【第18期プロクイーン】

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何を切る? 2020年6月

第1回クイーンズリーグ 4回戦 南2局 東家 高宮まりプロ

 

 

 

 

 

■ Twitterで実施したアンケートの結果

 

 

 

■プロ解答

二筒切り

 

 

 

 

四万切り

 

 

 

■実況・解説陣

 

 

佐々木寿人「四万!345の変化もある。」
山井弘「ぼくは二筒ですね。」
内藤正樹「ぼくも二筒かな。」
山井弘「七筒切りは2シャンテン戻しですからね。素直に1シャンテンに受けるとカン六筒のテンパイになっているところですが、高宮プロには何か見えているんじゃないですか?我々の想像を超えるアガリがきっとあるんですよ。」

 

■プロの視点
高宮まりプロ「リャンメン待ちリーチで攻めたかったので、良形変化を狙って2シャンテン戻しとしました。ダイレクトの六筒引きは痛いですが、345三色は残りますし、ドラ九万という中での宮内プロ・和久津プロの捨牌から、マンズ・ソーズの中程の牌は悪くなさそうなのでフォローはできるかなと考えました。本線はリーチなのですが、この後トップ目の和久津プロから仕掛けが入り、さらに二万が不安になってきた段階で仕掛けも視野に入れていました。」

 

■終局図

 

 

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第209回:プロ雀士インタビュー 本田 朋広  インタビュアー:木原 翼

本田プロに初めて会ったのは、2017年10月の王位戦北陸予選。
その王位戦予選で同卓したかもしれないとお互い薄い記憶があるくらいで、次に会うときは新しい年になっており私はプロになっていた。

まだ2年程の付き合いである。
その後はセットをやってもらったり、たまに連絡を取りあって麻雀やスポーツの話をする感じで良くしてもらっていた。

私は去年関東に引っ越していたので、今回のグランプリ期間中には頻繁に連絡を取って、試合後、富山に帰れないときはご飯に連れてってもらったりした。
大変お世話になっており優しくて穏やかな人である。
すき焼きが続いたのできっと好物なんだと思う。

 

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長くなりましたが、編集部の観戦記にもありましたように、今回本田プロの優勝インタビューをさせて頂きますのは、北陸支部所属34期生の木原翼です。
初めてのインタビューで至らない点が多々あると思いますが、最後までよろしくお願い致します。

〈本田プロのプロフィール〉
1983年10月3日生まれ A型
富山県出身 独身(募集中と言ってました)
28期後期入会(8年目) 鳳凰戦C2リーグ
第2期北陸プロリーグ優勝
第20期北陸プロアマリーグ優勝
大学卒業後、自分の雀荘を持つために勉強として雀荘に就職。
25才で現在のお店をオープンし28才でプロになる。
趣味は映画鑑賞(主にサスペンス系)

決勝戦のその日にも会ったが、3月末に改めて約束しインタビューさせてもらった。

木原「改めて優勝おめでとうございます!」

本田「ありがとう。」

木原「1人だけ飲んですいません笑」

本田はお酒が飲めない訳ではないが控えているそう。

 

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木原「まずはグランプリ振り返ってどうでした?」

本田「普段中々打てない強い人とたくさん打てて楽しかったよ。その中でも同期の柴田くんは意識したよね。タイトルもいくつか獲ってる出世頭だし負けなくないって凄く思った。」

木原「あとはやっぱり大三元ですかね。」

本田「ね。2回目は逆にやめてくれと思ったよ笑 テンパイしてからはポイント差もあったから色々考えてて頭こんがらがってた笑」

本田はグランプリMAXの予選で2回大三元をアガっている。
どちらも白で出アガリ、2回目に関してはメンゼンでツモれば四暗刻も付くダブル役満の形だった。
この局はYouTubeの日本プロ麻雀連盟チャンネルにアップされているので是非ご覧下さい。

 

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木原「決勝の面子が決まったときはどうでした?」

本田「キツいよね。道中もみんな何でも出来るけど、決勝が特に全員穴が無いなと思ったよ。」

木原「決勝戦の前にシミュレーションとかしてました?例えば劣勢だったら初日はここまでに抑えようとか。」

本田「そういうのは一切なかったよ、守るのはやめようって。事前に色々考えて上手く打とうと思ってもボロが出るだけやし、マイナスしたときはそのとき考えようって思ってた。」

木原「1回戦が大きなトップから始まり、結果的には初日を2番手と80P以上の差で終えたんですけど、どの辺りから今日は行けそうだなって思いました?」

本田「2回戦南4局1本場かな。オーラストップ目で迎えたけどラス親の直さんがアガって2着になった局。そのまま浮きで終わろうと仕掛けたんだけど、運よくドラが重なってアガれて再逆転したときは行けそうだなって思った。ツイてただけだろうけどね笑」

 

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一万二万三万五索六索一筒一筒七筒八筒九筒  ポン白白白  ツモ四索  ドラ一筒

白ドラ2で1,000・2,000は1,100・2,100のツモアガリで再逆転

・初日終了時点でのポイント
本田+82.6 吉田+0.6 内川▲30.5 山田▲52.7

木原「最終日迎えるまでの心境はどうでした?」

本田「毎日そのこと考えてたよ。結局最終日までにどうしたらいいか考え切れんかったし。ポイント的にはかなり余裕があるけど、今まで色んな決勝見てきてすんなり終わったのは無いからさ。
それで5回戦東1局1本場にヒロさんの見逃しを見て、試練はこんなにすぐやってくるものかと。
頭真っ白になったよね笑」

 

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木原「最終日は苦しい展開が続いてましたが、勝てると思ったのはどこですか?」

本田「7回戦でホンイツアガって浮きで終わったときやね。」

 

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本田「あとは1つずつ消化していけば大丈夫かなと思ったけど全然ダメだった。勝てるって思ったのもダメやっただろうね。特にラス前は極限状態やった。リーチに対してオリる牌選び間違えたりしたし、特に南3局3本場のヒロさんの6,000オールはヤバいって思った。こっちから見たら、開いた瞬間四暗刻に見えてドキドキしたし笑」

木原「最後はしっかり押して決めましたけど、道中鳴く選択肢はあったんですか?タンヤオや一気通貫の片アガリなどありましたけど」

本田「役が確定する鳴きはしたと思うけど、片アガリになる鳴きはするつもりはなかったね。最近はああいうの鳴く人も多いのかもしれんけど。」

実際に山田から出た七筒はチーせず一索を引き入れ打八筒六索を引き入れテンパイし打六筒と勝負して見事にアガリを決めた。

 

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二万三万五万五万一索二索三索四索五索六索六索七索八索  ロン四万  ドラ三万

ピンフドラ1で2,000は3,200の出アガリでオーラスへ

木原「最後の1局はどうでしたか?」

本田「条件がみんな一緒やったし最後は楽やったよ。」

そのまま山田、内川の2人テンパイで最終8回戦が終わり本田の優勝が決まった。
今大会通して本田は押すところでしっかり押してアガリ切っていた印象がとても強かった。
最後の牌が来るかどうかは紙一重ではあるが、その姿勢に牌も答えてくれてたのではないかなと思う。

木原「今後の目標はなんですか?」

本田「もう1回勝つことやね。色んなシードやチャンスももらえるし。勝つまではそこまで勝ちにこだわってなかった感じがあるけど、1回勝ったら周りからそういう目線も入ってくるし、マグレとは思われたくないから早く名前を残したりもう1つタイトルが欲しいよね。」

木原「プライベートだと?」

本田「お店出せたらいいなとは思ってるよ。」

木原「試合以外のことで聞きたいのは、ゲン担ぎやルーティンってあります?例えば赤のネクタイがかなり多かったんですけど」

 

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本田「北陸プロリーグで優勝したときのネクタイだから多めにしてた。あと、他のネクタイが不評だったのもある笑」

木原「他にはあります?」

本田「北陸プロリーグの日に、試合前にみんなでサイゼリア行ったんやけど、そのときミラノ風ドリアと小エビのカクテルサラダを食べて優勝したから、そのあとのグランプリの日も試合前に行って同じの食べてたよ。」

木原「これからも食べるんですか?」

本田「別に食べないかな。あとは試合時間に合わせて寝る時間変えたりとか、ちょっと良い栄養ドリンク買って途中で飲むとかはあるね。」

木原「なるほど。他に何か聞きたいことあるかな~。」

本田「なんか甘いもの食べようよ。ここなんかある?」

木原「ここはアイスくらいしかないんで喫茶店行って食べて解散しましょうか。」

こうしてインタビューは終わった。
本年度、マスターズは北海道本部の真光プロ、王位は中部本部の森下プロ、そしてグランプリMAXは北陸支部の本田プロ。
地方所属プロがタイトル戦で結果を残し、それぞれの所属する各本部支部に刺激や希望を与えただろう。

地方から東京へ来るには色々な面で負担も大きい。
本田も北陸プロリーグからグランプリMAXの決勝までの約2ヶ月で8回も富山から通っている。
地方からでも各本部支部やプロ個人から様々な方法で発信や活動をしているので是非応援して頂けたらと思います。

長くなりましたが最後までご覧頂きありがとうございました。
本田プロおめでとうございます!

