.0 ▲ 36.3 61.5 ▲ 14.3 46.5 9.7 49.1 6
7 藤原 英司 ▲ 2.7 13.6 19.2 ▲ 13.6 50.1 ▲ 32.7 33.9 7
8 青木 胤道 35.8 4.6 21.9 ▲ 5.3 ▲ 35.8 ▲ 20.4 0.8 8
9 浜上 文吾 31.6 ▲ 8.8 3.3 ▲ 26.5 ▲ 13.4 ▲ 7.0 ▲ 20.8 9
10 福田 正道 ▲ 38.1 ▲ 66.9 ▲ 37.5 13.8 10.3 4.7 ▲ 113.7 10
11 小川 善章 ▲ 6.7 ▲ 33.3 ▲ 5.3 26.0 ▲ 59.3 ▲ 40.3 ▲ 118.9 11
12 安東 裕允 ▲ 63.9 ▲ 21.9 ▲ 85.3 ▲ 2.2 ▲ 23.5 ▲ 11.7 ▲ 208.5 12
13 塚本 将之 15.6 ▲ 81.0 ▲ 67.5 ▲ 83.6 ▲ 50.2 0.7 ▲ 266.0 13

決勝進出者 4名   降級者 2名
決勝進出&降級ライン:順位枠内に表示
Bリーグレポート:山本江利香
A卓(藤井×服部×山本×福田)
B卓(下山×安永×伊東×菊池)
C卓(矢野×相本×古本×石原×氷室)
D卓(藤岡×弘中×陣野×宮崎×鶴)
今回Bリーグのレポートを担当させていただきます。
27期生の山本江利香です。宜しくお願いします。
Bリーグ、Cリーグは後期の第1節になります。そして、私はBリーグで初めての対局です。
絶対緊張すると思っていたのですが、これが自分でも不思議なぐらい落ち着いて対局に臨む事が出来ました。
私の最初の対戦相手は 服部学プロ、福田譲二プロ、アマチュアで参加している藤井祟勝さんの4人打ちです。
1回戦目、開始早々にテンパイを入れたのは私でした。
東1局、西家ドラ六筒で、配牌でドラと役牌のトイツ。
役牌をポンして3,900でも良いかと思っていたのが、リャンメンが先に埋まり先制リーチをしてみる事にしました。リーチ後に持ってきた東を親の藤井さんに鳴かれダブ東のみをツモられ最初のリーチは不発に終わりました。
まだ始まったばかりと気持ちを切り替えますが1,000は1,100オール、4,000は4,200オールと親の藤井さんに次々とアガられてしまい藤井さんの好調さが見て取れました。
その日は1日を通して仕掛けにしてもリーチにしてもほとんどのアガリをモノにしていた藤井さんは+60.4Pで、卓内トップで終了でした。
服部プロは+25.2Pと終始落ち着いて自分のペースで打っているのが印象的でした。
私は▲26.3P、福田プロは▲59.3Pと大きく差をつけられてしまいました。
昇級してすぐ降級なんて考えたくもないですがそんな事にならないように日々精進していきます。
Bリーグ

順位 名前 プロ/アマ 1節 2節 3節 4節 5節 合計
1 古本 和宏 プロ 86.2 86.2
2 菊池 豪 プロ 84.8 84.8
3 藤井 崇勝 アマ 60.4 60.4
4 下山 哲也 プロ 54.9 54.9
5 宮崎 皓之介 プロ 49.9 49.9
6 服部 学 プロ 25.2 25.2
7 藤岡 治之 プロ 19.8 19.8
8 弘中 栄司 アマ 15.0 15.0
9 相本 長武 アマ 9.7 9.7
10 石原 忠道 アマ ▲ 8.6 ▲ 8.6
11 山本 江利香 プロ ▲ 26.3 ▲ 26.3
12 氷室 哀華 プロ ▲ 29.4 ▲ 29.4
13 陣野 良貴 プロ ▲ 39.0 ▲ 39.0
14 鶴 浩昭 プロ ▲ 45.7 ▲ 45.7
15 福田 譲二 プロ ▲ 59.3 ▲ 59.3
16 伊東 宏倫 プロ ▲ 59.8 ▲ 59.8
17 矢野 拓郎 プロ ▲ 60.9 ▲ 60.9
18 安永 敏郎 アマ ▲ 79.9 ▲ 79.9

昇級者 未定   降級者 未定
昇級&降級ライン:順位枠内に表示
前期成績はこちら
Cリーグレポート:松尾樹宏
A卓(高野×佐藤×藤瀬×水町)
B卓(高末×久保×山本×西川)
C卓(公文×進×樋口×柴田)
D卓(河野まや×濱田×河野みのり×松尾)
E卓(北島×榎田×松本×友保)
まだまだ残暑の厳しい9月頭、後期九州リーグが開幕した。
たった5節、計20半荘で全ての決着がつくことを考えると、最初から少しでもポイントを叩き有利な立場に立っておきたい所。
特に現在のCリーグは所属人数も多く、昇級ボーダーが3桁を越えることも珍しくない。
ちなみにではあるが、前節の前期九州リーグ、1節目終了時の上位6名中5名が昇級している。
逆に、第1節でマイナスした者に昇級者はいない。第1節がどれだけ重要かが伺える。
さて、結果から言うと、私は卓内ラスだった。
内容ではなく結果に反省はしたりしないが、これで残り4節、非常に厳しい戦いになってしまった。
麻雀は運が絡む、いい内容でマイナスの時もあれば悪い内容でプラスの時もあるとよく言われるが、突きつけられるのはマイナスしたという事実のみ。非常に重い。
これから麻雀プロを続けて行く中で何度も同じようなことがあると思う。そんな時、自分の努力は間違っていないと胸を張って言えるようなプロでありたいし、そうなれるよう精進していきたい。
Cリーグ

順位 名前 プロ/アマ 1節 2節 3節 4節 5節 合計
1 松本 路也 アマ 55.7 55.7
2 佐藤 健治 プロ 50.9 50.9
3 西川 舞 プロ 40.2 40.2
4 樋口 徹 プロ 23.6 23.6
5 進 栄二 プロ 14.4 14.4
6 柴田 祐輔 アマ 14.3 14.3
7 河野 みのり プロ 4.9 4.9
8 藤瀬 恒介 アマ 3.6 3.6
9 水町 慎一 プロ 0.0 0.0
10 榎田 賢二郎 プロ ▲ 8.1 ▲ 8.1
11 山本 秋桜里 プロ ▲ 10.4 ▲ 10.4
12 久保 真輝 アマ ▲ 12.4 ▲ 12.4
13 河野 まや アマ ▲ 15.0 ▲ 15.0
14 高末 丈永  アマ ▲ 17.4 ▲ 17.4
15 北島 勇輝 プロ ▲ 22.1 ▲ 22.1
16 友保 美香里 プロ ▲ 25.5 ▲ 25.5
17 濱田 貴幸 アマ ▲ 35.0 ▲ 35.0
18 松尾 樹宏 プロ ▲ 36.9 ▲ 36.9
19 公文 寛明 アマ ▲ 54.3 ▲ 54.3
20 高野 翔太 アマ ▲ 54.5 ▲ 54.5

昇級者 未定   降級者 未定
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第24期チャンピオンズリーグ 決勝観戦記

8月18日、四谷連盟道場で行われたチャンピオンズリーグ決勝、今回の観戦記は私、増田隆一が担当します。自分の麻雀感に基づき、思ったことを素直に書くつもりなので、最後までお付き合いいただければ幸いです。

会場一番乗りは関西本部所属の三好直幸。今のところ目立った実績はないが、毎回チャンピオンズリーグに出場するために姫路より上京してくる努力家であり、今回はその努力が実り、念願の決勝の椅子を手に入れた。
麻雀は何度も対戦しているが、手役重視の超面前派、特に一色手が得意な印象がある。超がつくほどの面前派(実際に今回の決勝でフーロしたのは3回のみ)だけあり、打点の高さは今回のメンバーで随一であろう。

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三好直幸

次に入ってきたのは藤井すみれ。入ってくるなり、立会人や審判、記録者らに大きな声で「今日はよろしくお願いします」と挨拶をしていたのが印象的。当たり前のことなのだが、挨拶が出来ない若手にはぜひ見習ってほしい姿勢である。藤井はチャンピオンズリーグ2度目の決勝。今回は、前回ぎりぎりの所で競り負けた相手である藤原も残っているので、より思うところもあるであろう。ちなみに、その決勝は私も残っていて、さらに今回のベスト16は藤井、藤原で勝ち上がったが、その敗れた相手に私もいる。
麻雀は、じっと息を潜めながらカウンターを狙う印象。技術よりも気持ちで打つタイプなので、勝ちたい想いが上手く牌に伝わればチャンスはあるだろう。

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藤井すみれ

きっかり開始10分前、同時に会場に姿を見せたのが蒼井ゆりかに、藤原隆弘。

蒼井と初めて対戦したとき、先手を取られた場面、全てにベタオリする姿を見て、失礼ながら、攻め屋の私は負ける気が全くしなかった。実際に、そのときは1人でアガリ倒した記憶がある。ところが、最近対戦する蒼井は全く印象が違った。勝負の場面では、先手を取られても果敢に攻め返し、アガリをものにしていたのだ。元来、腰が重くしっかりと手を作る麻雀なので、華奢な体で河に放たれる危険牌には迫力すら漂う。蒼井は、かわいらしい顔から想像もつかないくらい芯がしっかりしている。ここまでの成長は、並々ならぬ芯の強さが支えたに違いない。集中力を切らさずにしっかり攻めれば優勝争いに加わってくることは間違いない。

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蒼井ゆりか

最後に、今更不要かもしれないが、藤原の紹介もしておこう。2度のチャンピオンズリーグ優勝に加え、四大タイトル戦全ての決勝進出経験、30年近いプロ歴と、経験、実績共に大本命であろう。麻雀は、現在数少なくなった守備型だが、経験に基づく引き出しの多さが一番の武器である。今回の決勝では、持っている技を全て駆使して闘うこととなった。

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藤原隆弘

1回戦(起家から、藤原・三好・蒼井・藤井)

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定刻通り、試合開始が立会人の瀬戸熊鳳凰位より宣言される。
立ち上がり、全員の模打ペースが異様に早い。それを見て藤原、3巡目に何も迷うようなことのない手から、わざとワンテンポ置いての切り出し。「これは、決勝、そんなに軽々しく打つなよ。丁寧に打ってよい牌譜を残そうぜ」という先輩から後輩に向けてのメッセージである。確かに、最近は模打スピードを重視するあまり、打牌が雑になっている若手も多い。これ以降、ゆったり目のペースで試合は進む。そして3者は、藤原からの無言のメッセージにプレッシャーを感じたのか、2度とこのペースが上がることはなかった。

