第1期両毛カップ太田リーグ(プロアマ混合) 第7節成績表

順位 名前 プロ/一般 1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 合計
1 沢崎 誠 プロ 13.4 34.8 54.9 54.7 157.8
2 堰合 正治 一般 81.0 31.4 9.2 ▲ 18.9 102.7
3 関口 英行 一般 26.4 48.7 10.1 ▲ 3.0 82.2
4 菅谷 陽介 一般 6.4 36.6 27.7 0.8 71.5
5 飯塚 亮 一般 ▲ 33.4 79.2 7.7 1.0 13.6 68.1
6 桧山 拓 一般 ▲ 36.4 57.4 ▲ 4.9 12.9 33.6 62.6
7 大里 幸弘 一般 ▲ 1.2 ▲ 13.3 9.9 ▲ 2.6 65.3 58.1
8 提橋 剛 一般 12.7 ▲ 0.9 24.9 14.9 51.6
9 高橋 信夫 プロ ▲ 28.4 23.8 ▲ 0.7 ▲ 11.2 63.4 46.9
10 小林 正和 一般 ▲ 35.8 44.1 32.0 5.5 ▲ 5.8 40.0
11 小谷 美和子 プロ 36.1 ▲ 14.4 ▲ 23.9 ▲ 21.6 61.4 37.6
12 中津 真吾 プロ 39.4 ▲ 35.1 52.6 ▲ 21.1 35.8
13 須永 光俊 一般 37.1 36.7 ▲ 43.7 5.4 35.5
14 高月 章男 一般 36.8 ▲ 48.4 31.0 ▲ 26.3 33.8 26.9
15 桝井 律男 一般 36.1 ▲ 60.8 ▲ 22.9 20.0 45.2 17.6
16 久保 公男 プロ ▲ 5.0 ▲ 28.8 61.3 ▲ 17.7 9.8
17 町野 高司 一般 60.5 ▲ 56.7 ▲ 2.4 1.4
18 小林 寛之 一般 19.2 ▲ 18.0 1.2
19 黒木 聡太 一般 26.2 7.3 3.2 ▲ 48.5 11.4 ▲ 0.4
20 岩崎 殊男 一般 ▲ 17.0 109.1 ▲ 60.2 ▲ 33.8 ▲ 1.9
21 浜  正彦 一般 ▲ 17.9 34.1 ▲ 44.4 27.4 ▲ 4.1 ▲ 4.9
22 斎藤 健人 プロ 26.1 ▲ 40.6 5.4 ▲ 4.1 ▲ 13.2
23 関根 直也 一般 30.3 ▲ 37.2 ▲ 19.6 ▲ 26.5
24 福田 栄司 一般 ▲ 8.3 2.1 ▲ 1.6 45.4 ▲ 69.3 ▲ 31.7
25 後藤 隆 プロ ▲ 33.0 ▲ 33.0
26 西尾 猛 一般 ▲ 17.3 ▲ 15.2 37.2 ▲ 25.4 ▲ 12.9 ▲ 33.6
27 中山 典也 一般 ▲ 73.9 ▲ 5.1 37.2 2.2 ▲ 39.6
28 笹岡 一生 一般 4.4 55.3 ▲ 103.1 ▲ 43.4
29 橋本 幸志郎 一般 ▲ 6.6 ▲ 26.5 ▲ 30.8 16.9 ▲ 47.0
30 小林 一行 一般 ▲ 36.6 ▲ 1.7 ▲ 13.3 ▲ 51.6
31 西嶋 ゆかり プロ ▲ 26.3 ▲ 55.1 ▲ 11.7 32.1 ▲ 6.4 ▲ 67.4
32 小坂 智徳 一般 ▲ 28.0 ▲ 11.6 ▲ 2.4 ▲ 46.1 2.8 ▲ 85.3
33 村田 昌代 一般 ▲ 43.1 ▲ 45.0 ▲ 8.5 ▲ 96.6
34 塚越 祐次郎 プロ ▲ 46.0 8.3 ▲ 21.3 45.6 ▲ 84.4 ▲ 97.8
35 吉田 幸雄 プロ ▲ 39.0 ▲ 45.5 49.8 ▲ 23.3 ▲ 43.3 ▲ 101.3
36 高田 麻衣子 プロ ▲ 49.0 ▲ 0.6 ▲ 36.6 ▲ 43.7 ▲ 129.9

北関東プロリーグ 成績表/第1期両毛カップ太田リーグ(プロアマ混合) 第7節成績表

順位 名前 プロ/一般 1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 合計
1 沢崎 誠 プロ 13.4 34.8 54.9 54.7 157.8
2 堰合 正治 一般 81.0 31.4 9.2 ▲ 18.9 102.7
3 関口 英行 一般 26.4 48.7 10.1 ▲ 3.0 82.2
4 菅谷 陽介 一般 6.4 36.6 27.7 0.8 71.5
5 飯塚 亮 一般 ▲ 33.4 79.2 7.7 1.0 13.6 68.1
6 桧山 拓 一般 ▲ 36.4 57.4 ▲ 4.9 12.9 33.6 62.6
7 大里 幸弘 一般 ▲ 1.2 ▲ 13.3 9.9 ▲ 2.6 65.3 58.1
8 提橋 剛 一般 12.7 ▲ 0.9 24.9 14.9 51.6
9 高橋 信夫 プロ ▲ 28.4 23.8 ▲ 0.7 ▲ 11.2 63.4 46.9
10 小林 正和 一般 ▲ 35.8 44.1 32.0 5.5 ▲ 5.8 40.0
11 小谷 美和子 プロ 36.1 ▲ 14.4 ▲ 23.9 ▲ 21.6 61.4 37.6
12 中津 真吾 プロ 39.4 ▲ 35.1 52.6 ▲ 21.1 35.8
13 須永 光俊 一般 37.1 36.7 ▲ 43.7 5.4 35.5
14 高月 章男 一般 36.8 ▲ 48.4 31.0 ▲ 26.3 33.8 26.9
15 桝井 律男 一般 36.1 ▲ 60.8 ▲ 22.9 20.0 45.2 17.6
16 久保 公男 プロ ▲ 5.0 ▲ 28.8 61.3 ▲ 17.7 9.8
17 町野 高司 一般 60.5 ▲ 56.7 ▲ 2.4 1.4
18 小林 寛之 一般 19.2 ▲ 18.0 1.2
19 黒木 聡太 一般 26.2 7.3 3.2 ▲ 48.5 11.4 ▲ 0.4
20 岩崎 殊男 一般 ▲ 17.0 109.1 ▲ 60.2 ▲ 33.8 ▲ 1.9
21 浜  正彦 一般 ▲ 17.9 34.1 ▲ 44.4 27.4 ▲ 4.1 ▲ 4.9
22 斎藤 健人 プロ 26.1 ▲ 40.6 5.4 ▲ 4.1 ▲ 13.2
23 関根 直也 一般 30.3 ▲ 37.2 ▲ 19.6 ▲ 26.5
24 福田 栄司 一般 ▲ 8.3 2.1 ▲ 1.6 45.4 ▲ 69.3 ▲ 31.7
25 後藤 隆 プロ ▲ 33.0 ▲ 33.0
26 西尾 猛 一般 ▲ 17.3 ▲ 15.2 37.2 ▲ 25.4 ▲ 12.9 ▲ 33.6
27 中山 典也 一般 ▲ 73.9 ▲ 5.1 37.2 2.2 ▲ 39.6
28 笹岡 一生 一般 4.4 55.3 ▲ 103.1 ▲ 43.4
29 橋本 幸志郎 一般 ▲ 6.6 ▲ 26.5 ▲ 30.8 16.9 ▲ 47.0
30 小林 一行 一般 ▲ 36.6 ▲ 1.7 ▲ 13.3 ▲ 51.6
31 西嶋 ゆかり プロ ▲ 26.3 ▲ 55.1 ▲ 11.7 32.1 ▲ 6.4 ▲ 67.4
32 小坂 智徳 一般 ▲ 28.0 ▲ 11.6 ▲ 2.4 ▲ 46.1 2.8 ▲ 85.3
33 村田 昌代 一般 ▲ 43.1 ▲ 45.0 ▲ 8.5 ▲ 96.6
34 塚越 祐次郎 プロ ▲ 46.0 8.3 ▲ 21.3 45.6 ▲ 84.4 ▲ 97.8
35 吉田 幸雄 プロ ▲ 39.0 ▲ 45.5 49.8 ▲ 23.3 ▲ 43.3 ▲ 101.3
36 高田 麻衣子 プロ ▲ 49.0 ▲ 0.6 ▲ 36.6 ▲ 43.7 ▲ 129.9

第23期中部プロリーグレポート

「ツモ。4,000オール」
静かだが力強いその声の向こう側で、観戦者からは驚きの表情とどよめきが聞こえた。
5回戦オーラスの最終局面でこの展開を何人が予想しただろう?
「麻雀は最後まで何が起こるか分からない。」「諦めたらそこで終わり。」とよく聞くが、それは麻雀に限った事ではなく、全ての出来事に当てはまるのだが、今日起きた結果を振り返るとその言葉で締めくくるのがふさわしく思えた。

それでは本日決勝で闘う主役達を紹介しよう。

1位通過 伊藤鉄也(22期生/三段)
決勝進出:3回目 最高成績:優勝(1回)
記憶にも新しいが前期の優勝者であり、本命候補筆頭でもある。
その麻雀スタイルは一見攻撃型に感じるが、実際打って感じるのは押し引きに長けているバランス型。
仕掛けも上手く相手を翻弄する事もしばしば。連覇が期待されるが結果はいかに?

2位通過 長谷川弘(20期生/二段)
決勝進出:2回目 最高成績:4位
元々はAリーガーで、一時はCリーグまで降級するものの、実力で今期Aリーグ返り咲きを果たし、最終怒涛の追い上げで決勝まで駒を進めた。
麻雀は緻密に計算された攻撃型。一度流れを掴むとその勢いを止める事は難しい。
自分のスタイルを発揮出来れば、優勝も狙える対抗馬的存在。

3位通過 毛受俊(24期生/二段)
決勝進出:初
決勝は初だがリーグ戦をオールプラスで終えた実力は大きな自信に繋がる所だろう。
スタイルは手組み・打点を重視し、場況を読み押し進めて行く守備型。
しかしここぞと言う時の瞬発力は侮れない力を持つ。
決勝の大舞台でリーグ戦と変わらぬ、毛受らしい麻雀が打てるか?

4位通過 太田充(25期生/初段)
決勝進出:初
こちらも決勝は初挑戦。勝負勘に優れ、大事な局面・勝負所できっちりアガり切る力を持つ。
最終節では熾烈な決勝枠を制し、初の大舞台に挑む。
前期は最終節で大きなマイナスを叩いたが故に次点の地位に甘んじたが、今回はその雪辱を果たせるか?

 

1回戦(起家から伊藤・長谷川・毛受・太田)
東1局 開局早々に毛受が魅せる。
毛受の配牌

一万一万三万九万九万九万一索二索三索三筒三筒九筒北  ドラ六万

4巡目には二万ツモで

一万一万二万三万七万九万九万九万一索一索二索三索三筒三筒

毛受はここから三筒切りを選択したが、人によってはこのツモで打牌が分かれるのではないか?
しかし、この打牌選択が唯一アガリに繋がる打ち筋だった。
8巡目に八万を引き入れテンパイ。

一万一万二万二万三万七万八万九万九万九万一索二索三索

10巡目に太田がポンテンを入れるも、11巡目に伊藤から8,000をアガリ、幸先良いスタートを切る。

東2局 放銃した伊藤は全く動じる事もなく、積極的に仕掛け1,600・3,200をツモ。

一索一索発発  ポン一筒 上向き一筒 上向き一筒 上向き  ポン七万 上向き七万 上向き七万 上向き  ポン北北北  ツモ一索  ドラ南

この時、毛受がタンピン系の1シャンテンの形からドラをツモ切りしており、大事には至らなかったが、放銃すれば12,000が見えるだけに少し慎重さを欠いていたように思えた。
決勝の舞台では誰もが目に見えないプレッシャーと背中合わせにあり、いかに集中力を切らさずいつも通りの麻雀が打てるかが重要なカギにもなる。

東3局2本場、毛受の親を落とすべく伊藤・太田の手がぶつかる。

伊藤5巡目
四万五万六万七万七万八万三筒四筒五筒六筒七筒八筒九筒  ツモ二筒  打八万 左向き  ドラ三筒

太田7巡目
二万三万五索六索七索八索八索九索四筒五筒六筒八筒八筒  ツモ八索  打九索 左向き

観戦者目線で言わせて頂くと、伊藤が一筒をツモるのではないか?と思っていた。
結果は、伊藤が太田から七筒で3,900をアガリ決着。とは言え積み棒も含めると6,500の加点は大きい。

東4局 ここまで身を潜めていた太田に親でチャンスが訪れる。
太田の配牌

四万五万八索九索二筒五筒七筒八筒西西西北白白  ドラ西

ドラ暗刻の勝負手にもなりそうな配牌だが展開はいかに。
結論を言えば、太田が4,000オールをツモり、この半荘を決定づけた局と私は感じた。
太田は3巡目1シャンテン。
しかし5巡目、最短でテンパイが入ったのは西家の長谷川だった。

一万二万三万七万七万七万二索四索六索四筒五筒九筒九筒  ツモ三筒

これまでずっとチャンスを窺っては居たものの、テンパイチャンスもなく初めて訪れたテンパイだった。
しかし長谷川は、リーチすることが出来ず、決勝後に「あそこで六索切りリーチを打てなかった時点でいつもの麻雀ではなかった」と振り返り、強く悔やんでいた。

麻雀に「たら、れば」はないが、あの時長谷川がリーチと発声出来たなら、きっと違う展開が訪れていたに違いない。
ここで太田が勢いに乗るかと思われたが、毛受がしっかり捌いて太田から2,000をアガる。

南1局、3着太田とラス長谷川の手がぶつかる。
両者の配牌

太田
二万三万四万八万二索五索五索九索四筒五筒六筒六筒白  ドラ八万

長谷川
五万五万三索三索三索四索七索八索九索九索東白白

9巡目、太田テンパイ。

二万三万四万五索五索四筒四筒五筒六筒六筒  ポン八万 上向き八万 上向き八万 上向き

同巡、長谷川もテンパイ。

三索四索七索八索九索西西  ポン白白白  ポン三索 上向き三索 上向き三索 上向き

山に眠っている数は太田1枚、長谷川3枚で長谷川有利かと考えていたが、なんとここで毛受が太田に7,700放銃。てっきりオリていると思っていたので一瞬抜き間違いかと考えた。後の話では「危ないとは分かっていたが五筒さえ通れば5巡凌げると思ったから」と語ってくれたが、この時の毛受の手牌が、

六万七万六索六索六索八索八索二筒二筒二筒五筒五筒南

先に落とすなら、シャンポン待ちのない五筒より二筒を選ぶべきではないか?
苦しい時ほど、楽になりたい一心で選択ミスも起こるものだが、この代償は大きい。

南2局、7巡目に毛受が果敢にリーチするも空振り、1人テンパイ。

八万九万一索二索三索四索五索六索七索八索九索北北  リーチ  ドラ九万

南3局は浮きに回りたい伊藤が、長谷川から5,200のアガリ。

一万一万一万二万二万三万四万中中中  チー七万 左向き八万 上向き九万 上向き  ロン五万  ドラ南

長谷川の1人沈みで迎えたオーラス、太田・伊藤・長谷川共に12巡目同時テンパイ。

太田
七万七万二索二索四索四索二筒二筒九筒東東中中  ドラ九筒

伊藤はここでトップを狙いに勝負を懸ける。

三万四万五万五万六万七万六索七索七索八索八索五筒五筒  リーチ

長谷川
四索五索六索六索七索二筒三筒四筒白白白発発

軍配が挙がったのは長谷川。伊藤から1,600。次戦以降に望みをつなぐアガリをモノにした。

1回戦成績
伊藤+4.2P 長谷川▲24.5P 毛受+1.7P 太田+18.6P

2回戦(起家から毛受・太田・伊藤・長谷川)
東1局、毛受がピンフツモの700オールと静かな幕開けで開局。
続く1本場、毛受が12巡目に七筒を切って1人テンパイを果たすも違和感を覚えた。

六万七万八万五索五索六索六索七索二筒二筒四筒五筒六筒七筒  ドラ西

太田がピンズのホンイツ仕掛けをしていたのだが、条件がなければ一手変わり三色で四筒切りのはず。
しかし14巡目、太田から手出しが入ったにも拘わらず、15巡目では四筒をツモ切りしていた。
落ち着いているように見えても、決勝の舞台でその感情を消す事は難しい。

2本場は毛受・太田が共にテンパイで流局。
3本場、伊藤が先制リーチを掛けるも、同テンの七万を長谷川が力強くツモり上げた。

七万七万一索二索三索一筒二筒三筒三筒四筒五筒白白  リーチ  ドラ一索

長谷川
八万九万三索三索九筒九筒九筒中中中  ポン一万 上向き一万 上向き一万 上向き  ツモ七万

ここで同テンを制した事で、ようやく長谷川に流れが傾くか?とメモ書きを記す。

東2局 流局。
東3局1本場 太田がピンフ、ツモで400・700は500・800。
東4局 伊藤が長谷川から1,000アガリ小場が続く。
南場に入りヒートアップ。4人全員が一歩も引かない局面となる。

毛受
四万五万九万九万  ポン南南南  チー六万 左向き七万 上向き八万 上向き  チー二万 左向き一万 上向き三万 上向き  ドラ六筒

太田
四万五万六万六索六索三筒四筒五筒六筒七筒  ポン二索 上向き二索 上向き二索 上向き

伊藤
一万二万三万五万五万四索五索六索三筒四筒七筒八筒九筒

長谷川
八万八万五索六索二筒三筒四筒七筒八筒九筒  ポン白白白

ここは太田が五筒をツモり、加点は2,000だが価値あるアガリとなった。
南2局 流局。
南3局1本場 毛受のターニングポイントとも感じた局。
現点棒状況:
太田32.900 伊藤24,800 毛受34,000 長谷川28,300
5巡目、毛受の牌姿はこう

三万四万三索三索四索五索五索二筒三筒四筒五筒五筒五筒  ドラ七索  ツモ三万

234や345の三色も見え、最終12,000まで見える悩ましい手だが、現在トップ目でもあった毛受が選択した打牌はツモ切り。
巡目も早く打点を目指すなら当然の一打であろう。しかし今の置かれている状況を冷静に把握し先を見据えて打つのであれば、テンパイを取っても良かったのではと思う。
もちろん色々な意見があるとは思うが、短期決戦の場では一瞬の隙が取り返しのつかない状況を生み出す。
その結末は、毛受がテンパイを取っていれば四索で捉えられていた伊藤が長谷川から七対子ドラ2の9,600をモノにした。

南4局2本場 最速7巡目テンパイを果たしたのは4,900以上で浮きに回る太田。

三万四万五万二索二索三索五索三筒四筒五筒六筒七筒八筒  ドラ四筒

きっちり手役をつくり伊藤からなら逆転、他からでも2着となるためヤミを選択。
しかし13巡目に追いついた伊藤が太田の待ちをしっかり抑えた上でツモアガリ。

六万七万八万八万八万四索四索四索八索八索二筒三筒四筒  ツモ八索

伊藤の勢いと好調さが生まれた半荘となった。

2回戦成績
伊藤+21.9P  毛受+6.1P  太田▲10.0P  長谷川▲18.0P

2回戦終了時
伊藤+26.1P  太田+8.6P  毛受+7.8P  長谷川▲42.5P

3回戦(起家から、長谷川・伊藤・毛受・太田)
伊藤に勢いが出始めたが、それを追う太田・毛受にもまだまだチャンスは十分。
長谷川は展開的に苦しいが、巻き返すならここで挽回したいところ。

東2局 伊藤の親をいかに早く落とせるか?と思って見ていると、毛受が3巡目で以下の形でリーチ。

一万一万一万七万八万九万三索三索五筒六筒南南南  ドラ五万

伊藤・長谷川から仕掛けが入り、結果両方から喰い取られる形となって流局テンパイ。

東4局

伊藤配牌
三万四万七万二索三索五索八索九索五筒九筒東南南  ドラ八筒

7巡目に長谷川からリーチが入る。

二万三万四万五万六万一筒一筒一筒二筒三筒四筒東東  リーチ

11巡目には伊藤が下記テンパイで追いつく。

一万一万三万四万五万五万六万七万七万八万八万南南南

ここから八万を落とし六万九万待ち。山に眠る枚数は長谷川3枚、伊藤が4枚、しかも1牌も余らず迷う事なくテンパイしたところを見て、伊藤のアガリかと思われたが、長谷川が七万をツモり700・1,300。
南1局 前局好調な伊藤との勝負を制し今度こそ流れが傾くかと思われたが、選択を間違えアガリを逃してしまう。

9巡目 長谷川の手牌

三索四索五索五筒七筒七筒南南発発  ポン北北北  ツモ四筒  ドラ南

捨て牌
九万 上向き九索 上向き二筒 上向き六万 上向き二万 上向き一索 上向き白六索 上向き

選択したのは四筒のツモ切り。
この状況でドラの南が出る事はまず考えられない。北仕掛けでホンイツやトイトイが警戒されるので、私なら待ち数が多い四筒五筒の方を残し、最悪テンパイでもよしとするだろう。
結果論で言えば、七筒切りなら発ツモだったが流局テンパイ。

南2局 ここで伊藤・毛受の手がぶつかり合い場況が大きく動く。
7巡目に伊藤テンパイ

二万二万三索三索五索五索一筒一筒三筒四筒四筒発発  ドラ一筒

8巡目、毛受が追いつき5面待ちリーチ

三万三万三万四万五万六万七万三索四索五索三筒四筒五筒  リーチ

毛受のリーチを受け、ツモった九万に待ちを変えた所、次巡に九万をツモり4,000オール。やはり調子がいい。
南2局1本場 伊藤の勢いは止まらない。
14巡目、ドラの八万を重ね意を決するリーチ。

一万二万三万五万六万八万八万四索五索六索六筒七筒八筒  ドラ八万

七万を一発でツモり4,000は4,100オール。たった2局で一気に5万点オーバーし、会場内ではこれまでのポイント表を確認すると同時に、伊藤の優勝を確信したような雰囲気に包まれた。
南2局3本場、毛受が長谷川から2,000は2,900をアガリなんとか親を落とす。

場は淡々と進み、伊藤の1人浮きで終了。

3回戦成績
伊藤+37.8P  毛受▲7.1P  長谷川▲9.7P  太田▲22.0P(供託+1.0)

3回戦終了時
伊藤+63.9P  毛受+0.7P  太田▲13.4P  長谷川▲52.2P

4回戦(起家から、毛受・太田・長谷川・伊藤)
1~3回戦を全てプラスで終え、圧倒的な勢いと好調さを見せつけている伊藤に対し、他の3人が確固たる意志を持ってどこまで対抗出来るかがカギとなる。

東1局 開始早々伊藤の配牌とツモに注目。勢いは確実に増している。

北家 伊藤の配牌
一万二万二万七万一筒五筒六筒七筒東北北中中  ドラ北

4巡目にはこの形で1シャンテン

一万一万二万三万五筒六筒七筒東東北北中中

9巡目に北のポンテンを果たすも、太田がそれを許さない。
長谷川から1,300出アガリ。

テンパイ続きの東3局2本場、ここで長谷川がついに反撃に出る。
5巡目にリーチ、

六万六万七万七万八万八万六索七索八索八筒八筒白白  ドラ三索  リーチ

力強く一発で白をツモ。3,900オールは4,100オール。
その後は流局が続き、東4局5本場、ここでアガれば積み棒併せて4,500点のオマケ付き。
誰もが制したい局面であり、重要な勝負所でもある。
結果は、ここでも伊藤に軍配が上がり、太田より1,500は3,000。
南1局7本場 毛受・太田の手がぶつかる。
9巡目 毛受先制リーチ

二万三万四万五万五万二索三索四索一筒一筒一筒二筒三筒  ドラ六筒  リーチ

14巡目、太田が追いついて

二万三万四万七万七万七索八索九索五筒六筒七筒南南  リーチ

残り1巡のハイテイ間際、太田が値千金の南をツモり2,000・4,000。
南2局、伊藤が毛受に3,900放銃し3人の思惑通り伊藤がラス目に。
南3局、長谷川が毛受より5,800をアガり5万点オーバー。
オーラス、伊藤にラスを押しつけられるかが焦点だったが、結果は毛受がラスとなり終了。

4回戦成績
長谷川+30.8P  太田+8.3P  伊藤▲16.1P  毛受▲23.0P(供託+1.0)

4回戦終了時
伊藤+47.8P  太田▲5.1P  長谷川▲21.4P  毛受▲22.3P

4回戦を終え、伊藤以外、全員マイナスでその差は50P以上でかなりキツい。
伊藤で決まりか?

