特別昇級リーグとは、上位数名が一気に上位リーグへと上がる権利を得ることができる千載一遇のチャンスである。参加条件は4大タイトルに出場している40歳未満で鳳凰位プロリーグ戦やタイトル戦で好成績を収めた者たち。今回は1位がB2リーグ、2位がC1リーグ、3位がC2リーグに昇級できるが、昇級には今期の鳳凰位プロリーグ戦で欠場や休場せずにプラスの成績を残すことが必要であり、決勝に残った5人は自分の現在のリーグと準決勝までのポイントが持ち越しなのでそれも踏まえて目標を設定する。
今回決勝に残ったのは
小林正和+243.9P(C3リーグ▲15.5P)
山田学武+105.5P(D1リーグ+111.1P)
岩井健太+65.7P(C2リーグ▲57.7P)
菊原真人+52.3P(C3リーグ+34.8P)
奥津勇輝+29.6P(D2リーグ+41.7P)
2位から5位が75.9P差なのに対して1位と2位の差が138.4Pと倍近く離れている。小林を含め全員が2位でも1つ以上昇級できる。
今回の目標設定を確認したところ、小林はもちろん1位狙いで2位争いをさせたい。山田は敗退条件の1つである▲100Pを2節目と3節目の途中に二度越えてしまったところから奇跡の生還で2位まで上がってきた勢いを信じ1位狙い。岩井は11月に入ってからの対局で調子を崩しているのもあり確実に2位狙い。菊原、奥津は3位狙いで1回戦の結果次第では2位狙い。
1回戦(起家から菊原、奥津、山田、岩井)
東1局、いきなり南家の奥津が国士狙いで、7巡目に10種11牌からドラの
を先切りするも、親の菊原がポンして









ポン

ドラ
この形。菊原の上家の岩井ががっちりガードして、菊原はようやく5巡後に
をひいて
切りで広く受けるも、2巡後
をもってきて奥津の国士を評価して
切り。4巡後にようやく
をひいてテンパイも、固く
切りで最後のツモで
ツモでしっかり
を切って結局1人テンパイスタート。
東1局1本場も、北家の岩井に4巡目に
ポンされるも、菊原は難しい手をノーミスで7巡目にツモアガリ、500は600オールで加点。
東1局2本場、7巡目に岩井が七対子ドラドラ
単騎でテンパイ。次巡、
単騎に変更するもリーチせず、そしてすぐに菊原が
放銃で6,400は7,000。岩井ががむしゃらに1位を狙っていないことがわかる1局であった。
東2局、山田が2巡目で












ドラ
この形。4巡目に
を暗槓して6巡目に









暗カン


リーチ
これでリーチ。8巡目に親の奥津が追っかけリーチ、すぐに山田がつかみ2,000点の放銃。この局は山田が1位を狙っているのがわかる1局であった。
東2局1本場では、岩井と山田が手を大きく育てていき、岩井が七対子とメンツ手の難しい選択をうまくまとめ、山田は内へ内へ寄せていき12巡目に、












ドラ
このフリテンリーチ、同巡、岩井がドラの
を引いて













これでテンパイもリーチはせず。結果は、14巡目に山田が
をツモって1,300・2,600は1,400・2,700のアガリをものにする。
東3局と4局、岩井は2,000、4,800と立て続けにアガリ、そのまま大きく加点するかと思ったが、1本場の親は奥津が6巡目で1,000は1,300を菊原からアガリ南入。
南1局ドラ
、山田が鳴き、12巡目奥津がドラ3枚でリーチカン
待ち、15巡目、岩井が
と
のシャンポンでツモり三暗刻のテンパイでリーチ宣言牌の
が山田に2,000の放銃となる。
南2局も3人がぶつかる展開だったが、最初にテンパイした山田が菊原から3,900をアガリきり、親をもってくる。
しかし南3局の親では粘れず、菊原がピンフドラドラの3面張の

は待ちで13巡目にリーチ。ダブ
をポンしていた岩井が、









ポン

ドラ
ここから現物になった
をチーして追いつくも、
をひいて
切りで迂回、ハイテイで
をひいてテンパイして2人テンパイ。岩井はドラを押していればハイテイで2,000・3,900のアガリがあったが、やはりここも2位狙いが顕著にでていた局であった。
南4局、3巡目に岩井が
ポンするもその後進まず、奥津が2フーロして、11巡目に岩井から1,000は1,300をアガリ1回戦終了。
1回戦結果
岩井:+18.0P、山田:+6.5P、奥津:▲8.2P、菊原:▲16.3P
トータル
小林:+243.9P、山田:+112.0P、岩井:+83.7P、菊原:+36.0P、奥津:+21.4P
岩井が狙い通りの麻雀を打ち切り、2位に接近し菊原を引き離す。
2回戦(小林、岩井、菊原、奥津)
東1局いきなり親の小林に手が入るも