東1局、親番の藤原がリーチと出る。

四万五万六万三索四索五索五索六索七索八筒八筒白白  ドラ東

これに3人が対応し、1人テンパイ。「ダブ東のドラが見えていない場面で親リーチが入り、親の1人テンパイ」、結果だけを見るとごく普通なのだが、3人の撤退がワンテンポ早く感じた。重要なのは、藤原が‘緻密な仕事師‘らしく、この先行親リーチに対する相手の出方を、捨て牌はもちろん相手の雰囲気からも敏感に感じ取っていたことだ。対応する相手ならばワンテンポ早く動き、踏み込みも一歩深くするし、対応しない相手ならば、次は普段通り腰の重いスタイルに戻し、守備型らしく無防備に踏み込まなければよい。こういった技術を使いこなせるのも、藤原の高い対応力があってこそ。そして、簡単にアガリを拾えなかったことも合わせて、この局の結果で、藤原のこの日の方針は‘相手に対応させること‘に決まった。

思惑通り、このまま藤原が主導権を握るかと思われたが、相手も開局から気持ちの上で藤原に対して引き過ぎてしまったのは分かっている。次局の東1局1本場、蒼井がこのリーチ。

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「すでに10巡目ということ」、「ソーズがドラ色で場に高いということ」、「一発裏ドラのないAルールにおいて、満貫は充分なアドバンテージになること」、「5回勝負の1回戦だけに、拾える可能性がある満貫は確実に拾いたいこと」と、ヤミテンにしたくなる理由は数々浮かぶのだが、蒼井はあえてリーチといった。後日、蒼井にメールをしてみた。

私 「あのリーチよかったね」
蒼井「ドラを引いて一番いい形でテンパイしたので、力を感じました。Aルールにおいて、リーチは得策でないと思いますが、(どのような結果になるか)スタート時点での調子を見たかったです」
私 「なるほどね。ドラ引き以外はヤミテン?」
蒼井「そうですね。跳満をツモって勢いを持ってきたかったのと、(ヤミテン満貫をあえてリーチすることで)3者にしっかりと戦う姿勢を見せたかったのもありますね」

結果は流局で終わるが、牌譜だけを見てこのリーチをやり過ぎだなんて言わないでほしい。麻雀は人間と戦うゲームであり、相手を引き気味に打たせたい藤原、戦う姿勢を見せることで、相手に楽をさせたくない蒼井の思惑が水面下で絡み合い、この1局があるのだ。

藤原の親が流れた東2局2本場、三好が11巡目にこのリーチ。

二万一筒二筒三筒四筒五筒六筒一索一索一索  暗カン牌の背南南牌の背  ドラ六索

先ほどの蒼井と同じように、戦う姿勢を見せに行ったのだが、これはアガれたところでただ単に点棒が増えるだけ。蒼井のリーチとは意味が違い、勝負の流れを引き寄せるようなアガリにはならないと思う。‘流れ‘という言葉に拒絶反応を示す方もいらっしゃると思うので、違う言葉で説明しよう。例えば先ほどの蒼井のリーチが成就したとしたら、対戦相手は「今日の蒼井は出来がよさそうだ」や、「ヤミテン満貫をノータイムリーチか」など、‘強さ‘を感じるであろう。そうした感情は相手に対する尊敬や怖れとなり、蒼井に対して押し引きの判断を誤る場面が出てくる。対して、三好のリーチが成就したとして、同じような印象を受けるであろうか?私ならば、「何がしたいの?」や、「親なら何でもリーチか?」など、‘強さ‘とはかけ離れた印象しか受けないであろう。麻雀は人間同士が戦う以上、相手が感じた感情が複雑に絡み合い、勝負の‘流れ‘となる。そういった意味で、ここは手役派の三好らしくしっかりとした形で攻めてほしかったと思う。
このリーチを受けて、蒼井にもテンパイが入る。

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牌譜を見ていただければ分かるが、比較的安全そうではあるものの、(一発役はないが)一発目に無筋の五万を勝負している。しかし、巡目が進んだここの一万はツモ切り。三好のリーチに対してトーンの低い藤原、藤井の手牌構成は読みにくく、一万の所在が、誰かに固まっていのるか、ヤマにいるかは賭けでしかない。ただし、勝負手である以上はドラ&親のリーチ宣言牌をまたぐ(蒼井の目からは四索七索はノーチャンス)四索よりは、暗刻だった者が手詰まりしたときに、オリ打ちまで期待できる一万に待ちを替えてもよかったかもしれない。1巡おいてすぐ河に一万を並べたのは結果論ではあるが、やや残念な印象はあった。

この時点まで全く戦いの舞台に上がってこなかった藤井に、仕掛けが増え始める。しかし、麻雀は優勢なときに加点を目指すゲームであって、劣勢になってから加点を目指すゲームではない。分かりやすく言えば、優勢=点棒があるときは、制限もなく手牌に素直に打てるし、調子も後押ししてくれるので加点しやすく、劣勢=点棒がないときは、制限がついていたり、目先の点棒を考えて判断を誤りやすくなっていたりと加点がしにくくなっている。開局のフラットな状況がすでに劣勢に変わっている藤井の仕掛けは、点棒的なもので焦れて動かされた感があり、自らさらなる劣勢の渦に入り込んでゆく。この仕掛けが藤原の1,300・2,600を生み、蒼井に安目ではあるが5,800を召し上げる結果となってしまう。

同じように藤原も仕掛けを多用し始めるが、藤井と違い、相手との間合いをよく考えて絶妙なタイミングで動き、相手が攻め返しにくい捨て牌を作り上げていく。思惑通り、南2局までは完璧に局を潰し得意の小場の展開に持ち込んでいた。
ところが、南3局に均衡が崩れる。蒼井が7,700、2,900は3,200と連荘した2本場、超面前派の三好がここから白をポン。

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2枚目という事や、南を鳴ければ3,900になりそうなことを考えるとそこまで悪くはないのだが、結果として蒼井に五索が入り、即リーチ。そしてすぐに高めのドラ五筒をツモり、この半荘を決定づける4,000オールで蒼井の持ち点は5万点を超えた。

二索三索四索六索七索四筒五筒六筒六筒七筒北北  ツモ五筒

蒼井の2打目の七索、3、5巡目の一索のトイツ落としを見ていれば、速度が速いことは容易に想像がつく。連荘中の親の上家ということも合わせて考えると、白を安全牌として抱えながら、三好らしく面前でドラドラ七対子に向かう選択肢もあっただけに、悔いが残る1局となってしまった。

オーラスは、蒼井のダントツのなか、藤原がしっかりとリーチのみをアガリ、浮きに回って終了。

1回戦成績
蒼井+28.4P  藤原+4.7P  三好▲7.7P  藤井▲25.4P

 

2回戦(起家から、藤井・蒼井・三好・藤原)

プロ連盟では、情報の平等性を保つため、半荘間に休憩中の選手と、スタッフやギャラリーが会話することは禁止されている。チャンピオンズリーグももちろん、その規定に則り運営されているので、藤井、三好は2回戦目の挽回に向けて、蒼井は好調を維持するためにそれぞれ静かに集中を高めている姿が見られた。その中で藤原だけがにこやかにしている。1回戦目、藤原の牌姿が一度も出てきてないことにお気づきだろうか?載せるような牌姿がないくらいツキがなかった上で、苦しいながらもあらゆる技を駆使してのプラス。思わず笑みがこぼれてしまうくらい嬉しかったに違いない。

それにしても藤井のデキが悪い。東3局、西家で4巡目にこのリーチ。

二索二索二索四索五索一筒二筒三筒七筒八筒九筒中中  ドラ四万

役なし両面で、あまり高くなる要素もなく自然なリーチ。ここに親の三好が追っかけリーチ。

七万七万三索四索五索二筒三筒四筒五筒六筒六筒七筒八筒  リーチ

数巡後に、藤井が高めを掴んで5,800。これ自体はよくある話であって、別になんということはない。問題はこの後に、こういった失点をリカバリーできるかどうかなのである。藤井は結局、このまま浮きに回ることはなかった。
対して藤原。同1本場でこの放銃。

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どちらでアガっても8,000の勝負手である。三筒白の手出しを見て蒼井のテンパイは当然感じているし、三好の親リーチ宣言牌のまたぎでしかも、序盤の五筒の裏スジの四筒はどちらにも超危険。それでも藤原はまっすぐ四筒を打ちぬいた。守備型を勘違いしている人がいるが、放銃しないことが守備型ではない。それはただの怖がりの日和屋である。形が整うまで繊細に我慢を繰り返して、ここぞというタイミングで攻め返すのが守備型のあるべき姿だ。この局は結果8,000の放銃に終わったが、藤原は経験上、この点棒が返ってくることを知っている。藤原の言葉を借りると、「だって、行くべき形で悪い放銃じゃないもん」。この言葉はすぐに現実のものとなる。

東4局、迎えた親番でヤミテンのピンフ1,500をアガると、同1本場でこの配牌。

九万一索三索七索七索八索八筒九筒東東北北白発  ドラ七索

12,000や18,000が見えるも、ダブ東が仕掛けられるかどうか、仕掛けられたとしてタイミングがどうかといった所。無難に打九万とすると、南家・藤井の第一打が東。あっさりネックが仕掛けられる。このときの藤井の形は

二万三万六万一索二索四索二筒四筒五筒六筒東白白  ツモ九索

確かに123、234と両方の三色を考えると一索二筒、456の三色を考えると六万、ドラ受けを考えると九索は切りにくいし、藤原の点棒を見るとこの局は攻めたくなるのは分かるのだが、自らの劣勢をしっかりと受け止められていれば東以外を切れたかもしれない。この後、藤原の不穏な捨て牌を見てポンテンを取るも、これが最悪の結果を生む。

藤原
一索三索六索七索七索七索八索八索北北  ポン東東東

ここに最高のドラを引き入れテンパイ。そしてあっさりカン二索をツモり8,000オール。先ほどの8,000を3倍にしてあっさりと回収した。

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今こうして牌譜を見ていると、藤井はすごく悪いことをしているような感じはないのだが、やることなすこと、ことごとく悪い結果が出ていた。結果がそう出てしまった以上、受け入られるようになれば大きく成長すると思うのだが、このままだとツイているときは勝って、ツイてないときは負けるだけになってしまう。次局もピンフドラ1でリーチと出るのだが、私ならば、「8,000オールの藤原の親を交わしておこう」や、「今日は悪い結果が出やすいから一度ヤミテンにしよう」などと考えるので、三好の追いかけリーチに、3,900は4,500を放銃する結果にはならない。キャリアも実力も違うので比較するのは酷かもしれないが、藤原は今回の決勝、調子の悪さをきちんと受け入れ、それに合わせた麻雀を打っていた。このあたりが、今後の藤井の課題だと思う。

四万五万六万六索七索八索一筒一筒三筒四筒五筒六筒七筒  ロン二筒

ここからは再び藤原の真骨頂、場を小場に持ち込み淡々と局は進んでゆく。ところが南2局、そう簡単にはやらせないぞと、ようやく三好らしいプレーが出る。

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蒼井の親リーチを受けた瞬間。さすがに3枚目の七筒だし、九索がリーチの現物なのでチーする人も多いだろう。これを、超面前派の三好は動かず。そして自らテンパイを入れて蒼井からホウテイで12,000。