5回戦(起家から、長谷川・毛受・伊藤・太田)
東1局 なんとかしたいトータル2着の太田にチャンスが訪れる。太田の配牌。

三万五万六万一索三索六索六索九索七筒八筒九筒西西  ドラ六索

5巡目にはツモも伸びて即リーチ

四万五万六万六索六索九索九索七筒八筒九筒西西西  リーチ

九索を一発ツモで2,000・4,000。太田と打っていて感じるのは「ここぞという時の勝負強さ」である。
もちろんこうした時は打点も高いのだが、プロとして必要不可欠な要素だろう。
東2局、ここまで順調に来ていた伊藤も負けるわけにはいかないとばかりに8巡目にリーチを選択。
伊藤らしいと言えばそうなのだが、少しリスクが高いようにも感じた。

七万八万八万八万四索五索六索七索八索九索三筒四筒五筒  ドラ五筒

結果は、ソーズのホンイツ仕掛けをしていた長谷川が九万で3,900の放銃。

東3局、伊藤は攻撃の手を緩めず8巡目に勢いよくここでもリーチ。

二万三万四万五索六索三筒四筒四筒五筒五筒六筒七筒七筒  リーチ  ドラ東

50P差以上あるとは言え、トータルトップ目でドラの行方が全く見えていない状況でのリーチはと嫌な予感がしたその時。

伊藤が切った九筒を太田がチー。
伊藤を観戦していたため、太田の手牌は後から知ったのだが、案の定ドラを持っての仕掛けだった。
結果は、伊藤が太田に痛恨の3,900振り込み。直撃はなんとしても避けなくてはいけない状況とは伊藤も分かっていたはずだが、これが決勝の舞台の雰囲気なのだろう。

東4局、直撃のアガリで勢いに乗りたい親番の太田だったが、長谷川に3,900の放銃。
南1局1本場、太田が上手く仕掛けて1,300・2,600は1,400・2,700をツモアガリ。
南2局、伊藤の配牌はなんと1シャンテン。
3巡目でピンフテンパイ。同巡に長谷川から出アガリ。
この時点で伊藤は「優勝を意識して打っていた」と後に語ってくれた。

南3局、親である伊藤は最後まで自分の麻雀を貫くべく、攻撃の手を緩めなかったが、長谷川に5,200を振り込み暗雲が立ちこめる。

しかし5回戦オーラス、泣いても笑ってもこれが最後である。
現在のポイントと点棒を照らし合わせると下記の通り。
伊藤はアガれば優勝。太田は12.2P差で2,000オールでもひとまず逆転するが、親なのでアガっても続行。
長谷川は役満ツモ、毛受は伊藤から役満直撃条件となる。

ラス親の太田配牌
一万三万五万七万八万八万三索三索五索五索八索九索三筒発  ドラ七索

北家の伊藤配牌
一万一索一索四索九索二筒三筒六筒東北北中中

太田はツモにもよるが、伊藤は役牌もあり比較的軽く感じやや有利か?
3巡目には驚異的なツモで太田が七対子1シャンテン。

同巡、伊藤はホンイツorチャンタ系での2シャンテン。北中のどちらかでも鳴ければ早そうだが、他の2人は役満が条件なだけに、場には字牌が見えない厳しい状況。

9巡目、ついに太田が七対子テンパイ。さらにはリーチを選択。ここが最後の勝負所だと感じたのだろう。

三万五万五万七万七万八万八万三索三索五索五索八索八索  リーチ

なんとか追いつきたい伊藤はまだ1シャンテン止まり。表情には焦りが見えた。
だが11巡目、伊藤がついにテンパイを果たす。

一索一索一索三索四索七索八索九索北北北中中

張り詰める空気の中、2人の勝負を観戦者が固唾を呑んで見守っていたその時、13巡目に太田が力強く三万を引き寄せ4,000オール。
しかし太田は親なので続行。今度は伊藤が追う立場になり実質のラストチャンス。

伊藤の条件としては5,200出アガリまたは1,000・2,000ツモで優勝。
アガリ切れなければ太田が優勝となる。

南4局1本場、事実上の最終決戦。伊藤の連覇か?太田が初優勝を果たすか?

東家、太田配牌
五万七万九万二索三索三索九索一筒四筒六筒六筒八筒発中  ドラ二万

北家、伊藤配牌
四万七万七万八万九万一索六索八索一筒四筒七筒発発

条件が5,200出アガリまたは1,000・2,000だけに太田も最初からオリは選択出来ない。
伊藤をケアしながらアガリに向かう。伊藤はツモ次第だが、チャンタor三色がなんとか見える形か。
9巡目、一足早く1シャンテンで迎えたのは伊藤。

三万四万七万八万九万一索一索二索七筒九筒発発発

場に八筒が残り1枚なだけにリーチを掛けてツモりに行く形になると思っていたのだが、11巡目に上家の毛受から最後の八筒が切られてしまう。
この時伊藤の牌姿は、

一万三万四万七万八万九万一索一索七筒九筒発発発

八筒を仕掛ければ4巡後にドラの二万をツもり優勝だったが、伊藤が選択したのはスルー。
最後は太田がゆっくりと手を伏せ、伊藤の1人テンパイ。

太田の初優勝が決まった瞬間だった。
観戦者からは大きな祝福の拍手と共に、第23期中部プロリーグ決勝の幕が閉じた。

伊藤にもチャンスはあった。だが、あの時八筒を仕掛けていれば…と書いたところで事実が変わるわけではないし、それが決勝という舞台で5回戦まで打ち切った結果でもある。

競技麻雀で1半荘に50P以上の差を埋めるのは容易ではないが、「何事も諦めない」という姿勢は、今回の決勝のように見る者を魅了する結果に繋がるのだろう。

 

決勝メンバーのコメント
第4位 毛受俊
「初の決勝でも緊張はしていませんでしたが、要所要所でアガリ切る事が出来なかった。
形にこだわりすぎて綺麗に打ち過ぎました。自分の得意な状況に持ち込めなかったのが敗因です。」

第3位 長谷川弘
「結果としては残念だが、あの状況から3位で終われたのは良かった。1~3回戦目に手が入らなかった時、どう打開すべきかを考えて打っていたが、知らない内に優等生の麻雀を打ってしまっていたし、基本的に自分の信じているスタイルを出し切ることが出来ず、4回戦目にようやく取れたトップでも勢いに乗り切れなかった。」

準優勝 伊藤鉄也
「自分自身すごく落ち着いていたし、4回戦目まで上手く打てていたと感じていたが最後の最後で捲られてしまい非常に悔しい。正直5回戦目の南3局を迎えた時はこのまま優勝出来ると意識していました。しかし最終局面で4,000オールをツモった太田さんが強かったし、それが結果です。」

優勝 太田充
「上手く打てていた部分もミスした局面もありましたが、半分はツイていた所もあり結果として優勝出来たのは嬉しいです。放銃が少なかったのもありますが、5回戦目にラス親を引けた事が勝因に大きく繋がりました。次回は実力で優勝したと思われるような打ち方で勝ちきりたいと思います。今後も中部プロリーグはもちろん、タイトル戦にも積極的に参加して結果を出して行きたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。」

中部プロリーグ レポート/第23期中部プロリーグレポート

「ツモ。4,000オール」
静かだが力強いその声の向こう側で、観戦者からは驚きの表情とどよめきが聞こえた。
5回戦オーラスの最終局面でこの展開を何人が予想しただろう?
「麻雀は最後まで何が起こるか分からない。」「諦めたらそこで終わり。」とよく聞くが、それは麻雀に限った事ではなく、全ての出来事に当てはまるのだが、今日起きた結果を振り返るとその言葉で締めくくるのがふさわしく思えた。
それでは本日決勝で闘う主役達を紹介しよう。

1位通過 伊藤鉄也(22期生/三段)
決勝進出:3回目 最高成績:優勝(1回)
記憶にも新しいが前期の優勝者であり、本命候補筆頭でもある。
その麻雀スタイルは一見攻撃型に感じるが、実際打って感じるのは押し引きに長けているバランス型。
仕掛けも上手く相手を翻弄する事もしばしば。連覇が期待されるが結果はいかに?
2位通過 長谷川弘(20期生/二段)
決勝進出:2回目 最高成績:4位
元々はAリーガーで、一時はCリーグまで降級するものの、実力で今期Aリーグ返り咲きを果たし、最終怒涛の追い上げで決勝まで駒を進めた。
麻雀は緻密に計算された攻撃型。一度流れを掴むとその勢いを止める事は難しい。
自分のスタイルを発揮出来れば、優勝も狙える対抗馬的存在。
3位通過 毛受俊(24期生/二段)
決勝進出:初
決勝は初だがリーグ戦をオールプラスで終えた実力は大きな自信に繋がる所だろう。
スタイルは手組み・打点を重視し、場況を読み押し進めて行く守備型。
しかしここぞと言う時の瞬発力は侮れない力を持つ。
決勝の大舞台でリーグ戦と変わらぬ、毛受らしい麻雀が打てるか?
4位通過 太田充(25期生/初段)
決勝進出:初
こちらも決勝は初挑戦。勝負勘に優れ、大事な局面・勝負所できっちりアガり切る力を持つ。
最終節では熾烈な決勝枠を制し、初の大舞台に挑む。
前期は最終節で大きなマイナスを叩いたが故に次点の地位に甘んじたが、今回はその雪辱を果たせるか?
 
1回戦(起家から伊藤・長谷川・毛受・太田)
東1局 開局早々に毛受が魅せる。
毛受の配牌
一万一万三万九万九万九万一索二索三索三筒三筒九筒北  ドラ六万
4巡目には二万ツモで
一万一万二万三万七万九万九万九万一索一索二索三索三筒三筒
毛受はここから三筒切りを選択したが、人によってはこのツモで打牌が分かれるのではないか?
しかし、この打牌選択が唯一アガリに繋がる打ち筋だった。
8巡目に八万を引き入れテンパイ。
一万一万二万二万三万七万八万九万九万九万一索二索三索
10巡目に太田がポンテンを入れるも、11巡目に伊藤から8,000をアガリ、幸先良いスタートを切る。
東2局 放銃した伊藤は全く動じる事もなく、積極的に仕掛け1,600・3,200をツモ。
一索一索発発  ポン一筒 上向き一筒 上向き一筒 上向き  ポン七万 上向き七万 上向き七万 上向き  ポン北北北  ツモ一索  ドラ南
この時、毛受がタンピン系の1シャンテンの形からドラをツモ切りしており、大事には至らなかったが、放銃すれば12,000が見えるだけに少し慎重さを欠いていたように思えた。
決勝の舞台では誰もが目に見えないプレッシャーと背中合わせにあり、いかに集中力を切らさずいつも通りの麻雀が打てるかが重要なカギにもなる。
東3局2本場、毛受の親を落とすべく伊藤・太田の手がぶつかる。
伊藤5巡目
四万五万六万七万七万八万三筒四筒五筒六筒七筒八筒九筒  ツモ二筒  打八万 左向き  ドラ三筒
太田7巡目
二万三万五索六索七索八索八索九索四筒五筒六筒八筒八筒  ツモ八索  打九索 左向き
観戦者目線で言わせて頂くと、伊藤が一筒をツモるのではないか?と思っていた。
結果は、伊藤が太田から七筒で3,900をアガリ決着。とは言え積み棒も含めると6,500の加点は大きい。
東4局 ここまで身を潜めていた太田に親でチャンスが訪れる。
太田の配牌
四万五万八索九索二筒五筒七筒八筒西西西北白白  ドラ西
ドラ暗刻の勝負手にもなりそうな配牌だが展開はいかに。
結論を言えば、太田が4,000オールをツモり、この半荘を決定づけた局と私は感じた。
太田は3巡目1シャンテン。
しかし5巡目、最短でテンパイが入ったのは西家の長谷川だった。
一万二万三万七万七万七万二索四索六索四筒五筒九筒九筒  ツモ三筒
これまでずっとチャンスを窺っては居たものの、テンパイチャンスもなく初めて訪れたテンパイだった。
しかし長谷川は、リーチすることが出来ず、決勝後に「あそこで六索切りリーチを打てなかった時点でいつもの麻雀ではなかった」と振り返り、強く悔やんでいた。
麻雀に「たら、れば」はないが、あの時長谷川がリーチと発声出来たなら、きっと違う展開が訪れていたに違いない。
ここで太田が勢いに乗るかと思われたが、毛受がしっかり捌いて太田から2,000をアガる。
南1局、3着太田とラス長谷川の手がぶつかる。
両者の配牌
太田
二万三万四万八万二索五索五索九索四筒五筒六筒六筒白  ドラ八万
長谷川
五万五万三索三索三索四索七索八索九索九索東白白
9巡目、太田テンパイ。
二万三万四万五索五索四筒四筒五筒六筒六筒  ポン八万 上向き八万 上向き八万 上向き
同巡、長谷川もテンパイ。
三索四索七索八索九索西西  ポン白白白  ポン三索 上向き三索 上向き三索 上向き
山に眠っている数は太田1枚、長谷川3枚で長谷川有利かと考えていたが、なんとここで毛受が太田に7,700放銃。てっきりオリていると思っていたので一瞬抜き間違いかと考えた。後の話では「危ないとは分かっていたが五筒さえ通れば5巡凌げると思ったから」と語ってくれたが、この時の毛受の手牌が、
六万七万六索六索六索八索八索二筒二筒二筒五筒五筒南
先に落とすなら、シャンポン待ちのない五筒より二筒を選ぶべきではないか?
苦しい時ほど、楽になりたい一心で選択ミスも起こるものだが、この代償は大きい。
南2局、7巡目に毛受が果敢にリーチするも空振り、1人テンパイ。
八万九万一索二索三索四索五索六索七索八索九索北北  リーチ  ドラ九万
南3局は浮きに回りたい伊藤が、長谷川から5,200のアガリ。
一万一万一万二万二万三万四万中中中  チー七万 左向き八万 上向き九万 上向き  ロン五万  ドラ南
長谷川の1人沈みで迎えたオーラス、太田・伊藤・長谷川共に12巡目同時テンパイ。
太田
七万七万二索二索四索四索二筒二筒九筒東東中中  ドラ九筒
伊藤はここでトップを狙いに勝負を懸ける。
三万四万五万五万六万七万六索七索七索八索八索五筒五筒  リーチ
長谷川
四索五索六索六索七索二筒三筒四筒白白白発発
軍配が挙がったのは長谷川。伊藤から1,600。次戦以降に望みをつなぐアガリをモノにした。
1回戦成績
伊藤+4.2P 長谷川▲24.5P 毛受+1.7P 太田+18.6P
2回戦(起家から毛受・太田・伊藤・長谷川)
東1局、毛受がピンフツモの700オールと静かな幕開けで開局。
続く1本場、毛受が12巡目に七筒を切って1人テンパイを果たすも違和感を覚えた。
六万七万八万五索五索六索六索七索二筒二筒四筒五筒六筒七筒  ドラ西
太田がピンズのホンイツ仕掛けをしていたのだが、条件がなければ一手変わり三色で四筒切りのはず。
しかし14巡目、太田から手出しが入ったにも拘わらず、15巡目では四筒をツモ切りしていた。
落ち着いているように見えても、決勝の舞台でその感情を消す事は難しい。
2本場は毛受・太田が共にテンパイで流局。
3本場、伊藤が先制リーチを掛けるも、同テンの七万を長谷川が力強くツモり上げた。
七万七万一索二索三索一筒二筒三筒三筒四筒五筒白白  リーチ  ドラ一索
長谷川
八万九万三索三索九筒九筒九筒中中中  ポン一万 上向き一万 上向き一万 上向き  ツモ七万
ここで同テンを制した事で、ようやく長谷川に流れが傾くか?とメモ書きを記す。
東2局 流局。
東3局1本場 太田がピンフ、ツモで400・700は500・800。
東4局 伊藤が長谷川から1,000アガリ小場が続く。
南場に入りヒートアップ。4人全員が一歩も引かない局面となる。
毛受
四万五万九万九万  ポン南南南  チー六万 左向き七万 上向き八万 上向き  チー二万 左向き一万 上向き三万 上向き  ドラ六筒
太田
四万五万六万六索六索三筒四筒五筒六筒七筒  ポン二索 上向き二索 上向き二索 上向き
伊藤
一万二万三万五万五万四索五索六索三筒四筒七筒八筒九筒
長谷川
八万八万五索六索二筒三筒四筒七筒八筒九筒  ポン白白白
ここは太田が五筒をツモり、加点は2,000だが価値あるアガリとなった。
南2局 流局。
南3局1本場 毛受のターニングポイントとも感じた局。
現点棒状況:
太田32.900 伊藤24,800 毛受34,000 長谷川28,300
5巡目、毛受の牌姿はこう
三万四万三索三索四索五索五索二筒三筒四筒五筒五筒五筒  ドラ七索  ツモ三万
234や345の三色も見え、最終12,000まで見える悩ましい手だが、現在トップ目でもあった毛受が選択した打牌はツモ切り。
巡目も早く打点を目指すなら当然の一打であろう。しかし今の置かれている状況を冷静に把握し先を見据えて打つのであれば、テンパイを取っても良かったのではと思う。
もちろん色々な意見があるとは思うが、短期決戦の場では一瞬の隙が取り返しのつかない状況を生み出す。
その結末は、毛受がテンパイを取っていれば四索で捉えられていた伊藤が長谷川から七対子ドラ2の9,600をモノにした。
南4局2本場 最速7巡目テンパイを果たしたのは4,900以上で浮きに回る太田。
三万四万五万二索二索三索五索三筒四筒五筒六筒七筒八筒  ドラ四筒
きっちり手役をつくり伊藤からなら逆転、他からでも2着となるためヤミを選択。
しかし13巡目に追いついた伊藤が太田の待ちをしっかり抑えた上でツモアガリ。
六万七万八万八万八万四索四索四索八索八索二筒三筒四筒  ツモ八索
伊藤の勢いと好調さが生まれた半荘となった。
2回戦成績
伊藤+21.9P  毛受+6.1P  太田▲10.0P  長谷川▲18.0P
2回戦終了時
伊藤+26.1P  太田+8.6P  毛受+7.8P  長谷川▲42.5P
3回戦(起家から、長谷川・伊藤・毛受・太田)
伊藤に勢いが出始めたが、それを追う太田・毛受にもまだまだチャンスは十分。
長谷川は展開的に苦しいが、巻き返すならここで挽回したいところ。
東2局 伊藤の親をいかに早く落とせるか?と思って見ていると、毛受が3巡目で以下の形でリーチ。
一万一万一万七万八万九万三索三索五筒六筒南南南  ドラ五万
伊藤・長谷川から仕掛けが入り、結果両方から喰い取られる形となって流局テンパイ。
東4局
伊藤配牌
三万四万七万二索三索五索八索九索五筒九筒東南南  ドラ八筒
7巡目に長谷川からリーチが入る。
二万三万四万五万六万一筒一筒一筒二筒三筒四筒東東  リーチ
11巡目には伊藤が下記テンパイで追いつく。
一万一万三万四万五万五万六万七万七万八万八万南南南
ここから八万を落とし六万九万待ち。山に眠る枚数は長谷川3枚、伊藤が4枚、しかも1牌も余らず迷う事なくテンパイしたところを見て、伊藤のアガリかと思われたが、長谷川が七万をツモり700・1,300。
南1局 前局好調な伊藤との勝負を制し今度こそ流れが傾くかと思われたが、選択を間違えアガリを逃してしまう。
9巡目 長谷川の手牌
三索四索五索五筒七筒七筒南南発発  ポン北北北  ツモ四筒  ドラ南
捨て牌
九万 上向き九索 上向き二筒 上向き六万 上向き二万 上向き一索 上向き白六索 上向き
選択したのは四筒のツモ切り。
この状況でドラの南が出る事はまず考えられない。北仕掛けでホンイツやトイトイが警戒されるので、私なら待ち数が多い四筒五筒の方を残し、最悪テンパイでもよしとするだろう。
結果論で言えば、七筒切りなら発ツモだったが流局テンパイ。
南2局 ここで伊藤・毛受の手がぶつかり合い場況が大きく動く。
7巡目に伊藤テンパイ
二万二万三索三索五索五索一筒一筒三筒四筒四筒発発  ドラ一筒
8巡目、毛受が追いつき5面待ちリーチ
三万三万三万四万五万六万七万三索四索五索三筒四筒五筒  リーチ
毛受のリーチを受け、ツモった九万に待ちを変えた所、次巡に九万をツモり4,000オール。やはり調子がいい。
南2局1本場 伊藤の勢いは止まらない。
14巡目、ドラの八万を重ね意を決するリーチ。
一万二万三万五万六万八万八万四索五索六索六筒七筒八筒  ドラ八万
七万を一発でツモり4,000は4,100オール。たった2局で一気に5万点オーバーし、会場内ではこれまでのポイント表を確認すると同時に、伊藤の優勝を確信したような雰囲気に包まれた。
南2局3本場、毛受が長谷川から2,000は2,900をアガリなんとか親を落とす。
場は淡々と進み、伊藤の1人浮きで終了。
3回戦成績
伊藤+37.8P  毛受▲7.1P  長谷川▲9.7P  太田▲22.0P(供託+1.0)
3回戦終了時
伊藤+63.9P  毛受+0.7P  太田▲13.4P  長谷川▲52.2P
4回戦(起家から、毛受・太田・長谷川・伊藤)
1~3回戦を全てプラスで終え、圧倒的な勢いと好調さを見せつけている伊藤に対し、他の3人が確固たる意志を持ってどこまで対抗出来るかがカギとなる。
東1局 開始早々伊藤の配牌とツモに注目。勢いは確実に増している。
北家 伊藤の配牌
一万二万二万七万一筒五筒六筒七筒東北北中中  ドラ北
4巡目にはこの形で1シャンテン
一万一万二万三万五筒六筒七筒東東北北中中
9巡目に北のポンテンを果たすも、太田がそれを許さない。
長谷川から1,300出アガリ。
テンパイ続きの東3局2本場、ここで長谷川がついに反撃に出る。
5巡目にリーチ、
六万六万七万七万八万八万六索七索八索八筒八筒白白  ドラ三索  リーチ
力強く一発で白をツモ。3,900オールは4,100オール。
その後は流局が続き、東4局5本場、ここでアガれば積み棒併せて4,500点のオマケ付き。
誰もが制したい局面であり、重要な勝負所でもある。
結果は、ここでも伊藤に軍配が上がり、太田より1,500は3,000。
南1局7本場 毛受・太田の手がぶつかる。
9巡目 毛受先制リーチ
二万三万四万五万五万二索三索四索一筒一筒一筒二筒三筒  ドラ六筒  リーチ
14巡目、太田が追いついて
二万三万四万七万七万七索八索九索五筒六筒七筒南南  リーチ
残り1巡のハイテイ間際、太田が値千金の南をツモり2,000・4,000。
南2局、伊藤が毛受に3,900放銃し3人の思惑通り伊藤がラス目に。
南3局、長谷川が毛受より5,800をアガり5万点オーバー。
オーラス、伊藤にラスを押しつけられるかが焦点だったが、結果は毛受がラスとなり終了。
4回戦成績
長谷川+30.8P  太田+8.3P  伊藤▲16.1P  毛受▲23.0P(供託+1.0)
4回戦終了時
伊藤+47.8P  太田▲5.1P  長谷川▲21.4P  毛受▲22.3P
4回戦を終え、伊藤以外、全員マイナスでその差は50P以上でかなりキツい。
伊藤で決まりか?
5回戦(起家から、長谷川・毛受・伊藤・太田)
東1局 なんとかしたいトータル2着の太田にチャンスが訪れる。太田の配牌。
三万五万六万一索三索六索六索九索七筒八筒九筒西西  ドラ六索
5巡目にはツモも伸びて即リーチ
四万五万六万六索六索九索九索七筒八筒九筒西西西  リーチ
九索を一発ツモで2,000・4,000。太田と打っていて感じるのは「ここぞという時の勝負強さ」である。
もちろんこうした時は打点も高いのだが、プロとして必要不可欠な要素だろう。
東2局、ここまで順調に来ていた伊藤も負けるわけにはいかないとばかりに8巡目にリーチを選択。
伊藤らしいと言えばそうなのだが、少しリスクが高いようにも感じた。
七万八万八万八万四索五索六索七索八索九索三筒四筒五筒  ドラ五筒
結果は、ソーズのホンイツ仕掛けをしていた長谷川が九万で3,900の放銃。
東3局、伊藤は攻撃の手を緩めず8巡目に勢いよくここでもリーチ。
二万三万四万五索六索三筒四筒四筒五筒五筒六筒七筒七筒  リーチ  ドラ東
50P差以上あるとは言え、トータルトップ目でドラの行方が全く見えていない状況でのリーチはと嫌な予感がしたその時。
伊藤が切った九筒を太田がチー。
伊藤を観戦していたため、太田の手牌は後から知ったのだが、案の定ドラを持っての仕掛けだった。
結果は、伊藤が太田に痛恨の3,900振り込み。直撃はなんとしても避けなくてはいけない状況とは伊藤も分かっていたはずだが、これが決勝の舞台の雰囲気なのだろう。
東4局、直撃のアガリで勢いに乗りたい親番の太田だったが、長谷川に3,900の放銃。
南1局1本場、太田が上手く仕掛けて1,300・2,600は1,400・2,700をツモアガリ。
南2局、伊藤の配牌はなんと1シャンテン。
3巡目でピンフテンパイ。同巡に長谷川から出アガリ。
この時点で伊藤は「優勝を意識して打っていた」と後に語ってくれた。
南3局、親である伊藤は最後まで自分の麻雀を貫くべく、攻撃の手を緩めなかったが、長谷川に5,200を振り込み暗雲が立ちこめる。
しかし5回戦オーラス、泣いても笑ってもこれが最後である。
現在のポイントと点棒を照らし合わせると下記の通り。
伊藤はアガれば優勝。太田は12.2P差で2,000オールでもひとまず逆転するが、親なのでアガっても続行。
長谷川は役満ツモ、毛受は伊藤から役満直撃条件となる。
ラス親の太田配牌
一万三万五万七万八万八万三索三索五索五索八索九索三筒発  ドラ七索
北家の伊藤配牌
一万一索一索四索九索二筒三筒六筒東北北中中
太田はツモにもよるが、伊藤は役牌もあり比較的軽く感じやや有利か?
3巡目には驚異的なツモで太田が七対子1シャンテン。
同巡、伊藤はホンイツorチャンタ系での2シャンテン。北中のどちらかでも鳴ければ早そうだが、他の2人は役満が条件なだけに、場には字牌が見えない厳しい状況。
9巡目、ついに太田が七対子テンパイ。さらにはリーチを選択。ここが最後の勝負所だと感じたのだろう。
三万五万五万七万七万八万八万三索三索五索五索八索八索  リーチ
なんとか追いつきたい伊藤はまだ1シャンテン止まり。表情には焦りが見えた。
だが11巡目、伊藤がついにテンパイを果たす。
一索一索一索三索四索七索八索九索北北北中中
張り詰める空気の中、2人の勝負を観戦者が固唾を呑んで見守っていたその時、13巡目に太田が力強く三万を引き寄せ4,000オール。
しかし太田は親なので続行。今度は伊藤が追う立場になり実質のラストチャンス。
伊藤の条件としては5,200出アガリまたは1,000・2,000ツモで優勝。
アガリ切れなければ太田が優勝となる。
南4局1本場、事実上の最終決戦。伊藤の連覇か?太田が初優勝を果たすか?
東家、太田配牌
五万七万九万二索三索三索九索一筒四筒六筒六筒八筒発中  ドラ二万
北家、伊藤配牌
四万七万七万八万九万一索六索八索一筒四筒七筒発発
条件が5,200出アガリまたは1,000・2,000だけに太田も最初からオリは選択出来ない。
伊藤をケアしながらアガリに向かう。伊藤はツモ次第だが、チャンタor三色がなんとか見える形か。
9巡目、一足早く1シャンテンで迎えたのは伊藤。
三万四万七万八万九万一索一索二索七筒九筒発発発
場に八筒が残り1枚なだけにリーチを掛けてツモりに行く形になると思っていたのだが、11巡目に上家の毛受から最後の八筒が切られてしまう。
この時伊藤の牌姿は、
一万三万四万七万八万九万一索一索七筒九筒発発発
八筒を仕掛ければ4巡後にドラの二万をツもり優勝だったが、伊藤が選択したのはスルー。
最後は太田がゆっくりと手を伏せ、伊藤の1人テンパイ。
太田の初優勝が決まった瞬間だった。
観戦者からは大きな祝福の拍手と共に、第23期中部プロリーグ決勝の幕が閉じた。
伊藤にもチャンスはあった。だが、あの時八筒を仕掛けていれば…と書いたところで事実が変わるわけではないし、それが決勝という舞台で5回戦まで打ち切った結果でもある。
競技麻雀で1半荘に50P以上の差を埋めるのは容易ではないが、「何事も諦めない」という姿勢は、今回の決勝のように見る者を魅了する結果に繋がるのだろう。
 