 

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ロールケーキを目の前にして楽しそう。

【第2期小島武夫杯帝王戦及び第46期王位戦開催中止のお知らせ】

今年度の小島武夫杯帝王戦並びに王位戦は、新型コロナウイルスの感染が拡大している状況を鑑み、誠に勝手ながら開催を中止させていただくこととなりました。
ご参加をご検討いただいていた皆様にはご迷惑をおかけすることとなり大変申し訳ございません。
何とぞご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

第37期プロリーグ



第37期プロリーグ

B1・B2 C1・C2・C3 D1・D2・D3 E

A1リーグ 第1節
A2リーグ 第1節

Aリーグ、B1リーグの対局は連盟チャンネルにて生放送致します。
基本的に月曜日の17時からA1対局の配信、火曜日の17時からA2対局の配信となります。

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戦術の系譜7 西川 淳

はじめに。
深淵なる麻雀の世界のことを私はまだまだよくわかっておりません。偽らざる本心です。
正解が果たして何なのか、真理は何か。今でも探求するつもりで麻雀と向き合っています。

とはいえ、今年鳳凰位決定戦を戦った立場。
何かをお伝えすることができるかもしれません。
ここに至るまで、私が考え、整理してきたことを私なりの言葉でお伝えしていきたいと思います。
平易な内容にしたいと考える一方で抽象的なことも多く書くつもりですが、たまには毛色の違うものを試すつもりで読んでいただければ幸いです。

 

第1章

【① あの山を登りきるには】

 

麻雀はアガリへの道標として「シャンテン数」という概念がよく利用されます。

あと1枚有効な牌が来るとテンパイする状態を1シャンテン
あと2枚有効な牌が来るとテンパイする状態を2シャンテン
あと3枚有効な牌が来るとテンパイする状態を3シャンテン
と、最大で6シャンテンまであります。

3シャンテン2シャンテン1シャンテンテンパイアガリとシャンテン数を上げてアガリに近づいていきます。

しかしその道のりは均一ではありません。
[3シャンテン⇒2シャンテン]の道のりと[2シャンテン⇒1シャンテン]の道のりは険しさが違います。

例をみて確認してみましょう。

下の図は[3シャンテン]の牌姿です。

二万二万五万五万六万一索三索六索八索三筒五筒西北

シャンテン数を上げる「有効な牌」の種類は二万四万五万七万二索七索四筒7種類で24枚あります。

そこに有効な牌の四万を持ってきたとしましょう。
シャンテン数は上がり(アガリ形に一歩近づき)[2シャンテン]となります。

二万二万四万五万五万六万一索三索六索八索三筒五筒西

シャンテン数を上げる「有効な牌」の種類は二索七索四筒3種類で12枚になりました。

有効牌が半減している=シャンテン数を上げにくくなっているのですね。

つまり[3シャンテン⇒2シャンテン]より[2シャンテン⇒1シャンテン]のほうが困難な道のり、ということです。
[1シャンテン⇒テンパイ]は更に更に険しく、累進的に道のりはキツくなっていきます。
※もちろんこれはひとつの例であり、牌の組み合わせによってその度合いは変化しますし、細かい条件の話は多々あります。

ただ原則として、シャンテン数が上がる(アガリ形に近づく)と、道のりはより険しくなるということは間違いないと考えられます。

このアガリまでの道程の構図は、あたかも登山のようだな、と私は常々感じています。
頂に近づくほど、傾斜が厳しくなり、山頂付近が「胸突き八丁=物事を成し遂げる過程で一番苦しい正念場」。
全ての行程の中で最も苦しく難しい局面となります。

「そんなことはわかりきっている。常識として知っているよ。」と思われた方もいるかもしれません。
確かに、単純なことで、初心者教室で教わる内容と大差ありません。そしておそらく真理にかなり近いことだとおもわれます。

しかし、私たちは本当にこの真理に沿った打牌、選択を常にしているのでしょうか?
登りたい山の頂をしっかりと踏みしめるために適切なアプローチをしているのでしょうか。

ベテランの方こそ、もう一度振り返っていただきたいことなのです。
この連載の中で常に根幹となる要素ですので最重要事項としてはじめに記しました。

 

 

【② 麻雀はBINGOゲームだ】

 

アガリが近くなるほど、道のりは険しくなる。
このことは、往々にして初心者にとっては不思議に感じる現象を起こします。

・抜群の好配牌をもらい早々に1シャンテンになった人が最後までテンパイできない。
・一番乗りでテンパイした人が、配牌がボロボロだった人に先にアガられる。

実際の牌姿をみて、検討しましょう。
(A、 B共に配牌)

A:四万四万六万八万三索四索五索六索七索八索五筒六筒八筒

B:二万二万六万一索四索七索三筒七筒東西北白発

Aは配牌にして1シャンテン。
Bの配牌は5シャンテンです。

誰が見てもAのほうが好配牌です。
アガリやすいのも、もちろんAのほうです。
ところが、少なくない確率でBのほうが先にアガることがあります。
経験豊富な人は、それをカラダで理解しているため、Aの配牌でもアガれるかどうかは微妙だと感じるし、Bの配牌でも決してあきらめたりはしません。

それはなぜなのでしょうか?

[1シャンテン⇒テンパイ][テンパイ⇒アガリ]は道のりが険しくなかなか進めないことがあるため、その間に逆転されることがあるからです。

逆に言えば、[5シャンテン⇒2シャンテン]くらいまでは、すいすい進むことが多いのです。ほとんどの牌が有効牌、となりますからね。

この現象は、麻雀を知らない人に伝えるとき、BINGOゲームに喩えるとわかりやすいことがあります。
BINGOは、パーティーのイベントなどでよく楽しまれるポピュラーなゲームです。
主に「5×5マス」のカードに抽選した番号のマスを空けていき、一列に揃ったら「BINGO」となり景品がもらえる、といった仕組みです。
あと1マス空いたら「BINGO」の人は「リーチ!」と手をあげ、参加者の前に進み出て注目されますが、その人が無事景品をゲットすることは思いのほか少ないですよね?
麻雀と同じで、最後の1マスを埋めることこそが、一番確率が低くて困難だからです。

 

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時々、こんな愚痴を聞くことがないでしょうか。

「配牌からこんな形の1シャンテンだったんだけど、最後までテンパイさえしないんだ!ありえないよ!」

三万四万五万六万七万三索四索五索二筒二筒四筒五筒五筒

たしかにツモ運はかなり悪かったと思いますが、確率的にそれほど珍しいことではなく2%弱くらいの割合でおこることなのです。
※少々乱暴な計算方法で実際の数値と少し違いますが計算してみましょう。
有効牌が7種類で、麻雀牌の種類が34種類ですから、有効な牌を1巡の間に引ける確率はざっくり34分の7しかありません。
流局までの18巡で有効牌を引けないことは、
(27/34)^18≒0.016=1.6%、となります。
これは「稀にみかける」程度の運の悪さ、です。
有効牌を10巡の間ひけないのは10%くらいあり、5巡の間ひけないことにいたっては3割程度もあります。
それ程に「テンパイすること」は難しく、有難いことなんですよね。

それなのに、上の牌姿で、12巡目に五万をチーすることを「もったいなすぎて論外だ」と糾弾するかたもいます。
上記の真理から鑑みれば、これらの考えや発言は、麻雀の本質から離れたものではないか、と私はみています。

 

 

【③ 山登りのコツ】

 

それでは、麻雀は、山頂に登るための険しい「胸突き八丁」を、「運よく」登れた人が勝つ単なる運ゲームなのか?というと私は違うと考えています。
なぜなら、険しい坂道を登るためのコツや技術が、登頂の成否に大きく影響すると考えているからです。

みなさんが、シャンテン数を上げるために、「達成確率を上げる魔法をどこかで1回だけ使って良い」と言われたら、何シャンテンのときに使用するでしょうか?
やはり、5シャンテンの時には使わず、一番達成が困難な1シャンテンやテンパイの時こそ使いますよね?
BINGOゲームなら、最後の1マスを空けるときにこそ、確率を上げる魔法を使うべきです。

ところが、麻雀では、魔法を使わなくても、技術や視野の広さでそれを成し得るのです。

具体的にはどういうことか。
幾つか例を挙げましょう。

例えば、
・テンパイしたときに待ちがリャンメン以上など良い待ちにする技術。
ペンチャン待ちに比べれば、最後の急坂を登りきる確率は格段にあがります。

例えば、
・テンパイしたときに、他から出てきやすい色の待ちにする読みの技術
・ヤミテンにしたらアガリやすいと判断できる技術
などなど。

これらは、登山ならば、山頂手前の崖に、道具を用意して登りきることに似ています。
それらは、経験や技術によって、事前に準備することができるのです。
逆に言えば、テンパイ時に慌てて用意できるものではありません。
事前に、3シャンテンや2シャンテンのときから先を見据えて備えておく必要があるのです。

また、コースが2つあったとしたら、どちらが登りやすいか見抜く眼力があるとも言えます。
つまり、南斜面と北斜面でどちらが登りやすいかを麓から千里眼で見抜き、地図を読み取り、計画的に踏破する力があるということです。

下の図の2つの山は、どちらが登りやすいと思いますか?
Bのほうが距離は長いし標高も高いのに、登れそうな気がしませんか?

 

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登山の達人は、ペース配分を間違えません。
最初からハイペースで飛ばして、最後の苦しいところでパワーが残っていない、といった失態はさらしません。
少し回り道をしても、結果的に登頂をしやすいルートを着実に選び取ります。

登山の目的を登頂とするならば、麻雀の目的は「1シャンテン」や「テンパイ」ではなく、「アガリ」でしょう。

・3シャンテンの時に、ポンやチーをしてテンパイまでを急ぐあまり、実はアガリから遠ざかってはいないでしょうか?
・手狭な手組にしたり安全牌を抱え込み過ぎて、アガリが遠くなってはいないでしょうか?

この機会にご自身のフォームで思い当たるフシがないか見直してみませんか?