二筒三筒四筒五筒五筒五筒八筒八筒九筒九筒  暗カン牌の背一筒一筒牌の背  ロン八筒

これまでしっかりと手を作っていた蒼井だが、なんとなく点棒を削られながら東4局に37,000あった持ち点が26,000になってしまい、このリーチはやや焦った感がある。このまま藤井にも交わされて、最終的にはラスを押し付けられてしまった。しかし、トータルトップに立った藤原にとっても、最終的には三好に交わされており、なんとなく不完全燃焼感の残る半荘となった。

2回戦成績
三好28.2P  藤原17.1P  藤井▲17.9P  蒼井▲27.4P

2回戦終了時
藤原21.8P  三好20.5P  蒼井1.0P  藤井▲43.3P

 

3回戦(起家から、三好・藤原・蒼井・藤井)

藤井の1人沈みで迎えた3回戦、ここは藤井にとっての正念場となる。この回で藤井がトップを取っても決定打にはならないが、藤井との勝負で放銃すると優勝争いから遠のいてしまうので、ほかの3人はリスクを負ってまで勝負にはこない。マークを外されて打ちやすくなるこの回にどこまで巻き返せるかが注目だ。
開局から主導権を取りたい藤井だが、もはや手がついてこない。
最初に大きくアガったのは、前回ラスの蒼井。東3局2本場で2,600オール。

三万三万七万七万七万三索四索三筒四筒発発発  ドラ二万  ツモ二索

続いて三好が同3本場で負けじと、3,000・6,000をツモ。

一万二万三万七万八万九万一索二索三索一筒三筒九筒九筒  ドラ七筒  ツモ二筒

東4局の藤井の親はテンパイすら入らずにあっさり落ちてしまった。このまま、優勝争いから消えてしまうと思われたが、南1局1本場。

七万七万七万八万八万五索五索六筒六筒六筒白白白  ドラ九筒

ツモれば四暗刻、出ても12,000の勝負手を、親の三好から打ち取った。このアガリをきかっけにしてさらなる加点を目指したい藤井だが、あとが続かない。ダメな日はこんなものなのかもしれない。
南2局1本場、藤井に12,000を放銃してしまい盛り返したい三好が12巡目にリーチ。

七万九万五索六索七索七索八索九索七筒八筒九筒九筒九筒  リーチ

打点はあるが、待ちはドラのカンチャン。少しでも相手が対応してくれて時間が稼げればといったところだ。ところがこのリーチを受けた時点で、蒼井の手はこうなっていた。

一万一万二万二万三万三万三万六万六万六万七万八万南

一発目の無スジ八索から早くも臨戦態勢に。今回の決勝、蒼井が1番良い麻雀を打っていたと思う。しっかりと手を作り、手がまとまればしっかり押し返す。非常にシンプルなことだが、大切なことだ。

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この16,000がポイント的に大きいのはもちろんだが、しっかりと押し返してアガリをものにしたことも大きい。蒼井は優勝へ向けて大きな手応え感じたであろう。
そして、オーラス、藤原が渾身の700・1,300をツモ。大きな見せ場はないものの、しっかりと浮いて終わるところがいぶし銀。蒼井とアガリの派手さは違うが、この終わり方には藤原も手ごたえを感じたであろう。逆に、藤井に12,000を打って以来、先行リーチ後に16,000の当たり牌を掴まされるくらい劣勢になってしまった三好には試練の半荘となってしまった。藤井に関してはこの半荘、12,000以外は見せ場なく終わったが、一応は浮きを守れたので、優勝へ向けて首の皮一枚つながったというところか。

3回戦成績
蒼井29.9P  藤井7.2P  藤原3.1P  三好▲40.2P

3回戦終了時
蒼井30.9P  藤原24.9P  三好▲19.7P  藤井▲36.1P

 

4回戦(起家から、蒼井・三好・藤井・藤原)

藤原は悪いなりに、毎回うまく浮きで終わっているし、蒼井もきっちりと自分の型通り打てて、そこにポイントもついてきているので、この両者はこのままのペースでいきたい。三好は3回戦で崩れてしまったのを、ここで立て直し最終戦を良い形で迎えたい。藤井は良いところなしで来ている中、3回戦は一応ではあるが初の浮きで終われたので、これをきっかけに4回戦目は飛躍の半荘にしたいところ。それぞれの思惑がある中、まず主役になったのは藤井。

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藤原のテンパイ打牌、ドラの白をポンテン。藤原との紙一重の引き比べだったが、即で藤原のアガリ牌を食い取り2,000・3,900。これまで、こういったケースは必ず藤井が負けていた。3回戦から少々ではあるが、風向きが変わりつつある。次の東3局の親番は、不恰好ながら4本場まで積み上げ持ち点は50,000点を超えた。
終わった後の打ち上げの席で、藤井にこう聞いてみた。
「自分の麻雀の良い所は?」
藤井はうつむきながら小さな声で「ありません」と答えた。負けたその日にする質問にしては、少々いじわるだったかもしれない。ただし、答えに関しては違うと思う。藤井の麻雀の良い所は諦めの悪さ。不恰好でも一心不乱にアガリに向かう姿こそが藤井の良い所なのだ。確かにすでに並びができているこのあたりに関しては、藤原も蒼井も、直接対決のぶつかり合いなら仕方がないが、トータルラスの藤井にぶつけて放銃することだけはしたくないという気持ちがあるので、連荘がしやすいというのはある。しかし、それを差し引いても藤井のアガリに向かう執念は見事であった。1回戦目からこれができていれば今頃は、もっと違った位置に立っていたかもしれない。次に決勝に残るときは最初から、小手先に走らずにまっすぐアガリに向かう姿を見たいと思った。
東4局、藤原が500・1,000で藤井の長い親番を終わらせて迎えた自らの親番、6巡目に7,700のテンパイ(Aルールは連風牌が4符)。

一筒二筒三筒八筒九筒東東  ポン四筒 上向き四筒 上向き四筒 左向き ポン発発発  ドラ四万

ツモ九筒でシャンポンに待ち替えをしたところで、蒼井が七筒をツモ切り。

二索三索五索六索七索八索四万五万五万六万六万西西  ツモ七筒

形的には攻めてもおかしくないのだが、蒼井が今回、最も気を付けなければならないのが藤原への直撃である。蒼井にとって、藤原に直撃を放銃することは、点数だけでなく順位点も関係するので、ポイント差が倍速以上で開くことだからだ。それをふまえ、藤原のピンズが余っていること、最低5,800はあるということ、最終手出し八筒の関連牌ということを考えると、すり抜けたとはいえこの七筒はあまりにキツイ。
私 「あれはさすがに打ち過ぎかな?」
蒼井「集中力が切れちゃいました」
この後、蒼井にもテンパイが入り、蒼井は何かに魅入られたようにツモってきた九筒を河に打ちつける。いつもソフトに牌を切る蒼井にしては珍しく、高く響いた打牌音が印象的だった。

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4回戦成績
藤井27.2P  藤原15.6P  蒼井▲18.8P  三好▲24.0P

4回戦終了時
藤原40.5P  蒼井12.1P  藤井▲8.9P  三好▲43.7P

 

5回戦(起家から蒼井・藤井・三好・藤原)

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藤原は浮きで終わればほぼ優勝、蒼井は藤原が沈めばかなり現実的な条件が見えてくる。藤井は藤原が沈むことが大前提で、そこからどこまで加点できるかで決まる。三好は現実的には苦しい条件となってしまった。
東1局、藤井のホンイツ仕掛けを受けて、蒼井がいきなりこのテンパイ。

二万二万三万三万四万六索六索三筒四筒五筒七筒八筒九筒  ドラ六索

この手をなんとヤミテンに構えた。藤井の仕掛けでツモが効かずに1シャンテンが長く、さすがに13巡目とテンパイが遅すぎたようだ。1回戦目にドラをツモったときに、‘ツモに勢いを感じて‘跳満ツモリーチに行った蒼井らしい選択。これが功を奏し、すぐに藤井から高め四万を打ち取り11,600。このアガリで、後は藤原を沈めれば優勝は目前。蒼井の逆転劇を期待したギャラリーの熱気が高まったが、すぐに次局、三好へ12,000は12,300を打ち返してしまう。

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ここから打八索でテンパイを取り放銃。いくら見え見えの染め手が五索を余らせているとはいえ、この放銃は責められない。タイトル戦決勝では、一度の親連荘で優勝を決定づけることは多々あるので、11,600をアガった次局、その勢いのまま勝負を決めに行くのは当然である。ただ残念なことに、ベストの選択が必ず正解とはならないのが麻雀。10回中8回が正解となる選択でも、そのときが2回の不正解になることもありえるのだ。こういったときに、強い人ほど気持ちの切り替えが早い。努力と経験が、「たまたま今回は悪い結果が出たが、これが自分の麻雀だから」と気持ちを強く持たせてくれるからだ。
東2局1本場、蒼井は14巡目にリーチ。

一万二万三万四索五索六索一筒二筒三筒四筒五筒九筒九筒  ドラ三筒

これを親番でテンパイを入れた藤井から討ち取り7,700は8,000。このアガリを見ると蒼井がしっかり気持ちを切り替えているのが分かる。「巡目も遅いし」、「跳満を放銃したし」と弱気でヤミテンにしたくなる理由はあるが、ここで藤原以外から2,000や3,900をアガってもあまり意味がないし、蒼井は満貫クラスの手をしっかり作ってきたので、優勝争いができるこのポジションにいる。ただ単に開き直ってのリーチではなく、そのことをしっかりと理解しているリーチに蒼井の強さを見た。
このアガリを見た次局、藤原も2,000・3,9000をツモアガリ。

五万五万八万八万八万四索五索六索三筒四筒六筒七筒八筒  リーチ  ツモ五筒  ドラ六索

交わし手を多用することで、ここまでなんだかんだプラスを積み重ねてきた藤原だがここはリーチで勝負。相手にエンジンがかかってしまえば、30Pもないアドバンテージなどあってないようなもの。タイトル戦の決勝でトータルトップが勝負から逃げて、追いつめられる姿をたくさん見ている藤原は、どこかで勝負をしなくてはならないことを知っているのだ。これで藤原の浮きは6,900点。これを守ることができればほぼ優勝である。自らの親は無傷で終わり、南1局の蒼井の親はポンテンの1,000点で流すことに成功。

南2局時点での持ち点と現状での順位点を入れたトータルポイントは以下の通り。

藤原37,900(51.4P)
蒼井38,500(28.6P)
三好37,400(▲35.3P)
藤井6,200(▲44.7P)

若干開始時よりは差が縮まったが、すでに蒼井に親番もなく、素点で約23,000点を稼ぐのも大変だし、藤原が7,900点浮いているので、それを沈めるのも苦しい。ギャラリーからは早くも藤原優勝ムードが漂う。正直、私もそう感じていた。
私は、「努力は必ず報われる」とも思わないし、「諦めなければ必ず叶う」とも思わないが、諦めずに努力をした者にしか奇跡は訪れないと思う。南2局2本場、藤井の親リーチに俄然と立ち向かった蒼井、追いかけリーチに出る。