決勝メンバーのコメント
第4位 毛受俊
「初の決勝でも緊張はしていませんでしたが、要所要所でアガリ切る事が出来なかった。
形にこだわりすぎて綺麗に打ち過ぎました。自分の得意な状況に持ち込めなかったのが敗因です。」
第3位 長谷川弘
「結果としては残念だが、あの状況から3位で終われたのは良かった。1~3回戦目に手が入らなかった時、どう打開すべきかを考えて打っていたが、知らない内に優等生の麻雀を打ってしまっていたし、基本的に自分の信じているスタイルを出し切ることが出来ず、4回戦目にようやく取れたトップでも勢いに乗り切れなかった。」
準優勝 伊藤鉄也
「自分自身すごく落ち着いていたし、4回戦目まで上手く打てていたと感じていたが最後の最後で捲られてしまい非常に悔しい。正直5回戦目の南3局を迎えた時はこのまま優勝出来ると意識していました。しかし最終局面で4,000オールをツモった太田さんが強かったし、それが結果です。」
優勝 太田充
「上手く打てていた部分もミスした局面もありましたが、半分はツイていた所もあり結果として優勝出来たのは嬉しいです。放銃が少なかったのもありますが、5回戦目にラス親を引けた事が勝因に大きく繋がりました。次回は実力で優勝したと思われるような打ち方で勝ちきりたいと思います。今後も中部プロリーグはもちろん、タイトル戦にも積極的に参加して結果を出して行きたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。」

インターネット麻雀日本選手権2014観戦記前半 山井弘

早いもので、私がプロになって16年が経った。
今では第三次プロテストとなっているが、私が受験した当時は研修と呼ばれていた。
その卒業試験で、私は決勝まで進んだが準優勝で終わり、悔しい思いをしたことを今でも覚えている。

あれから16年。
随分と時間がかかったが、ようやく初めてタイトルを獲得することができた。
7月に、フランスはパリで行われた、第1回リーチ麻雀世界選手権。
この、初代世界チャンピオンとなった。

この大会に参加して感じたことは、世界でリーチ麻雀が広がりつつあるのはインターネットの影響が大きいということ。今や世界中で様々な情報を得ることができるインターネットで、多くの海外の人たちが、日本のネット麻雀をプレイしているということだ。

16年前は、このネットの世界で、麻雀の日本一を決めるなんて、想像すらしていなかった・・

今年も日本プロ麻雀連盟が、インターネットの各主要サイトに参加を呼びかけ、3月から予選がスタートした。
「ハンゲーム 麻雀4」では、勝ち上がってきたユーザー16名と日本プロ麻雀連盟のプロ16名が激突。
16名がハンゲーム代表という形で進出。
「ロン2」でも同様の予選が行われて、16名が本戦へと進出した。
本戦からは各卓上位2名通過のトーナメント形式。

私もベスト8まで駒を進めることができたが、ここで敗退してしまった。

※大会概要はこちら

インターネット麻雀日本選手権2014決勝へ勝ち上がったのは、

 

瀬戸熊直樹

100

現十段位であり、ここ最近の成績は凄まじく、鳳凰位は連覇も含め3回獲得。
十段位は現在3連覇中で、今年秋に4連覇を目指す。
このインターネット麻雀日本選手権の決勝は初で、瀬戸熊曰く、
『ネットで”クマクマタイム”が出るかどうかは分からないが、もし出せれば勝てる可能性もある』とのこと。
『ただ、普段の決勝とは違う雰囲気なので、どうなるのか予測できない』と語る。
『やっている内にわかってくるかもしれない』と、
決勝を何度も戦った瀬戸熊でさえも、ネットでの対戦は先の展開は読みづらいということだろう。

 

ともたけ雅晴

100

現A1リーガーで、7年前に、決勝進出回数14回目にして念願の鳳凰位を獲得。
翌年の防衛戦で、前原プロに敗れて以来、久しぶりの決勝進出となった。
もちろんインターネット麻雀日本選手権の決勝は初となる。
決勝常連のともたけは、久しぶりの決勝という舞台で、
『作戦はとくにないよ、普段通り戦う。いっぱい真ん中から切るからね』とコメントをくれたが、
そのコメント通り、真ん中の牌から切り飛ばして行くともたけの雀風は、高打点を見据えて最終形を描いたら、その形に向かって一直線に突き進む、攻撃型ではあるが、打点重視の面前攻撃型である。
したがって、手が進まなければ守りに入ることができるので、守備にも適している打法ともいえる。

 

佐々木寿人

100

インターネット麻雀日本選手権の決勝は2回目。
初開催の年に決勝まで進むも、「チームガラクタ」の総帥、前原雄大プロに敗れる。
今回はそのリベンジに燃え決勝まで進出するも、その前原プロはベスト8で敗退。
ちなみに「チームガラクタ」とは、前原、佐々木の2人だけのチームで、麻雀の形は美しくはなくガラクタのようだが、その強さからチームガラクタと言われるようになった。
『でたとこ勝負で展開次第。作戦は特になし』と、佐々木らしいコメント。
しかし、『でも、タイムラグを読みの材料にできるかもしれない』と勝つためには少しでも有利に戦えるよう隙は微塵もない。「チームガラクタ・部長」の意地を見せることができるのか。

 

徳川龍之介さん

100

もちろん本名ではなくニックネーム。ドラマの主人公の名前である。
私もちょうど、この名前の主人公が活躍していたドラマの世代だ。
ハンゲームから勝ち上がってきた徳川さんは、今回参戦するため愛知県三河市から東京までお越しになった。
普段は、IT関係のお仕事をされているようで、麻雀は休みの日に大会などあるとネットで打つことが多いとのこと。
お盆や暮れには、大学の友人たちと集まって、実際の牌を使って麻雀をすることもあるそうだ。
『決勝は半荘5回戦なので厳しいかも・・・でも、何とかトップとの点差を意識し、最後まで離されないようついていきたい。相手は強者なので、かき回したいです』と語る徳川さん。
これまで多くのプロを打ち破ってきた実力はいかに!?

以上の4名で、半荘5回戦の幕は切って落とされた。

100

 

 

1回戦
起家から、佐々木・瀬戸熊・徳川さん・ともたけ

いきなり先手を取ったのは徳川さんだった。

七万八万一索一索一筒一筒二筒五筒六筒東東白白  ドラ四筒

開始前のコメントで、
「プロは強いので、その3人が相手では、普通に打っていては勝ち目はない。とにかくかく乱して、先手を取っていきたい」と話してくれた徳川さんが、さっそく動いた。ここから佐々木の切った一筒をポン。

ここで私が驚いたのは、親である佐々木の対応だ。
まずは一筒ポンを受けたこの牌姿から、

五万四索五索八索八索四筒五筒五筒六筒六筒九筒九筒白  ツモ西

佐々木の選択は打九筒
この手牌で、東1局から対応している佐々木を見て、人は変わるものだなと思った。
以前の佐々木であれば、仕掛けが入っていようとリーチが入っていようと、開局に親番でそこそこの手牌が寄ってきていれば、真っ直ぐに西白と打ちぬいていたに違いない。

鳴り物入りでプロデビューして8年。
テレビ対局では結果を出してはいたが、プロリーグや十段戦などのタイトル戦ではいい結果が出せず、本人も自分のその戦い方について、いっぱい悩んだに違いない。
しかし、ここ最近では、プロリーグも快進撃を続け、ようやくA2、そしてA1へと、あと一歩のところまできている。その新しい佐々木寿人の戦い方がこのスタイルなのだろう。

徳川さんは、一索も鳴いて東白のシャンポンでテンパイ。
佐々木はその後、手は進み、

五万四索五索八索八索八索四筒五筒五筒六筒六筒西白  ツモ六索

ここでもまだ、西白も切らずに打五万とする。

そしてもう1人、ここにもしっかりと対応している者がいた。

一万二万七万八万九万七索九索七筒八筒九筒発中中  ツモ三万

ここから、テンパイ取らずの打中はともたけ。
しかも、アガリ牌である八索は、仕掛けている徳川さんの現物にもかかわらず発を切らずに対応する。
開局にこのテンパイを外す勇気は相当なものだと思う。
もし八索でアガリ逃したらと考えると、恐ろしくて私にはできないが、ここでともたけが発を切れば、当然、現物であろうと八索が出るメンツではないということなども含めての選択であろう。
それにしても、ここでのテンパイ外しは、それなりの勇気と覚悟が必要だと私は思う。
結局、ともたけは発を重ねて復活。

佐々木も最後は白西を切ればテンパイ、というところまで持ち込み、ここは指運で西を切って3人テンパイ。
実に見応えのある開局となった。

開局乗り遅れたかたに見えた瀬戸熊だが、東1局2本場、4巡目に早くもリーチが入る。

四万四万七万八万九万七索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒  リーチ  ドラ四筒

これを受けた佐々木の手牌。

二万三万二索三索四索九索九索三筒四筒五筒六筒七筒白  ツモ三筒

ここで白をリリースすると、これをポンはともたけ。

六万七万七万八万九万六筒六筒六筒西西  ポン白白白

瀬戸熊のリーチを交わしにいく。
しかし、一万八筒とツモ切ったあと、九筒を引き瀬戸熊に高め放銃となった。
痛い失点となったともたけだが、その影にもう一人痛いと思っている者がいた。佐々木だ。

ともたけの喰い下げた一万八筒は、佐々木のテンパイ牌、そして一発でツモアガリとなる牌であった。
佐々木は果たして、ともたけがツモ切るその牌を、どのような思いで見ていたのだろうか。

放銃となったともたけだが、次局、力強く倍満のツモアガリをする。

三万四万四万四万一索二索三索七筒八筒九筒  暗カン牌の背東東牌の背  リーチ  ツモ二万  ドラ一索九筒  裏東七筒

次局は、徳川さんが四暗刻の1シャンテンとなる。

二万三万三万五万五万五万六万六万三筒三筒三筒六筒六筒  ドラ二筒

しかしこれだけ真ん中の牌ばかりだと、他家に使われているケースが多いため、どうしても2鳴きにはしにくい。1枚目の六筒をポンしてテンパイ。
これを受けた佐々木は、4トイツから一気に北東と有効牌を引き込みテンパイ。

二万一索一索二筒二筒五筒五筒九筒九筒東東北北

捨て牌は、三万 上向き一万 上向き八索 上向き六万 上向き四万 上向き南白八万 上向き

1巡ヤミテンを選択するも、2枚切れの西を引き、ここは待ち替えせずツモ切りリーチ。
普段、地獄待ちを好む佐々木だが、この時はともたけが国士を作っていたため、4枚目の西があてにならないこともあり、何より捨て牌に迷彩が施されていることが二万タンキを選択した一番の理由であろう。

このリーチに飛び込んでしまったのは徳川さん。
一発で捕まり、裏まで乗って16,000点の放銃となってしまった。

南場に入り、南3局ラス目で迎えた徳川さんは、

100

 

このテンパイをするも、一旦、ヤミテンに構える。
すると、トップを虎視眈々と狙う瀬戸熊に、絶好のカン八筒が埋まり、こちらもヤミテン。
瀬戸熊は、三色を決めたあとは交わし手が多く、恐らくまだ本調子ではないと感じていたのではないだろうか。
だからこそのヤミテンなのだろう。本調子の瀬戸熊であれば、恐らく迷いなくリーチと発声していたに違いない。

徳川さんにしても、いくら三色の手替わりがあるからとはいえ、親でドラ1あれば、多少苦しい待ちでもリーチと行きたくなるのが心情というもの。

もし仮にここで徳川さんがリーチだと、恐らく瀬戸熊も追いかけリーチとなり、徳川さんは、またも一発で九万を掴む運命だった。しかし、ヤミテンにしていたことで、この九万引きで三面チャンへと手替わり、放銃を回避しここでリーチとなった。三色へ受けなかったのは、他家へのケアもあったかもしれないが、ここは点数的にも三色に受けてもらいたかった。

これを受け、瀬戸熊も追いかけるが、この同テンは流局となる。

100

 

もし徳川さんがヤミテンで、瀬戸熊が先制リーチだった場合はどうだろうか。
全体牌譜を見てもらえば分かるが、瀬戸熊が七筒切りリーチの場合、徳川さんは五筒八筒を打てるかどうかである。
瀬戸熊の河はマンズの上が通りそうなので、もしかしたら打九となった可能性もあった。

1回戦成績
佐々木+33.8P  ともたけ+10.5P  瀬戸熊▲4.3P  徳川さん▲40.0P
※順位点=1位+15.0P 2位+5.0P 3位▲5.0P 4位▲15.0P

 

2回戦
起家から、瀬戸熊・ともたけ・佐々木・徳川さん

佐々木が徳川さんとのリーチ合戦を制して東1局は先制。
迎えた東2局、徳川さんが技ありの七対子を決める。

六万六万二筒四筒四筒九筒九筒南南白白中中  ドラ九索

8巡目にこのテンパイでヤミテン。
親番のともたけは、

七索八索九索二筒三筒三筒六筒七筒七筒北北発発  ツモ六筒

こうなり七対子も見てここで打二筒となった。
誰もが仕方がないと思ったであろう。でも、どこが技ありなのと読者の方は疑問に思うかもしれない。
どこか手順で技があったのなら、そこを書いてくれと思うだろう。
しかし、手順は普通だった、七対子も自然にできたものだ。

徳川さんはこの二筒を見逃した。

なぜ見逃したのか、2回戦が終わって聞いてみた。
「1,600点ではアガる気はなかった、1回戦ラスだったので打点がほしかった。ドラ引きなどを待つつもだったが、ここで二筒が出たので、これ利用してアガリに結び付けようと思った」

まだ2回戦と考えれば、見逃しというリスクをここで背負うのは危険な気はするが、徳川さん自身が1回戦を打ってみた感触から、この3人相手では、普通に戦ったのでは勝てないのではないか、何か工夫をしないとダメなのではないかと判断した結果、見逃しという選択になったのだろう。

徳川さんのツモ切りリーチに対して、

四万五万九万九万四索五索五索六索六索七索五筒六筒七筒

同巡、このテンパイを入れていた瀬戸熊が、2巡後二筒を掴み放銃となった。
瀬戸熊はどちらにしても七万一万と無筋を押していたので、この二筒も放銃になったかもしれないが、明らかに二筒が切られてからのツモ切りリーチなので、仮にもし当たったとしても、役ありのテンパイではないし、打点があるテンパイではないと考える。例えば、リーチのみのカン二筒のような愚形テンパイと読む。
しかし、開けられた手牌は七対子。

ともたけの二筒見逃しを見て、瀬戸熊はどう考えるのだろうか。
少なくとも、徳川さんに対するイメージは変わる。この人は色々な引き出しがあると頭にインプットする。
佐々木、ともたけも、これを見て瀬戸熊と同じ認識を持ったに違いない。
そうなれば、徳川さんのこの作戦は、見事成功したと言えるのではないだろうか。

相手にどう意識させるか。
この人は絶対に引っかけリーチをしないという人と戦うのと、引っかけリーチもなんでもありの人と戦うのでは、後者と戦うほうが戦いにくいのは間違いない。
そう思わせることで、相手に考えさせる幅を多くもたせることができる。
ただ、それが勝利に結びつくかはまた別物と私は考えるが。

ちなみにこれは余談だが、徳川さんは普段ロン2をプレイされたことはほとんどないが、この二筒を見逃すため、しっかりとオートでアガる機能を解除していたとのこと。
それに比べて、1回戦終了時、「耳が痛い・・」と、3名のプロが訴えてきたらしが、これはヘッドフォンをして対戦していたため、ロン2の効果音の音量が大きくてうるさかったということらしいが、普通は自分で音量を調節するとかしそうなものだが、今回のプロ3名は、まだガラケーを使っている機械音痴・・失礼、物を大切にする麻雀プロたちなので仕方なし。そんな彼らを横目に、徳川さんだけは平然としていたと聞いた。

話を戻そう。
瀬戸熊はこの後、ジリジリと点棒を削られ、22,900のラス目まで落ちてしまう。
南場の親番を迎えるも、佐々木に先手を取られる。

一万二万三万五万三索四索九索九索三筒南西西発  ドラ七索

落ち目の親をさばきに行って、あまりいい結果になることは少ないので、私などは仕掛けをためらってしまうが、佐々木は1枚目からでも落ち目の親はさっさと流しにいく。
今局は、今重なったところで、当然、2枚目の西はポン。

この仕掛けで、瀬戸熊に何が流れるかだが、

七万七万八万八万五索五索八索八索五筒六筒七筒南発

仕掛けなければ、六索四万二索東と有効牌はほとんど引かない。
しかし、佐々木の仕掛けで、八万八索を引き込み、

七万七万八万八万八万五索五索八索八索八索五筒六筒七筒  リーチ

ツモれば4,000オールからの勝負手になった。
私が恐れるのはまさにこの展開だが、佐々木はここで腹を括って攻め切る。

一万二万三万五万六万三索四索九索九索五筒  ポン西西西  ツモ五筒

ここでドラまたぎの九索は切りたくないからと、真っ直ぐ五筒を打ち抜く。
このあたりは、これまでの”ヒサトスタイル”を残していると言えよう。
無筋を切り飛ばして、四万七万待ちで追いつき、七万でツモアガる。見事押し切って見せた。
瀬戸熊は、またも同テンを今度は引き負ける。その心中や如何に。

ともたけがトップ目で迎えた南3局。親は佐々木。
佐々木がまた新スタイルを見せてくれる。

一万一万二万二万三万三万九万一索一索八索八索九索九索  ロン九万  ドラ一索

ヤミテンでトップ目のともたけから直撃。
これまで、七対子ドラドラをヤミテンにしている佐々木を見たことがなかったが、こんなヤミテンをするようになった。ここ最近では、連盟チャンネルでプロリーグも配信されるようになったが、佐々木の七対子ドラタンキのヤミテンや、このようなヤミテンを見る機会が増えた。

ちなみに、佐々木の捨ては、

二索 上向き三索 上向き五索 上向き四索 上向き六万 上向き五万 上向き四索 上向き二筒 上向き六索 上向き五筒 上向き六筒 上向き八万 上向き九筒 上向き

こうなっており、この河でリーチをする者は普通いない。
それでも佐々木はこれまで数多くリーチを打ち、そして失敗してきたのだろうと思う。
その経験が、佐々木を進化させているのではないだろうか。
こう書いていると、これまでの佐々木はまるで何も知らなかったかのように勘違いされそうだが、決してそんなことではなく、それらも当然踏まえてリーチのほうがメリットが大きいと判断し、これまでリーチをしてきたのだが、言うなれば、ツモれる時はタンキだろうとなんだろうとリーチで、出アガリしか期待できない時は、3面チャンでもヤミテンという、その選択の幅を広げたとでも言えばいいのだろうか、上手く説明できないが、とにかく勝つためにさらに進化したと言えることは間違いない。

オーラスは、ともたけがアガって2着となり、佐々木は2連勝となった。

2回戦成績
佐々木+23.8P  ともたけ+7.0P  徳川▲3.6P  瀬戸熊▲27.2P

2回戦終了時
佐々木+57.6P  ともたけ+17.5P  瀬戸熊▲31.5P  徳川▲43.6P

 

3回戦
起家から、ともたけ・佐々木・徳川さん・瀬戸熊

佐々木が2連勝したことで、あと1勝すればほぼ勝ちが決まってしまいそうな3回戦。
待ったをかけたのはともたけ。
ここまで2着2回と、佐々木に離されないよう粘っていたともたけが遂に爆発した。

六万七万八万五索六索三筒三筒  チー一索 左向き二索 上向き三索 上向き  カン東東東東  ロン七索  ドラ八索三筒

この12,000をきっかけに、

三万三万四万五万五万五索六索七索二筒二筒四筒五筒六筒  ロン四万  ドラ二筒白

佐々木のリーチを交わしこのアガリを決め、たった2局でトータルでもトップに踊りでた。

ともたけは、第一打から中途半端な打牌をしないというイメージだが、普通は、大きな手役を見ながら、ツモと相談しつつ、妥協しながらアガリを目指す。
それはやはり、自らがアガることで相手のアガリを阻止することができるからだ。
しかし、ともたけはそんなことは意に介さず、自分が考える理想形に向かい、手順無視で進めて行く。

私は、このインターネット麻雀選手権を見るまではそう思っていた。
いや、この観戦記を書くにあたって牌譜を見返すまでは。

ともたけは、この3回戦2回のアガリでトップに立つと、あとの局は、序盤の捨て牌が普通になっていることに気が付いた。

これは恐らく、まずは自らの状態を計り、ダメだと思った時は、大きな手を目指しながら、終盤まで局面を長引かせ、相手がミスすればアガリを狙い、そうでなければ、受けに入り相手のアガリを潰してしまう。
そして、今回の半荘のように自分がよくなったと思ったら、普通の手順に戻し手成りで打つ。
あくまで私の勝手な見解だが、局が始まる前に、すでに見切っているということだろう。
これがともたけ流の麻雀なのかもしれない。

そんなともたけだが、南1局、加点する大チャンスといえる配牌を貰った。

六万七万一索二索五索七索七索八索九索南南白白中  ドラ五索

第一打七万。しかし2巡目、佐々木から出た白を一鳴き。すぐに瀬戸熊に六索が下がる。
その後、八索を引き中切りとするのだが、私はここでドラの五索を切ってもいいかと思った。
もしくは、次巡四筒を引いたところで、一旦打五索とし、その後、手から四筒が出れば、四筒回りに関連牌があると見て、誰もホンイツだとは思わないかもしれな。
ペン三索も鳴けるかもしれないし、相手にもプレッシャーを与えることもできる。

四万五万六万六索七索三筒三筒四筒五筒五筒六筒六筒七筒  リーチ

そうこうしているうちに、徳川さんからリーチが入ってしまう。

一索二索五索七索七索八索八索九索南南  ポン白白白  ツモ一索

ともたけは少考後、打八索として放銃となってしまった。
このあたり、しっかりと攻め切る姿勢はともたけらしいと思うが、それにしてもメンゼンで手を進めていたらどうなっていたのだろうと考えるのは、ともたけも同じであろう。

序盤で失点し、後がない徳川さんだったが、何とかオーラスを迎えて29,800点の2着目まで盛り返していた。
瀬戸熊も3着目で親番を迎え、取りあえずは佐々木の3連勝は阻止できそうだ。
できれば、オーラスで1つでも着順を上げたいところであったが、3巡目、ともたけがピンフのテンパイであっさりと決着となった。

3回戦成績
ともたけ+40.0P  徳川4.8P  瀬戸熊▲14.7P  佐々木▲30.1P

3回戦終了時
ともたけ+57.5P  佐々木+27.5P  徳川▲38.8P  瀬戸熊▲46.2P

残すは2戦。徳川さんと瀬戸熊は後がなっくなった。
次にトップを取らなければ、優勝はないといっても過言ではないだろう。
瀬戸熊は、未だ”クマクマタイム”発動せず。

後半へ続く。

プロ雀士コラム/インターネット麻雀日本選手権2014観戦記前半 山井弘

早いもので、私がプロになって16年が経った。
今では第三次プロテストとなっているが、私が受験した当時は研修と呼ばれていた。
その卒業試験で、私は決勝まで進んだが準優勝で終わり、悔しい思いをしたことを今でも覚えている。
あれから16年。
随分と時間がかかったが、ようやく初めてタイトルを獲得することができた。
7月に、フランスはパリで行われた、第1回リーチ麻雀世界選手権。
この、初代世界チャンピオンとなった。
この大会に参加して感じたことは、世界でリーチ麻雀が広がりつつあるのはインターネットの影響が大きいということ。今や世界中で様々な情報を得ることができるインターネットで、多くの海外の人たちが、日本のネット麻雀をプレイしているということだ。
16年前は、このネットの世界で、麻雀の日本一を決めるなんて、想像すらしていなかった・・
今年も日本プロ麻雀連盟が、インターネットの各主要サイトに参加を呼びかけ、3月から予選がスタートした。
「ハンゲーム 麻雀4」では、勝ち上がってきたユーザー16名と日本プロ麻雀連盟のプロ16名が激突。
16名がハンゲーム代表という形で進出。
「ロン2」でも同様の予選が行われて、16名が本戦へと進出した。
本戦からは各卓上位2名通過のトーナメント形式。
私もベスト8まで駒を進めることができたが、ここで敗退してしまった。
※大会概要はこちら
インターネット麻雀日本選手権2014決勝へ勝ち上がったのは、
 
瀬戸熊直樹
100
現十段位であり、ここ最近の成績は凄まじく、鳳凰位は連覇も含め3回獲得。
十段位は現在3連覇中で、今年秋に4連覇を目指す。
このインターネット麻雀日本選手権の決勝は初で、瀬戸熊曰く、
『ネットで”クマクマタイム”が出るかどうかは分からないが、もし出せれば勝てる可能性もある』とのこと。
『ただ、普段の決勝とは違う雰囲気なので、どうなるのか予測できない』と語る。
『やっている内にわかってくるかもしれない』と、
決勝を何度も戦った瀬戸熊でさえも、ネットでの対戦は先の展開は読みづらいということだろう。
 
ともたけ雅晴
100
現A1リーガーで、7年前に、決勝進出回数14回目にして念願の鳳凰位を獲得。
翌年の防衛戦で、前原プロに敗れて以来、久しぶりの決勝進出となった。
もちろんインターネット麻雀日本選手権の決勝は初となる。
決勝常連のともたけは、久しぶりの決勝という舞台で、
『作戦はとくにないよ、普段通り戦う。いっぱい真ん中から切るからね』とコメントをくれたが、
そのコメント通り、真ん中の牌から切り飛ばして行くともたけの雀風は、高打点を見据えて最終形を描いたら、その形に向かって一直線に突き進む、攻撃型ではあるが、打点重視の面前攻撃型である。
したがって、手が進まなければ守りに入ることができるので、守備にも適している打法ともいえる。
 