 

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最後に私の実践譜(鳳凰位戦A1リーグ第6節)からです。
これはプロ連盟の何切る問題にも取り上げられました。

実践譜(鳳凰位戦A1リーグ第6節)

現在1シャンテンですが、ここで六万を切って2シャンテンに戻しました。
「そのほうが最後の『胸突き八丁』を登りやすいから!」と判断したからです。
1シャンテンを維持する七索切は、「テンパイまで」と「アガリまで」の坂がキツすぎると考えます。
時にはゆったりとあせらずに構えることが、実は近道となり有効であると考えています。

 

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今回お伝えしたかったことは、2点です。
麻雀は、シャンテン数が上がるほど、その先に進むのが難しくなる。1シャンテンやテンパイが最大の急所で力の使いどころ!
そして、その急所を乗り越えるためのコツは、実は序盤~中盤にあり、そこでの工夫や読みがものをいう!
これは、シンプルな話ですが、初心者~上級者まで本質的に重要なことで、常に合致しているかチェックしておきたいことだと思います。

次回は、このことを踏まえて、しかし全く違う方向性のことを書くつもりです。

「~入院~」 藤崎 智

2018年7月、麻雀界ではMリーグ発足の話題で盛り上がっており、ドラフト会議を直前に控えていた。
そんなとき連盟チャンネルで1つのニュースが流れる。「藤崎長期入院!」。

このときの自分の状況は、とりあえず現状命にかかわる状態ではないのだが、このまま放置するのは危険で、しっかりと治療してしまえば完治もするし再発の心配もほぼないということだった。
ただし入院の期間は2ヶ月から半年くらいかかるとのこと。とにかくいつ退院できるのか全く見当がつかっなかったが、治療を始めてみると思いのほか経過は良好で、もしかしたら1ヶ月くらいでの退院もありえるといったかんじだったため、ある程度退院のめどがたってからファンの皆さんに現状報告しようと思い、丸々1ヶ月何の情報も発信しなかった。

11人での変則開催となったA1リーグの生配信を病院のベッドで見て、コメントで藤崎重症説が飛び交っていたのもわかっていたのだが、「ご心配をおかけしてすいません。もうすぐ情報発信できると思いますのでもう少しお待ち下さい。」と思っていた。

約1ヶ月後にTwitterで現状報告したときのファンの皆さんの温かい反応は、おそらく一生忘れないと思うし、「麻雀プロ藤崎智」の一生の財産になった。
そして、何度もお見舞いに足を運んでくれた沢崎プロをはじめ多くの先輩方、毎日のようにLINEで連絡をくれた瀬戸熊プロをはじめ多くの仲間達に、そしてシーズン中のために多大な迷惑をかけてしまったにもかかわらず、誰1人として僅かな愚痴さえもこぼれなかったらしいA1の面々と運営・スタジオ関係の方々にあらためて感謝したい。「自分は恵まれている。人にも環境にも。」これがこの入院で強く思ったことである。

さて、ここまではカッコよく自分を着飾ってみたが、自分も基本ただのおっさんである。聖人君子でもなければ滝に打たれて精神修行をした経験もない。自分勝手ではあるが心配事もたくさんあった。

まずはリーグ戦の事。過去Aリーグでは前例が無い事なので、会長を含めた競技部で随分話合ってくれたらしい。いつ退院できるかわからないため入院の長さによって色々なケースの決定がなされたのだが、自分にとっては全てのケースにおいて恵まれた決定になっていた。結果的には50日の入院で2節欠場。欠場1節につき▲30ポイントで2節で▲60ポイント。正直1節でも欠場した時点で失格も覚悟していたし、もし2節欠場で戻っても、1節につき▲50ポイントが妥当かなと今でも思う。この優しい決定に対してA1の11人が誰も反対しなかったとも聞いた。本当に恵まれていると思う。

次に十段戦。このとき自分は十段位だった。しかし入院した時点で欠場は覚悟していた。そして決定戦の開幕には間に合わなかった。十段位決定戦は5人打ちである。従って1人欠場となっても4人打ちで開催可能な試合である。にも関わらず決定戦まで勝ち上がった4人全員で開幕を延期しても5人での開幕を希望してくれたらしい。マジか、、、。ここでもやはり恵まれていた。

最後にMリーグにも少し触れておく。今となっては実際ドラフトで指名されていたかどうかはわからない。しかし指名候補に名前を挙げていてくれていたチームがあったようである。入院直後は正直へこんだ。本当にツイてないとも思った。しかし開幕してからのMリーグの盛り上がりを見ていて思ったのだが、もし指名されてから入院してしまったら、もっとひどいのが、もし指名されていて開幕してから入院していたら、、、。
麻雀界にどれほど迷惑をかけていたかわからない。よくよく考えたらやはり恵まれている。そして翌年も参加させてもらっている。もう我ながらツキの塊である。

リーグ戦の話に戻す。数字だけみれば欠場のペナルティの▲60ポイントでも残り4節、残留は難しくない状況だった。しかし2ヶ月近く麻雀から離れてしまって感覚が全く戻らなかった。ここから負け続ける。
やはり感覚が戻らない状態でまともにポイントキープできるリーグではなかった。

最終節も最終戦の南4局まで近藤プロと熾烈な残留争いを繰り広げる。
最終節は降級を覚悟する局面が何度もあった。たまたま残留することはできたのだが、このまま入院前のような麻雀は二度と打てないかもしれない。そんな予感も漂っていた。

明けて2019年4月。不安を抱えたまま36期開幕。決して降級したら引退というわけではないのだが、自分の中では背水の陣に近い覚悟があった。
5節まではとにかく苦しかった。自分の中では決して悪くない感覚でも数字はマイナス。それまでは1節単位でいえば自分の調子をみてある程度ポイントは予想できた。

悪くない感覚で打っているときには、だいたいはプラスのポイントでまとめられていた。ところがマイナスが続く。とにかく数字以上に苦しんでいた。
とにかく勝てる気がしないのだが、「今期A1で打てているだけでラッキー」というポジティブな気持ちだけは持ち続けていた。

ということで今回はここまで。次回復活します。

第10期麻雀グランプリMAX決勝観戦記 最終日

残り半荘4回。最終日の解説はKADOKAWAサクラナイツ所属の沢崎誠とA2リーグ所属で昨年度WRCを獲得した藤島健二郎だ。
4半荘を終えて、ここまでのポイントは、

本田+82.6P 吉田+0.6P 内川▲30.5P 山田▲52.7P

藤島が言うように、日本プロ麻雀連盟の公式ルールにおいて、残り4回戦で80ポイントというのは大差といって良い。
そして、初のG1タイトルが目前の本田に対するアドバイスとして、2着との差が80ポイントあるということは考えず100、120と自身のポイントを伸ばしていくことを考えるべきだと沢崎は語る。

 

5回戦
起家から(内川→吉田→山田→本田)
東1局ドラ四筒
東家内川が8巡目にリーチ。

南一索 上向き二万 上向き九索 上向き七索 上向き北
西四索 左向き

追いかける3者に関しては、無理に親番のリーチには立ち向かう必要はない。安手でアガることは、首位の本田を喜ばせる結果に繋がることが多く、勝負に出るときは良形の手が入っているときである。
この局は本田が選択を迫られる前に、元々テンパイしていた山田が放銃となったが、首位を走る本田の思考はどうだったのだろう。
リーチを受け、本田の手牌はこちら。

七万八万九万九万三索四索五索六索七索七索八索九索四筒

内川のリーチは九索七索の手出しがある分、若干ではあるが捨て牌に怖さがある。
初日は相手が親でも、本人が勝負所と感じた局ではきつい牌でも切り飛ばし、アガリをものにしていたイメージがあるが…

解説の沢崎はドラ四筒を重ねたときは追いかけリーチ。それ以外を引いた場合は引き気味に構えるのが良い。と話していた。
このリードなら、打点を求めるよりも局を消化していくべく、ヤミテンに構えてツモ六索など危険牌と安全牌を入れ替えることができるメリットを優先する打ち手が大半である中、印象的な解説であった。

続く東2局は、またしても東家の内川が先制リーチ。

三万四万五万七万八万九万二索三索四索六索五筒五筒五筒  ドラ六索

9巡目のリーチでやむを得ずドラ単騎。当然のように一人旅となったが、流局間際七対子のテンパイを組んでいた山田が1牌勝負。そして、内川の最終ツモで1,600をアガらず。
この点数状況だけを考えれば当然とも言える見逃しではあるが、本田にとっては残り4半荘がとてつもなく長く感じ、80ポイントのリードが心細く思えてくる出来事ではないだろうか。

しかし、この見逃しに関して沢崎は「この親の連荘中にアガリを拒否するのはどうか?」と、苦言を呈す。
解釈は人それぞれではあるが、現代の麻雀感にバシバシと物申す解説は逆に新鮮だ。連盟チャンネル以外からきた視聴者の中にはアレルギー反応が出る人もいそうだが…

東2局はピンフテンパイが入っていた山田から出たドラ四筒を本田がポンして8,000のアガリ。

二万二万七索八索九索六筒八筒東東東  ポン四筒 上向き四筒 上向き四筒 上向き  ロン七筒

その直後、東3局は内川が難しい手をまとめてピンフドラ2をリーチ。

五万五万七万八万九万五索六索六索七索七索八索七筒八筒  ドラ五万

内川はこの半荘4度目となるリーチ攻勢だ。ようやくリャンメンテンパイが入ったが、捨て牌はかなり濃く、好形が読み取れるような捨て牌が並んでしまっている。
12巡目にピンフテンパイが入った本田がこれに放銃。7,700点。
本田テンパイ形

六万七万八万二索三索六索七索二筒二筒五筒六筒六筒七筒  ツモ八索

トータルで110ポイント以上リードしている内川相手ということもあり、自身で押し切ることを選択した本田だが、結果は先ほどの収入をそのまま吐き出してしまう格好になってしまった。
解説の沢崎は「この放銃は悪くない、逃げて放銃しているわけではないから」と話したが、日本プロ麻雀連盟のタイトル戦を勝ち切ったことがある中で約7割くらいが今回の本田のような選択をしているように思える。
しかし、今回は内川の捨て牌にいくらか迫力があった。これまでに内川が繰り出してきたリーチは、親番というのが大きな理由ではあるが所謂「手なり」のリーチで待ちの良し悪しも、打点も検討がつかないものばかりであった。しかし、先ほど書いたように今回のリーチはリャンメンターツ落としを含んでおり、おそらく待ちが良いか高い、もしくはその両方の可能性が高い捨て牌であった。
それ踏まえても、今回の放銃は良いとする強者が多いのだから麻雀は奥が深い。

南1局
6巡目に吉田がタンヤオのポンテンをとって打八筒

六万七万八万三索三索三索四筒四筒六筒六筒  ポン四索 上向き四索 上向き四索 上向き  ドラ一万

山田が9巡目にリーチをかける。
山田捨て牌

五万 上向き五筒 上向き三筒 上向き白八索 上向き二万 上向き
三万 上向き発

変則的な捨て牌に対し、吉田は1枚切れの北を掴んで迂回。打点力、待ちの良さ共に満足がいかないため、当然のオリか。
すると12巡目に親の内川が追いついてリーチ。

 

100

 

安全牌に窮している様子が見られる吉田から四筒が打ち出され、こちらもすでにオリを選択している本田の手番。

 

100

 

たった今吉田が通した四筒に目を落とす本田。変則的な捨て牌である分、山田はドラ1枚以下。リーチに対してオリを選択して安全牌に窮している様子の吉田はタンヤオ。すると、ドラは親の内川か?内川がペン七筒を選択する理由があるだろうか?

