プロ雀士コラム

プロ雀士コラム/「プロテストを受験する若者たちへ」 望月雅継

人は平等にチャンスがやってくる。
しかし、そのチャンスをモノにすることが出来るかどうかは…自分自身だ。
19歳の初秋、私はプロ連盟の門を叩いた。
結果は残念ながら不合格。それでもプロになりたい気持ちが強かった私は、研修生として1年間勉強を重ねた後、晴れてプロ連盟の一員となることが出来た。
そこに至る経緯に関しては以前のコラムにも記したのでそちらをご覧頂くとして…。
あれから約20年、私は無我夢中で走り続けてきた。
全力で走り続けた故に、失ったものは計り知れない。
しかし、チャンスを掴もうともがき続けた事で、得たものも限りなく多いのだ。
あの頃の私に、今のような時代が想像出来ただろうか?
答えは否だ。
頭に思い描く時代の移り変わりのスピードより、圧倒的に実際のスピードの方が速い。
学生時代の私の楽しみといえば、『近代麻雀』を隅から隅まで読み尽くすこと。
当時、別冊、オリジナル、ゴールドと3種類の近代麻雀を読むことだけが、麻雀界との関わりだったように思う。
「麻雀プロなんて、雑誌の中の存在さ。」
そう思っていたのも事実。
しかし、強烈な憧れを抱いていたこともまた、事実だ。
そんな折、その『近代麻雀』の記事の片隅で見つけた【麻雀プロ募集】の記事。
近代麻雀を何度も何度も繰り返し読んでいたからこそ気がついたとも言えるような、今のプロ連盟の隆盛とは全くかけ離れた小さな記事だっただけに、今思い返すと何故プロ連盟を受験したのかさえ不思議に感じてしまう。
兎に角、縁あってお世話になることになったプロ連盟。
しかし、麻雀プロになったとはいえ、私にとっての麻雀プロはまだまだ遠い存在だった。
当時私が所属していたのは中部本部。
リーグ戦の度に名古屋に向かい対局をしていたものの、遠く離れた東京で行われている鳳凰位戦プロリーグや各種タイトル戦など全くの無縁。
唯一の楽しみは、当時発行されていた『プロ麻雀』でのプロ連盟に関する記事を読むことくらい。
プロになってから数年は、今では考えられないような状況でプロ活動をしていたのだ。
あの頃の自分を振り返ってみると、本当に若かったなと思う。
大学在籍中にプロテストを受けたということもあり、世の中もプロ業界も全くと言っていいくらいわかっていなかった。
それだけではない。
世の中に対し斜に構えていたこともあってか、周りの大人の言うことにさえ、素直に耳を傾けていなかった気がする。
「30歳までは夢を追いかけてもいいんだよ。」
なんて言われても、
「夢ってなんだよ…。叶うわけないだろ…。」
とか、
「今頑張っておけば、きっと将来役に立つから!」
なんて言われた日には、
「今やるのが面倒くさいんだろ…。」
といった始末。
麻雀プロになったとはいえ、何をやれば強くなるのか全くわからなかった。
強くなったところで、どうやって活動していいのかすらわからなかったのだから。
それでも、親の反対を押し切り飛び込んだ世界だっただけに逃げることは許されなかった。
いや、許されないというよりは、ほんの小さな自分のプライドが、周りの大人たちや世間に対する反骨心がそうさせただけなのかもしれない。
そんな事を考えながら始めたプロ活動。
周りのアドバイスすら、聞き入れる耳さえ持ち合わせていなかったはずだ。
それくらい私は小さく未熟な男だった。
自分で見たもの、感じたものだけしか信じることが出来なかったのだから。
それは時代がそうさせたのかもしれない。
地方在住というコンプレックスがそうさせたのかもしれない。
とにかく、情報がまるでない中で歩みはじめた私の第一歩は、今考えるだけで恥ずかしく、そして陳腐で幼い思考の塊だったのだ。
しかし今は時代が違う。
世の中は情報に溢れ、インターネットやSNS等の発達による伝達スピードの速さから、麻雀界における地方格差など全く感じることのない素晴らしい時代に突入した。
麻雀の知識や技術についてもそう。
雑誌や戦術書を読むことからしか学ぶことが出来なかった時代から、今は実際にトッププロの対局を目にすることにより、成長のスピードが上がり、より効率的に成長を遂げることが出来るようになったのだ。
時代が進むことにより、麻雀界の、プロ業界の成熟度が格段にアップしたことは間違いのない事実なのである。
話が大幅に脱線して申し訳ない。
今話した内容は、麻雀プロを志す過程と、麻雀の技術向上についての進歩の話である。
これらは、プロ連盟だけではなくどの団体に対しても言えることであり、麻雀プロを志す若者に対して、より多くの選択肢を与えることとなった重要な事柄と言い換えることも出来る。
つまりは、麻雀プロになることだけが全てではないとも言えるし、プロ連盟以外の団体を受験することの善し悪しに関しても、プロ志望の皆様の視点で選ぶことが出来る時代になってきたと言えるだろう。
何を求め、何を選択するかが、周りのファンの方々によりクリアに見えて来ているということだ。
