プロ雀士インタビュー

プロ雀士インタビュー/第133回:プロ雀士インタビュー 柴田 吉和  インタビュアー:菅原 千瑛

それは約4年前。
新人王、そして十段位・柴田吉和プロと菅原千瑛プロではなく、私たちは”柴ちゃん”と”ジョージ”だった。
19歳。プロの麻雀に憧れ、独り勇み足でプロ試験を受けた私は、たまたま五十音順で菅原、鈴木、と並んでいた鈴木彩夏プロと仲良くなる。
そして、その鈴木プロの家族で経営している麻雀荘が私が生まれて初めて働いた麻雀荘であり、そこで、今回の新十段位・柴田吉和プロと出会うこととなる。
(ジョージというのは、当時大学生の私が吉祥寺に住んでいたことから、お店のママ(鈴木プロのお母さん)が私を”ジョージちゃん”と呼び出したことに由縁している)
第一印象は、背の高い、優しそうなお兄さん、である。
麻雀荘で働き始めの頃は、柴ちゃんと一緒に同番の際、同卓したり、平均着順2.1という成績の彼の麻雀を後ろから見たりしたものであった。
そしてそれから数ヶ月経ち、プロ試験期間中、鈴木プロ、柴田プロ、伊藤プロ(同期の伊藤賛太プロ。彼も少しの間一緒に同じお店で働いていた)と私の4人で雨の降る新橋でお茶しながら「皆で受かると良いねぇ」なんて話したものである。
「柴ちゃんおめでとう!!!!」
彼が昨年新人王戦を優勝した時も、今年十段戦ベスト8を勝ち上がった時も、優勝した時も、私はメールでこう送っている。
彼の返事は大体、
「ありがと~」
「どもども(^-^)/」
「やったで~」
(……一言かよっ!!!!!!!(笑))
かくして、柴ちゃんの知られざる一面を皆様にお届けすべく、今回インタビューに臨んだのである。
菅原「柴ちゃん十段位おめでとう!よっ!十段位!!」
柴田「ありがとう~やったで~」
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ちなみに柴田プロは終始ノンアルコールである。
菅原「うーん、何から聞こう(笑)。まずは柴ちゃんのことを今回初めて知ったよって方々のためにも、職歴?麻雀歴?をざっくりで良いので教えて下さい!あれ?柴ちゃん今いくつになったの?」
柴田「今年で38かな。職歴?えーっとね、21歳までは会社員でシステムエンジニアをしていて、22歳から27歳までは下北沢の麻雀荘でメンバーをしていて。こずえさん(宮内こずえプロ)もゲストで来て、おーすげー本物、って見てた(笑)。そのあと広告代理店に入って、30歳くらいからは個人で広告代理店を始めて、3年位経って少し軌道に乗ったかなーって頃にまたメンバーしようと思って入ったのが五反田の麻雀店かな。そこで出会ったもんね」
菅原「そうだね。出会った時柴ちゃん34歳くらいだったもんね!私、19歳だったなぁ…」
柴田「そうだったね~もうプロになって4年目かぁ…あっという間だね」
菅原「本当あっという間だねぇ。柴ちゃんのプロになったきっかけは?」
柴田「うーん、きっかけは、その当時一緒に働いていたみんながプロ試験受けるって言っていて、かな。もともとは自分の麻雀荘持ちたいなーって少し思っていたのもあるし。あとは、滝沢さん(滝沢和典プロ)と同じところで打ちたいって思ってた。自分の中では憧れというか輝く存在だったんだよね」
菅原「そっか。でもいまや同期の中では柴ちゃんが1番の出世頭というか、輝く存在だと思うけどな」
柴田「いやいや(笑)。入って1年目でさ、同期の紗掬さん(手塚紗掬プロ。連盟では同期にあたる)が自分の中では勇気と星で、決勝にポンポン残ってて、すげーって思ってたし、頑張らなきゃなって思ったよ」
菅原「(…勇気と星?希望の星ってことだろうか)そうだったよね~王位戦とプロクイーンと、あと最強戦もベスト16だった。私も頑張ろうって思ったなぁ。柴ちゃんはどんなプロになりたいの?どんなプロなの?」
柴田「うーん、個性ないよ俺(笑)。どんなプロになりたい、かぁ…。プロ試験の最後のレポート課題で”どんなプロになりたいか”っていう課題あったの覚えてる?」