そんなことを考えながら本田が手をかけたのは七筒だった。

これはさすがに揺れたか?
次局も内川が先制リーチ。

二万二万三万三万三万五万七万九万六索八索七筒八筒九筒  ツモ七索  ドラ三索

いったい何度目のリーチであろうか。
今回のリーチは捨て牌にこれといった特徴はないが、それが逆に不気味さを醸し出している。おそらく本田にとってはそうであったに違いない。
満貫クラスを決めにいくべく、手変わりを待つ手段もあるが、内川はさらにプレッシャーをかけていく方を選択。この辺の駆け引きは経験値の高い3者に分があるのは当然のことだ。
この局も内川が2,000をアガリ、吉田と共に本田との距離をぐっと縮める。

 

100

 

100

 

南1局2本場
前巡打七万とし、567三色よりもアガリやすさ、柔軟さを優先する選択をした内川の手が止まる。

東家7巡目

四万五万四索四索五索五索六索七索二筒三筒四筒六筒七筒  ツモ七索  ドラ北

西家の山田がマンズ以外を連打しているため、マンズを打つ人も多いだろう。
「手順マエストロ」の異名を持つ内川の選択は打六筒
裏目となるツモ五筒で345三色が狙える。ここまでは主導権を取って本田に楽をさせまいとスピードを重視する選択が多かった内川が一気に決め手を放ちにきた。
六索を引き入れリーチをかけるも、山田が仕掛けて1,000は1,600のアガリとなった。

一万二万三万七万八万九万八筒九筒東東  チー七万 左向き八万 上向き九万 上向き  ロン七筒

山田は南場の親で

一筒二筒二筒二筒三筒五筒六筒七筒八筒九筒  ポン九筒 上向き九筒 上向き九筒 上向き  ツモ四筒

四万五万六万一索一索四索五索六索三筒四筒八筒八筒八筒  リーチ  ツモ五筒

この6,000オール、2,000をアガるなどして、一気に息を吹き返す。

 

100

 

オーラス親の本田はリーチをかけるも、

四万五万六万三筒四筒四筒五筒六筒六筒七筒八筒西西

吉田が仕掛けて的確にアガリ、追いかける3者の目論見通り本田にラスを押し付けた。

六万七万八万三索三索五索六索二筒二筒二筒  ポン二万 上向き二万 上向き二万 上向き  ロン七索

5回戦終了
内川+32.6P 山田+9.4P 吉田▲14.6P 本田▲27.4P

5回戦終了時成績
本田+55.2P 内川+2.1P 吉田▲14.0P 山田▲43.3P

 

 

6回戦
起家から(山田、吉田、内川、本田)
現在2番手内川との差が約53ポイントとなった本田。
本日の開始時とライバルが変わっただけで、意識するのはその数字のみ。再び気合を入れなおして残り3半荘に挑む。

まずは東2局1本場に吉田が5巡目リーチで2,000オール。

二万四万九万九万四索五索六索二筒三筒三筒四筒四筒五筒  ツモ三万  ドラ四索

続く3本場は北家山田が2,000・3,900。

四万五万六万四索五索六索八索八索六筒七筒八筒北北  ツモ北  ドラ五索

そして東3局では本田以外の3者がテンパイで流局。
幸い2番手内川のアガリは出ていないが、配給原点が遠のいていく本田にとって辛い展開が続く。
東3局1本場で起死回生のアガリを決めたのは本田。

一万一万四万五万六万四索五索六索四筒四筒五筒五筒六筒  ロン三筒  ドラ三筒

早々に仕掛けた山田はドラ三筒を複数持っていそうで、この三筒六筒はさほど手応えがあったわけではないだろう。
本田の三筒六筒待ちは山田に対しても危険度が高い三筒六筒で、どうせ出る牌ではない、とリーチをかけるのも一つの手段だ。しかし、本田は冷静にヤミテンに構えた。このヤミテンが見事正解。
放銃となった山田は一筒二筒三筒三筒四筒からの役牌加カン、嶺上牌からの三筒をツモ切りであった。(雀頭の七索は既に打っている)
本田は終盤にしては際どい牌を打っており、若干気配が出ていた。しかし、追う立場の山田はこの手牌でなんとかアガリ切りたい。
残りツモも少なく、ここまでの総合ポイントが影響してなければ山田は比較的安全な打一筒を選択していたかもしれない。
決勝ならではの押し引きで、苦しいものは更に苦しく、その分リードがあるものは良い展開が継続しやすくなっている。

南4局ドラ九万

 

100

 

100

 

本田29,100 山田24,400 吉田35,500 内川31,000
この点差で本田は1シャンテン戻しを選択した。

ノーテンなら沈み3着以上(山田にアガリがあれば4着)が確定。
本田を沈みで終わらせたい3者、現在沈んでいる山田は満貫クラスの手を作っていることは予想されるが、吉田内川はアガれば最低限のミッションクリアとなるため、打点は読みづらい。
下家の山田はほぼマンズの一色手で、山田にツモアガリが発生した場合は本田がラスになってしまう。
諸々踏まえれば当然のオリではあるのだが「残り2半荘、しっかり打とう」と覚悟が感じられるような打六索のトーンであった。

 

100

 

6回戦終了
吉田+16.1P 内川+5.0P 本田▲4.9P 山田▲16.2P

6回戦終了時成績
本田+50.3P 内川+7.1P 吉田+2.1P 山田▲59.5P

 

 

7回戦
起家から山田(▲59.5P)本田(+50.3P)内川(+7.1P)吉田(+2.1P)
東2局 吉田が親番の本田から2,000を出アガリ。

一万二万三万五万五万七万八万六筒七筒八筒  ポン白白白  ロン六万  ドラ三万

配給原点3万点の上下ができると8~20Pの順位点、そこに素点の差が加わってくる。たった2,000の放銃だが、残り2回戦となった今は点棒の重みが全く違う。

東3局、東家内川がリーチをかけると、山田が800・1,600のツモアガリ。

(内川リーチ)
七万八万五索五索一筒一筒一筒二筒三筒四筒六筒七筒八筒  ドラ四筒

(山田アガリ形)
一万一万六万六万二索二索三索三索南南西白白  ツモ西

吉田には、マンズのメンホンテンパイが入っていた。

二万四万七万八万九万西西北北北中中中

なんとなく悪い雰囲気が漂っている本田ではあるが、山田のアガリは比較的マシな結果ではある…

東4局 ホンイツに一直線で向かった本田は、ようやくテンパイにたどり着いたが、捨て牌もまさにホンイツ一直線といった感じになってしまった。

二索三索五索五索六索七索八索発発発  ポン白白白  ドラ中

九索が余り三索も余り、テンパイも濃厚な気配だ。
ところが、捌き手で発進した内川がこれに飛び込んでしまう。

五万六万七万六索六索二筒二筒二筒三筒三筒  ポン五筒 上向き五筒 上向き五筒 上向き

内川にとっては、まさに痛恨の放銃。
実況の日吉は「テンション的に打ちそう、打つかも?」と話しているが、数巡前に打った五索も当たってもおかしくはない牌であり、決勝残り2戦で約40ポイント差を追いかけるという意識がおかしなテンションを生み出してしまったように感じる。冷静になってみれば内川本人も「あれはやりすぎですね」とコメントしそうな放銃で、仮に1回戦ならまず打っていない牌だろう。
感性、感情が流れを成しているのかとも思うが、この一打は本田にとって良い流れを生み出したといえよう。

空気は一変し、本田の視界が開ける。再び初日のような冷静な判断力を取り戻せるか。

 

100

 

南3局 ドラ九索
この半荘ラス目の親番内川から12巡目リーチが入る。
トータルポイントプラス現在の半荘の得点状況、捨て牌の内容、そして内川の雀風からも十分安手はあり得る。トータルポイントで首位の本田は、この半荘は現在吉田と同点のトップだ。
9巡目にドラを打ち出している内川の捨て牌だが、タンピン、三色、イーペーコーなど、高くなる要素はいくらでもあり、ここは無難に引き気味に構えても良さそうではある。
リーチを受けた本田の手牌はこちら。

 

100

 

まずは三筒を勝負。
そして1枚切れの東を勝負の後、三万も勝負!