佐々木寿人
100
インターネット麻雀日本選手権の決勝は2回目。
初開催の年に決勝まで進むも、「チームガラクタ」の総帥、前原雄大プロに敗れる。
今回はそのリベンジに燃え決勝まで進出するも、その前原プロはベスト8で敗退。
ちなみに「チームガラクタ」とは、前原、佐々木の2人だけのチームで、麻雀の形は美しくはなくガラクタのようだが、その強さからチームガラクタと言われるようになった。
『でたとこ勝負で展開次第。作戦は特になし』と、佐々木らしいコメント。
しかし、『でも、タイムラグを読みの材料にできるかもしれない』と勝つためには少しでも有利に戦えるよう隙は微塵もない。「チームガラクタ・部長」の意地を見せることができるのか。
 
徳川龍之介さん
100
もちろん本名ではなくニックネーム。ドラマの主人公の名前である。
私もちょうど、この名前の主人公が活躍していたドラマの世代だ。
ハンゲームから勝ち上がってきた徳川さんは、今回参戦するため愛知県三河市から東京までお越しになった。
普段は、IT関係のお仕事をされているようで、麻雀は休みの日に大会などあるとネットで打つことが多いとのこと。
お盆や暮れには、大学の友人たちと集まって、実際の牌を使って麻雀をすることもあるそうだ。
『決勝は半荘5回戦なので厳しいかも・・・でも、何とかトップとの点差を意識し、最後まで離されないようついていきたい。相手は強者なので、かき回したいです』と語る徳川さん。
これまで多くのプロを打ち破ってきた実力はいかに!?
以上の4名で、半荘5回戦の幕は切って落とされた。
100
 
 
1回戦
起家から、佐々木・瀬戸熊・徳川さん・ともたけ
いきなり先手を取ったのは徳川さんだった。
七万八万一索一索一筒一筒二筒五筒六筒東東白白  ドラ四筒
開始前のコメントで、
「プロは強いので、その3人が相手では、普通に打っていては勝ち目はない。とにかくかく乱して、先手を取っていきたい」と話してくれた徳川さんが、さっそく動いた。ここから佐々木の切った一筒をポン。
ここで私が驚いたのは、親である佐々木の対応だ。
まずは一筒ポンを受けたこの牌姿から、
五万四索五索八索八索四筒五筒五筒六筒六筒九筒九筒白  ツモ西
佐々木の選択は打九筒
この手牌で、東1局から対応している佐々木を見て、人は変わるものだなと思った。
以前の佐々木であれば、仕掛けが入っていようとリーチが入っていようと、開局に親番でそこそこの手牌が寄ってきていれば、真っ直ぐに西白と打ちぬいていたに違いない。
鳴り物入りでプロデビューして8年。
テレビ対局では結果を出してはいたが、プロリーグや十段戦などのタイトル戦ではいい結果が出せず、本人も自分のその戦い方について、いっぱい悩んだに違いない。
しかし、ここ最近では、プロリーグも快進撃を続け、ようやくA2、そしてA1へと、あと一歩のところまできている。その新しい佐々木寿人の戦い方がこのスタイルなのだろう。
徳川さんは、一索も鳴いて東白のシャンポンでテンパイ。
佐々木はその後、手は進み、
五万四索五索八索八索八索四筒五筒五筒六筒六筒西白  ツモ六索
ここでもまだ、西白も切らずに打五万とする。
そしてもう1人、ここにもしっかりと対応している者がいた。
一万二万七万八万九万七索九索七筒八筒九筒発中中  ツモ三万
ここから、テンパイ取らずの打中はともたけ。
しかも、アガリ牌である八索は、仕掛けている徳川さんの現物にもかかわらず発を切らずに対応する。
開局にこのテンパイを外す勇気は相当なものだと思う。
もし八索でアガリ逃したらと考えると、恐ろしくて私にはできないが、ここでともたけが発を切れば、当然、現物であろうと八索が出るメンツではないということなども含めての選択であろう。
それにしても、ここでのテンパイ外しは、それなりの勇気と覚悟が必要だと私は思う。
結局、ともたけは発を重ねて復活。
佐々木も最後は白西を切ればテンパイ、というところまで持ち込み、ここは指運で西を切って3人テンパイ。
実に見応えのある開局となった。
開局乗り遅れたかたに見えた瀬戸熊だが、東1局2本場、4巡目に早くもリーチが入る。
四万四万七万八万九万七索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒  リーチ  ドラ四筒
これを受けた佐々木の手牌。
二万三万二索三索四索九索九索三筒四筒五筒六筒七筒白  ツモ三筒
ここで白をリリースすると、これをポンはともたけ。
六万七万七万八万九万六筒六筒六筒西西  ポン白白白
瀬戸熊のリーチを交わしにいく。
しかし、一万八筒とツモ切ったあと、九筒を引き瀬戸熊に高め放銃となった。
痛い失点となったともたけだが、その影にもう一人痛いと思っている者がいた。佐々木だ。
ともたけの喰い下げた一万八筒は、佐々木のテンパイ牌、そして一発でツモアガリとなる牌であった。
佐々木は果たして、ともたけがツモ切るその牌を、どのような思いで見ていたのだろうか。
放銃となったともたけだが、次局、力強く倍満のツモアガリをする。
三万四万四万四万一索二索三索七筒八筒九筒  暗カン牌の背東東牌の背  リーチ  ツモ二万  ドラ一索九筒  裏東七筒
次局は、徳川さんが四暗刻の1シャンテンとなる。
二万三万三万五万五万五万六万六万三筒三筒三筒六筒六筒  ドラ二筒
しかしこれだけ真ん中の牌ばかりだと、他家に使われているケースが多いため、どうしても2鳴きにはしにくい。1枚目の六筒をポンしてテンパイ。
これを受けた佐々木は、4トイツから一気に北東と有効牌を引き込みテンパイ。
二万一索一索二筒二筒五筒五筒九筒九筒東東北北
捨て牌は、三万 上向き一万 上向き八索 上向き六万 上向き四万 上向き南白八万 上向き
1巡ヤミテンを選択するも、2枚切れの西を引き、ここは待ち替えせずツモ切りリーチ。
普段、地獄待ちを好む佐々木だが、この時はともたけが国士を作っていたため、4枚目の西があてにならないこともあり、何より捨て牌に迷彩が施されていることが二万タンキを選択した一番の理由であろう。
このリーチに飛び込んでしまったのは徳川さん。
一発で捕まり、裏まで乗って16,000点の放銃となってしまった。
南場に入り、南3局ラス目で迎えた徳川さんは、
100
 
このテンパイをするも、一旦、ヤミテンに構える。
すると、トップを虎視眈々と狙う瀬戸熊に、絶好のカン八筒が埋まり、こちらもヤミテン。
瀬戸熊は、三色を決めたあとは交わし手が多く、恐らくまだ本調子ではないと感じていたのではないだろうか。
だからこそのヤミテンなのだろう。本調子の瀬戸熊であれば、恐らく迷いなくリーチと発声していたに違いない。
徳川さんにしても、いくら三色の手替わりがあるからとはいえ、親でドラ1あれば、多少苦しい待ちでもリーチと行きたくなるのが心情というもの。
もし仮にここで徳川さんがリーチだと、恐らく瀬戸熊も追いかけリーチとなり、徳川さんは、またも一発で九万を掴む運命だった。しかし、ヤミテンにしていたことで、この九万引きで三面チャンへと手替わり、放銃を回避しここでリーチとなった。三色へ受けなかったのは、他家へのケアもあったかもしれないが、ここは点数的にも三色に受けてもらいたかった。
これを受け、瀬戸熊も追いかけるが、この同テンは流局となる。
100
 
もし徳川さんがヤミテンで、瀬戸熊が先制リーチだった場合はどうだろうか。
全体牌譜を見てもらえば分かるが、瀬戸熊が七筒切りリーチの場合、徳川さんは五筒八筒を打てるかどうかである。
瀬戸熊の河はマンズの上が通りそうなので、もしかしたら打九となった可能性もあった。
1回戦成績
佐々木+33.8P  ともたけ+10.5P  瀬戸熊▲4.3P  徳川さん▲40.0P
※順位点=1位+15.0P 2位+5.0P 3位▲5.0P 4位▲15.0P
 
2回戦
起家から、瀬戸熊・ともたけ・佐々木・徳川さん
佐々木が徳川さんとのリーチ合戦を制して東1局は先制。
迎えた東2局、徳川さんが技ありの七対子を決める。
六万六万二筒四筒四筒九筒九筒南南白白中中  ドラ九索
8巡目にこのテンパイでヤミテン。
親番のともたけは、
七索八索九索二筒三筒三筒六筒七筒七筒北北発発  ツモ六筒
こうなり七対子も見てここで打二筒となった。
誰もが仕方がないと思ったであろう。でも、どこが技ありなのと読者の方は疑問に思うかもしれない。
どこか手順で技があったのなら、そこを書いてくれと思うだろう。
しかし、手順は普通だった、七対子も自然にできたものだ。
徳川さんはこの二筒を見逃した。
なぜ見逃したのか、2回戦が終わって聞いてみた。
「1,600点ではアガる気はなかった、1回戦ラスだったので打点がほしかった。ドラ引きなどを待つつもだったが、ここで二筒が出たので、これ利用してアガリに結び付けようと思った」
まだ2回戦と考えれば、見逃しというリスクをここで背負うのは危険な気はするが、徳川さん自身が1回戦を打ってみた感触から、この3人相手では、普通に戦ったのでは勝てないのではないか、何か工夫をしないとダメなのではないかと判断した結果、見逃しという選択になったのだろう。
徳川さんのツモ切りリーチに対して、
四万五万九万九万四索五索五索六索六索七索五筒六筒七筒
同巡、このテンパイを入れていた瀬戸熊が、2巡後二筒を掴み放銃となった。
瀬戸熊はどちらにしても七万一万と無筋を押していたので、この二筒も放銃になったかもしれないが、明らかに二筒が切られてからのツモ切りリーチなので、仮にもし当たったとしても、役ありのテンパイではないし、打点があるテンパイではないと考える。例えば、リーチのみのカン二筒のような愚形テンパイと読む。
しかし、開けられた手牌は七対子。
ともたけの二筒見逃しを見て、瀬戸熊はどう考えるのだろうか。
少なくとも、徳川さんに対するイメージは変わる。この人は色々な引き出しがあると頭にインプットする。
佐々木、ともたけも、これを見て瀬戸熊と同じ認識を持ったに違いない。
そうなれば、徳川さんのこの作戦は、見事成功したと言えるのではないだろうか。
相手にどう意識させるか。
この人は絶対に引っかけリーチをしないという人と戦うのと、引っかけリーチもなんでもありの人と戦うのでは、後者と戦うほうが戦いにくいのは間違いない。
そう思わせることで、相手に考えさせる幅を多くもたせることができる。
ただ、それが勝利に結びつくかはまた別物と私は考えるが。
ちなみにこれは余談だが、徳川さんは普段ロン2をプレイされたことはほとんどないが、この二筒を見逃すため、しっかりとオートでアガる機能を解除していたとのこと。
それに比べて、1回戦終了時、「耳が痛い・・」と、3名のプロが訴えてきたらしが、これはヘッドフォンをして対戦していたため、ロン2の効果音の音量が大きくてうるさかったということらしいが、普通は自分で音量を調節するとかしそうなものだが、今回のプロ3名は、まだガラケーを使っている機械音痴・・失礼、物を大切にする麻雀プロたちなので仕方なし。そんな彼らを横目に、徳川さんだけは平然としていたと聞いた。
話を戻そう。
瀬戸熊はこの後、ジリジリと点棒を削られ、22,900のラス目まで落ちてしまう。
南場の親番を迎えるも、佐々木に先手を取られる。
一万二万三万五万三索四索九索九索三筒南西西発  ドラ七索
落ち目の親をさばきに行って、あまりいい結果になることは少ないので、私などは仕掛けをためらってしまうが、佐々木は1枚目からでも落ち目の親はさっさと流しにいく。
今局は、今重なったところで、当然、2枚目の西はポン。
この仕掛けで、瀬戸熊に何が流れるかだが、
七万七万八万八万五索五索八索八索五筒六筒七筒南発
仕掛けなければ、六索四万二索東と有効牌はほとんど引かない。
しかし、佐々木の仕掛けで、八万八索を引き込み、
七万七万八万八万八万五索五索八索八索八索五筒六筒七筒  リーチ
ツモれば4,000オールからの勝負手になった。
私が恐れるのはまさにこの展開だが、佐々木はここで腹を括って攻め切る。
一万二万三万五万六万三索四索九索九索五筒  ポン西西西  ツモ五筒
ここでドラまたぎの九索は切りたくないからと、真っ直ぐ五筒を打ち抜く。
このあたりは、これまでの”ヒサトスタイル”を残していると言えよう。
無筋を切り飛ばして、四万七万待ちで追いつき、七万でツモアガる。見事押し切って見せた。
瀬戸熊は、またも同テンを今度は引き負ける。その心中や如何に。
ともたけがトップ目で迎えた南3局。親は佐々木。
佐々木がまた新スタイルを見せてくれる。
一万一万二万二万三万三万九万一索一索八索八索九索九索  ロン九万  ドラ一索
ヤミテンでトップ目のともたけから直撃。
これまで、七対子ドラドラをヤミテンにしている佐々木を見たことがなかったが、こんなヤミテンをするようになった。ここ最近では、連盟チャンネルでプロリーグも配信されるようになったが、佐々木の七対子ドラタンキのヤミテンや、このようなヤミテンを見る機会が増えた。
ちなみに、佐々木の捨ては、
二索 上向き三索 上向き五索 上向き四索 上向き六万 上向き五万 上向き四索 上向き二筒 上向き六索 上向き五筒 上向き六筒 上向き八万 上向き九筒 上向き
こうなっており、この河でリーチをする者は普通いない。
それでも佐々木はこれまで数多くリーチを打ち、そして失敗してきたのだろうと思う。
その経験が、佐々木を進化させているのではないだろうか。
こう書いていると、これまでの佐々木はまるで何も知らなかったかのように勘違いされそうだが、決してそんなことではなく、それらも当然踏まえてリーチのほうがメリットが大きいと判断し、これまでリーチをしてきたのだが、言うなれば、ツモれる時はタンキだろうとなんだろうとリーチで、出アガリしか期待できない時は、3面チャンでもヤミテンという、その選択の幅を広げたとでも言えばいいのだろうか、上手く説明できないが、とにかく勝つためにさらに進化したと言えることは間違いない。
オーラスは、ともたけがアガって2着となり、佐々木は2連勝となった。
2回戦成績
佐々木+23.8P  ともたけ+7.0P  徳川▲3.6P  瀬戸熊▲27.2P
2回戦終了時
佐々木+57.6P  ともたけ+17.5P  瀬戸熊▲31.5P  徳川▲43.6P
 
3回戦
起家から、ともたけ・佐々木・徳川さん・瀬戸熊
佐々木が2連勝したことで、あと1勝すればほぼ勝ちが決まってしまいそうな3回戦。
待ったをかけたのはともたけ。
ここまで2着2回と、佐々木に離されないよう粘っていたともたけが遂に爆発した。
六万七万八万五索六索三筒三筒  チー一索 左向き二索 上向き三索 上向き  カン東東東東  ロン七索  ドラ八索三筒
この12,000をきっかけに、
三万三万四万五万五万五索六索七索二筒二筒四筒五筒六筒  ロン四万  ドラ二筒白
佐々木のリーチを交わしこのアガリを決め、たった2局でトータルでもトップに踊りでた。
ともたけは、第一打から中途半端な打牌をしないというイメージだが、普通は、大きな手役を見ながら、ツモと相談しつつ、妥協しながらアガリを目指す。
それはやはり、自らがアガることで相手のアガリを阻止することができるからだ。
しかし、ともたけはそんなことは意に介さず、自分が考える理想形に向かい、手順無視で進めて行く。
私は、このインターネット麻雀選手権を見るまではそう思っていた。
いや、この観戦記を書くにあたって牌譜を見返すまでは。
ともたけは、この3回戦2回のアガリでトップに立つと、あとの局は、序盤の捨て牌が普通になっていることに気が付いた。
これは恐らく、まずは自らの状態を計り、ダメだと思った時は、大きな手を目指しながら、終盤まで局面を長引かせ、相手がミスすればアガリを狙い、そうでなければ、受けに入り相手のアガリを潰してしまう。
そして、今回の半荘のように自分がよくなったと思ったら、普通の手順に戻し手成りで打つ。
あくまで私の勝手な見解だが、局が始まる前に、すでに見切っているということだろう。
これがともたけ流の麻雀なのかもしれない。
そんなともたけだが、南1局、加点する大チャンスといえる配牌を貰った。
六万七万一索二索五索七索七索八索九索南南白白中  ドラ五索
第一打七万。しかし2巡目、佐々木から出た白を一鳴き。すぐに瀬戸熊に六索が下がる。
その後、八索を引き中切りとするのだが、私はここでドラの五索を切ってもいいかと思った。
もしくは、次巡四筒を引いたところで、一旦打五索とし、その後、手から四筒が出れば、四筒回りに関連牌があると見て、誰もホンイツだとは思わないかもしれな。
ペン三索も鳴けるかもしれないし、相手にもプレッシャーを与えることもできる。
四万五万六万六索七索三筒三筒四筒五筒五筒六筒六筒七筒  リーチ
そうこうしているうちに、徳川さんからリーチが入ってしまう。
一索二索五索七索七索八索八索九索南南  ポン白白白  ツモ一索
ともたけは少考後、打八索として放銃となってしまった。
このあたり、しっかりと攻め切る姿勢はともたけらしいと思うが、それにしてもメンゼンで手を進めていたらどうなっていたのだろうと考えるのは、ともたけも同じであろう。
序盤で失点し、後がない徳川さんだったが、何とかオーラスを迎えて29,800点の2着目まで盛り返していた。
瀬戸熊も3着目で親番を迎え、取りあえずは佐々木の3連勝は阻止できそうだ。
できれば、オーラスで1つでも着順を上げたいところであったが、3巡目、ともたけがピンフのテンパイであっさりと決着となった。
3回戦成績
ともたけ+40.0P  徳川4.8P  瀬戸熊▲14.7P  佐々木▲30.1P
3回戦終了時
ともたけ+57.5P  佐々木+27.5P  徳川▲38.8P  瀬戸熊▲46.2P
残すは2戦。徳川さんと瀬戸熊は後がなっくなった。
次にトップを取らなければ、優勝はないといっても過言ではないだろう。
瀬戸熊は、未だ”クマクマタイム”発動せず。
後半へ続く。

第31期十段戦ベスト16B卓レポート ともたけ 雅晴

100

左から、中村毅 櫻井秀樹 三田不二夫 中尾多門

 

 

決勝という晴れ舞台に向けて残る階段は後二段。
しかし、ここからの一段一段を登って行く作業が大変で、今まで登ってきた階段とは訳が違うのである。
その階段を登ろうと挑戦するのは、中村毅、櫻井秀樹、三田不二夫、中尾多門というフレッシュな顔ぶれになった。

 

1回戦
起家から中村、中尾、三田、櫻井。

東1局、最初に先制パンチを放って、展開を有利に進めて行きたいと全員が思っている開局。
親の中村にドラがトイツのチャンス手が入る。
9巡目。

一万四万五万六万七万八万九万七索九索九索五筒六筒七筒??ドラ九索

ツモ五索一万を切ればテンパイするのだが、六索が既に2枚切られていることと、マンズの一気通貫への魅力が勝りテンパイ取らずでツモ切り。
しかし、四万七万に変われば三色、四索八索を引いてくればピンフになるのでテンパイを取っておくのも良いと思えたのだが…
次巡、四索をツモ切った時の中村の心境やいかに。

それでも、11巡目に待望の二万をツモってテンパイ。
七索を切ってリーチに行くのかと思いきや、自身の河にマンズが1枚も捨てられていないこともありヤミテンに。この七索を下家の中尾が3枚目ということもあり

三万四万一索一索二索二索三索三索六索八索九索北北

ここからペンチャンをチーして打四万

六索にくっ付けばホンイツ、二万一万を引けばチャンタという危険な仕掛けだが、上手く一万をツモってきてフリテンにならずにすむチャンタのテンパイ。

それを櫻井からアガリ2,000。
続く東2局、ここにもドラマが待っていた。
北家・中村8巡目。

五索七索九索九索東東南南西北北発発??ドラ三索

ツモ西、打五索でメンホン七対子のテンパイ。
9巡目、西家・櫻井

四万五万六万七万二索三索三索四索四索三筒七筒八筒九筒

ツモ五索三筒でリーチ。ドラが2枚入っているチャンス手である。
同巡、中村ツモ白で待ちの選択に。
七索はリーチ者櫻井の現物、白は2枚出てて俗にいう地獄単騎…
中村は少考して自身の得点アップ(白待ちだとホンローが付く)を選択。
次巡、櫻井がツモってきて河に置いたのは七索
これを見た中村の心中は…

100

 

結果は、13巡目に助かった櫻井が四万をツモって、2,000・3,900のアガリ。
櫻井にしてみれば、前局中途半端なところから放銃した分を回収しておつりのくるアガリである。
初戦のたった2局が終わっただけだが、今日の明暗を分ける2局に思えた。
その後も櫻井が加点して1回戦トップで終了。

100

 

1回戦結果
櫻井+25.4P  中尾+6.2P  中村▲7.7P  三田▲23.9P

 

2回戦
起家から、三田、中尾、櫻井、中村

1回戦では全く見せ場のなかった三田が、起家で5,800をアガってスタート。
一方、中村は前年度決勝進出者の意地とプライドで懸命に頑張るのだが、全て悪い方向へと空回り、終わってみれば1人沈みのラス。

2回戦結果
三田+25.1P  櫻井+9.2P  中尾+6.2P  中村▲40.5P

2回戦終了時
櫻井+34.6P  中尾+12.4P  三田+1.2P  中村▲48.2P

 

3回戦
起家から、三田、櫻井、中村、中尾

東1局、ドラ九万で南家・櫻井から先制リーチ。
親の三田が、ピンフドラ1で追いつくが、リーチと行かずヤミテン。
待ちは櫻井の現物ではないので、前回トップの勢いもありリーチと気迫を見せて貰いたかった。
結果は、三田がツモって1,300オール。

100

 

ツモったからという訳ではないが、他を引き離すチャンスを失ったようにも思えた。
この後も小場で回り、三田が逃げ切って2連勝。
中尾は痛恨の1人沈み。
それでも被害は最小限度で済んだので良かったところか。

100

 

3回戦結果
三田+11.8P  中村+5.3P  櫻井+1.5P  中尾▲18.6P

3回戦終了時
櫻井+36.1P  三田+13.0P  中尾▲6.2P  中村▲42.9P

 

4回戦
起家から、櫻井、中村、三田、中尾

そろそろゴールへ向けて、自分を有利な立場にしておきたいところ。
そんな思惑も絡んでか静かに場は進み、オーラスを迎えた時点でトップ目中尾+3.7、ラス目中村▲3.7という大接戦。

最後は、櫻井が中尾から2,000をアガリプラスになって終わる。

4回戦結果
中尾+9.7P  櫻井+4.5P  三田+1.5P  中村▲15.7P

4回戦終了時
櫻井+40.6P 三田+14.5P  中尾+3.5P  中村▲58.6P

 

5回戦
起家から、櫻井、三田、中村、中尾

いよいよ運命の最終戦。
現状では櫻井がやや有利で、中村は大トップが必要な苦しい立場。
それぞれの条件に向けて進んだ東3局。
親の中村は、ここはなんとしても連チャンして加点したいところだが、南家・中尾の手が早い。
6巡目。

一万二万三万四万六万七万四索五索六索九索九索一筒二筒??ドラ一万

絶好の三筒をツモって四万を切りテンパイ。
リーチをかけるもんだと思っていたらヤミテンを選択した。
9巡目にツモってきた三筒を手の中の三筒と入れ替えて、リーチと行く。
ここでは、ライバルに追い付き追い越す為にも、即リーチが良かったと思うのだが…

これを親番を死守したい中村から3,900でアガリ迎えた東4局、中尾の親番。
西家・三田

七万八万四索四索六索七索八索四筒五筒六筒六筒七筒八筒??ドラ四索

高目三色のテンパイ。
ヤミテンに構えていたのだが、ドラをツモってきて、そのドラをツモ切りしてリーチと行く。

六万をツモれば倍満で、当面のライバル中尾が親であるから、後の戦いが非常に有利にはなるのだが…
ここもリーチをかけるのなら即だろうし、ヤミに構えたのなら最後までそのままのほうが良かったのではないかと思う。

リーチをかければ櫻井、中村からは出てこない。
三田とすればドラを切ったのならテンパイをばらしてしまう、という思いもあったのか。
残念ながらツモることはできずに、中尾がしぶとくテンパイして連チャン。

続く1本場、三田がトイトイで仕掛ける。親の中尾もトイトイで対抗する。
途中、三田はポンしている三万を持ってきて加カンせずにツモ切ったのだが、万が一リンシャンでアガれば満貫になるのだからカンをしたほうが良かったのでは。

そして、半ばオリ気味の櫻井が中尾に3,900を献上したのだが、ここはしっかり止めて貰いたかった。
アガれて気分を良くした中尾は、続く2本場では、タンヤオドラ3をツモり、3本場ではリーチをかけて3,900は4.200オールと立て続けにアガって、勝ち上がりがほぼ当確。

ここまで安定した戦いをしてきた櫻井だが、事態が変わってしまい三田との点差も詰まってしまった。
そして迎えた南1局、親の櫻井がリーチをかけて、安目だが2,000オールをアガリ少し持ち直す。

南2局は、親の三田が3,900を中村からアガって連荘したのだが、続く1本場でテンパイできずに親を流してしまう。
南3局2本場、親は後のない中村。
だが、貰った配牌は今日を物語るように重い。対して、南家の中尾はタンヤオの軽い感じ。
中尾が局を進めるようタンヤオで仕掛ける。
途中、櫻井からドラがポンできて、山に3枚残りの四索七索待ちでテンパイ。