二万二万二万四万四万六索七索八索四筒五筒六筒発発  ドラ四万

蒼井が藤井に放銃してしまえば、その時点で藤原の優勝がかなり濃厚となる。相当苦しいが、奇跡を信じてツモを繰り返す藤井、藤井の勝ちを祈りながらベタオリする藤原、そしてこのリーチにすべてを託した蒼井。緊迫した雰囲気の中、「ツモ」。発生と同時に蒼井の手牌が開かれた。

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こうなると焦点は、藤原に残された2,600点を南3局、オーラスで蒼井が削れるかどうかである。
蒼井、10巡目のリーチを三好からアガる。

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本当に難しいのだが、ここは見逃してもよかったかもしれない。親に攻め返されるリスクなどもあるが、勝負は藤原を沈められるかどうかであり、三好から2,600をアガっても状況はほとんど変わらないからだ。すでに蒼井と藤原の素点がかなり離れたので、あとは藤原さえ沈めれば無条件で蒼井の優勝。ならば、少しでも藤原の点数を減らした方が有利だからだ。
蒼井「あそこは最悪ノーテン罰符をもらっても条件はよくなるし、見逃した方がよかったですね」
初決勝で、これはよい経験。次は同じ局面で冷静に判断して、強くなった姿を見せてくれるに違いない。
オーラス、必死にホンイツを作りに行く蒼井だったが、テンパイすることなく終局。こうして蒼井の初めての挑戦は幕を閉じた。

5回戦結果
蒼井+28.6P  藤原+5.6P  三好▲5.5P  藤井▲28.7P

最終結果
藤原+46.1P  蒼井40.7P  藤井▲37.6P  三好▲49.2P

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一気に書き上げてみて、改めて読み返してみると、本当に藤原の牌姿が出てこない。
いろいろなところで「藤原さんどうだった?」と勝因を聞かれるのだが、毎回、「今までこの打ち方で優勝したのは見たことないな」と答えている。
実際タイトル戦の決勝は、誰が勢いを持ってくるかの勝負で決まる。藤原は今回の決勝、加速することはなくアガリも全て単発に終わっていた。
それでなぜ勝てたか聞かれたら、経験と技術と答えるしかない。
タイトル戦で、トップが1回もない優勝なんて初めて見た。1つ言えるのは、トップを1度も取れないくらいの調子でも、スコアをちゃんとまとめることができる藤原の技術と引き出しはすごいということだ。
そして、今回は敗れたものの、それぞれが自分らしさや、らしさの片鱗を見せてくれた。
特に蒼井は、王道のスタイルで優勝してもおかしくはなかった。
蒼井の細かな敗因はあるかもしれないが、一番の不幸は藤原が座っていたこと。藤原の技術が全てを凌駕した決勝だった。

JPML WRCリーグ 決勝観戦記/第24期チャンピオンズリーグ 決勝観戦記

8月18日、四谷連盟道場で行われたチャンピオンズリーグ決勝、今回の観戦記は私、増田隆一が担当します。自分の麻雀感に基づき、思ったことを素直に書くつもりなので、最後までお付き合いいただければ幸いです。
会場一番乗りは関西本部所属の三好直幸。今のところ目立った実績はないが、毎回チャンピオンズリーグに出場するために姫路より上京してくる努力家であり、今回はその努力が実り、念願の決勝の椅子を手に入れた。
麻雀は何度も対戦しているが、手役重視の超面前派、特に一色手が得意な印象がある。超がつくほどの面前派(実際に今回の決勝でフーロしたのは3回のみ)だけあり、打点の高さは今回のメンバーで随一であろう。

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三好直幸

次に入ってきたのは藤井すみれ。入ってくるなり、立会人や審判、記録者らに大きな声で「今日はよろしくお願いします」と挨拶をしていたのが印象的。当たり前のことなのだが、挨拶が出来ない若手にはぜひ見習ってほしい姿勢である。藤井はチャンピオンズリーグ2度目の決勝。今回は、前回ぎりぎりの所で競り負けた相手である藤原も残っているので、より思うところもあるであろう。ちなみに、その決勝は私も残っていて、さらに今回のベスト16は藤井、藤原で勝ち上がったが、その敗れた相手に私もいる。
麻雀は、じっと息を潜めながらカウンターを狙う印象。技術よりも気持ちで打つタイプなので、勝ちたい想いが上手く牌に伝わればチャンスはあるだろう。

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藤井すみれ

きっかり開始10分前、同時に会場に姿を見せたのが蒼井ゆりかに、藤原隆弘。
蒼井と初めて対戦したとき、先手を取られた場面、全てにベタオリする姿を見て、失礼ながら、攻め屋の私は負ける気が全くしなかった。実際に、そのときは1人でアガリ倒した記憶がある。ところが、最近対戦する蒼井は全く印象が違った。勝負の場面では、先手を取られても果敢に攻め返し、アガリをものにしていたのだ。元来、腰が重くしっかりと手を作る麻雀なので、華奢な体で河に放たれる危険牌には迫力すら漂う。蒼井は、かわいらしい顔から想像もつかないくらい芯がしっかりしている。ここまでの成長は、並々ならぬ芯の強さが支えたに違いない。集中力を切らさずにしっかり攻めれば優勝争いに加わってくることは間違いない。

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蒼井ゆりか

最後に、今更不要かもしれないが、藤原の紹介もしておこう。2度のチャンピオンズリーグ優勝に加え、四大タイトル戦全ての決勝進出経験、30年近いプロ歴と、経験、実績共に大本命であろう。麻雀は、現在数少なくなった守備型だが、経験に基づく引き出しの多さが一番の武器である。今回の決勝では、持っている技を全て駆使して闘うこととなった。

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藤原隆弘

1回戦(起家から、藤原・三好・蒼井・藤井)

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定刻通り、試合開始が立会人の瀬戸熊鳳凰位より宣言される。
立ち上がり、全員の模打ペースが異様に早い。それを見て藤原、3巡目に何も迷うようなことのない手から、わざとワンテンポ置いての切り出し。「これは、決勝、そんなに軽々しく打つなよ。丁寧に打ってよい牌譜を残そうぜ」という先輩から後輩に向けてのメッセージである。確かに、最近は模打スピードを重視するあまり、打牌が雑になっている若手も多い。これ以降、ゆったり目のペースで試合は進む。そして3者は、藤原からの無言のメッセージにプレッシャーを感じたのか、2度とこのペースが上がることはなかった。
東1局、親番の藤原がリーチと出る。
四万五万六万三索四索五索五索六索七索八筒八筒白白  ドラ東
これに3人が対応し、1人テンパイ。「ダブ東のドラが見えていない場面で親リーチが入り、親の1人テンパイ」、結果だけを見るとごく普通なのだが、3人の撤退がワンテンポ早く感じた。重要なのは、藤原が‘緻密な仕事師‘らしく、この先行親リーチに対する相手の出方を、捨て牌はもちろん相手の雰囲気からも敏感に感じ取っていたことだ。対応する相手ならばワンテンポ早く動き、踏み込みも一歩深くするし、対応しない相手ならば、次は普段通り腰の重いスタイルに戻し、守備型らしく無防備に踏み込まなければよい。こういった技術を使いこなせるのも、藤原の高い対応力があってこそ。そして、簡単にアガリを拾えなかったことも合わせて、この局の結果で、藤原のこの日の方針は‘相手に対応させること‘に決まった。
思惑通り、このまま藤原が主導権を握るかと思われたが、相手も開局から気持ちの上で藤原に対して引き過ぎてしまったのは分かっている。次局の東1局1本場、蒼井がこのリーチ。

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「すでに10巡目ということ」、「ソーズがドラ色で場に高いということ」、「一発裏ドラのないAルールにおいて、満貫は充分なアドバンテージになること」、「5回勝負の1回戦だけに、拾える可能性がある満貫は確実に拾いたいこと」と、ヤミテンにしたくなる理由は数々浮かぶのだが、蒼井はあえてリーチといった。後日、蒼井にメールをしてみた。
私 「あのリーチよかったね」
蒼井「ドラを引いて一番いい形でテンパイしたので、力を感じました。Aルールにおいて、リーチは得策でないと思いますが、(どのような結果になるか)スタート時点での調子を見たかったです」
私 「なるほどね。ドラ引き以外はヤミテン?」
蒼井「そうですね。跳満をツモって勢いを持ってきたかったのと、(ヤミテン満貫をあえてリーチすることで)3者にしっかりと戦う姿勢を見せたかったのもありますね」
結果は流局で終わるが、牌譜だけを見てこのリーチをやり過ぎだなんて言わないでほしい。麻雀は人間と戦うゲームであり、相手を引き気味に打たせたい藤原、戦う姿勢を見せることで、相手に楽をさせたくない蒼井の思惑が水面下で絡み合い、この1局があるのだ。
藤原の親が流れた東2局2本場、三好が11巡目にこのリーチ。
二万一筒二筒三筒四筒五筒六筒一索一索一索  暗カン牌の背南南牌の背  ドラ六索
先ほどの蒼井と同じように、戦う姿勢を見せに行ったのだが、これはアガれたところでただ単に点棒が増えるだけ。蒼井のリーチとは意味が違い、勝負の流れを引き寄せるようなアガリにはならないと思う。‘流れ‘という言葉に拒絶反応を示す方もいらっしゃると思うので、違う言葉で説明しよう。例えば先ほどの蒼井のリーチが成就したとしたら、対戦相手は「今日の蒼井は出来がよさそうだ」や、「ヤミテン満貫をノータイムリーチか」など、‘強さ‘を感じるであろう。そうした感情は相手に対する尊敬や怖れとなり、蒼井に対して押し引きの判断を誤る場面が出てくる。対して、三好のリーチが成就したとして、同じような印象を受けるであろうか?私ならば、「何がしたいの?」や、「親なら何でもリーチか?」など、‘強さ‘とはかけ離れた印象しか受けないであろう。麻雀は人間同士が戦う以上、相手が感じた感情が複雑に絡み合い、勝負の‘流れ‘となる。そういった意味で、ここは手役派の三好らしくしっかりとした形で攻めてほしかったと思う。
このリーチを受けて、蒼井にもテンパイが入る。

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牌譜を見ていただければ分かるが、比較的安全そうではあるものの、(一発役はないが)一発目に無筋の五万を勝負している。しかし、巡目が進んだここの一万はツモ切り。三好のリーチに対してトーンの低い藤原、藤井の手牌構成は読みにくく、一万の所在が、誰かに固まっていのるか、ヤマにいるかは賭けでしかない。ただし、勝負手である以上はドラ&親のリーチ宣言牌をまたぐ(蒼井の目からは四索七索はノーチャンス)四索よりは、暗刻だった者が手詰まりしたときに、オリ打ちまで期待できる一万に待ちを替えてもよかったかもしれない。1巡おいてすぐ河に一万を並べたのは結果論ではあるが、やや残念な印象はあった。
この時点まで全く戦いの舞台に上がってこなかった藤井に、仕掛けが増え始める。しかし、麻雀は優勢なときに加点を目指すゲームであって、劣勢になってから加点を目指すゲームではない。分かりやすく言えば、優勢=点棒があるときは、制限もなく手牌に素直に打てるし、調子も後押ししてくれるので加点しやすく、劣勢=点棒がないときは、制限がついていたり、目先の点棒を考えて判断を誤りやすくなっていたりと加点がしにくくなっている。開局のフラットな状況がすでに劣勢に変わっている藤井の仕掛けは、点棒的なもので焦れて動かされた感があり、自らさらなる劣勢の渦に入り込んでゆく。この仕掛けが藤原の1,300・2,600を生み、蒼井に安目ではあるが5,800を召し上げる結果となってしまう。
同じように藤原も仕掛けを多用し始めるが、藤井と違い、相手との間合いをよく考えて絶妙なタイミングで動き、相手が攻め返しにくい捨て牌を作り上げていく。思惑通り、南2局までは完璧に局を潰し得意の小場の展開に持ち込んでいた。
ところが、南3局に均衡が崩れる。蒼井が7,700、2,900は3,200と連荘した2本場、超面前派の三好がここから白をポン。