 

100

 

100

 

するとドラ2枚でテンパイが入った吉田が、山田にタンヤオリャンペーコーの8,000放銃。

四万四万五万五万六万六万五索五索六索六索七索七索六筒  ロン六筒

吉田がテンパイをとるために選択できる打牌は内川のリーチ宣言牌のスジにあたる七筒か、本田が一発目に打った三筒のスジに当たる六筒。内川のリーチはシャンポンも否定できず、どちらを選択するのもアリとは思う。実際内川の待ちは七筒で、吉田の読みはむしろ鋭い。
ただ、結果的には内川への放銃の方が安く、残り局数も減らないという未来が待っていた。
逆に本田にとってはトータルラス目の山田がアガリ、局を消化することができるこの上ない展開となった。
6巡目に内川がドラを打った形はこちら。

二万五万六万八万八万八万四索九索六筒八筒東南白中

遠くに一色手も見据えてはいるが、本田の読み通りアガリ安さを重視した一打であった。
自分の勝負牌が作り上げたスジにより、自分に良い結果をもたらした。自ら流れを手繰り寄せたと解釈しても良い?いずれにしてもこういった部分が麻雀の面白さでもある。

7回戦終了
山田+18.2P 本田+9.5P 吉田▲9.1P 内川▲18.6P

7回戦終了時成績
本田+58.8P 吉田▲6.0P 内川▲11.5P 山田▲41.3P

 

 

8回戦
起家から(吉田、内川、吉田、本田)
日本プロ麻雀連盟の公式タイトル戦決勝はすべて、起家から2341着(トータルポイント順位)の並びで行われる。
トータル着順が下の者の親番が残るため、できる限り歪な麻雀にならないよう、最後までアガリが発生しやすくなるように設定されているのである。

本田のリードは決勝戦としては上々ではあるが、全員のターゲットであるため自力で局を消化しなければならない場面が増えてくる。自分の親番はサッと流され、他家の親番は全員にじっくりやられてしまうというのが定番だからだ。
ミスが続けば、一気に寒い状況に陥ってしまうことも考えられる。細心の注意が必要であると同時に、勝負所を見極めていくことも大事ではないだろうか。

東1局

六索八索二筒三筒五筒六筒七筒八筒九筒九筒  ポン東東東  ツモ一筒  ドラ七万

場風の東をポンした本田は7巡目に一筒を引いてテンパイ。本田の捨て牌はこちら。

一索 上向き九索 上向き三万 上向き四索 上向き八万 上向き五万 上向き

捨て牌にはピンズが1枚もない。少しでも高い手をアガればこの後がぐっと楽になるが、追う立場の3者は首位を苦しめようとするため、本田に対して甘い牌を打ってはこないことが想定される。
ここはテーマに沿ってカン七索のテンパイを組むと、すぐに七索をツモアガリ、300・500。

続く東2局も本田のアガリ。

七万八万九万四索五索二筒三筒四筒東東東発発  ロン六索  ドラ五筒

2番手吉田、3番手内川の1回目の親番を流すことに成功した。

東3局 北家:内川手牌

二万二万三万三万三万二索八索八索八索一筒三筒三筒三筒  ツモ六筒  ドラ九万

西家:吉田手牌

九万九万九万四筒五筒発発  ポン白白白  ポン八筒 上向き八筒 上向き八筒 上向き

狙いは四暗刻一本の内川。危険は承知で白から打つと、八筒をポンしている吉田に2フーロ目が入る。そこに持ってきた吉田のアガリ牌六筒をツモ切るが、ドラ暗刻の吉田は見逃し。
このときタンピンテンパイが入っていた本田から、見事直撃を果たす。

 

100

 

南家:本田手牌

四万五万三索四索五索六索七索八索四筒四筒五筒六筒七筒  ツモ六筒

内川としても、吉田が満貫クラスのテンパイで待ちが三筒六筒以上ならば、自分からは見逃すのではないかという想定があっての打牌だったかもしれない。
3局は消化することができたが、本田は改めて決勝戦の重圧を感じたことだろう。

南1局 親番吉田に大物手が入る。上手く仕上がれば一気に本田の背中が見えてくるが…

三万三万四万四万五万五万七万八万二索四索六索四筒五筒  ドラ三万

わずか6巡目にしてこの手格好だったが、ツモが噛みあわずに二索単騎リーチで流局となった。
次局1本場は本田が自力でアガリ、吉田の親を潰した。

二万三万四万六万七万八万八万三筒四筒五筒  チー四筒 左向き五筒 上向き六筒 上向き  ロン五万

南2局。親番内川はタンヤオ七対子をツモって4,000オール、1本場でドラポンチンイツのテンパイが入るも、親番を残した山田がハイテイでリーチをツモアガリ。

二万三万四万五万六万七万八万九万四索四索五筒五筒五筒  ツモ七万

いよいよ南3局、本田にとっては最後の山場となる。親番がなくなった吉田、内川が残り2回のアガリで優勝するためには高打点の手牌を待つしかない。

南3局 親の山田が12巡目にリーチ

四万五万六万七万八万三索四索五索七索七索五筒五筒五筒  リーチ  ドラ九万

跳満が見える吉田が抵抗するも流局。
親の山田だけは比較的自由に手を組んでくるが、本田としてはまだポイントの猶予がある。じっくりとラスト1回のアガリを決めにいく局を見極めている。

南3局1本場

 

100

 

早々にテンパイを入れていた山田は6巡目に四索を引いてタンヤオをつけてのリーチ。たった今吉田に打たれた六筒も見逃している。

二万五万六万八万三索五索六索七索七索八索四筒五筒中  ツモ二万

リーチを受けて手牌には1メンツ。これはさすがに引くしかないか。本田は打五索としてここもオリを選択した。戦えそうな手牌だっただけに、安全牌は確保できていなかった本田は、スジや序盤の牌の外側などを頼りに、命からがらといった感じで流局に持ち込んだ。

南3局2本場(供託×2)も山田が9巡目に先制リーチ。

二万三万三万六万六万八万八万九万九万八筒八筒白白  リーチ  ドラ四筒

こちらも1本場と同じく、元々テンパイが入っていたところからの待ち替えリーチだ。待ちを選ぶことより、本田の自由を奪うことを優先しようといった判断だ。
これを受け、ついに本田が前に出た。10巡目に役無しの追っかけリーチを敢行。

七万八万一索二索三索五索五索六索六索六索一筒二筒三筒  リーチ

本田が前に出たなら直撃チャンス到来と、ドラ暗刻の吉田も全面対決に出る。
14巡目にリーチ。

四万四万五万六万七万四筒四筒四筒五筒六筒六筒七筒七筒  リーチ

全員の待ち牌が山に2枚ずつ残っていたが、吉田が二万を掴み山田が4,800のアガリ。

南3局3本場は内川がドラ3枚内蔵したリーチで先制。

二万三万四万三索三索三索四索五索五索六索三筒四筒五筒  ドラ三索

山田のリーチ宣言牌五索を見逃すと、またしても山田にアガリが生まれる。

一索二索三索六索六索三筒三筒  暗カン牌の背六筒 上向き六筒 上向き牌の背  暗カン牌の背白白牌の背  嶺上ツモ三筒

6000は6,300オール。
本田としても腹を括ってオり、攻めているのだが中々良い結果に結び付かない。

南4局4本場 8巡目に山田がリーチ

三万四万五万二索三索四索九索九索四筒五筒六筒発発  リーチ  ドラ二万

 

100

 

首位の本田と2位の山田の点差は30ポイントを切っており、内川が沈めばさらに順位点4ポイントが詰まる。展開も味方して、あと一歩で逆転という所まできている。
リーチを受けた本田の手牌はこちら。

二万三万五万五万二索三索四索五索六索七索八索六筒八筒

場に見えていない中を勝負すると、上家の山田が七筒をツモ切る。

 

100

 

仕掛けて四万の片アガリテンパイを取る手もあるがスルー。すると一索を引き入れ現物の八筒打ち。場に見えていない南も勝負。一万が打たれて九索の片アガリテンパイも取れたがこちらもスルー。ついにツモ六索でテンパイを果たす。
既に一万は場に2枚打たれており、ドラ表示牌にも1枚。決して強い待ちとは言えないが、この形で本田は勝負に出た。

次巡、山田が四万を掴み本田が2,000のアガリ。

 

100

 

まさにタイトル戦決勝ならでは、という展開で長い長い最終戦であった。
気分的には失うものがない追う立場の方が強い。最も精神的に疲弊しているのは逃げる本田であっただろう。
それとも本田としては自身の麻雀を貫いただけで、内心は飄々としているのかもしれないが、本田自身が今回の決勝戦で感じたことや気になった局については後日、同じ北陸支部所属、木原翼のインタビューをお楽しみに。

第10期グランプリMAX優勝は、北陸支部所属の本田朋広。
本田の優勝は自身が所属する北陸支部はもちろん、各地方本部支部にも活気を与えることだろう。

 

100

何を切る? 2020年5月

第4回マスターズリーグ 1回戦 東3局 西家 滝沢和典プロ

 

 

 

 

 

 

■ Twitterで実施したアンケートの結果

 

 

 

■プロ解答

九筒切り

 

 

 

四索切り

 

 

 

■実況・解説陣

 

 

白鳥「ピンズが良いと思えば八索もあるし、ドラツモ切りだってあります。」
日吉「難しすぎる!うおぉツモ切ったかー!!」
白鳥「というくらいやはりピンズが良いと。」
瀬戸熊「狙い通り山にはピンズがいっぱいありますよね。後は自分のところに来るかどうか。」

 

■プロの視点
滝沢和典プロ「ズバリ七筒を引いてきそうな河だなと思い、攻守兼用でピンズの上を残して四索ツモ切り。ツモ四索はもちろん痛いのですが、2翻くらい確保できれば、アガリに向かって効率良く打つことを心がけています。ドラ切りを見て相手のアクションも変わるはずなので、この後の進行やリーチ判断などはそれをふまえた上で選択したい。」

 

■終局図

 

 