ツモ
ドラ
10巡目で
をツモ切りで567一本に決め安全牌を残す選択をする。12巡目、
をもってきて先行リーチ。このリーチに対して3人は勝負。16巡目に一気に動き出す。
を鳴いている岩井が、ペン
待ちから頭が暗刻になって
勝負でドラ単騎へ。菊原は追っかけリーチ、奥津が









ポン


このシャンポン待ちで、ラス牌の
ツモでホンイツのみは700・1,300をツモアガリ決着。ここは山田を逃さないためなのか1位を狙ってなのか全員が勝負にいく展開となった。
東2局、小林が2巡目に
ポンで動いて










ポン

ドラ
これで
切り。その後、
ポン、
チーで



チー

ポン

ポン


この形。すぐに
ツモ、
ツモで
切り、それを岩井がチーして









チー


小林は
をツモで12巡目に
でテンパイ。次巡
ツモで小考の末ドラの
切り、2巡後、岩井は
をひいて
を勝負し、結局このまま2人テンパイとなった。小林の仕掛けに対してかなり受け気味の岩井だが、
を重ねてからしっかりテンパイをとりにいき
の勝負までとてもお手本になる局であった。小林は対局後、1回戦が終始フワフワしていたというように2局で全く違う顔をみせた。
東2局1本場10巡目、菊原が2枚目の
をポン、12巡目に奥津が放った
が菊原に放銃、









ポン

ドラ
6,400は6,700。奥津はいくかいかないか中途半端な選択だったらしく、この局を対局後に一番悔やんでいた。
東3局、親の菊原が鳴きから1,000オールをツモ。1本場で岩井が6巡目で












ドラ
これでリーチ、8巡目に小林が234の三色の1シャンテンで
を押すも、その後危険牌でまわり、13巡目、岩井が安めの
をツモアガリ1,300・2,600は1,400・2,700。
東4局はまたも小林が三色に手牌をのばし、11巡目に












ドラ
この形でリーチ。12巡目、菊原が
を放銃してしまい、小林は一気にトップ近くまで浮上。
南1局では、親の小林がピンフを菊原からアガリ、1本場、岩井が配牌ドラ3の手を6巡目で
チーして









チー

ドラ
このテンパイ。10巡目、小林から
でアガリ7,700は8,000。
南2局、ドラ
8巡目に、菊原が七対子
単騎でリーチ。岩井は好配牌だったもののまわってしまい、テンパイできずに流局。やはりここも2位狙いを考えてか、親番でトップ目ということもあり菊原のリーチにはあまり無茶をしない選択をした。
南3局親の菊原の鳴き、12巡目に奥津のリーチの中、小林が2フーロして奥津からアガリきり1,000は1,300と供託2本を回収。
南4局も、9巡目に小林が仕掛けていきテンパイし、11巡目に親の奥津からリーチくるも、13巡目に
をツモアガリ500・1,000でしっかりと浮きの2着とした。
2回戦結果
岩井:+18.3P、小林:+6.1P、菊原:▲6.7P、奥津:▲17.7P
トータル
小林:+250.0P、山田:+112.0P、岩井:+102.0P、菊原:+29.3P、奥津:+3.7P
小林は積極的な局回しで上手く浮いて終わらせた。奥津、菊原は2連続で沈んでしまい、残り2回で3位以内に入るためにはほぼ2連勝条件となった。
3回戦(奥津、菊原、山田、小林)
東1局8巡目菊原












ドラ
これでリーチ。あとがなくなった菊原がさっそく攻める。奥津が何枚か押して15巡目、ようやく追っかけリーチ。同巡、安牌に窮した山田が
の後筋と
のワンチャンスで
を菊原に放銃してしまい8,000の失点。リーチしない人も多い形をリーチして最高の結果にした菊原が見事だった。
東2局、親の菊原が8巡目にリーチで1人テンパイ、1本場は奥津が300・500は400・600をツモアガリ。
東3局、親の山田が11巡目にリーチで1人テンパイ。1本場は、菊原が7巡目に2枚目の
をポンして









ポン

ドラ
この形。10巡目に
をひいて長考の末、カン
のほうをさばいていく。この判断がピタリとあい、次巡
ひき、13巡目に
ツモで、1,000・2,000は1,100・2,100のアガリをものにする。
菊原の1人浮きのまま、南2局菊原の親になり、10巡目に