多種多様化する選択肢は、何になりたいか、どうしたいか、その人の考え方や意思によって選択する時代に突入してきたとも言える。
プロ連盟を受験するメリットを、入会してからのメリットを伝えることにより、より多くの皆様にプロ連盟の門を叩いて欲しいと願っている。
プロ連盟の中で活動していて、一番のメリットだと感じることはズバリ【チャンスの多さ】だ。
昔の自分と比較して、正直今の自分が今の若手に嫉妬するくらいだと言ったら分かりやすいのかもしれない。
映像時代に突入した今、自分を売り出すのに一番手っ取り早い方法はメディアに出ることだろう。
私が若手の頃は、映像に出ることなど夢のまた夢だった。
『近代麻雀』に出ることすら考えられなかったし、『プロ麻雀』や『連盟新聞』の片隅に名前が掲載されるだけでも本当に嬉しかった。
しかし今は違う。
ある一定の基準を満たせば、プロ連盟が参加している麻雀ゲーム『ロン2』に麻雀プロとして参加することが出来る。
さらには、こちらも基準さえ満たせば、プロ連盟が運営している『日本プロ麻雀連盟チャンネル』内の番組に選手として出場することが出来るのだ。
考えて欲しい。
これらは全て、プロ連盟が麻雀番組を放送するスタジオを所有しているからこそ出来ることであり、ロン2と協力体制があるからこそ出来ることなのである。
このような時代になったことは本当に嬉しいことである。
自分たちが麻雀ゲームに出るなんて考えもしなかった。
一部のゲームに麻雀プロが出演していたし、そのゲームを実際にプレイしたりもした。
しかし、それは十数人の話。希望して基準を満たせばゲーム内に参加できるなんて考えもしなかった。
映像対局に出演できるなど絶対にありえないと思っていた。
私が初めて映像対局に出演させてもらったのは8年前。鳳凰位を獲得してようやく初めて掴んだチャンスだった。
それが今は違う。
最速ならプロ入り後たった数ヶ月で、ファンの皆様に自分をアピールするチャンスを掴むことが出来るのだから、本当に羨ましく感じるのだ。
私が地方だけで活動していた頃、タイトル獲得など夢のまた夢だった。
しかし、今は色々な予選が各地で開催されている。トーナメントの大会であればプロ入り後1年でのタイトル獲得も夢ではない。
リーグ戦に関してもそうだ。
プロ連盟は現在11のカテゴリーでリーグ戦が形成されているが、特別昇級リーグに参加する権利を得れば、最短4年で鳳凰位に挑戦することが可能である。
女流に関してはもっと早い。
最短2年で女流桜花のAリーグに昇級することが出来、3年でプロ連盟の女流プロの頂点に立つことが出来るのだ。
来期から、女流桜花Aリーグ、鳳凰位戦A1リーグ、A2リーグの全ての対局が『日本プロ麻雀連盟チャンネル』内で放送されることが決定している。
また、各種タイトル戦の決勝戦の放送も決定している。
つまり、今まではプロ同士での戦いによる結果のみで争っていたプロの世界が、これからは結果だけでなく視聴者の皆様の目で判断される時代に突入したということだ。
それはどういったことなのか?
プロ連盟は、新たなスターを発掘したいと考えているということなのだ。
もちろん、今プロとして活躍している人材がダメだと言っているのではない。新たな風を受け入れ、その力によって更なる活性化を求めているのだ。
プロテスト実行委員会を率いる前原雄大プロが毎回冒頭で話す言葉がある。
「新陳代謝のない世界は必ず滅びる」
私も正しくそう思う。
新たな人材を受け入れ、より多くのチャンスを提供し、そのチャンスを掴み取った者たちによる風の入れ替え、つまりは新陳代謝を起こし続けることによってプロ連盟が、業界全体が活性化し続けると思うのだ。
そういった意味では、プロ連盟は恵まれた団体であるとつくづく思う。
それは何故なら、『チャンスをもらえる団体』であるからだ。
そのチャンスを生かすも殺すも自分次第。チャンスを掴む可能性のある人材は、チャンスを掴むためにアクションを起こし続ける人材だということだ。
何度でも語ろう。
プロ連盟はチャンスを与え続ける組織である。
チャンスを掴んだ人間が生き残り、チャンスを掴むことが出来なかった人間が去る。
勝負の世界で生きるということはそういうことだ。
決して勝ち負けだけの話なのではない。
アクションを起こすのか、起こさないのか。
失敗してもまた立ち上がるのか、諦めるのか。
全ては自分の意思の元に決める事柄であることは間違いない。
プロテストを受験すること。それはきっかけに過ぎない。
受験しなければ未来は開かないし、合格したとしても、歩みを止めてしまえばやらないのと同じ。
しかしプロ連盟には、多くのチャンスが転がっている。
それを手にしようとするかしないかは、皆さん次第。
チャンスを自分の手元に引き寄せたいと考えているあなた、是非挑戦して欲しいと私は願っている。
詳細については昨年度の大庭プロのコラムをご覧下さい。
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