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第17期大分リーグ(プロアマ混合)最終節成績表

順位 名前 プロ/一般 1節 2節 3節 4節 合計
1 柿添 誠 プロ 37.5 84.9 30.3 58.8 211.5
2 塚本 将之 プロ ▲ 6.4 40.4 76.0 61.1 171.1
3 相本 長武 一般 80.1 64.5 6.3 ▲ 5.8 145.1
4 矢野 拓郎 プロ 42.8 ▲ 2.9 48.0 24.8 112.7
5 松本 広大 一般 52.4 17.5 21.9 ▲ 26.6 65.2
6 スカルリーパーA-ji プロ 8.0 20.7 ▲ 16.8 16.7 28.6
7 本郷 宏志 一般 4.6 19.0 ▲ 49.6 20.2 ▲ 5.8
8 藤田 祥司 一般 ▲ 71.0 96.2 ▲ 40.7 8.1 ▲ 7.4
9 小林 太郎 一般 ▲ 12.0 ▲ 4.4 22.3 ▲ 14.7 ▲ 8.8
10 合澤 雄貴 一般 ▲ 12.6 5.1 7.0 ▲ 12.2 ▲ 12.7
11 渡辺 辰宏 一般 13.8 18.4 ▲ 1.0 ▲ 46.7 ▲ 15.5
12 薬真寺 実 一般 30.6 2.7 ▲ 21.0 ▲ 32.4 ▲ 20.1
13 角谷 陽介 プロ ▲ 25.9 21.7 ▲ 38.9 6.2 ▲ 36.9
14 伊東 宏倫 プロ ▲ 92.2 ▲ 34.8 23.6 2.6 ▲ 100.8
15 阿部 竜也 一般 ▲ 41.6 ▲ 55.7 ▲ 13.3 0.0 ▲ 110.6
16 下山 哲也 プロ ▲ 20.7 ▲ 30.0 ▲ 30.0 ▲ 30.0 ▲ 110.7
17 上田 悟史 一般 ▲ 28.8 ▲ 77.8 ▲ 5.5 ▲ 3.1 ▲ 115.2
18 団野 和広 一般 ▲ 33.3 ▲ 83.7 ▲ 23.7 15.5 ▲ 125.2
19 川島 貴博 一般 ▲ 71.3 ▲ 34.6 ▲ 36.0 ▲ 17.6 ▲ 159.5

第10期山口プロアマリーグ最終節 成績表

順位 名前 プロ/一般 1節 2節 3節 4節 5節 合計
1 柴田 祐輔 一般 63.7 61.5 0.0 47.5 66.1 238.8
2 藤岡 治之 プロ 102.7 ▲ 13.6 52.0 25.0 ▲ 11.0 155.1
3 殿井 正敏 一般 2.0 43.1 8.7 77.4 0.3 131.5
4 河居 春生 一般 58.0 9.1 86.5 0.0 ▲ 50.0 103.6
5 高村 翔 プロ ▲ 8.0 ▲ 22.8 4.9 83.0 34.4 91.5
6 坂本 将弘 一般 ▲ 50.1 ▲ 14.8 64.7 0.0 46.8 46.6
7 真田 悠暉 一般 22.1 3.3 11.9 29.1 ▲ 55.4 11.0
8 むさし 一般 26.3 6.0 15.8 ▲ 27.7 ▲ 19.2 1.2
9 山口 正美 一般 86.6 8.9 ▲ 18.6 ▲ 67.7 ▲ 9.4 ▲ 0.2
10 佐田 いちこ 一般 ▲ 8.6 ▲ 42.8 ▲ 23.3 ▲ 11.2 75.6 ▲ 10.3
11 首藤 聡 一般 ▲ 27.1 ▲ 18.7 ▲ 7.9 40.9 0.0 ▲ 12.8
12 黒岩 司 一般 29.3 ▲ 10.3 17.0 0.0 ▲ 50.0 ▲ 14.0
13 黒田 隆明 一般 ▲ 44.9 ▲ 43.0 58.7 0.0 10.1 ▲ 19.1
14 平田 次郎 一般 15.1 0.0 4.6 ▲ 3.8 ▲ 35.8 ▲ 19.9
15 木室 哲朗 プロ 0.0 0.0 ▲ 41.5 0.0 0.0 ▲ 41.5
16 高見 和広 一般 15.8 48.7 ▲ 66.6 ▲ 6.9 ▲ 32.9 ▲ 41.9
17 清木 雅一 一般 ▲ 22.9 8.5 45.6 ▲ 85.6 8.5 ▲ 45.9
18 福田 譲二 プロ ▲ 22.3 ▲ 21.8 ▲ 34.8 ▲ 42.9 50.0 ▲ 71.8
19 中崎 純 一般 23.0 27.7 ▲ 50.1 ▲ 28.7 ▲ 47.5 ▲ 75.6
20 藤原 英司 プロ ▲ 33.3 23.0 0.0 ▲ 50.0 ▲ 50.0 ▲ 110.3
21 渡辺 健太 プロ ▲ 44.7 ▲ 45.3 ▲ 64.6 10.2 4.3 ▲ 140.1
22 藤田 竜三 一般 ▲ 103.5 0.0 9.9 ▲ 24.4 ▲ 41.4 ▲ 159.4
23 中山 省吾 一般 ▲ 80.2 ▲ 21.7 ▲ 73.9 ▲ 17.2 ▲ 119.5 ▲ 312.5

戦術の系譜6 前田 直哉

今回は昨年の鳳凰戦A1リーグ第6節C卓の局を取り上げようと思う。
対戦者は伊藤、沢崎、HIRO柴田、私である。
微差ながらもラス目で迎えた親番の南3局。配牌は良くも悪くもない。

六万七万九万四索二筒三筒四筒六筒九筒東西北北白  ドラ七索

まあ良くてピンズの一通が見えるくらいだろうか。
すると北家の柴田の2巡目の手がこれだ。

一万二万一索二索三索八索九索二筒三筒八筒九筒発発  ツモ一万

三色もチャンタもジュンチャンも見えるこの手、柴田の選んだのは発切りだった。ジュンチャン三色の最高打点に照準を合わせた一打だ。すると私の切った白をトップ目の沢崎が仕掛ける。

五万六万六万二索三索四索七索二筒三筒東  ポン白白白

形は十分だ。この仕掛けによって柴田の手がこうなった。

一万一万一万二万一索二索三索八索九索二筒三筒八筒九筒

捨て牌に発が並ぶ。これを見て私は早いのは間違いない、メンタンピンドラ1くらいかな?と勝手な想定をしていた。そして柴田の次巡

一万一万一万二万一索二索三索八索九索二筒三筒八筒九筒  ツモ四筒

全く有り難くない四筒である。しかし、ラス前で微差ながら浮いていることも考えると一旦手に入れたくもなるが、少し考え柴田はツモ切りを選んだ。更に次巡

一万一万一万二万一索二索三索八索九索二筒三筒八筒九筒  ツモ三万

絶好の三万を持ってきてまたも難しい選択になる。アガリ易さならドラ受けの八索九索落としもあるが、ドラさえ引けば倍満までも見える。悩んだ末に柴田は八筒を選ぶ。
そんな中1番早くテンパイを入れたのは沢崎だ。

六万六万二索三索四索七索八索二筒三筒四筒  ポン白白白

すぐに柴田も追いついた!

一万一万一万二万三万一索二索三索八索九索一筒二筒三筒

フリテンだった高目の一筒を引き超弩級のテンパイだ。ドラ待ちのこともあり皆が引いてくれたらチャンス有りとみてここはリーチとした。何人の人がこのテンパイに辿り着けるだろう?この見事な手順の捨て牌がこうだ。

七万 上向き発発四筒 上向き八筒 上向き九筒 上向き
三万 左向き

まず発のトイツ落としでピンフ系かと思ったのだが、その後の四筒での小考からのツモ切り、そして八筒九筒のペンチャン落としでメンタンピンでは無さそうだ。発よりも八筒九筒を大事にしたということは一通か三色かチャンタっぽい。だがもしピンズの一通が見える程ピンズを厚く持っているなら発発を持ってホンイツに行くのではないだろうか?ドラで1メンツ出来ているのであればそういうことも考えられるが、下の三色とジュンチャンの可能性が1番高いと推察することが出来る。でもそんなに早くジュンチャンって出来るっけ?私の頭の中はプチパニックである(笑)そう思いながらも同巡私もテンパイを入れる。

六万七万八万二筒三筒四筒五筒六筒七筒九筒九筒北北

親ということもあり、このままリーチする人もいそうだが私はもちろんヤミテンだ。沢崎も無筋を切り飛ばしオリる気など毛頭無さそうだ。すると次巡私の手はこうなるのだった。

六万七万八万二筒三筒四筒五筒六筒七筒九筒九筒北北  ツモ八筒

高目一通の勝負手に仕上がる。ここで振りかぶってリーチ!!
とは行かず、ここでもヤミテンを選択した。何故ヤミテンなのか、それは柴田の手が高いことと、沢崎の手も高いか好形であると確信していたからだ。もちろんリーチしたかったが、伊藤から四筒七筒が出る可能性を0にしたくは無かったのだ。だが更に次巡持って来たのが…

六万七万八万二筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒九筒北北  ツモ七索

ドラ…この牌が通る理由を探してみるが、柴田の手がジュンチャンだとしたら当たる可能性は十分あるし、ピンフ系の手でも同じだ。沢崎はリャンメンならソーズの上か一筒四筒あたりだろうか?シャンポンならドラとのシャンポン待ちの可能性も高い。
歯を食いしばり、ドラを切らずに押し返せるよう九筒を切る。そして次巡

六万七万八万七索二筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒北北  ツモ八索

絶好の八索を持ってきてリーチ!結果これを柴田から12,000のアガリとなったのである。

六万七万八万七索八索二筒三筒四筒六筒七筒八筒北北  ロン六索

いったい何が良かったのか、一通になった時にリーチしなかったことだろう。あの手はアガリがあるとしても四筒七筒だと感じていた。要するにあの手は私の中ではただのピンフ手だったのだ。六索九索待ちであれば安目でも5,800、高目ツモなら6,000オールまである。あの状況で2人にぶつけていくのに価値ある手だから勝負に出たのだ。
だが、これが先に一筒が切られ結果七索で放銃したら本当に最悪である。どちらの可能性もあっただけにイッツーでリーチするのも全く当たり前なのだ。今回は結果的にラッキーなだけなのだ。

だが皆さんに見て欲しいのは、柴田の手順、沢崎の攻めきる姿勢、伊藤の守備、私の押し引きその全てなのだ。誰がアガッたとしても内容の濃い1局であったと思う。
ユーチューブでも見られるので是非ご覧くださいね!