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2枚目という事や、南を鳴ければ3,900になりそうなことを考えるとそこまで悪くはないのだが、結果として蒼井に五索が入り、即リーチ。そしてすぐに高めのドラ五筒をツモり、この半荘を決定づける4,000オールで蒼井の持ち点は5万点を超えた。
二索三索四索六索七索四筒五筒六筒六筒七筒北北  ツモ五筒
蒼井の2打目の七索、3、5巡目の一索のトイツ落としを見ていれば、速度が速いことは容易に想像がつく。連荘中の親の上家ということも合わせて考えると、白を安全牌として抱えながら、三好らしく面前でドラドラ七対子に向かう選択肢もあっただけに、悔いが残る1局となってしまった。
オーラスは、蒼井のダントツのなか、藤原がしっかりとリーチのみをアガリ、浮きに回って終了。
1回戦成績
蒼井+28.4P  藤原+4.7P  三好▲7.7P  藤井▲25.4P
 
2回戦(起家から、藤井・蒼井・三好・藤原)
プロ連盟では、情報の平等性を保つため、半荘間に休憩中の選手と、スタッフやギャラリーが会話することは禁止されている。チャンピオンズリーグももちろん、その規定に則り運営されているので、藤井、三好は2回戦目の挽回に向けて、蒼井は好調を維持するためにそれぞれ静かに集中を高めている姿が見られた。その中で藤原だけがにこやかにしている。1回戦目、藤原の牌姿が一度も出てきてないことにお気づきだろうか?載せるような牌姿がないくらいツキがなかった上で、苦しいながらもあらゆる技を駆使してのプラス。思わず笑みがこぼれてしまうくらい嬉しかったに違いない。
それにしても藤井のデキが悪い。東3局、西家で4巡目にこのリーチ。
二索二索二索四索五索一筒二筒三筒七筒八筒九筒中中  ドラ四万
役なし両面で、あまり高くなる要素もなく自然なリーチ。ここに親の三好が追っかけリーチ。
七万七万三索四索五索二筒三筒四筒五筒六筒六筒七筒八筒  リーチ
数巡後に、藤井が高めを掴んで5,800。これ自体はよくある話であって、別になんということはない。問題はこの後に、こういった失点をリカバリーできるかどうかなのである。藤井は結局、このまま浮きに回ることはなかった。
対して藤原。同1本場でこの放銃。

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どちらでアガっても8,000の勝負手である。三筒白の手出しを見て蒼井のテンパイは当然感じているし、三好の親リーチ宣言牌のまたぎでしかも、序盤の五筒の裏スジの四筒はどちらにも超危険。それでも藤原はまっすぐ四筒を打ちぬいた。守備型を勘違いしている人がいるが、放銃しないことが守備型ではない。それはただの怖がりの日和屋である。形が整うまで繊細に我慢を繰り返して、ここぞというタイミングで攻め返すのが守備型のあるべき姿だ。この局は結果8,000の放銃に終わったが、藤原は経験上、この点棒が返ってくることを知っている。藤原の言葉を借りると、「だって、行くべき形で悪い放銃じゃないもん」。この言葉はすぐに現実のものとなる。
東4局、迎えた親番でヤミテンのピンフ1,500をアガると、同1本場でこの配牌。
九万一索三索七索七索八索八筒九筒東東北北白発  ドラ七索
12,000や18,000が見えるも、ダブ東が仕掛けられるかどうか、仕掛けられたとしてタイミングがどうかといった所。無難に打九万とすると、南家・藤井の第一打が東。あっさりネックが仕掛けられる。このときの藤井の形は
二万三万六万一索二索四索二筒四筒五筒六筒東白白  ツモ九索
確かに123、234と両方の三色を考えると一索二筒、456の三色を考えると六万、ドラ受けを考えると九索は切りにくいし、藤原の点棒を見るとこの局は攻めたくなるのは分かるのだが、自らの劣勢をしっかりと受け止められていれば東以外を切れたかもしれない。この後、藤原の不穏な捨て牌を見てポンテンを取るも、これが最悪の結果を生む。
藤原
一索三索六索七索七索七索八索八索北北  ポン東東東
ここに最高のドラを引き入れテンパイ。そしてあっさりカン二索をツモり8,000オール。先ほどの8,000を3倍にしてあっさりと回収した。

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今こうして牌譜を見ていると、藤井はすごく悪いことをしているような感じはないのだが、やることなすこと、ことごとく悪い結果が出ていた。結果がそう出てしまった以上、受け入られるようになれば大きく成長すると思うのだが、このままだとツイているときは勝って、ツイてないときは負けるだけになってしまう。次局もピンフドラ1でリーチと出るのだが、私ならば、「8,000オールの藤原の親を交わしておこう」や、「今日は悪い結果が出やすいから一度ヤミテンにしよう」などと考えるので、三好の追いかけリーチに、3,900は4,500を放銃する結果にはならない。キャリアも実力も違うので比較するのは酷かもしれないが、藤原は今回の決勝、調子の悪さをきちんと受け入れ、それに合わせた麻雀を打っていた。このあたりが、今後の藤井の課題だと思う。
四万五万六万六索七索八索一筒一筒三筒四筒五筒六筒七筒  ロン二筒
ここからは再び藤原の真骨頂、場を小場に持ち込み淡々と局は進んでゆく。ところが南2局、そう簡単にはやらせないぞと、ようやく三好らしいプレーが出る。

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蒼井の親リーチを受けた瞬間。さすがに3枚目の七筒だし、九索がリーチの現物なのでチーする人も多いだろう。これを、超面前派の三好は動かず。そして自らテンパイを入れて蒼井からホウテイで12,000。
二筒三筒四筒五筒五筒五筒八筒八筒九筒九筒  暗カン牌の背一筒一筒牌の背  ロン八筒
これまでしっかりと手を作っていた蒼井だが、なんとなく点棒を削られながら東4局に37,000あった持ち点が26,000になってしまい、このリーチはやや焦った感がある。このまま藤井にも交わされて、最終的にはラスを押し付けられてしまった。しかし、トータルトップに立った藤原にとっても、最終的には三好に交わされており、なんとなく不完全燃焼感の残る半荘となった。
2回戦成績
三好28.2P  藤原17.1P  藤井▲17.9P  蒼井▲27.4P
2回戦終了時
藤原21.8P  三好20.5P  蒼井1.0P  藤井▲43.3P
 
3回戦(起家から、三好・藤原・蒼井・藤井)
藤井の1人沈みで迎えた3回戦、ここは藤井にとっての正念場となる。この回で藤井がトップを取っても決定打にはならないが、藤井との勝負で放銃すると優勝争いから遠のいてしまうので、ほかの3人はリスクを負ってまで勝負にはこない。マークを外されて打ちやすくなるこの回にどこまで巻き返せるかが注目だ。
開局から主導権を取りたい藤井だが、もはや手がついてこない。
最初に大きくアガったのは、前回ラスの蒼井。東3局2本場で2,600オール。
三万三万七万七万七万三索四索三筒四筒発発発  ドラ二万  ツモ二索
続いて三好が同3本場で負けじと、3,000・6,000をツモ。
一万二万三万七万八万九万一索二索三索一筒三筒九筒九筒  ドラ七筒  ツモ二筒
東4局の藤井の親はテンパイすら入らずにあっさり落ちてしまった。このまま、優勝争いから消えてしまうと思われたが、南1局1本場。
七万七万七万八万八万五索五索六筒六筒六筒白白白  ドラ九筒
ツモれば四暗刻、出ても12,000の勝負手を、親の三好から打ち取った。このアガリをきかっけにしてさらなる加点を目指したい藤井だが、あとが続かない。ダメな日はこんなものなのかもしれない。
南2局1本場、藤井に12,000を放銃してしまい盛り返したい三好が12巡目にリーチ。
七万九万五索六索七索七索八索九索七筒八筒九筒九筒九筒  リーチ
打点はあるが、待ちはドラのカンチャン。少しでも相手が対応してくれて時間が稼げればといったところだ。ところがこのリーチを受けた時点で、蒼井の手はこうなっていた。
一万一万二万二万三万三万三万六万六万六万七万八万南
一発目の無スジ八索から早くも臨戦態勢に。今回の決勝、蒼井が1番良い麻雀を打っていたと思う。しっかりと手を作り、手がまとまればしっかり押し返す。非常にシンプルなことだが、大切なことだ。

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この16,000がポイント的に大きいのはもちろんだが、しっかりと押し返してアガリをものにしたことも大きい。蒼井は優勝へ向けて大きな手応え感じたであろう。
そして、オーラス、藤原が渾身の700・1,300をツモ。大きな見せ場はないものの、しっかりと浮いて終わるところがいぶし銀。蒼井とアガリの派手さは違うが、この終わり方には藤原も手ごたえを感じたであろう。逆に、藤井に12,000を打って以来、先行リーチ後に16,000の当たり牌を掴まされるくらい劣勢になってしまった三好には試練の半荘となってしまった。藤井に関してはこの半荘、12,000以外は見せ場なく終わったが、一応は浮きを守れたので、優勝へ向けて首の皮一枚つながったというところか。
3回戦成績
蒼井29.9P  藤井7.2P  藤原3.1P  三好▲40.2P
3回戦終了時
蒼井30.9P  藤原24.9P  三好▲19.7P  藤井▲36.1P
 
4回戦(起家から、蒼井・三好・藤井・藤原)
藤原は悪いなりに、毎回うまく浮きで終わっているし、蒼井もきっちりと自分の型通り打てて、そこにポイントもついてきているので、この両者はこのままのペースでいきたい。三好は3回戦で崩れてしまったのを、ここで立て直し最終戦を良い形で迎えたい。藤井は良いところなしで来ている中、3回戦は一応ではあるが初の浮きで終われたので、これをきっかけに4回戦目は飛躍の半荘にしたいところ。それぞれの思惑がある中、まず主役になったのは藤井。