これでリーチ。小林が一発で入り目の
を押し、次巡、山田がカン
をチーして









チー


この形で応戦するも、15巡目に菊原は
をツモアガリ、2,000オールとする。
その後は小林と山田が細かくアガリ、最後は全員テンパイできずに3回戦終了。
3回戦結果
菊原:+32.8P、小林:▲4.3P、奥津:▲9.6P、山田:▲18.9P
トータル
小林:+245.7P、岩井:+102.0P、山田:+93.1P、菊原:+62.1P、奥津:▲5.9P
菊原はなんとか大トップをとり、3位以内の可能性を残した。
奥津はまたしても浮けずに、3位まで99P差で並びを作った上に大きいトップ条件となってしまった。
2位岩井と3位山田の差が8.9Pで接戦になっており小林はほぼ安泰に。
4回戦(奥津、小林、岩井、山田)
東1局、まずは岩井が先制。8巡目に












ドラ
ここに
をひいてシャンポンでリーチ。12巡目にあとがない親の奥津がチーから
切りで5,200の放銃。
東2局は4巡目に、山田が攻めるしかない奥津からドラの
をポン次巡
ポンで、上家の岩井は、三暗刻役牌含みの2シャンテンから守りに入り、1枚も鳴かさず。
13巡目に山田は自力で






ポン

ポン

ドラ
ここに
をひきテンパイするも、岩井が見事に受け切り、奥津、山田の2人テンパイ。岩井自身もチャンス手でありながら2位争いである山田にしっかり対応。初戦からみせている2位狙いの麻雀を魅せつける。
東3局は、山田が700・1,300は800・1,400をツモアガリ。
東4局、親の山田は7巡目にチャンタ三色の1シャンテンになるも、その後伸びず、15巡目に奥津からリーチを受け、17巡目になんとか単騎のテンパイをいれる。最後のツモで奥津のアガリ牌をつかむも通っていない2択をしっかり正解して、2人テンパイ。
東4局1本場では、5巡目に山田が












ドラ
これでテンパイ。7巡目に
単騎に変更して、9巡目に1枚切れの
をひいて変更してリーチ。ここでアガれば遠かった1位が少しだけ見える勝負手も、11巡目に小林がリーチの現物の
で奥津に2,000は2,300を放銃で親落ちとなってしまった。
奥津の最後のチャンスとなる親番の南1局は、奥津、小林の2人テンパイ。
南1局1本場では、5巡目で山田が












ドラ
この形でテンパイも、
が3枚きれでリーチせず。奥津は6巡目に
をポンして









ポン


これでテンパイするも、無情にも9巡目に
をつかみ山田に1,300は1,600を放銃してしまい、ほぼここでノーチャンスとなってしまった。
南2局は親の小林が13巡目に
ポンで
でテンパイ。次巡、岩井がピンズの一通含みピンフドラ1の1シャンテンで
をつかむも、しっかり押さえ16巡目に重ねてもう1つの雀頭である中筋の
を切り、結局テンパイできずに小林1人テンパイであったがまた岩井の堅実さが光った。
南2局1本場は、小林が12巡目に












ドラ
この形でテンパイ。16巡目に岩井が













これでリーチ。しかし勝者は山田、小林が放った
をしっかりとらえ1,300は1,600のアガリ。
南3局、親の岩井は4巡目












ドラ
ここに
ツモで長考の末、
切りを選択。次巡、
をひいて
切り、8巡目、
をもってきて
切り。同巡、小林が













これでテンパイ。9巡目、小林は
をもってきて考えてツモ切りリーチ。11巡目、岩井は
をひいて














これで
切りリーチ。得点状況から熾烈な2位争いになっており、岩井以外が小林を応援するリーチ対決。小林は
でアガリ逃し、岩井は
でアガリ逃しした後、17巡目、岩井が
をツモアガリ、3,900オール。難しい手順を岩井が一番高く仕上げた。
南3局1本場は、山田がなんとか小林から1,000は1,300をアガリ、オーラス勝負に。山田が35,600、岩井が38,500。
南4局、まず親の山田が500オールツモ。リーチ棒1本回収で、山田38,100、岩井38,000。
南4局1本場、奥津以外がテンパイで、山田39,100、岩井39,000。
南4局2本場、4巡目山田が
ポン、6巡目、岩井が