その後、回ってきた三田の手牌は

三万四万五万六万四筒五筒六筒東東南南中中

そしてツモ四索を堪え切れずにツモ切り。
中尾への7,700は8,300の放銃である。

1シャンテンではあるが、中尾へ打ってしまったら終わりなので、ここは我慢して止めて貰いたかった。
もちろん中尾がツモるかもしれないし、他者が放銃するかもしれない。が、自分が放銃してしまうのとは全然訳が違うのである。

長い戦いも最終局、勝ち上がりがほぼ決定している、中尾の親番だから1局勝負。
三田の条件は、櫻井から倍満以上直撃、中尾からは役満直撃か三倍満以上のツモアガリ。
中村に至っては、中尾、櫻井からダブル役満以上の直撃と非常に厳しい条件となってしまった。
局は淡々と進み、三田の1人テンパイで終了。

5回戦結果
中尾+58.5P  櫻井▲11.0P  三田▲14.9P  中村▲32.6P

最終結果
中尾+62.0P  櫻井+29.6P  三田▲0.4P  中村▲91.2P

以上となり、中尾と櫻井が準決勝へと勝ち上がった。
勝った2人は次の戦いに向けて準備をしっかりして貰い、負けてしまった2人はこの悔しさを糧に、より一層の努力をして貰いたいと思う。

以上、十段戦ベスト16B卓のレポートでした。

十段戦 レポート/第31期十段戦ベスト16B卓レポート ともたけ 雅晴

100

左から、中村毅 櫻井秀樹 三田不二夫 中尾多門

 
 
決勝という晴れ舞台に向けて残る階段は後二段。
しかし、ここからの一段一段を登って行く作業が大変で、今まで登ってきた階段とは訳が違うのである。
その階段を登ろうと挑戦するのは、中村毅、櫻井秀樹、三田不二夫、中尾多門というフレッシュな顔ぶれになった。
 
1回戦
起家から中村、中尾、三田、櫻井。
東1局、最初に先制パンチを放って、展開を有利に進めて行きたいと全員が思っている開局。
親の中村にドラがトイツのチャンス手が入る。
9巡目。
一万四万五万六万七万八万九万七索九索九索五筒六筒七筒??ドラ九索
ツモ五索一万を切ればテンパイするのだが、六索が既に2枚切られていることと、マンズの一気通貫への魅力が勝りテンパイ取らずでツモ切り。
しかし、四万七万に変われば三色、四索八索を引いてくればピンフになるのでテンパイを取っておくのも良いと思えたのだが…
次巡、四索をツモ切った時の中村の心境やいかに。
それでも、11巡目に待望の二万をツモってテンパイ。
七索を切ってリーチに行くのかと思いきや、自身の河にマンズが1枚も捨てられていないこともありヤミテンに。この七索を下家の中尾が3枚目ということもあり
三万四万一索一索二索二索三索三索六索八索九索北北
ここからペンチャンをチーして打四万
六索にくっ付けばホンイツ、二万一万を引けばチャンタという危険な仕掛けだが、上手く一万をツモってきてフリテンにならずにすむチャンタのテンパイ。
それを櫻井からアガリ2,000。
続く東2局、ここにもドラマが待っていた。
北家・中村8巡目。
五索七索九索九索東東南南西北北発発??ドラ三索
ツモ西、打五索でメンホン七対子のテンパイ。
9巡目、西家・櫻井
四万五万六万七万二索三索三索四索四索三筒七筒八筒九筒
ツモ五索三筒でリーチ。ドラが2枚入っているチャンス手である。
同巡、中村ツモ白で待ちの選択に。
七索はリーチ者櫻井の現物、白は2枚出てて俗にいう地獄単騎…
中村は少考して自身の得点アップ(白待ちだとホンローが付く)を選択。
次巡、櫻井がツモってきて河に置いたのは七索
これを見た中村の心中は…
100
 
結果は、13巡目に助かった櫻井が四万をツモって、2,000・3,900のアガリ。
櫻井にしてみれば、前局中途半端なところから放銃した分を回収しておつりのくるアガリである。
初戦のたった2局が終わっただけだが、今日の明暗を分ける2局に思えた。
その後も櫻井が加点して1回戦トップで終了。
100
 
1回戦結果
櫻井+25.4P  中尾+6.2P  中村▲7.7P  三田▲23.9P
 
2回戦
起家から、三田、中尾、櫻井、中村
1回戦では全く見せ場のなかった三田が、起家で5,800をアガってスタート。
一方、中村は前年度決勝進出者の意地とプライドで懸命に頑張るのだが、全て悪い方向へと空回り、終わってみれば1人沈みのラス。
2回戦結果
三田+25.1P  櫻井+9.2P  中尾+6.2P  中村▲40.5P
2回戦終了時
櫻井+34.6P  中尾+12.4P  三田+1.2P  中村▲48.2P
 
3回戦
起家から、三田、櫻井、中村、中尾
東1局、ドラ九万で南家・櫻井から先制リーチ。
親の三田が、ピンフドラ1で追いつくが、リーチと行かずヤミテン。
待ちは櫻井の現物ではないので、前回トップの勢いもありリーチと気迫を見せて貰いたかった。
結果は、三田がツモって1,300オール。
100
 
ツモったからという訳ではないが、他を引き離すチャンスを失ったようにも思えた。
この後も小場で回り、三田が逃げ切って2連勝。
中尾は痛恨の1人沈み。
それでも被害は最小限度で済んだので良かったところか。
100
 
3回戦結果
三田+11.8P  中村+5.3P  櫻井+1.5P  中尾▲18.6P
3回戦終了時
櫻井+36.1P  三田+13.0P  中尾▲6.2P  中村▲42.9P
 
4回戦
起家から、櫻井、中村、三田、中尾
そろそろゴールへ向けて、自分を有利な立場にしておきたいところ。
そんな思惑も絡んでか静かに場は進み、オーラスを迎えた時点でトップ目中尾+3.7、ラス目中村▲3.7という大接戦。
最後は、櫻井が中尾から2,000をアガリプラスになって終わる。
4回戦結果
中尾+9.7P  櫻井+4.5P  三田+1.5P  中村▲15.7P
4回戦終了時
櫻井+40.6P 三田+14.5P  中尾+3.5P  中村▲58.6P
 
5回戦
起家から、櫻井、三田、中村、中尾
いよいよ運命の最終戦。
現状では櫻井がやや有利で、中村は大トップが必要な苦しい立場。
それぞれの条件に向けて進んだ東3局。
親の中村は、ここはなんとしても連チャンして加点したいところだが、南家・中尾の手が早い。
6巡目。
一万二万三万四万六万七万四索五索六索九索九索一筒二筒??ドラ一万
絶好の三筒をツモって四万を切りテンパイ。
リーチをかけるもんだと思っていたらヤミテンを選択した。
9巡目にツモってきた三筒を手の中の三筒と入れ替えて、リーチと行く。
ここでは、ライバルに追い付き追い越す為にも、即リーチが良かったと思うのだが…
これを親番を死守したい中村から3,900でアガリ迎えた東4局、中尾の親番。
西家・三田
七万八万四索四索六索七索八索四筒五筒六筒六筒七筒八筒??ドラ四索
高目三色のテンパイ。
ヤミテンに構えていたのだが、ドラをツモってきて、そのドラをツモ切りしてリーチと行く。
六万をツモれば倍満で、当面のライバル中尾が親であるから、後の戦いが非常に有利にはなるのだが…
ここもリーチをかけるのなら即だろうし、ヤミに構えたのなら最後までそのままのほうが良かったのではないかと思う。
リーチをかければ櫻井、中村からは出てこない。
三田とすればドラを切ったのならテンパイをばらしてしまう、という思いもあったのか。
残念ながらツモることはできずに、中尾がしぶとくテンパイして連チャン。
続く1本場、三田がトイトイで仕掛ける。親の中尾もトイトイで対抗する。
途中、三田はポンしている三万を持ってきて加カンせずにツモ切ったのだが、万が一リンシャンでアガれば満貫になるのだからカンをしたほうが良かったのでは。
そして、半ばオリ気味の櫻井が中尾に3,900を献上したのだが、ここはしっかり止めて貰いたかった。
アガれて気分を良くした中尾は、続く2本場では、タンヤオドラ3をツモり、3本場ではリーチをかけて3,900は4.200オールと立て続けにアガって、勝ち上がりがほぼ当確。
ここまで安定した戦いをしてきた櫻井だが、事態が変わってしまい三田との点差も詰まってしまった。
そして迎えた南1局、親の櫻井がリーチをかけて、安目だが2,000オールをアガリ少し持ち直す。
南2局は、親の三田が3,900を中村からアガって連荘したのだが、続く1本場でテンパイできずに親を流してしまう。
南3局2本場、親は後のない中村。
だが、貰った配牌は今日を物語るように重い。対して、南家の中尾はタンヤオの軽い感じ。
中尾が局を進めるようタンヤオで仕掛ける。
途中、櫻井からドラがポンできて、山に3枚残りの四索七索待ちでテンパイ。
その後、回ってきた三田の手牌は
三万四万五万六万四筒五筒六筒東東南南中中
そしてツモ四索を堪え切れずにツモ切り。
中尾への7,700は8,300の放銃である。
1シャンテンではあるが、中尾へ打ってしまったら終わりなので、ここは我慢して止めて貰いたかった。
もちろん中尾がツモるかもしれないし、他者が放銃するかもしれない。が、自分が放銃してしまうのとは全然訳が違うのである。
長い戦いも最終局、勝ち上がりがほぼ決定している、中尾の親番だから1局勝負。
三田の条件は、櫻井から倍満以上直撃、中尾からは役満直撃か三倍満以上のツモアガリ。
中村に至っては、中尾、櫻井からダブル役満以上の直撃と非常に厳しい条件となってしまった。
局は淡々と進み、三田の1人テンパイで終了。
5回戦結果
中尾+58.5P  櫻井▲11.0P  三田▲14.9P  中村▲32.6P
最終結果
中尾+62.0P  櫻井+29.6P  三田▲0.4P  中村▲91.2P
以上となり、中尾と櫻井が準決勝へと勝ち上がった。
勝った2人は次の戦いに向けて準備をしっかりして貰い、負けてしまった2人はこの悔しさを糧に、より一層の努力をして貰いたいと思う。
以上、十段戦ベスト16B卓のレポートでした。

第31期十段戦ベスト16A卓レポート 瀬戸熊 直樹

100

左から、沢崎誠 森下剛任 森脇翼 一井慎也

 

沢崎誠vs森脇翼vs一井慎也vs森下剛任

昨年の決勝進出者沢崎はここからの登場。
森下王位は、九段戦からの階段を登っての進出。
森脇、一井は、五段戦と四段戦からの勝ち上がり組。決勝までの階段はあと2つ。

単純確率で行けば、2分の1が2回だから25%である。
数字だけ見ると、なんとなく決勝が見える位置に来た感じはする。

しかし、僕自身、三、四段の頃、数回このベスト16、ベスト8で敗れてきている。
相手うんぬんより、勝ち上がる難易度は、このステージは格段に厳しい。
それは、気持ちが前のめりになり、勝ちたい意識が予想以上に大きくなる為だと思っている。
「負けられない戦い」の難しさ。
さらに、今期からは、このベスト16からニコ生による放送。
気負うなという方が難しいだろう。
この事を克服した者が、勝ち上がるような気がしていた。

1回戦、2回戦と、沢崎・一井が、交互に1・2着を取り合った。
沢崎の落ち着きようは当たり前だが、一井の落ち着きぶりには、正直びっくりさせられた。

 

100

 

やはり新人の頃、テレビ対局を経験していたからであろうか。
反対に、心配していた気負いがモロに出ていたのが、森下王位。
「チャンスを逃したくない」の気持ちがちょっと強く出ていたように、僕の目には映った。

 

100

 

連盟の名物男、森脇は、いつも通りに映っていたが、森脇をよく知っている僕からすると、良い意味で、上品すぎる感じがしたのがちょっと物足りない。

3回戦以降に期待したいと思った。

放送でも話したように、森脇ほどエピソードを抱えている人物はいない。
一番有名な話は、ご存じの方も多いが、今から20年ほど前に、試験会場のエレベーターで、当時の試験官、故安藤満プロと乗り合わせ、安藤プロを同じ受験生だと思い、肩をたたきながら「今日は頑張ろうぜ」と言ったエピソード」だが、他にもこんな事があった。

あるタイトル戦で、森脇が当時のトッププロのリーチを受けてマチを一点読み。
無筋を何枚も飛ばし、同じ単騎待ちで流局させる事に成功した。
テンパイノーテンの公開時に、森脇が12枚だけ公開し、なかなか1枚を開けようとしない。
数秒間の沈黙の後、1枚をパタリと倒したシーンがあった。
プロのマナーとしては最悪だが、なんて面白い人だろうと僕は思った。

3回戦以降、森脇のそんなシーンが見られたら、勝機もあるのだがと考えながら解説をしている僕がいた。

3回戦、森脇が突如暴れ始める。
何かが吹っ切れたかのように、次々とアガリ出し、60~70ポイント差つけられていた、一井、沢崎を追い始める。
そして、森脇最大の長所、勘の鋭さも見せだすようになる。

4万点超えで迎えた、南場の親番、5巡目。

五万五万五万六万六万六万七万四索四索五索六索  ポン東東東  ドラ五万

ノータイムで打七万。8割の人が打四索としそうな場面。あっさり森下から四索がでて、アガリとなる。
その後展開も味方し、沢崎をラスにする事に成功。
70ポイント近くあった差を、15ポイントまで縮め、残り2回につなぐ事となった。

 

100

 

正念場の4回戦。やはり沢崎は強かった。
このメンバーでは、1枚も2枚も違って見えた。

3回戦のお返しとばかりに、次々とアガリ、5万点をオーバー。
最終戦を待たずに、勝ちをほぼ手中に収めてしまう。

 

100

 

最後のイスは、森脇か一井に。
共に2万点で迎え、両者のポイント差は40P(一井が上)
森脇は、2局で浮きに廻れば、最終戦に繋ぐ事ができる。
そんな森脇の願いが通じたのか、8巡目に跳満テンパイ。

二万三万四万六万七万八万九万  ポン南南南  ポン中中中  ドラ四万

ダブ南中、ホンイツ、ドラ1。
マンズはまだあまっていないが、当然、捨て牌はホンイツ。出アガリは厳しいか。
運命のいたずらか、ライバル西家・一井も手牌が育ってしまう。

一万二万三万四万二索三索四索五索六索八索八索三筒四筒  ツモ七索

一万。勝負となった。
親の沢崎が、北家・森下から出た2枚目の九筒をポンしてテンパイ。

二万二万八万八万七索七索七索発発発  ポン九筒 上向き九筒 上向き九筒 上向き

下りポンなので、チーした形と同じだ。
一井がツモっていたはずの六万が森下に。
一井は打っていただろうか、打っていれば森脇と並んでいたはずだった。
次の一井のツモは当然のように二筒

最終戦をまたずして、沢崎、一井が勝ち上がりを決めたシーンであった。

森下が九筒を合わせたのも必然。沢崎が鳴いたのも必然。
やはり森脇に勝ち運はなかったように思う。

終了後、森脇に「また飯いこうぜ!」と言われた。
森脇が負けた後によく言うセリフも聞けた。
「やっぱりオレ、ヘタだわ」

うーん、決勝で対戦できる事を楽しみにしていただけに、残念。
でも「カッコ良かったです。森脇さん。お疲れさまでした」

十段戦 レポート/第31期十段戦ベスト16A卓レポート 瀬戸熊 直樹

100

左から、沢崎誠 森下剛任 森脇翼 一井慎也

 
沢崎誠vs森脇翼vs一井慎也vs森下剛任
昨年の決勝進出者沢崎はここからの登場。
森下王位は、九段戦からの階段を登っての進出。
森脇、一井は、五段戦と四段戦からの勝ち上がり組。決勝までの階段はあと2つ。
単純確率で行けば、2分の1が2回だから25%である。
数字だけ見ると、なんとなく決勝が見える位置に来た感じはする。
しかし、僕自身、三、四段の頃、数回このベスト16、ベスト8で敗れてきている。
相手うんぬんより、勝ち上がる難易度は、このステージは格段に厳しい。
それは、気持ちが前のめりになり、勝ちたい意識が予想以上に大きくなる為だと思っている。
「負けられない戦い」の難しさ。
さらに、今期からは、このベスト16からニコ生による放送。
気負うなという方が難しいだろう。
この事を克服した者が、勝ち上がるような気がしていた。
1回戦、2回戦と、沢崎・一井が、交互に1・2着を取り合った。
沢崎の落ち着きようは当たり前だが、一井の落ち着きぶりには、正直びっくりさせられた。
 
100
 
やはり新人の頃、テレビ対局を経験していたからであろうか。
反対に、心配していた気負いがモロに出ていたのが、森下王位。
「チャンスを逃したくない」の気持ちがちょっと強く出ていたように、僕の目には映った。
 
100
 
連盟の名物男、森脇は、いつも通りに映っていたが、森脇をよく知っている僕からすると、良い意味で、上品すぎる感じがしたのがちょっと物足りない。
3回戦以降に期待したいと思った。
放送でも話したように、森脇ほどエピソードを抱えている人物はいない。
一番有名な話は、ご存じの方も多いが、今から20年ほど前に、試験会場のエレベーターで、当時の試験官、故安藤満プロと乗り合わせ、安藤プロを同じ受験生だと思い、肩をたたきながら「今日は頑張ろうぜ」と言ったエピソード」だが、他にもこんな事があった。
あるタイトル戦で、森脇が当時のトッププロのリーチを受けてマチを一点読み。
無筋を何枚も飛ばし、同じ単騎待ちで流局させる事に成功した。
テンパイノーテンの公開時に、森脇が12枚だけ公開し、なかなか1枚を開けようとしない。
数秒間の沈黙の後、1枚をパタリと倒したシーンがあった。
プロのマナーとしては最悪だが、なんて面白い人だろうと僕は思った。
3回戦以降、森脇のそんなシーンが見られたら、勝機もあるのだがと考えながら解説をしている僕がいた。
3回戦、森脇が突如暴れ始める。
何かが吹っ切れたかのように、次々とアガリ出し、60~70ポイント差つけられていた、一井、沢崎を追い始める。
そして、森脇最大の長所、勘の鋭さも見せだすようになる。
4万点超えで迎えた、南場の親番、5巡目。
五万五万五万六万六万六万七万四索四索五索六索  ポン東東東  ドラ五万
ノータイムで打七万。8割の人が打四索としそうな場面。あっさり森下から四索がでて、アガリとなる。
その後展開も味方し、沢崎をラスにする事に成功。
70ポイント近くあった差を、15ポイントまで縮め、残り2回につなぐ事となった。
 
100
 
正念場の4回戦。やはり沢崎は強かった。
このメンバーでは、1枚も2枚も違って見えた。
3回戦のお返しとばかりに、次々とアガリ、5万点をオーバー。
最終戦を待たずに、勝ちをほぼ手中に収めてしまう。
 
100
 
最後のイスは、森脇か一井に。
共に2万点で迎え、両者のポイント差は40P(一井が上)
森脇は、2局で浮きに廻れば、最終戦に繋ぐ事ができる。
そんな森脇の願いが通じたのか、8巡目に跳満テンパイ。
二万三万四万六万七万八万九万  ポン南南南  ポン中中中  ドラ四万
ダブ南中、ホンイツ、ドラ1。
マンズはまだあまっていないが、当然、捨て牌はホンイツ。出アガリは厳しいか。
運命のいたずらか、ライバル西家・一井も手牌が育ってしまう。
一万二万三万四万二索三索四索五索六索八索八索三筒四筒  ツモ七索
一万。勝負となった。
親の沢崎が、北家・森下から出た2枚目の九筒をポンしてテンパイ。
二万二万八万八万七索七索七索発発発  ポン九筒 上向き九筒 上向き九筒 上向き
下りポンなので、チーした形と同じだ。
一井がツモっていたはずの六万が森下に。
一井は打っていただろうか、打っていれば森脇と並んでいたはずだった。
次の一井のツモは当然のように二筒
最終戦をまたずして、沢崎、一井が勝ち上がりを決めたシーンであった。
森下が九筒を合わせたのも必然。沢崎が鳴いたのも必然。
やはり森脇に勝ち運はなかったように思う。
終了後、森脇に「また飯いこうぜ!」と言われた。
森脇が負けた後によく言うセリフも聞けた。
「やっぱりオレ、ヘタだわ」
うーん、決勝で対戦できる事を楽しみにしていただけに、残念。
でも「カッコ良かったです。森脇さん。お疲れさまでした」

第109回:山井 弘

WorldRiichiChampionship2014(WRC,2014)
なんとも日本人には見慣れない横文字のタイトル。
日本語に直せば「第1回リーチ麻雀世界選手権」だが、個人的にはWRCという響きの方が好きだ。
ちょっと大げさかもしれないが、私の印象では野球の(WBC)が一番ピンときた。
2006年に行われた第1回大会は、日本中に感動を与え、私自信も興奮したのを覚えている。

麻雀となると個人戦で、野球やサッカーのようにはいかないが、それでもリーチ麻雀の先進国は日本でなければならないというプレッシャーは誰もが感じていたと思う。

現地は30度を超える猛暑日が続き、冷房など全くない中での過酷な試合が4日間続いた。
そんな環境が更にそう思わせたのかもしれないが、予選で敗退したほとんどの選手が、残った日本人に勝って欲しい。そんな心境だったと思う。

そして、期待通りにベスト16には日本人が13人残り、決勝は4人全員が日本人という第1回大会にして快挙ともいえる活躍ぶりを見せた。

余韻に浸るかのように、私は当時を振り返りながら、車で四谷に向かっていた。
そう。世界チャンピオン山井弘にインタビューをするために。

今回は私、井出康平がインタビュアーをさせて頂きました。
山井プロとは、勉強会などで麻雀を打つ機会が多いのですが、個人的にはメンタルコントロールや読みに長けてるプレイヤーだと思っている。その長けてる部分が試合でどのように生かされたのか。その辺りを中心に聞いていきたいと思います。自分の今後の為にも(笑)

 

Q.大会の印象

井出「山井さん、今回は本当におめでとうございます!」

山井「ありがとう!」

井出「まず最初にお伺いしたいのが、パリに行く前の大会のイメージと、始まってからの大会のイメージってどうでしたか?」

山井「今回ね、日本のリーチ麻雀が大会ルールで採用されているわけだけど、麻雀自体は広まって歳月はたってるけど、リーチ麻雀自体はまだ広まって間もないんだよね。だから、どのくらいのレベルかっていうのはすごく気になってたよ。」

井出「実際どうでした?」

山井「実際はイメージしてたより高かったですね。今回参加された海外の選手の中で、日本のネット麻雀でプレイされている方がかなりいらしたんだよね。」

井出「僕もそれすごく驚きました!」

山井「正直思った以上にしっかりしてたね。今回の大会は手積みでやったんだけど、進行や打牌スピードをかなり心配してたんだ。そっちも全然違和感なくて驚きましたね。」

井出「僕は荒さんや沢崎さんと同卓したんですが、手積みのスピードが半端なく早かったのが一番ビックリしましたけどね(笑)」

山井「そうだね(笑)ベテランは手積みの時代からやってるからね(笑)」

 

Q、最初の試練

井出「トーナメントを勝ち抜いた山井プロですが、ベスト32がかなりきつかったのではないでしょうか?」

山井「基本的には全部きつかったよ。予選のほうは全体4位で通過して、かなり手応えもあったんですよ。そんな中、ベスト32で気持ちが逃げちゃったんだよね。」

井出「逃げたとは?」

山井「勝ちたい欲に負けて、軽い仕掛けをしてしまったんだよね。そこからバランス崩して、次局に鳴いてアガリ牌を流して、外人の選手が切ったその牌が協会の大崎プロの四暗刻単騎に放銃になってしまったんですよ。」

井出「役満ですか!?」

山井「もっと前に自分のアガリもあったし、鳴かなければアガれたし。やっぱり気持ちが逃げに入ったらダメだね・・・そういうのは何度も経験してるのに、ここまできたら勝ちたいって欲が出てきちゃうんだよね。今回、宿泊しているホテルの部屋が森山会長と同部屋だったんですよ。」

井出「そうでしたよね」

山井「ベスト32の前日の夜、眠りにつく前に会長から、『逃げるような軽い仕掛けはしないで、普段どうりやれば大丈夫だ』ってアドバイスをもらってたんですよ。だから余計やってしまったなーって。」

井出「でも逆に、そこで気が引き締まったんじゃないですか?」

山井「そうだね。その1回戦が3着だったんだけど、2着抜けだから1回戦に2着だったともたけさんを抜けば勝ち上がりだから、そんなに気負いみたいのはなかったんだけどね。でも、いきなりともさんに4,000オールをひかれて苦しかった。でも1回戦があってかえって気持ちを切り替えられたのがよかった。」

井出「なんと、四暗刻をアガった大崎プロを交わして、ともたけプロと2人で勝ち上がりになったんですよね。」

山井「奇跡的に勝てたけど、本当に逃げるのはダメだなと改めて感じた試合でしたね。」

 

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Q、世界一へ

井出「そしてトーナメントも勝ち上がり、決勝へと駒を進めるわけですが、とても印象的だったのが試合前の精神統一ともいえるような行動ですね。誰とも会話せずに、飯も食わずに1人でいましたよね?」

山井「あれはね、そうゆう部分(精神統一)もあるんですが、3日間猛暑の中戦ってきて体力がかなり消耗してたんで、とにかく脳と体を休めたかったんですよ。とにかくハードでしたから。森山会長が日本からユンケルを4日分持ってきてたんですが、会長が予選敗退になっちゃったんで、残り2本のユンケルを僕にくれたんですよ。会長も汗だくになりながらも栄養補給してなんとかやってきたくらいキツイのに、僕が残ったんでかなり気を使って頂きました。」