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藤原のテンパイ打牌、ドラの白をポンテン。藤原との紙一重の引き比べだったが、即で藤原のアガリ牌を食い取り2,000・3,900。これまで、こういったケースは必ず藤井が負けていた。3回戦から少々ではあるが、風向きが変わりつつある。次の東3局の親番は、不恰好ながら4本場まで積み上げ持ち点は50,000点を超えた。
終わった後の打ち上げの席で、藤井にこう聞いてみた。
「自分の麻雀の良い所は?」
藤井はうつむきながら小さな声で「ありません」と答えた。負けたその日にする質問にしては、少々いじわるだったかもしれない。ただし、答えに関しては違うと思う。藤井の麻雀の良い所は諦めの悪さ。不恰好でも一心不乱にアガリに向かう姿こそが藤井の良い所なのだ。確かにすでに並びができているこのあたりに関しては、藤原も蒼井も、直接対決のぶつかり合いなら仕方がないが、トータルラスの藤井にぶつけて放銃することだけはしたくないという気持ちがあるので、連荘がしやすいというのはある。しかし、それを差し引いても藤井のアガリに向かう執念は見事であった。1回戦目からこれができていれば今頃は、もっと違った位置に立っていたかもしれない。次に決勝に残るときは最初から、小手先に走らずにまっすぐアガリに向かう姿を見たいと思った。
東4局、藤原が500・1,000で藤井の長い親番を終わらせて迎えた自らの親番、6巡目に7,700のテンパイ(Aルールは連風牌が4符)。
一筒二筒三筒八筒九筒東東  ポン四筒 上向き四筒 上向き四筒 左向き ポン発発発  ドラ四万
ツモ九筒でシャンポンに待ち替えをしたところで、蒼井が七筒をツモ切り。
二索三索五索六索七索八索四万五万五万六万六万西西  ツモ七筒
形的には攻めてもおかしくないのだが、蒼井が今回、最も気を付けなければならないのが藤原への直撃である。蒼井にとって、藤原に直撃を放銃することは、点数だけでなく順位点も関係するので、ポイント差が倍速以上で開くことだからだ。それをふまえ、藤原のピンズが余っていること、最低5,800はあるということ、最終手出し八筒の関連牌ということを考えると、すり抜けたとはいえこの七筒はあまりにキツイ。
私 「あれはさすがに打ち過ぎかな?」
蒼井「集中力が切れちゃいました」
この後、蒼井にもテンパイが入り、蒼井は何かに魅入られたようにツモってきた九筒を河に打ちつける。いつもソフトに牌を切る蒼井にしては珍しく、高く響いた打牌音が印象的だった。

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4回戦成績
藤井27.2P  藤原15.6P  蒼井▲18.8P  三好▲24.0P
4回戦終了時
藤原40.5P  蒼井12.1P  藤井▲8.9P  三好▲43.7P
 
5回戦(起家から蒼井・藤井・三好・藤原)

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藤原は浮きで終わればほぼ優勝、蒼井は藤原が沈めばかなり現実的な条件が見えてくる。藤井は藤原が沈むことが大前提で、そこからどこまで加点できるかで決まる。三好は現実的には苦しい条件となってしまった。
東1局、藤井のホンイツ仕掛けを受けて、蒼井がいきなりこのテンパイ。
二万二万三万三万四万六索六索三筒四筒五筒七筒八筒九筒  ドラ六索
この手をなんとヤミテンに構えた。藤井の仕掛けでツモが効かずに1シャンテンが長く、さすがに13巡目とテンパイが遅すぎたようだ。1回戦目にドラをツモったときに、‘ツモに勢いを感じて‘跳満ツモリーチに行った蒼井らしい選択。これが功を奏し、すぐに藤井から高め四万を打ち取り11,600。このアガリで、後は藤原を沈めれば優勝は目前。蒼井の逆転劇を期待したギャラリーの熱気が高まったが、すぐに次局、三好へ12,000は12,300を打ち返してしまう。

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ここから打八索でテンパイを取り放銃。いくら見え見えの染め手が五索を余らせているとはいえ、この放銃は責められない。タイトル戦決勝では、一度の親連荘で優勝を決定づけることは多々あるので、11,600をアガった次局、その勢いのまま勝負を決めに行くのは当然である。ただ残念なことに、ベストの選択が必ず正解とはならないのが麻雀。10回中8回が正解となる選択でも、そのときが2回の不正解になることもありえるのだ。こういったときに、強い人ほど気持ちの切り替えが早い。努力と経験が、「たまたま今回は悪い結果が出たが、これが自分の麻雀だから」と気持ちを強く持たせてくれるからだ。
東2局1本場、蒼井は14巡目にリーチ。
一万二万三万四索五索六索一筒二筒三筒四筒五筒九筒九筒  ドラ三筒
これを親番でテンパイを入れた藤井から討ち取り7,700は8,000。このアガリを見ると蒼井がしっかり気持ちを切り替えているのが分かる。「巡目も遅いし」、「跳満を放銃したし」と弱気でヤミテンにしたくなる理由はあるが、ここで藤原以外から2,000や3,900をアガってもあまり意味がないし、蒼井は満貫クラスの手をしっかり作ってきたので、優勝争いができるこのポジションにいる。ただ単に開き直ってのリーチではなく、そのことをしっかりと理解しているリーチに蒼井の強さを見た。
このアガリを見た次局、藤原も2,000・3,9000をツモアガリ。
五万五万八万八万八万四索五索六索三筒四筒六筒七筒八筒  リーチ  ツモ五筒  ドラ六索
交わし手を多用することで、ここまでなんだかんだプラスを積み重ねてきた藤原だがここはリーチで勝負。相手にエンジンがかかってしまえば、30Pもないアドバンテージなどあってないようなもの。タイトル戦の決勝でトータルトップが勝負から逃げて、追いつめられる姿をたくさん見ている藤原は、どこかで勝負をしなくてはならないことを知っているのだ。これで藤原の浮きは6,900点。これを守ることができればほぼ優勝である。自らの親は無傷で終わり、南1局の蒼井の親はポンテンの1,000点で流すことに成功。
南2局時点での持ち点と現状での順位点を入れたトータルポイントは以下の通り。
藤原37,900(51.4P)
蒼井38,500(28.6P)
三好37,400(▲35.3P)
藤井6,200(▲44.7P)
若干開始時よりは差が縮まったが、すでに蒼井に親番もなく、素点で約23,000点を稼ぐのも大変だし、藤原が7,900点浮いているので、それを沈めるのも苦しい。ギャラリーからは早くも藤原優勝ムードが漂う。正直、私もそう感じていた。
私は、「努力は必ず報われる」とも思わないし、「諦めなければ必ず叶う」とも思わないが、諦めずに努力をした者にしか奇跡は訪れないと思う。南2局2本場、藤井の親リーチに俄然と立ち向かった蒼井、追いかけリーチに出る。
二万二万二万四万四万六索七索八索四筒五筒六筒発発  ドラ四万
蒼井が藤井に放銃してしまえば、その時点で藤原の優勝がかなり濃厚となる。相当苦しいが、奇跡を信じてツモを繰り返す藤井、藤井の勝ちを祈りながらベタオリする藤原、そしてこのリーチにすべてを託した蒼井。緊迫した雰囲気の中、「ツモ」。発生と同時に蒼井の手牌が開かれた。

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こうなると焦点は、藤原に残された2,600点を南3局、オーラスで蒼井が削れるかどうかである。
蒼井、10巡目のリーチを三好からアガる。

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本当に難しいのだが、ここは見逃してもよかったかもしれない。親に攻め返されるリスクなどもあるが、勝負は藤原を沈められるかどうかであり、三好から2,600をアガっても状況はほとんど変わらないからだ。すでに蒼井と藤原の素点がかなり離れたので、あとは藤原さえ沈めれば無条件で蒼井の優勝。ならば、少しでも藤原の点数を減らした方が有利だからだ。
蒼井「あそこは最悪ノーテン罰符をもらっても条件はよくなるし、見逃した方がよかったですね」
初決勝で、これはよい経験。次は同じ局面で冷静に判断して、強くなった姿を見せてくれるに違いない。
オーラス、必死にホンイツを作りに行く蒼井だったが、テンパイすることなく終局。こうして蒼井の初めての挑戦は幕を閉じた。
5回戦結果
蒼井+28.6P  藤原+5.6P  三好▲5.5P  藤井▲28.7P
最終結果
藤原+46.1P  蒼井40.7P  藤井▲37.6P  三好▲49.2P

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一気に書き上げてみて、改めて読み返してみると、本当に藤原の牌姿が出てこない。
いろいろなところで「藤原さんどうだった?」と勝因を聞かれるのだが、毎回、「今までこの打ち方で優勝したのは見たことないな」と答えている。
実際タイトル戦の決勝は、誰が勢いを持ってくるかの勝負で決まる。藤原は今回の決勝、加速することはなくアガリも全て単発に終わっていた。
それでなぜ勝てたか聞かれたら、経験と技術と答えるしかない。
タイトル戦で、トップが1回もない優勝なんて初めて見た。1つ言えるのは、トップを1度も取れないくらいの調子でも、スコアをちゃんとまとめることができる藤原の技術と引き出しはすごいということだ。
そして、今回は敗れたものの、それぞれが自分らしさや、らしさの片鱗を見せてくれた。
特に蒼井は、王道のスタイルで優勝してもおかしくはなかった。
蒼井の細かな敗因はあるかもしれないが、一番の不幸は藤原が座っていたこと。藤原の技術が全てを凌駕した決勝だった。

第27期新人王戦 予選レポート

8月25日。今年で27期目となる「新人王戦」が行われた。

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前日より降り続く雨の中、参加者は過去最多の128人(男性97人、女性31人)。
また、所属本部支部ごとに記すと東京59人、九州16人、関西14人、中部11人、北関東9人、東北7人、
静岡5人、広島3人、北海道2人、北陸2人である。
例年は会場を2つ使用して行う予選であるが、今年は会場を3つ使用することとなった。

ここで「新人王戦」のシステムを簡単に説明しておこう。
・参加資格はその名のとおり新人プロ(入会3年目まで)のみである。
・ルールは連盟Aルールである。
・予選から決勝までを1日で打ち切る、1DAYタイトル戦である。
・予選4回戦終了時にポイント上位48人が予選5回戦に進出。そして予選5回戦、予選6回戦終了時にそれぞれポイント下位12人が敗退となり、予選7回戦(準決勝)を24人で行いポイント上位4人が決勝進出となる。
・予選7回戦(準決勝)まではポイント持ち越し。決勝は予選でのポイントはリセットされ、決勝2回戦でのトータルポイントがトップの者が優勝となる。

【予選開始】

午前11時。競技委員長である藤原隆弘プロの挨拶と合図により予選1回戦が開始。
早速各会場を回って注目選手たちの様子を見に行くことにする。

やはり最初に見てしまうのは羽山真生プロだ。アマチュア時代に王位戦を連覇した実績を持ち、今日も緒戦から+33.4Pと好発進。そして前チャンピオンズリーグ覇者の中村慎吾プロ。『予選4回戦で敗退しないようがんばります』とのコメントだったが、16,000点の4着と苦しいスタートとなる。27期生の中で実力No.1と噂の前田洋祐プロも気になるところだ。3人とも新人王戦は今年がラストチャンス。優勝を強く意識していることだろう。昨年の新人王戦ファイナリスト東谷達矢プロ、今年も来るのか?