ドラ
これでテンパイ。11巡目、山田が
ポンして






ポン

ポン


これでテンパイ。12巡目、小林が
を岩井に放銃して決着。
4回戦結果
岩井:+18.9P、山田:+13.1P、奥津:▲13.7P、小林:▲18.3P
トータル
小林:+227.4P、岩井:+120.9P、山田:+106.2P、菊原:+62.1P、奥津:▲19.6P
小林は、最後の放銃でラスとなるが、100P以上の差はキープ。岩井は山田との接戦を制しリードを広げる、いよいよ最終戦この後熾烈な2、3位争いが展開される。
5回戦(岩井、山田、菊原、小林)
東1局8巡目、親の岩井が












ドラ
これでテンパイもリーチせず。すぐに山田からアガリ3,900の加点。
東1局1本場、菊原が4巡目に
ポン、9巡目に
ポンで






ポン

ポン

ドラ
これでテンパイ。11巡目、山田がテンパイ打牌で
を菊原に5,200は5,500を放銃。
東2局、山田の親を菊原は14巡目にリーチのみで16巡目にツモアガリ、500・1,000の加点。
東3局、親の菊原がリーチのみを岩井からアガリ、1本場、菊原は鳴きで目一杯いくも、
をポンしている山田に2,000は2,300を放銃。
東4局3巡目、菊原が












ドラ
ここから
をポン、5巡目
をチーして






チー

ポン


7巡目、
ツモで
切り。8巡目、
ツモで





のテンパイ。その後ドラをノータイムでツモ切り、14巡目に山田が
を切ってしまい菊原に7,700の放銃。ドラが2枚見えて菊原の打点を低く見積もってしまう痛恨の放銃となった。
これで東場が終わり、岩井31,400点(+126.3P)、山田14,200点(+82.4P)、菊原44,900点(+85.0P)、小林29,500点(+222.9P)と菊原が3位に浮上。
南1局、菊原が
チー、山田が
ポンで仕掛ける中、小林が10巡目メンホン七対子で地獄の
待ちでテンパイするも、14巡目、岩井が菊原の
単騎に放銃して2,000。
南2局菊原が3位争いをしている山田の親で動く。4巡目に
をポンして、6巡目に









ポン

ドラ
この形。9巡目、小考の末山田が













これでリーチ。菊原は宣言牌の
をチーして






チー

ポン


11巡目、
もチーして



チー

チー

ポン


これでテンパイ。
菊原は、ほとんどの牌を勝負するつもりだったらしいが、マンズの真ん中から上だけは切らないと決めており、16巡目に
をもってきてオリ。山田の1人テンパイ。
南2局1本場は、岩井と菊原が仕掛け、山田も攻めるが13巡目に余裕のある小林が、岩井に1,000は1,300を放銃して終わってしまう。
これで岩井30,700点(+125.6P)、山田16,200点(+84.4P)、菊原45,900点(+86.0P)、小林27,200点(+220.6P)で残り2局を残すのみとなった。
南3局、3位を争う2人がぶつかる。10巡目、親の菊原が












ドラ
これでリーチ。11巡目、山田が













これで追っかけリーチ。この勝負は13巡目に菊原が
をツモで制し4,000オールを決める。
これで岩井が+116.6P、山田が+79.4P、菊原が+103.0Pと菊原が山田を引き離し2位まで見えるが、南3局1本場は、岩井が12巡目に












ドラ
これでリーチ。15巡目に岩井が
ツモで2,000・3,900は2,100・4,000ツモで終始狙い続けた2位をほぼ手中に収める。
これで岩井34,900点(+129.8P)、山田9,100点(+77.3P)、菊原54,900点(+95.0P)、小林21,100点(+214.5P)。
南4局は、小林が親のため1局で終わるので小林はオリ。岩井はアガるか放銃しないことで2位。山田は菊原から跳満直撃、跳満ツモで3位、岩井から三倍満以上直撃、役満ツモで2位。菊原は、岩井から倍満直撃、または三倍満ツモで2位、アガれば3位の条件となった。
菊原は8巡目に悩んで
をポンして









ポン

ドラ
2位を諦め3位を死守する選択をとる。14巡目に
をひきテンパイ、結局山田には条件が入らず、他2人はオリてそのまま菊原の一1人テンパイで決着。
5回戦結果
菊原:+35.9P、岩井:+7.9P、小林:▲13.9P、山田:▲29.9P
トータル
小林:+213.5P、岩井:+128.8P、菊原:+98.0P、山田:+76.3P、奥津:▲19.6P
第25期特別昇級リーグは、危なげなく戦い続けた小林の優勝となった。
岩井は1回戦から見せ続けた2位狙いをしっかりやり遂げた。
3回戦までは70P以上離れていたところから、大逆転で菊原が3位。
優勝を狙って戦った山田が4位。1回戦から苦しい戦いとなった奥津が5位となった。