第36期鳳凰戦A1リーグ第6節C卓2回戦
前田直哉vs沢崎誠vs伊藤優孝vsHIRO柴田
実況:古橋崇志
解説:近藤久春・白鳥翔

これで私の回は最後になるが、戦術の系譜はこの後も続くのでお楽しみに!!

第208回:プロ雀士インタビュー 真鍋 明広  インタビュアー:古川 彩乃

三月のとある雨の日、都内の某喫茶店で待ち合わせをした。お店に入ると、先に到着していた真鍋プロは私の顔を見るなり言った。
「雨の中、わざわざすみません。今日はよろしくお願いします。」

真鍋プロと私は、同じ雀荘チェーンで働いている。複数店舗があるため、いつも顔を合わせているわけではなく、初めて会ったのがいつなのかは記憶も曖昧だが、私がプロになった頃には一緒に働いていた気がするので、少なくとも5年以上は前だろう。
彼は、後輩の私にも度々敬語を使い、それは彼がお店の店長となった今も同じだ。
麻雀の話をする時も雑談をする時も、先輩と後輩、上司と部下であるにも関わらず、とても丁寧に優しく接してくれる、非常に腰の低い男である。

そんな心優しきWRCリーグチャンピオンのインタビューを、古川彩乃がお届けします。最後までお付き合いいただければ、幸いです。

古川「改めまして、優勝おめでとうございます!!」

真鍋「ありがとうございます!」

古川「優勝が決まった瞬間はどんなお気持ちでしたか?」

真鍋「最終局が終わった瞬間は、麻雀をやっていて初めて泣きそうになりました。ほっとして・・・・。」

古川「悲願のタイトル獲得ですが、その後何か変わりましたか?」

真鍋「今までの人生の中で、一番たくさんおめでとうと言われました。昨日もお客様におめでとうと声をかけて頂いて・・・、正直嬉しいです!」

 

100

 

今回のJPMLWRCリーグ獲得は、「悲願のタイトル獲得」であるが、それは初タイトルという意味ではない。彼は輝かしい経歴の持ち主である。
真鍋プロは九州本部に18期生で入会し、ジャガー真鍋という名前で活動していた。18期生というと、今回のWRCリーグ決勝で戦ったダンプ大橋プロや、女流四天王宮内こずえプロ、A1リーグで大活躍中の西川淳プロなどと同期である。
真鍋プロは九州本部入会後、第1、2、7、13期のプロアマリーグ優勝、そして第4期と11期には皇帝位を獲得しており、皇帝位決定戦の常連であった。
皇帝位決定戦以外でも、マスターズベスト8、十段戦ベスト8、王位戦ベスト16等好成績を収め、大活躍していた。
そしてその後、活動の拠点を東京に移し、名前もジャガー真鍋から本名の真鍋明広へと変えた。

古川「九州で大活躍されていたわけですが、なぜ東京に拠点を移そうと思ったのですか?」

真鍋「九州でてっぺんとっても満足できなくて東京に出てきたんですよね、東京で活躍しないと認められないってこともあったし。」

真鍋プロは九州でてっぺんを獲り、満を持して上京を決めた。

古川「東京に出てきてからは・・・」

真鍋「全然だめでした。」

2013年に活動の場を移したものの、その先の戦績は彼の期待通りにはならなかった。
C3リーグから始まったリーグ戦はC1まで昇級するものの、その後昇降級を繰り返し、現在は2期連続降級でC3リーグ。タイトル戦は出場するも、良い所まで残ることは出来なかったという。

古川「上京してから7年、思うような成績が出ない間は悩んだりしていたんですか?私だったら結構落ち込んだりしちゃいそうです。」

真鍋「いや、悩んだりはしなかったよ。ただ虎視眈々と日々を過ごしていたかな。」

揮わない成績にもめげることなく、ひたむきに前を向き虎視眈々と狙い続けてきたチャンスが巡って来たのが、このWRCリーグだった。7年越しのチャンスだ。
当然、出場している選手には皆、それぞれたくさんの想いがある。かけている想いの強さは、変わらないであろう。「自分は九州の看板を背負ってるんだから、簡単に負けるわけにはいかない。」そう語る真鍋プロの想いがぶつかった対局だった。

1月7日に行われたベスト16。対局者は、第6期WRC優勝のダンプ大橋プロ、現王位森下剛任プロ、地方予選から勝ち抜いてきた吉田圭吾プロである。ベスト16とベスト8は、卓内上位2名が勝ち抜けのトーナメントとなっている。
この日、第2回戦終了時の真鍋のポイントは▲45.4ポイント。この時卓内2位であった森下とのポイント差は78.6ポイント。卓内1位であるダンプとの差は84.1ポイント。
残り2半荘でどうまくるか。厳しい状況であったが、第3回戦で真鍋は起死回生の10万点超えのトップ、上位にいた森下とダンプ両者を沈めて1半荘でトータルトップに立ち、ベスト8への進出を決めた。
1月27日に行われたベスト8は、2回戦目にラスを引くものの落ち着いた試合運びで無事に決勝進出。

そして迎えた2月11日、運命の決勝戦。決勝卓のメンバーは、一昨年には女流桜花決定戦に出場、ベスト8で共に勝ち上がりを決めた中野妙子プロ。十段位シードによりベスト16からの参戦、ヤミテンを駆使して決勝まで進出を決めた大ベテランの伊藤優孝プロ。真鍋プロの同期でありベスト16で共に勝ち上がった第9期グランプリグランプリMAXのダンプ大橋プロ。そして東京での初タイトル獲得という悲願を背負った元皇帝位、真鍋明広プロ。全4回戦を闘い、優勝者が決まる。

決勝戦第1回戦の東1局、親の中野の先制リーチに追い付いた真鍋のリーチ宣言牌が中野への7,700の放銃となる。手痛い放銃からのスタートとなってしまったが、東2局2本場にタンヤオ七対子ドラドラをツモアガリトップ目に立つ。点棒の動きはあるものの、平たい展開が続くが、南1局の親番で4,000オールツモ、2,000は2,100オールツモとアガリを重ねた中野が一歩抜け出す。1回戦はそのまま中野がトップ、真鍋は2着、ダンプ3着、伊藤4着という結果。

第2回戦は、ダンプの4,000オールツモから始まる。しかしそこから中野が細かくアガリを繰り返し、再びトップ。2着にダンプ、3着伊藤、4着真鍋となった。
第2回戦を終えたところでのポイントは、中野+62.0P、ダンプ±0P、真鍋▲19.4P、伊藤▲42.6P。
中野と真鍋の差は、81.4ポイントである。

古川「2回戦が終わって中野プロと80ポイント以上離されていたわけですが、ベスト16の時も2回戦が終わった時にはそれ位のポイント差がありましたよね!追う展開は得意なんですか?」

真鍋「いや、それはたまたまそうなっただけで、どちらかと言えば先行逃げ切りの方が得意かな。」

古川「じゃあ、このポイント差に焦りはありましたか?」

真鍋「焦りはなかったですね、どっちみちやるしかないので。常に集中して打つことだけ考えました。技術はいくら頑張っても短期間で極端な進歩はしないからね。麻雀は集中力です。」

第3回戦、あと2半荘で84ポイント差をまくらなければならない真鍋に、東1局からドラ暗刻の勝負手が入る。

 

100

 

六万をチーすれば満貫のテンパイが取れる1シャンテンだが、仮に上家から六万が打たれたとしてもチーテンをとるつもりはなかったと言う。

真鍋「チーテン取ったら脇からこぼれそうだったけど、脇からアガっても嬉しくなくて、ツモか直撃じゃないと意味ないと思って・・・」

数巡後、六万を自力で引き入れリーチをして見事にツモアガリ、3,000・6,000をものにする。
その後、伊藤の高打点のヤミテンに中野が二度捕まり、ビハインドの3名の包囲網に苦戦した中野は痛恨のラス。真鍋は粘りの麻雀で伊藤との競りの展開に勝ち、僅差ではあるがトータルトップで最終戦を迎えることとなる。

最終戦、スタート時点でのポイントは、真鍋+19.2P、中野+15.0P、伊藤▲16.0P、ダンプ▲20.2P。WRCルールは順位点が、+15、+5、▲5、▲15なのでトップラスは順位点だけで30ポイントかわせる。条件に差はあれど、全員十分に優勝が狙えるポイント差となった。

東1局、中野の親番、親の中野に仕掛けが入った後、伊藤からリーチが入る。ドラドラの真鍋は完全安牌も少なく自身の手に真っ直ぐ打つという選択をしたが、これが一発で伊藤への放銃となる。リーチ一発ピンフ、3,900。

真鍋「あの、最終戦東1局の放銃は相当痛かったね・・・」

古川「結構ふわっと無筋を押したりするシーンと、ものすごく丁寧に止めながら回るシーンがあって印象的でしたが、ふわっと切り飛ばしているわりに放銃はそんなに多くなかったですよね。」

真鍋「無筋でも、通るだろうと思って打ってるからね。読みで、比較的通りそうだと思ってるから切るだけで、ベスト16から決勝まで全体的にはあまり勝負をしなかったと思ってます。」

古川「手堅く打ったということですね!!」

東2局以降はアガリやテンパイを繰り返した中野がポイントを伸ばしていく。思い切りの良い攻めが上手くはまっていた。南1局の親番で中野はさらに加点し自身の持ち点を42,400点まで伸ばした。
しかし真鍋も負けじと、南2局の2本場にリーチツモイーペーコー、裏ドラを乗せて2,000・4,000をツモ。

 

100

 

いよいよわからなくなってきた。
南3局、親のダンプのリーチに飛び込んだのは、テンパイで追い付いてしまった中野。3,900の放銃。真鍋と中野の点差は、僅か3,800点である。
そして南3局1本場、親のダンプの仕掛けを受けた中野はドラ1愚形のテンパイを腹をくくってリーチとした。これを親のダンプから仕留め、裏ドラを2枚乗せての満貫。
このアガリで、場はオーラスへと移っていく。