菅原「あったね!覚えてるよ!」
柴田「それにさ、”滝沢和典になりたい”って書いたんだよね。色んな人の麻雀を観て、その時も、今も変わらず、やっぱり滝沢さんの麻雀も、麻雀に対する姿勢も好きでさ」
菅原「じゃあ柴ちゃんの中で、滝沢さんが1番の勇気と星?」
柴田「そうだね」
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菅原「そんな滝沢さんが今回観戦記担当だもんね。良かったね」
そうなのだ。今回、このインタビューとは別に観戦記があり、麻雀についてもいくつか触れたのだが、こちらでは敢えて割愛させていただくことにした。
麻雀については、合わせて観戦記をご覧頂ければ幸いである。
初日観戦記
二日目観戦記
最終日観戦記
柴田「A1、A2だと確か18期の人が多いよね」
菅原「そうだね。あと25期はここ最近タイトルホルダーも多いイメージだなぁ」
柴田「これから28期後期も華の28期後期ってなると良いよね」
菅原「はい、頑張ります!(汗)今年、私、王位戦は頑張りたいんだよね」
柴田「去年A級決勝まで残ってなかったっけ?」
菅原「そう!そこで完敗。終わって、一緒に帰る時、藤崎さん(藤崎智プロ)に冗談で『千瑛ちゃん何しに来たの?お弁当食べに来たの?』って言われて、『そうです!お弁当食べに来ました!(泣)』って(笑)。その後、『俺は勝つ時は決勝まで行くし、負ける時は即負けだから、省エネでしょ』って言ってたなぁ」
柴田「藤崎さんの麻雀も好きだなぁ。強いし、観てて面白いよね」
菅原「面白い!藤崎さんは麻雀もすごいけどそれ以外も本当お茶目だし。まぁ…だからって訳でもないんだけど、今年は絶対、去年より先まで勝ちたいんだよね。あれ?柴ちゃんはシードでA級決勝から?」
柴田「うん、折角良いシードをいくつかもらえているから、王位戦も、まずは決勝までは行きたいな」
菅原「王位戦は負けないから!」
柴田「(笑)」
菅原「そういえば、今回インタビューするにあたって、過去のインタビュー記事とかリレーエッセィも読んだのだけれども、十段戦、結構良いところまでは何回かあったんだね?」
柴田「そう、今回は新人王のシードで四段戦Sからだったけど、前回はあと4回くらいのところまで、その前はそのちょい下、その前の前は四段戦まで、だったかな」
菅原「相性的には良いタイトル戦だったんだね(笑)。新人王かぁ、もう一生とれないもんなぁ。そしたら今回またグランプリMAXも出られるもんね!」
柴田「前回のグランプリMAXは荒さん(荒正義プロ)にボコボコにやられたなぁ。リンシャンツモ3回されて、そのうち2回は役なしで。打点も高いし。自分は何も出来なかった印象。強かったなぁ」
菅原「でも強い人と打てる機会ってそうそうないから羨ましいよ。今回の十段戦決勝、最終戦オーラス、九筒ツモった時、どんな気持ちだったの?」
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恐らく前代未聞の、劇的な、オーラスに役満をアガっての優勝。
画面の前で観ていた者の大半は藤崎か櫻井か。同点首位の2人による優勝争いの1局だと思った筈だ。
柴田「テンパイしてからはちょっとドキドキしてた。ツモった時は嬉しかったよ」
菅原「びっくりしたもん!あれ!?ほとんどツモる筈のない人(オーラスの役満条件を聴牌すらクリアすることがとても珍しい為)がツモって言ってる!と思って。柴ちゃん国士ツモったー!って、その時大きい声出ちゃったもん(笑)本当に、おめでとう」
柴田「ありがとう。映像には映っていなかったかもしれないけど、オーラス終わって、藤崎さんがおめでとうって握手してくれたのは、すごく嬉しかったなぁ」
今回のインタビューを通して、ぽつりぽつりと、けれども丁寧な言葉選びで一言一言を話す彼からは、麻雀に対する絶対的な思い入れが伝わる。
劇的な優勝を遂げた同期の中の希望の星は、これからどんなプロになるだろう。
負けじと頑張る我々に、勇気と星をこの先も与えていって欲しいものである。