井出「おにぎりたべるか?とか、気を使ってくれてましたよね。」

山井「そうですね。本当に感謝してます。」

井出「さあ、試合の方ですが、結果から言うとトップスタートと、世界一に向けて好発進した訳ですが」

山井「1回戦はね、色々あったんですよね~」

井出「色々?」

山井「スタートは西島さんがよかったんですよ。いきなり満貫スタートでね。」

井出「そうですね。やはりマスターズからの勢いってあるんだなーって思いましたもん。」

山井「そのよかった西島さんが仕掛けていったんですが、その鳴きで僕が跳満をアガるんですよ。そこから親でも連チャンできてかなり好感触だったんだよね。」

井出「先程のトーナメントの話しでも出ましたが、鳴きって局面をガラッと変えるもんなんですね。」

山井「やっぱり、状態が良い時の軽い仕掛けは、相手に付け入るチャンスを与えてしまう事が多いよね。そこをモノにできたので、感触はかなりよかったんですが…」

井出「ですが?」

山井「その親番での連チャン中に、取り出す前に上家の一番左端の牌がポロっとこぼれちゃったんですね。それでサイコロ振ったら対3が出たわけですよ。」

井出「カンドラって事ですね?」

山井「そうなんだよ。すごい重要な部分なんで、審判の方を呼んで裁定をお願いしたら、振り直しになっちゃってね。」

井出「流れ論者にとっては嫌な中断ですね(笑)」

山井「そのやり直しの局に、桐山さんに跳満を引かれまして…」

井出「うわっ!あるあるじゃないですか(笑)」

山井「そこで思ったのがね、この先この出来事を意識しちゃいけないって。たとえ着順が何着になっても、このことを引きずらないようにしようと考え、そう強く心に決めました。更に気持ちの切り替えで、この半荘はリセットで(体勢など)2着でも良しと。かなり警戒して、より謙虚な気持ちに切り替えました。」

井出「それを踏まえると、このトップは内心かなりホッとしたんじゃないですか?」

山井「そうですね。ホッとしましたね。絶対に引きずらないって心に強く決めたのがよかったかな。やっぱりメンタルですからね。」

井出「そして最終戦なんですが、道中苦しい戦いを強いられ、オーラス大接戦になりました。」

山井「決勝戦はそうなりがちだよね。だから頭の中ではシミュレーションがかなりできてたつもりでしたよ。西島さんとの競りで、桐山さんは倍満ツモ、西川さんは親なのでアガリ続けると。」

井出「そんな中、白を鳴いて終わらせに行くのですが、印象的だったのがこの形。」

七万七万九万一筒二筒二筒七筒九筒九筒北北  ポン白白白

井出「観戦していたプロのかなりが七万と答えていた中、山井プロが出した答えが九万切りなんですよね。」

山井「選択としては九万切るか七筒切るかでした。まずは一局勝負なのでポン材を多く残したい。更に、上家の桐山さんが倍満ツモ条件なので、手が入らなかったら親に連チャンしてもらいたい局面なんですね。そうなるとチーはよほどの事がないとできないと判断しました。ならばポン材をより多く持ちたいってね。」

井出「その思考だと、より端を固定して七筒を切りそうなんですが?」

山井「これも上家の桐山さんの条件や立場が加味されてて、七筒切りのロスである八筒はかなり痛いですよね?だけど九万切りのロスの八万は、フリテンに構えても桐山さんから九万を鳴かせてもらえる可能性が高いと。」

井出「あっ、!そうですね!」

山井「それらを踏まえて打九万としました。」

井出「あの大一番で、そんな冷静な判断をよくできましたね。やはり経験ですか?」

山井「普段からアガリ競争のような、一局勝負の練習は決勝用にやってますからね。」

井出「そうなんですか!?」

山井「女流研修なんかで、そういう練習を教えたりしてますからね。」

井出「なるほど!やはり普段から決勝をシミュレートした練習というのは大事ですね。いきなりですべてを把握するのは大変ですもんね。」

山井「まあ、それでも最初七筒に手がかかったのは、冷静ではなかったのかもしれないね(笑)」

井出「その局は、親の西川プロからリーチが入り、山井プロもテンパイ。この局で終わらそうと気合の全面勝負になりましたが、親に放銃すると次局の条件がかなりきつくなるのですが、その辺りはどうだったんですか?」

山井「あの状況は、自分がアガらないと優勝では終わることができない状況なんで、どこかでいかなければいけない。もう仕掛けた時から、この局で終わらせるつもりだったのでいききるつもりでした。最悪放銃になっても次がありますからね(西川の連チャンで)」

井出「結果は、西川プロの4,000オールツモとなりましたが、内心ちょっとホッとしたんじゃないんですか?(笑)」

山井「してないしてない(笑)ここで終わらせたかったのが本音だよ。」

井出「西川プロが粘りに粘り、西川プロももうポイント的には満貫ツモ圏内くらいにはきてて、動きのなかった桐山プロも、倍満ツモから跳満ツモまで条件が緩和されるという大接戦になっていくのですが、配牌を見た瞬間、ほとんどの人が西島さんの優勝を確信したくらい、西島プロと山井プロの配牌には開きがありました。」

山井「最後もね、鳴きに助けられた感覚がありましたね。」

井出「西川プロの仕掛けですね。」

山井「あの仕掛けで急所の八万を引き入れて、手牌がグッと引き締まって動ける形になったので、もしかしたらという思いはありました。」

井出「1フーロして間もなく、すぐにアガリ牌が打たれたわけですが、どういう心境でしたか?」

山井「頼むから頭ハネだけはしないでくれって(笑)それだけ願っていたら、周りの大歓声が聞こえてきて、あぁ、終わったんだなって。」

井出「ものすごい歓声でしたもんね!」

山井「あの瞬間にね、本当に優勝してよかったなって思いました。今回、初めて海外での大会ということもあり、色々不安もあったんですが、この旅を通じて参加した連盟の選手が一つになっていってる感じがして、優勝したのは僕だけど、なんかみんなで掴んだ勝利みたいな感覚はありましたね。」

井出「プレイヤーに専念できてた僕らとは違って、山井プロは素材の写真を撮ったり、全体の連絡係りなどと色々な面で貢献してましたからね。そうゆう所も含めて、みんなの声援に繋がった感じはありました。」

山井「泣いて喜んでくれた方たちもいて、本当に嬉しかった。そうゆう姿を見た時に、今回の大会の不安は消し去り、参加して本当によかったって思いましたね。」

井出「森山会長は、プレッシャーを感じてか、怖くて見れないと外で1人待機してたんです。優勝が決まったって、みんなで報告に行ったんですが、山井さんが勝ちました!って言った瞬間、見たことのないようなガッツポーズをして大はしゃぎでしたからね(笑)あれを見た瞬間、僕もグッとくるものがありましたね。」

山井「同じ部屋っていうのもあったしね。会長が喜んでくださったのも本当に嬉しかったですね。」

井出「はしゃぎすぎて、膝を強打し悶絶してたのは内緒にしておきましょう(笑)」

 

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Q,世界チャンピオンとして

井出「晴れて世界チャンピオンになったわけなんですが、これから世界チャンピオンとしての抱負などをお聞かせください。」

山井「初代の世界チャンピオンという事なので、プロのプレイヤーとしてはこのチャンスを生かしたいですね。それと同時に責任も出てきますから、世界チャンピオンの名に恥じないように、今まで以上に精進していかないととは思ってます。」

井出「確かに山井プロの発言などは、今後かなりの影響力があるでしょうからね。」

山井「もっともっと深い部分で麻雀を追求していかないとね。それに自分の麻雀というものをより多く伝えていけたらと思ってます。」

井出「なかなか普通の人には味わえないプレッシャーが付きまとうとは思いますが?」

山井「それもプロとして幸せな事だと思うよ。そのプレッシャーと良い意味で付き合って、向き合っていけたらと思ってます。」

井出「今日は本当にお忙しい中、ありがとうございました!」

山井「こちらこそありがとうございました。井出君も次のラスベガス頑張って(笑)」

今回のインタビューを終えて、トッププレイヤーの自覚とも言える雰囲気がより強くなったという印象を受けた。山井プロの解説などを聞いていて、正直なかなか理解できない方もいると思っている。それは、なぜか?目に見えない部分だからである。

基礎を終え、勝てる仕組みを理解した後、この目に見えない部分の追求に傾かせるのがプロの必須条件だと思っている。今巷で言われている「デジタル」という言葉の逆とも言える山井プロだが、基礎があったうえで、目に見えない部分を追っているのは誤解がないように記しておきたい。

最近個人的に思うことだが、「この対局で負けたら全てを失います。」という対局があったら皆さんはどうするだろうか?「数字的にはこっちが得だから」という理由で決断できるだろうか。

生き物には決断するという優れた才能が備わってるのに、コンピューターのような数字的根拠だけに身を委ねられるのか?出来るという方もいるかもしれないが、プロとしてそれでは味気ないと自分は思う。

きっと山井プロは、苦しみながら歩んできた道を信じて、自分の直感で悔いなく麻雀プロとして散れるだろう。そう思えるような選択、決断の稽古を日々積んでいるのだと思う。
後輩である僕らに厳しく指導してくださる背景には、そんな思いがあると思えてならない。

山井プロがチャンピオンになって心からよかったと思う。
プレイヤーとして悔しい気持ちもあるが、素直に思うそう思えるのは、
山井プロが伝えていってくれるのはきっと「麻雀」だと信じているからだ。

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プロ雀士インタビュー/第109回:山井 弘

WorldRiichiChampionship2014(WRC,2014)
なんとも日本人には見慣れない横文字のタイトル。
日本語に直せば「第1回リーチ麻雀世界選手権」だが、個人的にはWRCという響きの方が好きだ。
ちょっと大げさかもしれないが、私の印象では野球の(WBC)が一番ピンときた。
2006年に行われた第1回大会は、日本中に感動を与え、私自信も興奮したのを覚えている。
麻雀となると個人戦で、野球やサッカーのようにはいかないが、それでもリーチ麻雀の先進国は日本でなければならないというプレッシャーは誰もが感じていたと思う。
現地は30度を超える猛暑日が続き、冷房など全くない中での過酷な試合が4日間続いた。
そんな環境が更にそう思わせたのかもしれないが、予選で敗退したほとんどの選手が、残った日本人に勝って欲しい。そんな心境だったと思う。
そして、期待通りにベスト16には日本人が13人残り、決勝は4人全員が日本人という第1回大会にして快挙ともいえる活躍ぶりを見せた。
余韻に浸るかのように、私は当時を振り返りながら、車で四谷に向かっていた。
そう。世界チャンピオン山井弘にインタビューをするために。
今回は私、井出康平がインタビュアーをさせて頂きました。
山井プロとは、勉強会などで麻雀を打つ機会が多いのですが、個人的にはメンタルコントロールや読みに長けてるプレイヤーだと思っている。その長けてる部分が試合でどのように生かされたのか。その辺りを中心に聞いていきたいと思います。自分の今後の為にも(笑)
 
Q.大会の印象
井出「山井さん、今回は本当におめでとうございます!」
山井「ありがとう!」
井出「まず最初にお伺いしたいのが、パリに行く前の大会のイメージと、始まってからの大会のイメージってどうでしたか?」
山井「今回ね、日本のリーチ麻雀が大会ルールで採用されているわけだけど、麻雀自体は広まって歳月はたってるけど、リーチ麻雀自体はまだ広まって間もないんだよね。だから、どのくらいのレベルかっていうのはすごく気になってたよ。」
井出「実際どうでした?」
山井「実際はイメージしてたより高かったですね。今回参加された海外の選手の中で、日本のネット麻雀でプレイされている方がかなりいらしたんだよね。」
井出「僕もそれすごく驚きました!」
山井「正直思った以上にしっかりしてたね。今回の大会は手積みでやったんだけど、進行や打牌スピードをかなり心配してたんだ。そっちも全然違和感なくて驚きましたね。」
井出「僕は荒さんや沢崎さんと同卓したんですが、手積みのスピードが半端なく早かったのが一番ビックリしましたけどね(笑)」
山井「そうだね(笑)ベテランは手積みの時代からやってるからね(笑)」
 
Q、最初の試練
井出「トーナメントを勝ち抜いた山井プロですが、ベスト32がかなりきつかったのではないでしょうか?」
山井「基本的には全部きつかったよ。予選のほうは全体4位で通過して、かなり手応えもあったんですよ。そんな中、ベスト32で気持ちが逃げちゃったんだよね。」
井出「逃げたとは?」
山井「勝ちたい欲に負けて、軽い仕掛けをしてしまったんだよね。そこからバランス崩して、次局に鳴いてアガリ牌を流して、外人の選手が切ったその牌が協会の大崎プロの四暗刻単騎に放銃になってしまったんですよ。」
井出「役満ですか!?」
山井「もっと前に自分のアガリもあったし、鳴かなければアガれたし。やっぱり気持ちが逃げに入ったらダメだね・・・そういうのは何度も経験してるのに、ここまできたら勝ちたいって欲が出てきちゃうんだよね。今回、宿泊しているホテルの部屋が森山会長と同部屋だったんですよ。」
井出「そうでしたよね」
山井「ベスト32の前日の夜、眠りにつく前に会長から、『逃げるような軽い仕掛けはしないで、普段どうりやれば大丈夫だ』ってアドバイスをもらってたんですよ。だから余計やってしまったなーって。」
井出「でも逆に、そこで気が引き締まったんじゃないですか?」
山井「そうだね。その1回戦が3着だったんだけど、2着抜けだから1回戦に2着だったともたけさんを抜けば勝ち上がりだから、そんなに気負いみたいのはなかったんだけどね。でも、いきなりともさんに4,000オールをひかれて苦しかった。でも1回戦があってかえって気持ちを切り替えられたのがよかった。」
井出「なんと、四暗刻をアガった大崎プロを交わして、ともたけプロと2人で勝ち上がりになったんですよね。」
山井「奇跡的に勝てたけど、本当に逃げるのはダメだなと改めて感じた試合でしたね。」
 

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Q、世界一へ
井出「そしてトーナメントも勝ち上がり、決勝へと駒を進めるわけですが、とても印象的だったのが試合前の精神統一ともいえるような行動ですね。誰とも会話せずに、飯も食わずに1人でいましたよね?」
山井「あれはね、そうゆう部分(精神統一)もあるんですが、3日間猛暑の中戦ってきて体力がかなり消耗してたんで、とにかく脳と体を休めたかったんですよ。とにかくハードでしたから。森山会長が日本からユンケルを4日分持ってきてたんですが、会長が予選敗退になっちゃったんで、残り2本のユンケルを僕にくれたんですよ。会長も汗だくになりながらも栄養補給してなんとかやってきたくらいキツイのに、僕が残ったんでかなり気を使って頂きました。」
井出「おにぎりたべるか?とか、気を使ってくれてましたよね。」
山井「そうですね。本当に感謝してます。」
井出「さあ、試合の方ですが、結果から言うとトップスタートと、世界一に向けて好発進した訳ですが」
山井「1回戦はね、色々あったんですよね~」
井出「色々?」
山井「スタートは西島さんがよかったんですよ。いきなり満貫スタートでね。」
井出「そうですね。やはりマスターズからの勢いってあるんだなーって思いましたもん。」
山井「そのよかった西島さんが仕掛けていったんですが、その鳴きで僕が跳満をアガるんですよ。そこから親でも連チャンできてかなり好感触だったんだよね。」
井出「先程のトーナメントの話しでも出ましたが、鳴きって局面をガラッと変えるもんなんですね。」
山井「やっぱり、状態が良い時の軽い仕掛けは、相手に付け入るチャンスを与えてしまう事が多いよね。そこをモノにできたので、感触はかなりよかったんですが…」
井出「ですが?」
山井「その親番での連チャン中に、取り出す前に上家の一番左端の牌がポロっとこぼれちゃったんですね。それでサイコロ振ったら対3が出たわけですよ。」
井出「カンドラって事ですね?」
山井「そうなんだよ。すごい重要な部分なんで、審判の方を呼んで裁定をお願いしたら、振り直しになっちゃってね。」
井出「流れ論者にとっては嫌な中断ですね(笑)」
山井「そのやり直しの局に、桐山さんに跳満を引かれまして…」
井出「うわっ!あるあるじゃないですか(笑)」
山井「そこで思ったのがね、この先この出来事を意識しちゃいけないって。たとえ着順が何着になっても、このことを引きずらないようにしようと考え、そう強く心に決めました。更に気持ちの切り替えで、この半荘はリセットで(体勢など)2着でも良しと。かなり警戒して、より謙虚な気持ちに切り替えました。」
井出「それを踏まえると、このトップは内心かなりホッとしたんじゃないですか?」
山井「そうですね。ホッとしましたね。絶対に引きずらないって心に強く決めたのがよかったかな。やっぱりメンタルですからね。」
井出「そして最終戦なんですが、道中苦しい戦いを強いられ、オーラス大接戦になりました。」
山井「決勝戦はそうなりがちだよね。だから頭の中ではシミュレーションがかなりできてたつもりでしたよ。西島さんとの競りで、桐山さんは倍満ツモ、西川さんは親なのでアガリ続けると。」
井出「そんな中、白を鳴いて終わらせに行くのですが、印象的だったのがこの形。」
七万七万九万一筒二筒二筒七筒九筒九筒北北  ポン白白白
井出「観戦していたプロのかなりが七万と答えていた中、山井プロが出した答えが九万切りなんですよね。」
山井「選択としては九万切るか七筒切るかでした。まずは一局勝負なのでポン材を多く残したい。更に、上家の桐山さんが倍満ツモ条件なので、手が入らなかったら親に連チャンしてもらいたい局面なんですね。そうなるとチーはよほどの事がないとできないと判断しました。ならばポン材をより多く持ちたいってね。」
井出「その思考だと、より端を固定して七筒を切りそうなんですが?」
山井「これも上家の桐山さんの条件や立場が加味されてて、七筒切りのロスである八筒はかなり痛いですよね?だけど九万切りのロスの八万は、フリテンに構えても桐山さんから九万を鳴かせてもらえる可能性が高いと。」
井出「あっ、!そうですね!」
山井「それらを踏まえて打九万としました。」
井出「あの大一番で、そんな冷静な判断をよくできましたね。やはり経験ですか?」
山井「普段からアガリ競争のような、一局勝負の練習は決勝用にやってますからね。」
井出「そうなんですか!?」
山井「女流研修なんかで、そういう練習を教えたりしてますからね。」
井出「なるほど!やはり普段から決勝をシミュレートした練習というのは大事ですね。いきなりですべてを把握するのは大変ですもんね。」
山井「まあ、それでも最初七筒に手がかかったのは、冷静ではなかったのかもしれないね(笑)」
井出「その局は、親の西川プロからリーチが入り、山井プロもテンパイ。この局で終わらそうと気合の全面勝負になりましたが、親に放銃すると次局の条件がかなりきつくなるのですが、その辺りはどうだったんですか?」
山井「あの状況は、自分がアガらないと優勝では終わることができない状況なんで、どこかでいかなければいけない。もう仕掛けた時から、この局で終わらせるつもりだったのでいききるつもりでした。最悪放銃になっても次がありますからね(西川の連チャンで)」
井出「結果は、西川プロの4,000オールツモとなりましたが、内心ちょっとホッとしたんじゃないんですか?(笑)」
山井「してないしてない(笑)ここで終わらせたかったのが本音だよ。」
井出「西川プロが粘りに粘り、西川プロももうポイント的には満貫ツモ圏内くらいにはきてて、動きのなかった桐山プロも、倍満ツモから跳満ツモまで条件が緩和されるという大接戦になっていくのですが、配牌を見た瞬間、ほとんどの人が西島さんの優勝を確信したくらい、西島プロと山井プロの配牌には開きがありました。」
山井「最後もね、鳴きに助けられた感覚がありましたね。」
井出「西川プロの仕掛けですね。」
山井「あの仕掛けで急所の八万を引き入れて、手牌がグッと引き締まって動ける形になったので、もしかしたらという思いはありました。」
井出「1フーロして間もなく、すぐにアガリ牌が打たれたわけですが、どういう心境でしたか?」
山井「頼むから頭ハネだけはしないでくれって(笑)それだけ願っていたら、周りの大歓声が聞こえてきて、あぁ、終わったんだなって。」
井出「ものすごい歓声でしたもんね!」
山井「あの瞬間にね、本当に優勝してよかったなって思いました。今回、初めて海外での大会ということもあり、色々不安もあったんですが、この旅を通じて参加した連盟の選手が一つになっていってる感じがして、優勝したのは僕だけど、なんかみんなで掴んだ勝利みたいな感覚はありましたね。」
井出「プレイヤーに専念できてた僕らとは違って、山井プロは素材の写真を撮ったり、全体の連絡係りなどと色々な面で貢献してましたからね。そうゆう所も含めて、みんなの声援に繋がった感じはありました。」
山井「泣いて喜んでくれた方たちもいて、本当に嬉しかった。そうゆう姿を見た時に、今回の大会の不安は消し去り、参加して本当によかったって思いましたね。」
井出「森山会長は、プレッシャーを感じてか、怖くて見れないと外で1人待機してたんです。優勝が決まったって、みんなで報告に行ったんですが、山井さんが勝ちました!って言った瞬間、見たことのないようなガッツポーズをして大はしゃぎでしたからね(笑)あれを見た瞬間、僕もグッとくるものがありましたね。」
山井「同じ部屋っていうのもあったしね。会長が喜んでくださったのも本当に嬉しかったですね。」
井出「はしゃぎすぎて、膝を強打し悶絶してたのは内緒にしておきましょう(笑)」
 

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Q,世界チャンピオンとして
井出「晴れて世界チャンピオンになったわけなんですが、これから世界チャンピオンとしての抱負などをお聞かせください。」
山井「初代の世界チャンピオンという事なので、プロのプレイヤーとしてはこのチャンスを生かしたいですね。それと同時に責任も出てきますから、世界チャンピオンの名に恥じないように、今まで以上に精進していかないととは思ってます。」
井出「確かに山井プロの発言などは、今後かなりの影響力があるでしょうからね。」
山井「もっともっと深い部分で麻雀を追求していかないとね。それに自分の麻雀というものをより多く伝えていけたらと思ってます。」
井出「なかなか普通の人には味わえないプレッシャーが付きまとうとは思いますが?」
山井「それもプロとして幸せな事だと思うよ。そのプレッシャーと良い意味で付き合って、向き合っていけたらと思ってます。」
井出「今日は本当にお忙しい中、ありがとうございました!」
山井「こちらこそありがとうございました。井出君も次のラスベガス頑張って(笑)」
今回のインタビューを終えて、トッププレイヤーの自覚とも言える雰囲気がより強くなったという印象を受けた。山井プロの解説などを聞いていて、正直なかなか理解できない方もいると思っている。それは、なぜか?目に見えない部分だからである。
基礎を終え、勝てる仕組みを理解した後、この目に見えない部分の追求に傾かせるのがプロの必須条件だと思っている。今巷で言われている「デジタル」という言葉の逆とも言える山井プロだが、基礎があったうえで、目に見えない部分を追っているのは誤解がないように記しておきたい。
最近個人的に思うことだが、「この対局で負けたら全てを失います。」という対局があったら皆さんはどうするだろうか?「数字的にはこっちが得だから」という理由で決断できるだろうか。
生き物には決断するという優れた才能が備わってるのに、コンピューターのような数字的根拠だけに身を委ねられるのか?出来るという方もいるかもしれないが、プロとしてそれでは味気ないと自分は思う。
きっと山井プロは、苦しみながら歩んできた道を信じて、自分の直感で悔いなく麻雀プロとして散れるだろう。そう思えるような選択、決断の稽古を日々積んでいるのだと思う。
後輩である僕らに厳しく指導してくださる背景には、そんな思いがあると思えてならない。
山井プロがチャンピオンになって心からよかったと思う。
プレイヤーとして悔しい気持ちもあるが、素直に思うそう思えるのは、
山井プロが伝えていってくれるのはきっと「麻雀」だと信じているからだ。

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第31期A2リーグ第5節レポート 山井 弘

私は開幕に国士を放銃し、4節を終え▲152.9Pと後がない状態で折り返しの5節を迎えた。
勝負ごとの鍵は序盤にあると考える私だが、今節も1回戦目にそれがあったのではないかと思う。

東1局
起家スタートの私。正直、起家は苦手だ。特に理由はないが、嫌な雰囲気しかしない。
でも、そんな苦手意識を持ってはいけないと冷静に打ち進める。

山井
三万三万四万九万九万一筒一筒六筒六筒七筒八筒八筒八筒  ツモ八索

私はここで、九万が2枚切れということもあり、一度切っている八索を止めて打八筒とした。
七対子も見ての一打である。
そして次巡、七筒をツモり八索を切って、仮テンの四万タンキに構える。

その私の切った八索にポンと反応したのは前原さん。この光景はよく見る。
前原さんは、序盤からとにかく先手を取って、相手に対応させる。
打点も高いものから安いものまで織り交ぜてくる。
それに翻弄された者は、そのペースに引き込まれてしまう。

五万六万七索七索八索八索九索三筒四筒五筒六筒七筒白  ドラ北

ここから八索ポンである。
たしかにアガるだけならポンをしたほうが形はいい。
この反応は、稽古を多く積んでいないと、出ない声だと今映像を振りかえり、そう思う。
1巡早く八索を切っていたら、七筒を喰い流され私にテンパイは入らいないだろう。

次巡、私がツモったのは七索
ここで考えたのは、とにかくリーチをして前原さんを止めなければ。
逆に、対応させなければいけない。
そう思い、八索が4枚見えているという理由もありリーチを打った。
もし前原さんがオリてくれれば・・
もし、ツモアガることができれば・・
もし、四索をツモってくれば・・
などと、都合のいいことばかり考えてしまう、B型特有の、いいところでもあり、悪いところでもある。
何はともあれ、あとはなるようにしかならない。

これを受けた前原プロは、ドラの北をツモって、

五万六万四索七索七索三筒四筒五筒六筒七筒  ポン八索 上向き八索 上向き八索 上向き  ツモ北

四索を勝負。来たなと思う反面、本手であると感じた。
こんな時の前原さんは、ギリギリまで押してくるから、攻めている本人からはまず出ないだろう。そう感じた。
しかし、この押しで、逆に、黒沢さんや四柳君からこぼれるかもしれない。
そうも思った。

しかしそれもつかの間、四柳君に本手が入った。

二万四万六万三索四索二筒二筒三筒三筒四筒四筒東東  ツモ三万

絶好のツモ三万である。追いかけリーチ。
その同巡に、前原さんにもテンパイが入る。ツモ七万

しかし、勝負しないといけない牌はドラの北。生牌のドラ。
恐らく、これがタイトル戦の決勝であれば、北を切ったに違いない。
それは、何度も前原さんの麻雀を後ろで見てきたから言えることでもある。

三万三万九万九万七索一筒一筒六筒六筒七筒七筒八筒八筒  ロン七索

ただ、私はこのアガリで素直に喜んだわけではない。
実はこの時、こう考えた。
「もし前原さんのこの放銃がオリ打ちなら、きっとこの放銃を後悔し、この後は自分を奮い立たせて、鬼のように攻めてくるに違いない。もしかしたら、私はモンスターを目覚めさせてしまったかもしれない」と、そう思っていた。

