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プロ雀士コラム

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「プロテスト実行委員会」 紺野 真太郎

2016/02/12
執筆:紺野 真太郎


私がプロテストを受験したのが1999年9月。今の若い人は知らないかもしれないが、ノストラダムスの大予言が外れた直後であった。当時の受験者は50名ほどだったと記憶している。
合格して入会したのが2000年4月だから、もう16年もこの世界で生きてきたことになる。
受験時や入会当初は自分のことを日本一強いと思っていた。若かったし、何も知らなかったからただの怖いもの知らずだった。だが、少しずつこの世界を知るごとに勘違いに気づいていった。

この世界で生きていくにはどうしたらいいのだろうか。

答えはわからなかったが、出来る仕事に対して丁寧に誠実にこなしていくことしかないかなと出来ることは一生懸命やってきた。

当時出来る仕事といえば麻雀荘で働く以外ほとんどなかった。麻雀荘での仕事に不満があったわけではなかったが、もっとこの世界に深く関わることがしたかった。声がかかる仕事はなんでも一生懸命に丁寧に誠実にやった。そうしているうちに本当に徐々にではあるが仕事が増えていった。

そんな仕事の一つにプロテストの手伝いがあった。

現プロテスト実行委員会委員長の前原雄大に連れられ1年目からアシスタントをやらせてもらっているが、最初のうちは教え方もまったくだったと思う。だからといって今は満足しているかといえばそんなことはない。いかにして伝えるかという課題はやっていく限りついてくるものだと思っている。

過去のコラムにも書いてあったと思うが、プロテストは半年間の長期にわたる。一次は書類選考、二次は筆記、実技、面接等、三次が約半年、全5回のテストで、ここでは、テストでありながらも、競技麻雀における作法、マナーや闘牌フォームの撮影、それによる悪癖の指摘、矯正、もちろん実戦指導も行われる。

長かった三次テストの最後にはスタジオでの最終テストも待っている。講師陣が解説を担当し、放送こそされないが、生放送さながらの雰囲気で対局を行ってもらう。これは将来的に選手としてここに戻って来たときに大きな財産となるであろう。

スタジオを使用してのテストは前回が初めてであった。プロテストも基本は変わらないものの、少しずつ形を変えつつある。なぜなら、ここ数年この世界を取り巻く環境は劇的に変化した。というより変化し続けているからである。

受験生の質も変化してきている。昔ながらに麻雀荘で働きながらこの世界のトップを目指す者も勿論いるが、増えているのは正業を持ちながらもこの世界で生きていきたいと思う者。しかも食べていける目処が立てばこの世界に絞るという。実際にこの世界で食べていけるようになるには並大抵のことではない。だが、男女問わずこの世界で麻雀プロを職業としている者はいる。そういう者達を目の当たりにし、自分もそうなりたいと夢を持つのであろう。それだけ魅力的に見える世界になってきたということであろう。

取り巻く環境も受験する者の意識も変わってきた。ならばプロテストも変化していかなければならない。カリキュラムの1つであるフォーム撮影は過去には行っていなかった。機材を揃えるだけでも大変であったし、見られることを意識したフォームなどは、自己の意識に任されていた。もちろん当時でも見られることを意識し、鏡などを利用し、フォームの矯正を行っていた者もいたが。

時が進み、機材も進化し(現在はデジタルカメラで撮影、再生、編集も難しくないが、当時はビデオテープを使用するタイプが主で同じ作業でも手間がかかった。)揃えやすくもなり、麻雀プロとして見られることの需要が増えてきたことへの対応、変化であった。

スタジオを利用してのテストも環境の変化からしたらプロテストに組み込まれるのも必然であったであろう。入会当時はプロ団体がスタジオを持つなんて考えもつかなかったし、そこからリーグ戦をはじめとする各タイトル戦や公式戦、オリジナル番組などを自らの手で配信するなんて夢をも超える世界となった。

今後もこの世界は進化を続けるであろう。もう見られることを無視できない、というより見られなければいけない状況である。
スタジオを作り、チャンネルも持った今、どれだけ多くの人に見てもらい、支持を得るかがプロの価値になってきたと言っても過言ではないだろう。
フォームなどの見た目も大事であるが、見られる上でもっと大事なことがある。それは勿論、麻雀そのものである。

三次テストのなかで行ういろいろなカリキュラムでも毎回一番時間を割くところでもある。実戦指導ではとにかく序盤を重点的に指導する。5,6巡目までの繰り返しだけでテスト時間の大半を使うこともしばしばである。

「序盤には実力が出やすい。ここを徹底的に鍛えれば強くなる。」

と前原は言う。前原からこの序盤が大事であるという話を聞いたのは最近のことではない。知り合ったころから「序盤を見れば力はわかるよ」と聞かされていた。
実際に指導に入り疑問手があると質問をする。

「なんでそこでそれを切ったのですか?」

返ってくる答えはだいたい2パターン。論理的に正しいかどうかは別として、しっかり自分の意見を答えてくる受験生と、ただなんとなく進めてしまったのか、うまく答えられず口籠ってしまうかだ。

自分なりの意見を発してくれれば、こちらとしても対応は容易い。素直に納得することもあるし、論理的に外れていると思えばこちらの意見を言う。ここでも反応は2つに分かれ、納得するしないは別としても受け入れる者と、更に自分の意見を述べてくる者。その姿勢はある意味頼もしくもある。そこで更にこちらの意見を重ねてしまうと収まりがつかなくなるのでそれ以上はその場では広げない。いつか活躍するときまでに理解してくれればと思う。

自分の意見というか思考を答えられない者には司会者、解説者または一般視聴者に

「なんであの時あれを切ったのですか?」

って聞かれたらどうしますか?と問う。別に責めているわけでもなんでもなく、自分の思考を発することの大事さを伝えたいだけなのだ。

こんなカリキュラムを半年も続けていると最終テストを迎えるころには、受験生もプロとしてのスタートラインに立てるだけの力をつけていることが多い。それはテスト期間中に本当に必死にやったからであろう。ただ、本当の勝負は合格してスタートラインに立ってからであり、テスト期間のテンションを保ち続けて欲しいと思う。合格はゴールではなくただのスタートにすぎない。

合格後は各々が上を目指しもがいていく。それを努力と呼ぶ者もいれば、稽古と、または修行と呼ぶ者もいる。それを1人でやる者もいればグループでセットなどを組んで行う者、当連盟に存在する幾つかの勉強会に顔を出す者もいる。そういう所で出来る関係性を師弟関係と見られることもあるが、そんな上下関係ではない。上は下に対し自分の持つもの、知りえることを隠したりしない。聞かれれば答えるし伝えていく。みな仲間であり、願うことはレベルの向上、簡単に言えば強くなって欲しいだけなのだ。

自分が今聞かれて話すことの7割くらいは先輩方に伝え聞いたこと。それに少しの自分の言葉を付け加えて話しているだけだ。そうすることでレベルの向上に繋がればいいなと思う。そうやって後輩達に伝えていくことが伝統となっていくのだろう。

また新しいプロテストがやってくる。今度はどんな受験者がやってくるだろうか。期待して待ちたい。

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