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羽山真生プロ
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中村慎吾プロ
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前田洋祐プロ
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東谷達矢プロ

 

続いては女流の注目選手を。まずはコナミ「麻雀格闘倶楽部」で活躍中、高宮まりプロに小島優プロに小笠原奈央プロ。高宮プロと小島プロも今年が最後の新人王戦、是非とも頑張ってもらいたい。

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高宮まりプロ
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小島優プロ
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小笠原奈央プロ
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手塚紗掬プロ

昨年より連盟に所属となった手塚紗掬プロ。ロン2のCMでお馴染みの菅原千瑛プロ。そして麻雀最強戦の公式サポーターとして人気の、《ちーぼー》こと松岡千晶プロと《あさちび》こと石田亜沙巳プロ。

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菅原千瑛プロ
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松岡千晶プロ
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石田亜沙巳プロ
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立花つくしプロ

連盟四ツ谷道場にゲスト出勤の澤村明日華プロ、井上絵美子プロ、小谷美和子プロ、川原舞子。

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澤村明日華プロ
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井上絵美子プロ
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小谷美和子プロ
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川原舞子プロ

別会場に移動すると、まず目についたのはスカルリーパーA-jiプロ。プロレス団体の現役選手兼代表、そして現職の大分市議会議員という異色の麻雀プロである。そして昨年度の広島リーグを優勝した蒼山秀佑プロ、一昨年の新人王戦ファイナリスの朝比奈涼プロ、周囲からの高い評価を受けている期待の19歳石川純プロの姿もあった。

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スカルリーパーA-jiプロ
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蒼山秀佑プロ
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朝比奈諒 プロ
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石川純プロ

予選5回戦へと進むことが出来るのはポイント上位48人のみ。昨年までだと100人前後の参加者なので約半数が勝ち上がりとなるが、今年は128人もの参加者のため約3分の1という厳しい通過率となった。 朝比奈涼、石田亜沙巳、井上絵美子、小島優、スカルリーパーA-ji、菅原千瑛、高宮まり、手塚紗掬、中村慎吾、前田洋祐(※敬称略)もここで敗退となる。

石田亜沙巳『大物手がかわされる展開が続き、苦しかったです。』

井上絵美子『4回戦がプラスなら通過だったのに…悔しいですけど来年また頑張ります!』

小島優『手役が思うように決まりませんでした…。』

高宮まり『最後の新人王戦なので悔しいです。とても悔しいです。』

中村慎吾『もっと勉強して出直します』

 

【予選5回戦】

128人いた参加者も48人に絞られ、1つの会場にまとめられる。ここからは各回を通過するだけでなく、決勝進出の4人の枠に入るためにポイントを叩きにいかなければならない。4回戦終了後の首位は三浦智博プロで+74.5P、次いで羽山真生プロの+73.2P。この時点で+100Pを超える者もいるだろうと思っていたが意外にも横並びの展開であるため、+17.2Pの48位で通過した小笠原奈央プロにも十二分にチャンスがあると言える。ちなみに48人中女流プロは12人。仲田加南プロ以来6年ぶり3人目となる女性の新人王の誕生の期待も持てる。

そして5回戦が終了。現在の上位は

①大久保朋美  +85.9P
②清水哲也   +83.6P
③三浦智博   +79.6P
④赤木由実   +67.0P

通過は36人。注目していた石川純、澤村明日華、東谷達矢(※敬称略)もここでの敗退となる。

澤村明日華『何か色々とすみません…』

東谷達矢『去年の雪辱を晴らしたかったのですが…ダメでした。』

 

【予選6回戦】 ※以後敬称略

未だ大きく抜け出す者のいない団子状態のまま6回戦へ突入。現状トップを走る大久保は6回戦も攻める手を緩めず、31,500点持ちでオーラスを南家で迎え

一万三万一索二索三索一筒二筒三筒七筒八筒八筒八筒九筒  ドラ三万

ドラ表示牌のカンチャン待ちではあるが三色ドラ1の5,200テンパイ。ヤミテンに受ける人の多そうな手牌だが大久保は迷わず即リーチを敢行。これはアガれはしなかったものの、 打牌の速度といい攻撃型な雀風といい、観戦していて気持ちの良い打ち手だなと思った。

2位の清水、3位の三浦ともにポイントを伸ばし、大久保を抜き1位2位につける。4位の赤木は大きな3着を引き決勝の椅子を遠のかせてしまう。逆に抜け出てきたのは鶴と福島。ともに6万点大のトップを取りトータル3位4位につく。

①清水哲也   +105.3P
②三浦智博   +97.9P
③鶴浩昭     +91.1P
④福島祐一   +89.5P
⑤大久保朋美  +88.3P

ここでの通過ボーダーは小笠原で+34.5P。何と本日2度目のボーダー通過である。こうなると3度目も期待したくなってくる。決勝進出のためには予選最終戦での8万点、9万点のトップが必要となってくるであろうが頑張ってほしい。
6回戦通過は24人。健闘していた蒼山、松岡だがここで涙を呑んだ。

蒼山秀佑『現時点での全力は出し切りました。来年また頑張ります。』

松岡千晶『今日は感触的にとても良かったのに…悔しいです。』

 

【予選7回戦(準決勝)】

予選最終戦は6卓24人で行われ、今までの累計ポイント上位4人が決勝進出となる。卓組は以下のとおり。

「1卓」 清水哲也(①+105.3P) 江口一敏(⑫+65.1P) 服部学(+61.5P) 小笠原奈央(+34.5P)

「2卓」 三浦智博(②+97.9P) 松尾樹宏(⑪+66.2P) 塚越祐次郎(+59.8P) 小谷美和子(+41.2P)

「3卓」 鶴浩昭(③+91.1P) 羽山真生(⑩+69.1P) 厚谷昇汰(+59.6P) 窪田瑞樹(+41.5P)

「4卓」 福島祐一(④+89.5P) 西嶋ゆかり(⑨+69.9P) 上村政雄(+54.4P) 櫛田利太(+42.5P)

「5卓」 大久保朋美(⑤+88.3P) 原田知彦(⑧+72.2P) 吉井健人(+53.0P) 今岡英忠(+43.8P)

「6卓」 岡本和也(⑥+74.4P) 佐々木諒輔(⑦+73.4P) 坪井哲也(+52.5P) 赤木由実(+52.0P)

ご覧のとおりの団子状態である。首位の清水とて最終戦をマイナスで終わることとなれば決勝進出はかなり怪しくなる。どの卓からも目の離せない最終戦となった。

~15分経過~
1卓では清水が東2局に發トイトイ三暗刻ドラ3をツモり上げ4,000・8,000と決勝進出に向け大きく大きく前進。特大トップが条件の小笠原、東3局の親番で

四万五万五万六万六万八万八万五索六索六索七索七索八索  ドラ五索

高目をツモれば6,000オールというリーチを打つも、実らず。

3卓で羽山が開局に3,000・6,000をツモりトータルで暫定3位に。
6卓は赤木が開局に2,000・4,000。しかしまだ決勝ボーダーには遠いか。

~30分経過~

1卓は南場を迎えた時点で清水が47,900点のトップ目。決勝の椅子、1つ目は清水で堅いか。
2卓は南2局で塚越が39,400点のトップ目。しかし卓内にいるトータル2位の三浦も原点をキープしているため、塚越は現状では決勝ボーダーにはまだまだ遠い。卓内の並びがこのままであれば塚越は最低でも素点であと20,000点は欲しいところ。
3卓は南1局で羽山が44,800点とトップを走る。最終戦でボーダーが上がるであろうことを考えると50,000点は超えたいところか。
4卓は東4局2本場。櫛田と上村のマッチレースとなっているが、現状では2人とも決勝ボーダーには厳しい。
5卓は大久保が南1局の親番で値千金の4,000オール。44,400点のトップ目に立ち、決勝進出がかなり濃厚となってきた。
6卓は東3局で親の岡本が5本場まで積み39,900点のトップ目に。他の上位陣の結果次第では決勝進出もありうるか。

~終了5分前~
1卓はオーラスで清水が51,300点のトップ目。清水は当確か。
2卓はすでに終了。三浦が37,800点の2着でプラスを11.8P増やしトータル+109.7P。他の卓の結果待ちとなる。
3卓も終了。羽山は後半苦しい展開が続き、窪田と鶴にまくられ卓内3着で終わる。鶴が9.5Pほどスコアを伸ばしてトータルで+100.6とし、5卓と6卓の結果待ちとなる。
4卓は櫛田と福島が浮きで終えたが、両者とも決勝には厳しい。
5卓は最後も大久保が自らのアガリで終わらせた。トータル115.9P。この時点で1卓と6卓を残すのみなため、大久保は決勝確定となる。
6卓は南1局。西家、岡本が46,400点持ちのトップ目から

四万五万六万七索八索九索一筒二筒三筒五筒六筒七筒  ドラ北

このリーチを打つ。これを親の佐々木から出アガリ5,200の加点。現状トータル104.0Pで鶴をまくっている。

~7回戦終了~
1卓は清水が49,800点のトップで終了。6卓は岡本が53,600点のトップで時間打ち切りとなる。よって結果は

①清水哲也   +133.1P
②大久保朋美  +115.9P
③岡本和也   +110.0P
④三浦智博   +109.7P
⑤鶴浩昭     +100.6P

鶴はトータル3位で最終戦を迎え、浮きの2着で終われたにも関わらずの他卓からのまくられなので、本当に惜しかったとしか言葉が無い。
本命の1人であった羽山も決勝進出はならず。小笠原、小谷、西嶋、赤木の女流プロも準決勝で敗退となる。

小笠原奈央『優勝したかったです。』

小谷美和子『不甲斐ないです。でも良い経験になりました。来年また頑張ります。』

羽山真生『痛恨の6,000オール逃がし…情けないよ。』

決勝進出は清水哲也、大久保朋美、岡本和也、三浦智博の4人。

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これまでのポイントはリセットされ、決勝2回戦でのトータルポイント勝負となる。
第27期新人王となるのは果たして誰なのか。
決勝戦の様子は後日掲載される決勝観戦記にてお伝えさせていただきます。

新人王 レポート/第27期新人王戦 予選レポート

8月25日。今年で27期目となる「新人王戦」が行われた。

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前日より降り続く雨の中、参加者は過去最多の128人(男性97人、女性31人)。
また、所属本部支部ごとに記すと東京59人、九州16人、関西14人、中部11人、北関東9人、東北7人、
静岡5人、広島3人、北海道2人、北陸2人である。
例年は会場を2つ使用して行う予選であるが、今年は会場を3つ使用することとなった。
ここで「新人王戦」のシステムを簡単に説明しておこう。
・参加資格はその名のとおり新人プロ(入会3年目まで)のみである。
・ルールは連盟Aルールである。
・予選から決勝までを1日で打ち切る、1DAYタイトル戦である。
・予選4回戦終了時にポイント上位48人が予選5回戦に進出。そして予選5回戦、予選6回戦終了時にそれぞれポイント下位12人が敗退となり、予選7回戦(準決勝)を24人で行いポイント上位4人が決勝進出となる。
・予選7回戦(準決勝)まではポイント持ち越し。決勝は予選でのポイントはリセットされ、決勝2回戦でのトータルポイントがトップの者が優勝となる。
【予選開始】
午前11時。競技委員長である藤原隆弘プロの挨拶と合図により予選1回戦が開始。
早速各会場を回って注目選手たちの様子を見に行くことにする。
やはり最初に見てしまうのは羽山真生プロだ。アマチュア時代に王位戦を連覇した実績を持ち、今日も緒戦から+33.4Pと好発進。そして前チャンピオンズリーグ覇者の中村慎吾プロ。『予選4回戦で敗退しないようがんばります』とのコメントだったが、16,000点の4着と苦しいスタートとなる。27期生の中で実力No.1と噂の前田洋祐プロも気になるところだ。3人とも新人王戦は今年がラストチャンス。優勝を強く意識していることだろう。昨年の新人王戦ファイナリスト東谷達矢プロ、今年も来るのか?