だからこそ、次局、前原さんのリーチに対しては攻めた。
ここで引けば持って行かれる。意地でもここは攻めなければ行けない。そう思った。

八万八万三索四索五索六索七索七索八索八索五筒六筒七筒  リーチ  ロン九索  ドラ七索

4巡目リーチに九索で飛び込んだ私は、7,700は8,000を献上。
一発で生き返った。

東3局2本場には、四柳君が国士を炸裂させる。

一万一万九万一索九索一筒九筒東南西北白発  ロン中  ドラ八索

放銃となったのは黒沢さんだが、何とも、僕が開幕に放銃した時も中であった。

東4局、国士を決めた四柳君の親番。当然、マークする。
なんと言っても、点棒がこれだけあれば攻めやすい。
その親を交わしに行ったのが前原さん。

一万一万二索三索五索六索七索  ポン二万 上向き二万 上向き二万 上向き  ポン白白白  ドラ九索

この仕掛けに追いついたのは四柳君。

四万五万六万四索五索六索九索九索一筒二筒二筒三筒三筒  リーチ

捨て牌
九筒 上向き南西北六万 上向き五筒 上向き五万 上向き南九索 上向き リーチ四万 上向き

ここで私の手は

一万三万一索一索二索三索八索一筒三筒五筒六筒中中  ツモ九万

こうなり、リーチである親の現物は五筒のみとなった。
しかし、この五筒は前原さんには通っていない。
むしろ、捨て牌には一筒六筒と切られており本命にも見えた。

前原さんが交わしてであるだろうことは感じていたので、五筒で放銃になったとしても、得点的な失点はそれほどない。しかし、それでは前原さんが楽になるだけ。
もしここで五筒を打って前原さんにアガられると、この半荘はもう自分の浮上はない。そんな感覚である。
ここは、両方に通る牌を探して決着を待とう。そう決めた。親リーチの筋で前原さんの現物である打九万

前原さんはギリギリまで押していたが、四筒をつかみ小考。
きっと東1局のことが頭をよぎったに違いない。
ここでオリていいのだろうか・・私だったら押していた。

四万五万六万四索五索六索九索九索一筒二筒二筒三筒三筒  リーチ  ツモ四筒

前原さんはしっかりと当たり牌でやめて、四柳の4,000オールのアガリとなった。
もし、この時前原さんが放銃していたら、原点を割って、私と並びの位置まできていた。
そうなるのと、私と黒沢の思う気持ちはまったく変わってくる。
放銃となれば、「自分もよくはないが、前原さんは落ちてきたな」と考える。余裕が生まれる。特に私は。
ツモられれば、「前原さんにしっかり交わすか、放銃してほしかったな」と考える。

後者になれば、当然その後の展開も変わってくる。これが麻雀のいわゆる流れの1つでもあると考える。
前原さんにしても、四筒で放銃するのと、回避するのとでは、次の戦いも変わってくる。
放銃すれば、この後はしばらく四柳君の親が終わるまでは守るしかないと考えるはず。
しかし、ここで放銃を回避できたのだから、次もまた戦えると、

七万八万九万三索三索六索七索六筒七筒八筒  ポン白白白  ドラ四索

そう考えたかどうかは定かではないが、前原さんは仕掛けて行く。ポンテンだ。
私は即座に対応したのだが、前原さんの3巡目に七索が切られていることもあって、

一万二万二万七万二索四索八索二筒四筒九筒九筒九筒西  ツモ五万

ここから八索で1,000点の放銃となってしまった。
この放銃は、完全に気持ちが負けてしまっている。
この局、私は絶対に、四柳君と前原さんにだけは放銃(向かって)しては行けない。
自分でもそれは分かっていたはずなのに、七索の早切りから中途半端な八索を選択してしまった。

もし前原さんが前巡の四筒で放銃していたら、もちろん前原さんが仕掛けるかどうか分からないが、少なくとも私は冷静に対応していたと思う。

そうなれば苦しくなるのは前原さんのほうなので、後半に自分が浮上するきっかけがあったかもしれない。
いや、浮上するきっかけは実際あった。
ただ、それがアガリに結びつかなかったのは、この序盤の攻防にあると私は考える。

4人同じメンバーで戦う場合は、半荘何回やろうとも、それが終わるまでは、やはり流れがあるのではないかと思えてならない。それが麻雀というゲームなのだと。

前半戦を終え、▲204.4Pと、はっきり言って、降級は免れないだろうと思う。
だけど、数パーセントでも可能性がある限り、しっかりと戦い、自分の麻雀を打ち切るしかない。
そう考える。

そんなわけで、プロリーグ開幕、序盤に国士を放銃して、大きな負債を抱えてしまった私は、
状態がいいはずがないので、残り、後半5節をどう戦うのか。
すでに方向は決まった。

プロリーグ(鳳凰戦)レポート/第31期A2リーグ第5節レポート 山井 弘

私は開幕に国士を放銃し、4節を終え▲152.9Pと後がない状態で折り返しの5節を迎えた。
勝負ごとの鍵は序盤にあると考える私だが、今節も1回戦目にそれがあったのではないかと思う。
東1局
起家スタートの私。正直、起家は苦手だ。特に理由はないが、嫌な雰囲気しかしない。
でも、そんな苦手意識を持ってはいけないと冷静に打ち進める。
山井
三万三万四万九万九万一筒一筒六筒六筒七筒八筒八筒八筒  ツモ八索
私はここで、九万が2枚切れということもあり、一度切っている八索を止めて打八筒とした。
七対子も見ての一打である。
そして次巡、七筒をツモり八索を切って、仮テンの四万タンキに構える。
その私の切った八索にポンと反応したのは前原さん。この光景はよく見る。
前原さんは、序盤からとにかく先手を取って、相手に対応させる。
打点も高いものから安いものまで織り交ぜてくる。
それに翻弄された者は、そのペースに引き込まれてしまう。
五万六万七索七索八索八索九索三筒四筒五筒六筒七筒白  ドラ北
ここから八索ポンである。
たしかにアガるだけならポンをしたほうが形はいい。
この反応は、稽古を多く積んでいないと、出ない声だと今映像を振りかえり、そう思う。
1巡早く八索を切っていたら、七筒を喰い流され私にテンパイは入らいないだろう。
次巡、私がツモったのは七索
ここで考えたのは、とにかくリーチをして前原さんを止めなければ。
逆に、対応させなければいけない。
そう思い、八索が4枚見えているという理由もありリーチを打った。
もし前原さんがオリてくれれば・・
もし、ツモアガることができれば・・
もし、四索をツモってくれば・・
などと、都合のいいことばかり考えてしまう、B型特有の、いいところでもあり、悪いところでもある。
何はともあれ、あとはなるようにしかならない。
これを受けた前原プロは、ドラの北をツモって、
五万六万四索七索七索三筒四筒五筒六筒七筒  ポン八索 上向き八索 上向き八索 上向き  ツモ北
四索を勝負。来たなと思う反面、本手であると感じた。
こんな時の前原さんは、ギリギリまで押してくるから、攻めている本人からはまず出ないだろう。そう感じた。
しかし、この押しで、逆に、黒沢さんや四柳君からこぼれるかもしれない。
そうも思った。
しかしそれもつかの間、四柳君に本手が入った。
二万四万六万三索四索二筒二筒三筒三筒四筒四筒東東  ツモ三万
絶好のツモ三万である。追いかけリーチ。
その同巡に、前原さんにもテンパイが入る。ツモ七万
しかし、勝負しないといけない牌はドラの北。生牌のドラ。
恐らく、これがタイトル戦の決勝であれば、北を切ったに違いない。
それは、何度も前原さんの麻雀を後ろで見てきたから言えることでもある。
三万三万九万九万七索一筒一筒六筒六筒七筒七筒八筒八筒  ロン七索
ただ、私はこのアガリで素直に喜んだわけではない。
実はこの時、こう考えた。
「もし前原さんのこの放銃がオリ打ちなら、きっとこの放銃を後悔し、この後は自分を奮い立たせて、鬼のように攻めてくるに違いない。もしかしたら、私はモンスターを目覚めさせてしまったかもしれない」と、そう思っていた。
だからこそ、次局、前原さんのリーチに対しては攻めた。
ここで引けば持って行かれる。意地でもここは攻めなければ行けない。そう思った。
八万八万三索四索五索六索七索七索八索八索五筒六筒七筒  リーチ  ロン九索  ドラ七索
4巡目リーチに九索で飛び込んだ私は、7,700は8,000を献上。
一発で生き返った。
東3局2本場には、四柳君が国士を炸裂させる。
一万一万九万一索九索一筒九筒東南西北白発  ロン中  ドラ八索
放銃となったのは黒沢さんだが、何とも、僕が開幕に放銃した時も中であった。
東4局、国士を決めた四柳君の親番。当然、マークする。
なんと言っても、点棒がこれだけあれば攻めやすい。
その親を交わしに行ったのが前原さん。
一万一万二索三索五索六索七索  ポン二万 上向き二万 上向き二万 上向き  ポン白白白  ドラ九索
この仕掛けに追いついたのは四柳君。
四万五万六万四索五索六索九索九索一筒二筒二筒三筒三筒  リーチ
捨て牌
九筒 上向き南西北六万 上向き五筒 上向き五万 上向き南九索 上向き リーチ四万 上向き
ここで私の手は
一万三万一索一索二索三索八索一筒三筒五筒六筒中中  ツモ九万
こうなり、リーチである親の現物は五筒のみとなった。
しかし、この五筒は前原さんには通っていない。
むしろ、捨て牌には一筒六筒と切られており本命にも見えた。
前原さんが交わしてであるだろうことは感じていたので、五筒で放銃になったとしても、得点的な失点はそれほどない。しかし、それでは前原さんが楽になるだけ。
もしここで五筒を打って前原さんにアガられると、この半荘はもう自分の浮上はない。そんな感覚である。
ここは、両方に通る牌を探して決着を待とう。そう決めた。親リーチの筋で前原さんの現物である打九万
前原さんはギリギリまで押していたが、四筒をつかみ小考。
きっと東1局のことが頭をよぎったに違いない。
ここでオリていいのだろうか・・私だったら押していた。
四万五万六万四索五索六索九索九索一筒二筒二筒三筒三筒  リーチ  ツモ四筒
前原さんはしっかりと当たり牌でやめて、四柳の4,000オールのアガリとなった。
もし、この時前原さんが放銃していたら、原点を割って、私と並びの位置まできていた。
そうなるのと、私と黒沢の思う気持ちはまったく変わってくる。
放銃となれば、「自分もよくはないが、前原さんは落ちてきたな」と考える。余裕が生まれる。特に私は。
ツモられれば、「前原さんにしっかり交わすか、放銃してほしかったな」と考える。
後者になれば、当然その後の展開も変わってくる。これが麻雀のいわゆる流れの1つでもあると考える。
前原さんにしても、四筒で放銃するのと、回避するのとでは、次の戦いも変わってくる。
放銃すれば、この後はしばらく四柳君の親が終わるまでは守るしかないと考えるはず。
しかし、ここで放銃を回避できたのだから、次もまた戦えると、
七万八万九万三索三索六索七索六筒七筒八筒  ポン白白白  ドラ四索
そう考えたかどうかは定かではないが、前原さんは仕掛けて行く。ポンテンだ。
私は即座に対応したのだが、前原さんの3巡目に七索が切られていることもあって、
一万二万二万七万二索四索八索二筒四筒九筒九筒九筒西  ツモ五万
ここから八索で1,000点の放銃となってしまった。
この放銃は、完全に気持ちが負けてしまっている。
この局、私は絶対に、四柳君と前原さんにだけは放銃(向かって)しては行けない。
自分でもそれは分かっていたはずなのに、七索の早切りから中途半端な八索を選択してしまった。
もし前原さんが前巡の四筒で放銃していたら、もちろん前原さんが仕掛けるかどうか分からないが、少なくとも私は冷静に対応していたと思う。
そうなれば苦しくなるのは前原さんのほうなので、後半に自分が浮上するきっかけがあったかもしれない。
いや、浮上するきっかけは実際あった。
ただ、それがアガリに結びつかなかったのは、この序盤の攻防にあると私は考える。
4人同じメンバーで戦う場合は、半荘何回やろうとも、それが終わるまでは、やはり流れがあるのではないかと思えてならない。それが麻雀というゲームなのだと。
前半戦を終え、▲204.4Pと、はっきり言って、降級は免れないだろうと思う。
だけど、数パーセントでも可能性がある限り、しっかりと戦い、自分の麻雀を打ち切るしかない。
そう考える。
そんなわけで、プロリーグ開幕、序盤に国士を放銃して、大きな負債を抱えてしまった私は、
状態がいいはずがないので、残り、後半5節をどう戦うのか。
すでに方向は決まった。

第92回『態勢的な打ち方①』 猿川 真寿

今回も、持点=態勢値という設定にさせていただきます。
トップ目から順番に、態勢に合わせた打牌の打ち方を説明していきます。。

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配牌は悪いが、態勢は1番手。ここは手なりで真っ直ぐ進める方が良い。
よって打九筒ととりあえずしておく。

100

2巡目の北家の白を2番手がポン。
1打目の東から打点は分からないが、形は整っている可能性が高い。
ただ、かわし手が有力。
危険度は上がっても、本手ならば東はもう少し引っ張っても良いように思えるから。
ドラが暗刻などの場合も考えられるが、基本的に態勢のいい時は、受けない方がトップを獲ることに係わる事が多いと体感している。

100

今度は4番手からリーチが入った。
仕掛けが入った後、上家にも拘らずドラ表の二索を切っていることから、それなりに手はまとまっていると考えられる。今局はここで撤退。

攻めづらい牌姿ということも逆に良い展開だと私なら思う。
ここでいう撤退とは、受けるのではなく保留の1局とする。

打牌自体は、オリを選択するので変わらないが、今局自体、単体の1局となっている場合が多い。
3番手ではなく4番手からリーチが入った瞬間に、白の仕掛けが奇襲の可能性を示唆すると感じるのではないだろうか?

奇襲とは、本来の基本と違う動きや打牌をすることによって、場を捻じ曲げる行為である。
先ほど保留の1局と記したが、今局でアガった者の態勢が上がるかどうかは奇襲によって分からなくなる。

次に2番手の立場で考えてみる。

100

第一打は、本来南を打つのが普通だと思うところ東としている。
これは、逆切りというもので、先ほど説明した奇襲の1つ。

態勢のいい親が東をトイツで持っていた場合に、好タイミングで鳴かれる可能性が高いので、先に鳴かせてツモをずらすことが目的。

もう1つは、手順を変えることによって、手牌速度を読みにくくする効果もある。
私がこの奇襲を使う時は、3番手か4番手の場合。

理由は、自分より態勢の悪い者に浮上のきっかけを与える可能性が生まれやすいから。
2番手で使う時は、短期決戦のトップ取りの時ぐらい。
通常のリーグ戦なら、2番手にいるならば状態をキープすることの方が大事なので、出来るだけ紛れて欲しくないと考えるからである。

100

白が重なってポンをした。これも牌姿を考えたら、鳴かないことのほうが圧倒的に多いと思う。
よって、これも奇襲の1種と考えたほうが納得いくであろう。
態勢の良い親の反撃が怖いので手が進まなかったら、白を落とすぐらいじっくり手組みする方が、態勢を維持し易いはず。

100

ラス目からリーチをかけられた局面は、本譜を選択したとしたらある程度は真っ直ぐ向かう方が良いと感じる。
今局の最悪な結末は、親が真っ直ぐ押し返してきて、親のアガリが付いてしまうこと。
それだけは避けたい。

打点はないけども1シャンテンであり、攻めの姿勢を見せて親に引いてもらう方が良い。
放銃で終わったとしても、仕掛け自体が微妙と言えるのでしょうがないと思えてしまう。

100

今度は3番手が発をポンして攻め返してきた。
ここがヤメ時。

どちらかが本手の可能性が高く、3番手からは2番手もテンパイに見えていてもおかしくない。
それにも拘らず、押し返してきた3番手も高確率でテンパイと考えるのが自然。

オリに回りたいところだが、現状、安牌がないので凌げるかは分からない。
ただ、四索七索をツモってきたり鳴けた時は、腹を括ってドラ以外は押し返すのも、相手が本手だった場合は好転するのでいい。

今回、西家については批判的なことを書いたが、リーグ戦だったらという話なので、本譜のようなタイトル戦の途中の対局にそぐわないのは当たり前だと思って欲しい。

この時の西家の狙いは、親落とし1点だろう。
一打目の東といい、白1鳴きといい、心理的な働きで親を楽にさせたくないという気持ちが伝わってくる。

次回は、3番手、4番手の立場で考えてみたいと思います。

上級/第92回『態勢的な打ち方①』 猿川 真寿

今回も、持点=態勢値という設定にさせていただきます。
トップ目から順番に、態勢に合わせた打牌の打ち方を説明していきます。。
100
配牌は悪いが、態勢は1番手。ここは手なりで真っ直ぐ進める方が良い。
よって打九筒ととりあえずしておく。
100
2巡目の北家の白を2番手がポン。
1打目の東から打点は分からないが、形は整っている可能性が高い。
ただ、かわし手が有力。
危険度は上がっても、本手ならば東はもう少し引っ張っても良いように思えるから。
ドラが暗刻などの場合も考えられるが、基本的に態勢のいい時は、受けない方がトップを獲ることに係わる事が多いと体感している。
100
今度は4番手からリーチが入った。
仕掛けが入った後、上家にも拘らずドラ表の二索を切っていることから、それなりに手はまとまっていると考えられる。今局はここで撤退。
攻めづらい牌姿ということも逆に良い展開だと私なら思う。
ここでいう撤退とは、受けるのではなく保留の1局とする。
打牌自体は、オリを選択するので変わらないが、今局自体、単体の1局となっている場合が多い。
3番手ではなく4番手からリーチが入った瞬間に、白の仕掛けが奇襲の可能性を示唆すると感じるのではないだろうか?
奇襲とは、本来の基本と違う動きや打牌をすることによって、場を捻じ曲げる行為である。
先ほど保留の1局と記したが、今局でアガった者の態勢が上がるかどうかは奇襲によって分からなくなる。
次に2番手の立場で考えてみる。
100
第一打は、本来南を打つのが普通だと思うところ東としている。
これは、逆切りというもので、先ほど説明した奇襲の1つ。
態勢のいい親が東をトイツで持っていた場合に、好タイミングで鳴かれる可能性が高いので、先に鳴かせてツモをずらすことが目的。
もう1つは、手順を変えることによって、手牌速度を読みにくくする効果もある。
私がこの奇襲を使う時は、3番手か4番手の場合。
理由は、自分より態勢の悪い者に浮上のきっかけを与える可能性が生まれやすいから。
2番手で使う時は、短期決戦のトップ取りの時ぐらい。
通常のリーグ戦なら、2番手にいるならば状態をキープすることの方が大事なので、出来るだけ紛れて欲しくないと考えるからである。
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白が重なってポンをした。これも牌姿を考えたら、鳴かないことのほうが圧倒的に多いと思う。
よって、これも奇襲の1種と考えたほうが納得いくであろう。
態勢の良い親の反撃が怖いので手が進まなかったら、白を落とすぐらいじっくり手組みする方が、態勢を維持し易いはず。
100
ラス目からリーチをかけられた局面は、本譜を選択したとしたらある程度は真っ直ぐ向かう方が良いと感じる。
今局の最悪な結末は、親が真っ直ぐ押し返してきて、親のアガリが付いてしまうこと。
それだけは避けたい。
打点はないけども1シャンテンであり、攻めの姿勢を見せて親に引いてもらう方が良い。
放銃で終わったとしても、仕掛け自体が微妙と言えるのでしょうがないと思えてしまう。
100
今度は3番手が発をポンして攻め返してきた。
ここがヤメ時。
どちらかが本手の可能性が高く、3番手からは2番手もテンパイに見えていてもおかしくない。
それにも拘らず、押し返してきた3番手も高確率でテンパイと考えるのが自然。
オリに回りたいところだが、現状、安牌がないので凌げるかは分からない。
ただ、四索七索をツモってきたり鳴けた時は、腹を括ってドラ以外は押し返すのも、相手が本手だった場合は好転するのでいい。
今回、西家については批判的なことを書いたが、リーグ戦だったらという話なので、本譜のようなタイトル戦の途中の対局にそぐわないのは当たり前だと思って欲しい。
この時の西家の狙いは、親落とし1点だろう。
一打目の東といい、白1鳴きといい、心理的な働きで親を楽にさせたくないという気持ちが伝わってくる。
次回は、3番手、4番手の立場で考えてみたいと思います。

第1回リーチ麻雀世界選手権コラム

※今回のコラムは、パリで活動されている日本人の方で、
第1回リーチ麻雀世界選手権で審判を務められた池田晋作さんに、
大会について、今回は特別に書いていただきました。(編集部)

 

「第1回リーチ麻雀世界選手権を終えて」

 

Q. 今大会で、運営(審判員)をされてみていかがだったでしょうか?

A. 昨夏、今大会の運営責任者から「1年後、⽇本人プロにパリに来てもらい、リーチ麻雀世界大会を開く!」と報告を受けた時、私は正直「⽇本人プロが、本当にパリまで来てくれるのか?」と疑いました。
一方で、この大会を実現できれば、ヨーロッパの麻雀愛好家にとってかけがえのない第一歩になると確信していました。

当初から、審判というよりは通訳が必要になると想定していました。
しかし1半荘目が終了した時点で、参加者全員がそれぞれの方法でコミュニケーションをとっていたので、麻雀そのものが「共通言語」になった瞬間を目の当たりにしたように私は感じました。
そういう意味で、私たちの役割は少なかったのではと思います。

ヨーロッパの人々、特に主催団体のフランス人にとって、ここまでの大規模な大会運営は初めての経験であるなか、⽇本プロ麻雀連盟の皆様から多大なるご指導、ご協⼒を頂けたことへの彼らの感謝の言葉が私に届いています。

 

 

Q. 審判員としての苦労話があれば、是非お聞かせ下さい。

A. 私たち審判員は、今大会のルールブック最終版を受け取ったのが大会1ヶ月前だったので若⼲焦りました。
今大会のルールは EMA(ヨーロッパ麻雀団体)のルールとは若⼲異なり、食いタンあり、食い替えなし、箱テン終了なし、途中流局なし、切り上げ満貫あり、⾚牌なし、順位点の変更
(10,000-30,000から5,00-15,000)、点棒の使用などが採用されました。

ヨーロッパ特有のル ールとして、「宣言の厳密化」が定められました。
海外では中国式麻雀の愛好家が多く、その方々が違和感なくリーチ麻雀に打ち解けられるよう、EMAのルールでは例えばロンとツモを「マージョン」と発声することを容認していました。
今大会では、このような誤発声を ▲1ポイント(▲1,000 点)と厳しく定めました。

さらに、大会全体として議論された「3秒ルール」は、私たちも相当頭を悩ませました。
これは基本として、上家が牌を捨ててから 自らのツモまで、3秒「間を取る」ことで他の選手が鳴くかを考えられるというルール設定です。
これもヨーロッパ特有で、「他の選手の捨牌を⾒て、自らの手を⾒て、鳴くかを決める」まで非常に時間を要する方が多いことから、瞬時の意思決定ができない選手を考慮したルールとなっています。
しかし、このルールを採用することで、別の問題も発生するのではという意⾒もあり、審判団で何度も議論を重ねましたが、ルールブックから消されませんでした。

大会2ヶ月前からルールブック最終版を受け取るまでの間、私を含めた⽇本人審判員3人で、このような細かい確認作業を進めてきました。彼らは、私たち⽇本人の手を借りず、⽇本のプロ麻雀リーグやその他一般的なルールに至るまで、ルールに関する情報をできる限り多く集めて翻訳し、ルールブックを作り上げました。
今後、このルールブックが世界共通となり、初心者にも読んで頂くことを⾒据えれば、⽇本では常識もしくは暗黙の了解となっていること、例えば、「送りカン」や「コシ」について、ルール上用語を定義すべきではと審判⻑に申し⽴てしましたが、理解されませんでした。

朗報として、2〜3年後の次大会に向けて大会運営委員会が発足されましたので、⽇本プロ麻雀連盟はじめ多くの団体様からのご指導、ご協⼒のもと、今後より精度の⾼いルールブッ クができることを期待しています。

 

 

Q. ヨーロッパのリーチ麻雀について、どのような印象をもたれていますか?

A. 彼らは、本当に研究熱心です。
リーチ麻雀と出会うきっかけは、「アカギ」や「坊や哲」、「哭きの⻯」などの麻雀漫画に魅了された方が多く、「アカギ」の鷲巣麻雀に憧れ、⽇本から「鷲巣牌」を購入した方もいます。

彼らは、インターネットからあらゆる情報を集め、英語を基本言語としてヨーロッパ全体で情報を共有しています。
動画に関しても、YouTubeをくまなくチェックしているようです。

彼らは、⽇本で出版されている戦略本を読み漁りたいという願望が非常に強く、そのために⽇本語を勉強する方や⽇本から書籍を入手して、辞書片手に一生懸命読まれている方もいるそうです。

⽇本人の私から⾒ると、彼らの多くはリーチ麻雀を「単なる戦略ボードゲーム」と捉えているように感じる時があります。つまり、攻防のバランスや4人の間の心理戦、点数差から生まれる駆け引きといった、リーチ麻雀の醍醐味を味わっている選手は、まだ少ないように感じます。
「誰がリーチをかけようとも、誰がテンパイであろうと、考えず予測もせず無筋で不要牌をただ切るだけ」という選手が今でも多いのが現状です。
しかし、今大会でTOP32に残った外国人選手は、より⽇本人に近い打ち方ができる選手が残りました。
単なる数字合わせや絵柄合わせではなく、河を読み危険牌を止め、無理にテンパイを維持せず一旦まわすなどの技術を身につけている選手もいて、短期間でここまで成⻑したのかと正直感心していました。

余談ですが、⽇本においては当たり前のエチケットやマナーは、まだ浸透していません。
例えば、卓に肘をついてプレーする、ツモ牌を一旦手牌に入れてから切り出す、オーラスの際に点数確認・告知しない…など、望ましいことではありませんが、これらは徐々に「ヨー ロッパスタイル」になりつつあります。

 

 

Q. それでは、レベルも含めて、日本と外国の麻雀の違いはどこにあると感じていますか?

A. 私個人の意⾒かもしれませんが、ヨーロッパの中でレベルの⾼い選手(=EMAランキングで上位)でさえも、誰が何巡目に何を切って、誰がどの牌をツモ切りしたか、誰が何シャンテンなのかを予測するといった「限られた情報から、相手を読み取る基本的な動き」はあまり感じられません。ですので、放銃を繰り返し崩れ始めると、感情的になり悪循環を止めることができなくなる方が多いです。

国⺠性という大きな視点から⾒ると、⽇本人は経験に基づく柔軟な発想と臨機応変さ、過去の失敗を必ず活かす、時に相手の打ち方に合わせるといった特性をもっているように思えます。
その点から考えると、外国人の方は⽇本の一般プレイヤーと比べても、過去の経験を活かすまでの「場数」が未だ少ないように感じられます。

 

 

Q. 現在、ヨーロッパでのリーチ麻雀の認知度はどの程度ですか? また、今後リーチ麻雀人 口は増えると思いますか?

A. 元々ヨーロッパでは中国式麻雀の認知度は⾼く、リーチ麻雀の歴史は各国の平均をとっても7〜8年ですので、認知度は⾼いと言えませんが、嬉しいことにここ数年で中国式麻雀の選手の中で、リーチ麻雀のほうが楽しいという方が徐々に増えてきています。ですので、今大会のような「プロに挑戦できる麻雀W杯」が定期的に開催され、出場権を獲得するためにEMA公式試合で⾼成績を残すといった目標があれば、各国でさらに盛り上がるでしょう。

昨年オーストリアで⾏われたリーチ麻雀ヨーロッパ選手権も、今後定期的に開催される予定ですので、この2つの大会が強く結びつくことを願っています。

認知度を上げるために、FFMJ(フランス麻雀連盟)は、毎年7月に開催されるJAPANEXPOにてブースを出しています。このような地道な宣伝も含め、「彼らなりの方法」で徐々に麻雀人口も増えていると実感しています。
さらに人口を増やすためには、「⽇本からの商材」の流入、例えば関連書籍の翻訳と書籍の増加、画やライブ感ある企画が必須と言えます。私も、リーチ麻雀をこよなく愛する一雀士として、リーチ麻雀の普及のためフランスにて大暴れする予定です。

 

 

Q. 最後に、海外で生活されている日本人として、リーチ麻雀という日本の文化についてどのように捉えていますか?

A. 正直に答えると、非常に特殊な文化だと思います。
先ほどもお話したように、リーチ麻雀は相手との駆け引きや4人との調和、少ない情報から予測して相手を読み取るなど、相手がいてこそ成り⽴つゲームだと思います。

一方で、ヨーロッパの方々の打ち方を⾒ると、個のゲームとなることが多いです。
外国では、相手の出方よりも、先ずは自分の主張を積極的に前へ出します。
その点が⽇本人と全く異なる文化だと、リーチ麻雀を通じて⽇々痛感しています。

ヨーロッパでも特に「寒さが厳しい国」では、たとえテレビゲームが発達しても、今でもアナログのゲーム=ボードゲームが主流です。それを象徴するかのように、スペインやイタリアの選手は少なく、北欧の選手が多いです。
フランス・パリは、年中⾬が降り比較的寒いので麻雀愛好家は多いですが、一旦太陽がでると「こんな天気が良いのに、部屋に閉じこもっていられない!」と言って、外に出かけます。

このように、リーチ麻雀がそれぞれの国の文化に普及・浸透するにはまだまだ時間がかかりますが、⽇本の文化の象徴である柔道や剣道、合気道が世界に広まったように、リーチ麻雀の醍醐味が伝わる⽇は必ずくると信じています。

プロ雀士コラム/第1回リーチ麻雀世界選手権コラム

※今回のコラムは、パリで活動されている日本人の方で、
第1回リーチ麻雀世界選手権で審判を務められた池田晋作さんに、
大会について、今回は特別に書いていただきました。(編集部)
 
「第1回リーチ麻雀世界選手権を終えて」
 
Q. 今大会で、運営(審判員)をされてみていかがだったでしょうか?
A. 昨夏、今大会の運営責任者から「1年後、⽇本人プロにパリに来てもらい、リーチ麻雀世界大会を開く!」と報告を受けた時、私は正直「⽇本人プロが、本当にパリまで来てくれるのか?」と疑いました。
一方で、この大会を実現できれば、ヨーロッパの麻雀愛好家にとってかけがえのない第一歩になると確信していました。
当初から、審判というよりは通訳が必要になると想定していました。
しかし1半荘目が終了した時点で、参加者全員がそれぞれの方法でコミュニケーションをとっていたので、麻雀そのものが「共通言語」になった瞬間を目の当たりにしたように私は感じました。
そういう意味で、私たちの役割は少なかったのではと思います。
ヨーロッパの人々、特に主催団体のフランス人にとって、ここまでの大規模な大会運営は初めての経験であるなか、⽇本プロ麻雀連盟の皆様から多大なるご指導、ご協⼒を頂けたことへの彼らの感謝の言葉が私に届いています。
 
 
Q. 審判員としての苦労話があれば、是非お聞かせ下さい。
A. 私たち審判員は、今大会のルールブック最終版を受け取ったのが大会1ヶ月前だったので若⼲焦りました。
今大会のルールは EMA(ヨーロッパ麻雀団体)のルールとは若⼲異なり、食いタンあり、食い替えなし、箱テン終了なし、途中流局なし、切り上げ満貫あり、⾚牌なし、順位点の変更
(10,000-30,000から5,00-15,000)、点棒の使用などが採用されました。
ヨーロッパ特有のル ールとして、「宣言の厳密化」が定められました。
海外では中国式麻雀の愛好家が多く、その方々が違和感なくリーチ麻雀に打ち解けられるよう、EMAのルールでは例えばロンとツモを「マージョン」と発声することを容認していました。
今大会では、このような誤発声を ▲1ポイント(▲1,000 点)と厳しく定めました。
さらに、大会全体として議論された「3秒ルール」は、私たちも相当頭を悩ませました。
これは基本として、上家が牌を捨ててから 自らのツモまで、3秒「間を取る」ことで他の選手が鳴くかを考えられるというルール設定です。
これもヨーロッパ特有で、「他の選手の捨牌を⾒て、自らの手を⾒て、鳴くかを決める」まで非常に時間を要する方が多いことから、瞬時の意思決定ができない選手を考慮したルールとなっています。
しかし、このルールを採用することで、別の問題も発生するのではという意⾒もあり、審判団で何度も議論を重ねましたが、ルールブックから消されませんでした。
大会2ヶ月前からルールブック最終版を受け取るまでの間、私を含めた⽇本人審判員3人で、このような細かい確認作業を進めてきました。彼らは、私たち⽇本人の手を借りず、⽇本のプロ麻雀リーグやその他一般的なルールに至るまで、ルールに関する情報をできる限り多く集めて翻訳し、ルールブックを作り上げました。
今後、このルールブックが世界共通となり、初心者にも読んで頂くことを⾒据えれば、⽇本では常識もしくは暗黙の了解となっていること、例えば、「送りカン」や「コシ」について、ルール上用語を定義すべきではと審判⻑に申し⽴てしましたが、理解されませんでした。
朗報として、2〜3年後の次大会に向けて大会運営委員会が発足されましたので、⽇本プロ麻雀連盟はじめ多くの団体様からのご指導、ご協⼒のもと、今後より精度の⾼いルールブッ クができることを期待しています。
 
 
Q. ヨーロッパのリーチ麻雀について、どのような印象をもたれていますか?
A. 彼らは、本当に研究熱心です。
リーチ麻雀と出会うきっかけは、「アカギ」や「坊や哲」、「哭きの⻯」などの麻雀漫画に魅了された方が多く、「アカギ」の鷲巣麻雀に憧れ、⽇本から「鷲巣牌」を購入した方もいます。
彼らは、インターネットからあらゆる情報を集め、英語を基本言語としてヨーロッパ全体で情報を共有しています。
動画に関しても、YouTubeをくまなくチェックしているようです。
彼らは、⽇本で出版されている戦略本を読み漁りたいという願望が非常に強く、そのために⽇本語を勉強する方や⽇本から書籍を入手して、辞書片手に一生懸命読まれている方もいるそうです。
⽇本人の私から⾒ると、彼らの多くはリーチ麻雀を「単なる戦略ボードゲーム」と捉えているように感じる時があります。つまり、攻防のバランスや4人の間の心理戦、点数差から生まれる駆け引きといった、リーチ麻雀の醍醐味を味わっている選手は、まだ少ないように感じます。
「誰がリーチをかけようとも、誰がテンパイであろうと、考えず予測もせず無筋で不要牌をただ切るだけ」という選手が今でも多いのが現状です。
しかし、今大会でTOP32に残った外国人選手は、より⽇本人に近い打ち方ができる選手が残りました。
単なる数字合わせや絵柄合わせではなく、河を読み危険牌を止め、無理にテンパイを維持せず一旦まわすなどの技術を身につけている選手もいて、短期間でここまで成⻑したのかと正直感心していました。
余談ですが、⽇本においては当たり前のエチケットやマナーは、まだ浸透していません。
例えば、卓に肘をついてプレーする、ツモ牌を一旦手牌に入れてから切り出す、オーラスの際に点数確認・告知しない…など、望ましいことではありませんが、これらは徐々に「ヨー ロッパスタイル」になりつつあります。
 
 
Q. それでは、レベルも含めて、日本と外国の麻雀の違いはどこにあると感じていますか?
A. 私個人の意⾒かもしれませんが、ヨーロッパの中でレベルの⾼い選手(=EMAランキングで上位)でさえも、誰が何巡目に何を切って、誰がどの牌をツモ切りしたか、誰が何シャンテンなのかを予測するといった「限られた情報から、相手を読み取る基本的な動き」はあまり感じられません。ですので、放銃を繰り返し崩れ始めると、感情的になり悪循環を止めることができなくなる方が多いです。
国⺠性という大きな視点から⾒ると、⽇本人は経験に基づく柔軟な発想と臨機応変さ、過去の失敗を必ず活かす、時に相手の打ち方に合わせるといった特性をもっているように思えます。
その点から考えると、外国人の方は⽇本の一般プレイヤーと比べても、過去の経験を活かすまでの「場数」が未だ少ないように感じられます。
 
 
Q. 現在、ヨーロッパでのリーチ麻雀の認知度はどの程度ですか? また、今後リーチ麻雀人 口は増えると思いますか?
A. 元々ヨーロッパでは中国式麻雀の認知度は⾼く、リーチ麻雀の歴史は各国の平均をとっても7〜8年ですので、認知度は⾼いと言えませんが、嬉しいことにここ数年で中国式麻雀の選手の中で、リーチ麻雀のほうが楽しいという方が徐々に増えてきています。ですので、今大会のような「プロに挑戦できる麻雀W杯」が定期的に開催され、出場権を獲得するためにEMA公式試合で⾼成績を残すといった目標があれば、各国でさらに盛り上がるでしょう。
昨年オーストリアで⾏われたリーチ麻雀ヨーロッパ選手権も、今後定期的に開催される予定ですので、この2つの大会が強く結びつくことを願っています。
認知度を上げるために、FFMJ(フランス麻雀連盟)は、毎年7月に開催されるJAPANEXPOにてブースを出しています。このような地道な宣伝も含め、「彼らなりの方法」で徐々に麻雀人口も増えていると実感しています。
さらに人口を増やすためには、「⽇本からの商材」の流入、例えば関連書籍の翻訳と書籍の増加、画やライブ感ある企画が必須と言えます。私も、リーチ麻雀をこよなく愛する一雀士として、リーチ麻雀の普及のためフランスにて大暴れする予定です。
 
 
Q. 最後に、海外で生活されている日本人として、リーチ麻雀という日本の文化についてどのように捉えていますか?
A. 正直に答えると、非常に特殊な文化だと思います。
先ほどもお話したように、リーチ麻雀は相手との駆け引きや4人との調和、少ない情報から予測して相手を読み取るなど、相手がいてこそ成り⽴つゲームだと思います。
一方で、ヨーロッパの方々の打ち方を⾒ると、個のゲームとなることが多いです。
外国では、相手の出方よりも、先ずは自分の主張を積極的に前へ出します。
その点が⽇本人と全く異なる文化だと、リーチ麻雀を通じて⽇々痛感しています。
ヨーロッパでも特に「寒さが厳しい国」では、たとえテレビゲームが発達しても、今でもアナログのゲーム=ボードゲームが主流です。それを象徴するかのように、スペインやイタリアの選手は少なく、北欧の選手が多いです。
フランス・パリは、年中⾬が降り比較的寒いので麻雀愛好家は多いですが、一旦太陽がでると「こんな天気が良いのに、部屋に閉じこもっていられない!」と言って、外に出かけます。
このように、リーチ麻雀がそれぞれの国の文化に普及・浸透するにはまだまだ時間がかかりますが、⽇本の文化の象徴である柔道や剣道、合気道が世界に広まったように、リーチ麻雀の醍醐味が伝わる⽇は必ずくると信じています。

第三回震災復興麻雀大会レポート 吉田勝弥

第三回震災復興麻雀大会レポート:吉田勝弥

6月29日(日)に行われた、第3回震災復興麻雀大会のレポートをお伝えします。

今回で3回目になる震災復興麻雀大会は、登米市にある健康麻雀が主催する大会であり、日本プロ麻雀連盟の協力で、東京本部から最高顧問・小島武夫プロ九段、日本プロ麻雀連盟会長・森山茂和プロ九段、清水香織プロ五段、高宮まりプロ二段と、豪華なメンバーにお越しいただきました。

 

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東北本部からは、本部長・平田孝章プロ六段をはじめ、東北プロ6名、計10名参加。
一般参加は、前回優勝者(現東北最強位)、麻雀大会優勝者、健康麻雀上位者、フリー麻雀トップ上位者、岩手県、石巻市、気仙沼市、南三陸町被災地代表など計30名、合計40名のプロアマ混合戦になりました。

私もプロと被災地代表の名誉をかけて、優勝めざして大会に挑みました。
今回は4回戦の合計ポイントで上位を競うシステムです。
1回戦では、平田プロが+50.4Pと好調のスタートを切り、2回戦では、健康麻雀優勝者の星、南三陸町出身の佐藤さん、今大会スポンサーの小野さんが追い上げてきました。

中盤3回戦に入ると、地元登米市の及川さんが気合いの3連続トップを取り首位にたちます。
それを追いかけるように、去年準優勝門田さんが2番手に上がってきます。

期待の若手、野家さんが3番手と、平田、星さん、佐藤さんをかわす展開となります。
前回の優勝者である越前さんは、+37.0Pと逆転圏内と去年の再現となるか!?
プロでは、粕谷プロが+39.8Pと最終戦にかけた。

大里プロ、小島プロ、森山プロもプラスポイントを維持していますが、苦しい勝負展開。
最終4回戦、プロの意地で、平田プロ、清水プロが巻き返しを狙いますが届かず、結局、勢いが止まらないまま4連続トップの及川さんが+116.0Pと逃げ切り優勝を飾りました。

門田さんも最終戦トップで粘りを見せましたが、惜しくも準優勝。
2年連続の準優勝で、実力を証明しました。

優勝した及川浩光さんおめでとうございました。
優勝者には、日本プロ麻雀連盟からアマ三段の免状が授与されます。
今後の活躍も期待しております。

一流プロたちと麻雀ファンが一緒に参加した今大会は、被災地に元気がもらえて素晴らしい大会となりました。
参加者皆様の温かいご支援ありがとうございました。

大会成績上位10名
優勝:及川浩光様+116.0P(三段免状)
準優勝:門田吉郎様+96.9P(二段免状)
3位:平田孝章プロ+71.0P
4位:佐藤健矢様+64.7P(初段免状)
5位:野家龍治様+48.4P
6位:星孝典様+43.9P
7位:清水香織プロ+35.5P
8位:及川大輝様+30.9P
9位:大里奈美プロ+27.7P
10位:小野正孝様+25.1P

平成26年6月30日
南三陸町へ支援金贈与

日本プロ麻雀連盟 最高顧問  小島武夫
日本プロ麻雀連盟 東北本部長 平田孝章
日本プロ麻雀連盟 代表    清水香織
大会実行委員会  委員長   吉田勝弥   計4名

南三陸町被災地訪問をして、南三陸町役場でチャリティ金寄贈式
南三陸町長 佐藤仁 支援金 10万円贈与

今大会の参加費等の一部と、参加プロのゲスト料の一部を支援金として贈与できました。
ご協力ありがとうございました。

gpmax2012

順位 名前 1回戦 2回戦 3回戦 4回戦 合計
優勝 及川浩光 19.1 23.8 24.2 48.9 116
準優勝 門田吉郎アマ初段 5.6 42.7 14.1 34.5 96.9
3位 平田孝章プロ六段 65.4 -28.8 -17.1 51.5 71.0
4位 佐藤健矢 22.0 34.1 -5.6 14.2 64.7
5位 野家龍治 25.2 1.9 32.1 -10.8 48.4
6位 星孝典 34.2 24.5 -37.4 22.6 43.9
7位 清水香織プロ五段 -39.9 12.7 24.7 38.0 35.5
8位 及川大輝 -7.1 31.2 33.3 -26.5 30.9
9位 大里奈美プロ二段 -1.6 15.1 -1.7 15.9 27.7
10位 小野正孝 -26.4 79.2 -1.8 -25.9 25.1
11位 小野寺正文 36.3 -37.7 -9.1 34.8 24.3
12位 小島武夫プロ九段 7.9 38.8 -36.9 12.3 22.1
13位 山田直志 25.6 -30.6 12.2 12.4 19.6
14位 小野寺豊 -10.8 32.8 -33.5 27.3 15.8
15位 粕谷勇吉プロ三段 7.8 31.0 1.0 -25.3 14.5
16位 佐藤大介プロ三段 11.2 -29.5 4.5 21.0 7.2
17位 首藤弘二 -6.6 6.1 14.8 -8.7 5.6
18位 千葉清孝 12.6 -29.9 26.7 -8.4 1.0
19位 高橋通 -22.1 -17.1 9.0 30.7 0.5
20位 皆川直毅プロ三段 -6.5 -36.8 9.2 34.3 0.2
21位 佐々木志朗 -34.9 52.8 30.1 -50.9 -2.9
22位 佐藤成幸 32.5 11.6 -5.7 -42.7 -4.3
23位 越前琢磨アマ二段 29.4 10.8 -3.2 -45.6 -8.6
24位 渡邊秀之 -10.9 3.5 23.5 -26.4 -10.3
25位 相楽清明 -3.9 -26.8 -34.3 54.4 -10.6
26位 内ヶ崎敬 11.4 -3.6 21.2 -42.0 -13.0
27位 高橋将也 -10.3 25.2 -16.2 -12.4 -13.7
28位 吉田勝弥プロ三段 -29.4 -7.8 -18.8 42.3 -13.7
29位 田村茂利 -18.3 -9.4 5.0 6.3 -16.4
30位 佐々木敏昭 -5.8 -17.1 17.1 -15.4 -21.2
31位 森山茂和プロ九段 -20.5 10.6 10.5 -27.6 -27.0
32位 高宮まりプロ二段 -4.0 -8.0 -24.5 2.0 -34.5
33位 小野寺勝也 -39.4 -10.0 4.3 7.0 -38.1
34位 猪又研一 28.7 -36.9 -32.7 -7.4 -48.3
35位 津島弘光 -51.9 16.1 -5.3 -8.4 -49.5
36位 佐藤春樹 -26.5 -51.4 32.2 -5 -50.7
37位 高橋貞孝 -18 6.1 -29.1 -12.3 -53.3
38位 村上正勝 1.7 -5.4 -56.0 -18.9 -78.6
39位 只野裕次 5.4 -23.8 -37.6 -30.6 -86.6
40位 高橋裕幸 -29 -3.5 -45.3 -13.8 -91.6

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東北プロリーグ レポート/第三回震災復興麻雀大会レポート 吉田勝弥

第三回震災復興麻雀大会レポート:吉田勝弥
6月29日(日)に行われた、第3回震災復興麻雀大会のレポートをお伝えします。
今回で3回目になる震災復興麻雀大会は、登米市にある健康麻雀が主催する大会であり、日本プロ麻雀連盟の協力で、東京本部から最高顧問・小島武夫プロ九段、日本プロ麻雀連盟会長・森山茂和プロ九段、清水香織プロ五段、高宮まりプロ二段と、豪華なメンバーにお越しいただきました。
 

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東北本部からは、本部長・平田孝章プロ六段をはじめ、東北プロ6名、計10名参加。
一般参加は、前回優勝者(現東北最強位)、麻雀大会優勝者、健康麻雀上位者、フリー麻雀トップ上位者、岩手県、石巻市、気仙沼市、南三陸町被災地代表など計30名、合計40名のプロアマ混合戦になりました。
私もプロと被災地代表の名誉をかけて、優勝めざして大会に挑みました。
今回は4回戦の合計ポイントで上位を競うシステムです。
1回戦では、平田プロが+50.4Pと好調のスタートを切り、2回戦では、健康麻雀優勝者の星、南三陸町出身の佐藤さん、今大会スポンサーの小野さんが追い上げてきました。
中盤3回戦に入ると、地元登米市の及川さんが気合いの3連続トップを取り首位にたちます。
それを追いかけるように、去年準優勝門田さんが2番手に上がってきます。
期待の若手、野家さんが3番手と、平田、星さん、佐藤さんをかわす展開となります。
前回の優勝者である越前さんは、+37.0Pと逆転圏内と去年の再現となるか!?
プロでは、粕谷プロが+39.8Pと最終戦にかけた。
大里プロ、小島プロ、森山プロもプラスポイントを維持していますが、苦しい勝負展開。
最終4回戦、プロの意地で、平田プロ、清水プロが巻き返しを狙いますが届かず、結局、勢いが止まらないまま4連続トップの及川さんが+116.0Pと逃げ切り優勝を飾りました。
門田さんも最終戦トップで粘りを見せましたが、惜しくも準優勝。
2年連続の準優勝で、実力を証明しました。
優勝した及川浩光さんおめでとうございました。
優勝者には、日本プロ麻雀連盟からアマ三段の免状が授与されます。
今後の活躍も期待しております。
一流プロたちと麻雀ファンが一緒に参加した今大会は、被災地に元気がもらえて素晴らしい大会となりました。
参加者皆様の温かいご支援ありがとうございました。
大会成績上位10名
優勝:及川浩光様+116.0P(三段免状)
準優勝:門田吉郎様+96.9P(二段免状)
3位:平田孝章プロ+71.0P
4位:佐藤健矢様+64.7P(初段免状)
5位:野家龍治様+48.4P
6位:星孝典様+43.9P
7位:清水香織プロ+35.5P
8位:及川大輝様+30.9P
9位:大里奈美プロ+27.7P
10位:小野正孝様+25.1P
平成26年6月30日
南三陸町へ支援金贈与
日本プロ麻雀連盟 最高顧問  小島武夫
日本プロ麻雀連盟 東北本部長 平田孝章
日本プロ麻雀連盟 代表    清水香織
大会実行委員会  委員長   吉田勝弥   計4名
南三陸町被災地訪問をして、南三陸町役場でチャリティ金寄贈式
南三陸町長 佐藤仁 支援金 10万円贈与
今大会の参加費等の一部と、参加プロのゲスト料の一部を支援金として贈与できました。
ご協力ありがとうございました。
gpmax2012

順位 名前 1回戦 2回戦 3回戦 4回戦 合計
優勝 及川浩光 19.1 23.8 24.2 48.9 116
準優勝 門田吉郎アマ初段 5.6 42.7 14.1 34.5 96.9
3位 平田孝章プロ六段 65.4 -28.8 -17.1 51.5 71.0
4位 佐藤健矢 22.0 34.1 -5.6 14.2 64.7
5位 野家龍治 25.2 1.9 32.1 -10.8 48.4
6位 星孝典 34.2 24.5 -37.4 22.6 43.9
7位 清水香織プロ五段 -39.9 12.7 24.7 38.0 35.5
8位 及川大輝 -7.1 31.2 33.3 -26.5 30.9
9位 大里奈美プロ二段 -1.6 15.1 -1.7 15.9 27.7
10位 小野正孝 -26.4 79.2 -1.8 -25.9 25.1
11位 小野寺正文 36.3 -37.7 -9.1 34.8 24.3
12位 小島武夫プロ九段 7.9 38.8 -36.9 12.3 22.1
13位 山田直志 25.6 -30.6 12.2 12.4 19.6
14位 小野寺豊 -10.8 32.8 -33.5 27.3 15.8
15位 粕谷勇吉プロ三段 7.8 31.0 1.0 -25.3 14.5
16位 佐藤大介プロ三段 11.2 -29.5 4.5 21.0 7.2
17位 首藤弘二 -6.6 6.1 14.8 -8.7 5.6
18位 千葉清孝 12.6 -29.9 26.7 -8.4 1.0
19位 高橋通 -22.1 -17.1 9.0 30.7 0.5
20位 皆川直毅プロ三段 -6.5 -36.8 9.2 34.3 0.2
21位 佐々木志朗 -34.9 52.8 30.1 -50.9 -2.9
22位 佐藤成幸 32.5 11.6 -5.7 -42.7 -4.3
23位 越前琢磨アマ二段 29.4 10.8 -3.2 -45.6 -8.6
24位 渡邊秀之 -10.9 3.5 23.5 -26.4 -10.3
25位 相楽清明 -3.9 -26.8 -34.3 54.4 -10.6
26位 内ヶ崎敬 11.4 -3.6 21.2 -42.0 -13.0
27位 高橋将也 -10.3 25.2 -16.2 -12.4 -13.7
28位 吉田勝弥プロ三段 -29.4 -7.8 -18.8 42.3 -13.7
29位 田村茂利 -18.3 -9.4 5.0 6.3 -16.4
30位 佐々木敏昭 -5.8 -17.1 17.1 -15.4 -21.2
31位 森山茂和プロ九段 -20.5 10.6 10.5 -27.6 -27.0
32位 高宮まりプロ二段 -4.0 -8.0 -24.5 2.0 -34.5
33位 小野寺勝也 -39.4 -10.0 4.3 7.0 -38.1
34位 猪又研一 28.7 -36.9 -32.7 -7.4 -48.3
35位 津島弘光 -51.9 16.1 -5.3 -8.4 -49.5
36位 佐藤春樹 -26.5 -51.4 32.2 -5 -50.7
37位 高橋貞孝 -18 6.1 -29.1 -12.3 -53.3
38位 村上正勝 1.7 -5.4 -56.0 -18.9 -78.6
39位 只野裕次 5.4 -23.8 -37.6 -30.6 -86.6
40位 高橋裕幸 -29 -3.5 -45.3 -13.8 -91.6

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