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羽山真生プロ
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中村慎吾プロ
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前田洋祐プロ
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東谷達矢プロ

 
続いては女流の注目選手を。まずはコナミ「麻雀格闘倶楽部」で活躍中、高宮まりプロに小島優プロに小笠原奈央プロ。高宮プロと小島プロも今年が最後の新人王戦、是非とも頑張ってもらいたい。

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高宮まりプロ
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小島優プロ
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小笠原奈央プロ
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手塚紗掬プロ

昨年より連盟に所属となった手塚紗掬プロ。ロン2のCMでお馴染みの菅原千瑛プロ。そして麻雀最強戦の公式サポーターとして人気の、《ちーぼー》こと松岡千晶プロと《あさちび》こと石田亜沙巳プロ。

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菅原千瑛プロ
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松岡千晶プロ
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石田亜沙巳プロ
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立花つくしプロ

連盟四ツ谷道場にゲスト出勤の澤村明日華プロ、井上絵美子プロ、小谷美和子プロ、川原舞子。

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澤村明日華プロ
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井上絵美子プロ
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小谷美和子プロ
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川原舞子プロ

別会場に移動すると、まず目についたのはスカルリーパーA-jiプロ。プロレス団体の現役選手兼代表、そして現職の大分市議会議員という異色の麻雀プロである。そして昨年度の広島リーグを優勝した蒼山秀佑プロ、一昨年の新人王戦ファイナリスの朝比奈涼プロ、周囲からの高い評価を受けている期待の19歳石川純プロの姿もあった。

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スカルリーパーA-jiプロ
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蒼山秀佑プロ
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朝比奈諒 プロ
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石川純プロ

予選5回戦へと進むことが出来るのはポイント上位48人のみ。昨年までだと100人前後の参加者なので約半数が勝ち上がりとなるが、今年は128人もの参加者のため約3分の1という厳しい通過率となった。 朝比奈涼、石田亜沙巳、井上絵美子、小島優、スカルリーパーA-ji、菅原千瑛、高宮まり、手塚紗掬、中村慎吾、前田洋祐(※敬称略)もここで敗退となる。
石田亜沙巳『大物手がかわされる展開が続き、苦しかったです。』
井上絵美子『4回戦がプラスなら通過だったのに…悔しいですけど来年また頑張ります!』
小島優『手役が思うように決まりませんでした…。』
高宮まり『最後の新人王戦なので悔しいです。とても悔しいです。』
中村慎吾『もっと勉強して出直します』
 
【予選5回戦】
128人いた参加者も48人に絞られ、1つの会場にまとめられる。ここからは各回を通過するだけでなく、決勝進出の4人の枠に入るためにポイントを叩きにいかなければならない。4回戦終了後の首位は三浦智博プロで+74.5P、次いで羽山真生プロの+73.2P。この時点で+100Pを超える者もいるだろうと思っていたが意外にも横並びの展開であるため、+17.2Pの48位で通過した小笠原奈央プロにも十二分にチャンスがあると言える。ちなみに48人中女流プロは12人。仲田加南プロ以来6年ぶり3人目となる女性の新人王の誕生の期待も持てる。
そして5回戦が終了。現在の上位は
①大久保朋美  +85.9P
②清水哲也   +83.6P
③三浦智博   +79.6P
④赤木由実   +67.0P
通過は36人。注目していた石川純、澤村明日華、東谷達矢(※敬称略)もここでの敗退となる。
澤村明日華『何か色々とすみません…』
東谷達矢『去年の雪辱を晴らしたかったのですが…ダメでした。』
 
【予選6回戦】 ※以後敬称略
未だ大きく抜け出す者のいない団子状態のまま6回戦へ突入。現状トップを走る大久保は6回戦も攻める手を緩めず、31,500点持ちでオーラスを南家で迎え
一万三万一索二索三索一筒二筒三筒七筒八筒八筒八筒九筒  ドラ三万
ドラ表示牌のカンチャン待ちではあるが三色ドラ1の5,200テンパイ。ヤミテンに受ける人の多そうな手牌だが大久保は迷わず即リーチを敢行。これはアガれはしなかったものの、 打牌の速度といい攻撃型な雀風といい、観戦していて気持ちの良い打ち手だなと思った。
2位の清水、3位の三浦ともにポイントを伸ばし、大久保を抜き1位2位につける。4位の赤木は大きな3着を引き決勝の椅子を遠のかせてしまう。逆に抜け出てきたのは鶴と福島。ともに6万点大のトップを取りトータル3位4位につく。
①清水哲也   +105.3P
②三浦智博   +97.9P
③鶴浩昭     +91.1P
④福島祐一   +89.5P
⑤大久保朋美  +88.3P
ここでの通過ボーダーは小笠原で+34.5P。何と本日2度目のボーダー通過である。こうなると3度目も期待したくなってくる。決勝進出のためには予選最終戦での8万点、9万点のトップが必要となってくるであろうが頑張ってほしい。
6回戦通過は24人。健闘していた蒼山、松岡だがここで涙を呑んだ。
蒼山秀佑『現時点での全力は出し切りました。来年また頑張ります。』
松岡千晶『今日は感触的にとても良かったのに…悔しいです。』
 
【予選7回戦(準決勝)】
予選最終戦は6卓24人で行われ、今までの累計ポイント上位4人が決勝進出となる。卓組は以下のとおり。
「1卓」 清水哲也(①+105.3P) 江口一敏(⑫+65.1P) 服部学(+61.5P) 小笠原奈央(+34.5P)
「2卓」 三浦智博(②+97.9P) 松尾樹宏(⑪+66.2P) 塚越祐次郎(+59.8P) 小谷美和子(+41.2P)
「3卓」 鶴浩昭(③+91.1P) 羽山真生(⑩+69.1P) 厚谷昇汰(+59.6P) 窪田瑞樹(+41.5P)
「4卓」 福島祐一(④+89.5P) 西嶋ゆかり(⑨+69.9P) 上村政雄(+54.4P) 櫛田利太(+42.5P)
「5卓」 大久保朋美(⑤+88.3P) 原田知彦(⑧+72.2P) 吉井健人(+53.0P) 今岡英忠(+43.8P)
「6卓」 岡本和也(⑥+74.4P) 佐々木諒輔(⑦+73.4P) 坪井哲也(+52.5P) 赤木由実(+52.0P)
ご覧のとおりの団子状態である。首位の清水とて最終戦をマイナスで終わることとなれば決勝進出はかなり怪しくなる。どの卓からも目の離せない最終戦となった。
~15分経過~
1卓では清水が東2局に發トイトイ三暗刻ドラ3をツモり上げ4,000・8,000と決勝進出に向け大きく大きく前進。特大トップが条件の小笠原、東3局の親番で
四万五万五万六万六万八万八万五索六索六索七索七索八索  ドラ五索
高目をツモれば6,000オールというリーチを打つも、実らず。
3卓で羽山が開局に3,000・6,000をツモりトータルで暫定3位に。
6卓は赤木が開局に2,000・4,000。しかしまだ決勝ボーダーには遠いか。
~30分経過~
1卓は南場を迎えた時点で清水が47,900点のトップ目。決勝の椅子、1つ目は清水で堅いか。
2卓は南2局で塚越が39,400点のトップ目。しかし卓内にいるトータル2位の三浦も原点をキープしているため、塚越は現状では決勝ボーダーにはまだまだ遠い。卓内の並びがこのままであれば塚越は最低でも素点であと20,000点は欲しいところ。
3卓は南1局で羽山が44,800点とトップを走る。最終戦でボーダーが上がるであろうことを考えると50,000点は超えたいところか。
4卓は東4局2本場。櫛田と上村のマッチレースとなっているが、現状では2人とも決勝ボーダーには厳しい。
5卓は大久保が南1局の親番で値千金の4,000オール。44,400点のトップ目に立ち、決勝進出がかなり濃厚となってきた。
6卓は東3局で親の岡本が5本場まで積み39,900点のトップ目に。他の上位陣の結果次第では決勝進出もありうるか。
~終了5分前~
1卓はオーラスで清水が51,300点のトップ目。清水は当確か。
2卓はすでに終了。三浦が37,800点の2着でプラスを11.8P増やしトータル+109.7P。他の卓の結果待ちとなる。
3卓も終了。羽山は後半苦しい展開が続き、窪田と鶴にまくられ卓内3着で終わる。鶴が9.5Pほどスコアを伸ばしてトータルで+100.6とし、5卓と6卓の結果待ちとなる。
4卓は櫛田と福島が浮きで終えたが、両者とも決勝には厳しい。
5卓は最後も大久保が自らのアガリで終わらせた。トータル115.9P。この時点で1卓と6卓を残すのみなため、大久保は決勝確定となる。
6卓は南1局。西家、岡本が46,400点持ちのトップ目から
四万五万六万七索八索九索一筒二筒三筒五筒六筒七筒  ドラ北
このリーチを打つ。これを親の佐々木から出アガリ5,200の加点。現状トータル104.0Pで鶴をまくっている。
~7回戦終了~
1卓は清水が49,800点のトップで終了。6卓は岡本が53,600点のトップで時間打ち切りとなる。よって結果は
①清水哲也   +133.1P
②大久保朋美  +115.9P
③岡本和也   +110.0P
④三浦智博   +109.7P
⑤鶴浩昭     +100.6P
鶴はトータル3位で最終戦を迎え、浮きの2着で終われたにも関わらずの他卓からのまくられなので、本当に惜しかったとしか言葉が無い。
本命の1人であった羽山も決勝進出はならず。小笠原、小谷、西嶋、赤木の女流プロも準決勝で敗退となる。
小笠原奈央『優勝したかったです。』
小谷美和子『不甲斐ないです。でも良い経験になりました。来年また頑張ります。』
羽山真生『痛恨の6,000オール逃がし…情けないよ。』
決勝進出は清水哲也、大久保朋美、岡本和也、三浦智博の4人。

shinjin27

これまでのポイントはリセットされ、決勝2回戦でのトータルポイント勝負となる。
第27期新人王となるのは果たして誰なのか。
決勝戦の様子は後日掲載される決勝観戦記にてお伝えさせていただきます。