オーラス、伊藤の条件は役満ツモか中野からの役満直撃。ダンプはダブル役満が条件となる。そして中野と真鍋は着順勝負。点差は12,100点である。

古川「この時はどんな気持ちで麻雀打っていたんですか?」

真鍋「まあ、アガる意外ないからね、普通にやるべきことをやっただけだよ。」

とはいえ、7年越しに掴んだチャンスである。心臓が張り裂けそうなこの状況で、普通にやるべきことをやるだけと言い切れるのは、九州時代に皇帝位決定戦等で培ってきた経験があるからだろうか。

南4局、親の真鍋は好配牌。ドラドラの手を仕上げリーチをかけると、手詰まりをしたダンプから7,700を仕留める。これで中野との差は4,400点。
そして南4局1本場、四筒七筒に受けるとピンフ、カン七筒に受けると三色というテンパイ。

 

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真鍋は四筒七筒を選択し、見事四筒をツモアガる。1,300は1,400オール。

古川「ここはカン七筒で決めに行く選択もあったと思いますが、四筒七筒にしましたね。」

真鍋「公式ルールならカン七筒にしてたかもしれないけど、一発と裏ドラがあるし、2,600オールになったら大きいからね、アガリ逃しする方が良くないと思ったから四筒七筒にしました。」

このアガリで1,200点差で真鍋がトップ目に立つ。

南4局2本場、先に役なしのテンパイを入れていた中野に対し、真鍋が追い付いてリーチ、それを受けて中野も追いかける。

真鍋「中野さんが四索切りでテンパイだと思ったから、五索を勝負するか迷ったけど、アガリ逃したくないから、放銃覚悟で五索切ったんだけど、弱気にシャンポンにしてたらアガリがあったんだよね・・・」

この局は流局となり、勝負は次の局へ。

南3局3本場、この局で大きく戦況が変わる。真鍋は東南がトイツの手、中野はタンヤオの手。先に動いたのは中野だった。下家の中野の仕掛けを受けて真鍋も絞りながらの進行になる。

真鍋「この局がキー局だったと思う。後日、藤原さんからも完璧な手順だったとお褒めのDMを頂いて、すごく嬉しかった。」

中野のキー牌を抑えながら手を進めた真鍋は、中野から打たれた南を鳴いてテンパイを入れ、真鍋のテンパイ打牌を中野が鳴き返して中野もテンパイ。しかし中野のテンパイ打牌は真鍋の当たり牌だった。2,900は3,800の直撃。供託もあり、中野の条件は1,600・3,200ツモ、5,200の直撃条件となる。

 

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南4局4本場、真鍋は早々に一万四万七万のピンフのヤミテンを入れる。上家のダンプから打たれた七万を見逃し、そのまま下家の中野の打った七万で出アガリ。2,900は4,100を直撃し、中野に跳満ツモ条件を付きつけた。貫禄のある、落ち着いたうち回しである。

そして最終局、中野は一生懸命手を組むものの、条件を満たす形にならず、最後に一発ハイテイツモのタイミングでリーチをかけるものの、ツモることはできなかった。

こうして、真鍋プロの優勝が決まった。

 

100

 

古川「最後のインタビューの時も、ものすごく神妙な顔していましたが、あの時も涙をこらえていたんですか?」

真鍋「いや、あの時はもう落ち着いてたよ!ああやって人前で話すのが苦手で・・・何を話せばいいのかわからなくて・・・。」

古川「いや、そこが真鍋さんっぽいけど、せっかくなんだからもっと喜びを表現してくださいよ!!!」

古川「悲願の東京での初タイトルは達成したわけですが、今後の目標をお願いします。」

真鍋「あと2つや3つのタイトルは獲りたい!!いや、2つや3つじゃ足りないか・・・。全部!!全部欲しいです!!」

東京で返り咲いた皇帝位の活躍は、まだまだ続きそうだ。

 

100

 

最後までお付き合い頂きありがとうございました。
そして最後になりましたが、真鍋プロ、優勝おめでとうございます。

第10期麻雀グランプリMAX決勝観戦記 初日

令和2年3月14日。
日本プロ麻雀連盟のタイトル獲得者、四大タイトル(鳳凰位、十段位、王位、マスターズ)を持つ九段などの特別シード者と、ポイントランキング上位者のみが参加資格を有するタイトル戦、第10期グランプリMAXの決勝戦初日が開催された。

準決勝A卓(本田朋広、森山茂和、藤原隆弘、山田浩之)からは北陸リーグ優勝の本田朋広と、A2リーグ所属の山田浩之が勝ち上がり。
そして、準決勝B卓(ダンプ大橋、内川幸太郎、吉田直、藤島健二郎)からは、MリーグKADOKAWAサクラナイツ1位指名の内川幸太郎、前鳳凰位吉田直が決勝に名のりをあげた。
年度末最後の二日間でタイトルを手にするのは一体誰なのか。
これからの麻雀界を担っていくであろう若手、中堅、良いメンバーが揃った。

 

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本田朋広 12460p33位

 
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山田浩之 14300p 23位

 
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吉田直 22800p 5位

 
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内川幸太郎 22100p 6位

 

1回戦
(起家から吉田→内川→本田→山田)
東1局 ドラ五万
東家吉田は7巡目にドラの五万を打ち出す。

 

100

 

ドラを使い切り、更に三色という2ハン手役を狙うという超高打点打法も選択肢にはあるだろうが、吉田はドラを先に打ち出した。
この選択はカン五索のロスを嫌がると同時に、他家に圧力を与えるという側面もある。相手が手狭に受けることを誘って、アガリ逃し、テンパイ逃しを誘発しようという作戦だ。
どちらも兼用の一打ではあるのだが、この時は単に危険牌を先打ちしたというより、相手に問題を出す意図の方が強いのではないだろうか。

しかし、この時、他家も手牌がまとまっていた。本田も内川も親のドラ打ちを踏まえても十分戦える手格好。北家山田は4巡目に早くも678三色のイーシャンテンとなっていた。

 

100

 

8巡目にカン七索を引き入れて高目六筒のリーチとすると、こちらも三色イーシャンテンとなっていた吉田が六筒を掴み、7,700の放銃となった。

678、789どちらも見えていた吉田は強気の選択で打六筒。山田の捨て牌は2巡目に七筒が置いてあり、放銃した吉田の手格好

二万二万七万八万六索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒九筒  ツモ六筒

から、怖がって九筒を打った場合は安目2,000で助かるという、なんとも皮肉な結末であった。

続く東2局も山田がツモアガリ。

 

100

 

リーチツモドラ2の2,000、4,000
正に好調な滑り出しと言えよう。

そしてこの2局を受け、解説の佐々木は「かなり攻めてるねー、どうなのかな?」と、吉田が若干かかり君気味なのではないかとコメントしていた。

東3局 3巡目
またしても、山田にチャンス手到来。

 

100

 

親の本田にもドラのダブ東が入っている。スピード的には山田が断然有利か。

 

100

 

山田は四索を引き入れて、ドラのダブ東を切ると本田がポンしてイーシャンテンとなるが、すぐに五万を引き入れて一筒四筒七筒待ちのテンパイ。直前に本田が河に置いた一筒があり、三色変化もある。ここまでのリードも後押しとなり、山田は手堅くヤミテンを選択した。

9巡目、イーシャンテンとなった本田に対して吉田が打九万でポンテンをとらせてしまう。
“とらせてしまう”と書くと吉田に否があるように思う人も多いだろうし、実際解説もそのようなニュアンスであったため、リアルタイムで観戦していた方の中にも吉田のおかげで本田がアガれた、吉田のせいで山田がアガれなかった、という印象を持つ人は多いと思う。
しかも吉田の手はこの状態である。

 

100

 

しかし、吉田が一番恐れていたのは、開局から2局連続で満貫クラスをアガった山田がこのまま突っ走ってしまうことなのである。
前期の鳳凰位吉田は山田とは長い付き合いでそのやり口というか手の内を、突き抜ける力があることを知っている。
言い方としてよろしくはないが、この時点ではマークは本田ではなく山田なのだ。

結果的には焦りとなってしまったかもしれない、解説者に指摘されたように若干は“かかって”いるのかもしれないが、この瞬間は勝つため、タイトルを獲得するために、山田を苦しめるためにギリギリの牌を放ったといった感じか。
山田は山田で吉田が自分をケアしていることも踏まえつつ、自身の打東が本当に正しかったのかを自問自答するような表情を浮かべていた。

1回戦終了
本田+52.9 山田+11.9 内川-19.7 吉田-45.1

 

 

2回戦
(起家から本田、内川、山田、吉田)
勢いをもらったような形で本田は加点を続け、吉田はズルズルと後退する形で大きな差ができたがまだ、八分の一。大きなタイトルの獲得経験のない本田にとっては長い長い残り7半荘ではないだろうか。

東1局 ドラ六万 5巡目
西家の山田はこの手牌で即リーチを選択。

四万六万七万八万八万二索三索四索六索七索八索一筒一筒  ツモ四万

まだ2回戦目とはいえ、首位本田のリードは大きい。仮にこれがラス目吉田の親番であれば手牌の変化待ちやテンパイとらずで好形、高打点を目指すなどの選択をしていたのではないだろうか。早くも本田を意識したような打牌を選択した山田は10巡目に一筒をツモアガリ1,000、2,000。

東2局 ドラ南

一索一索四索四索四索南南白白白  ポン西西西

14巡目の山田はツモって3倍満の手牌をテンパイするも流局。

東3局ではドラをアンコにして
東3局 ドラ九筒
この手牌から打四筒とすると、

二万四万四万五万五万二索三索三筒三筒四筒九筒九筒九筒  ツモ二万

13巡目にツモり四暗刻のテンパイ。

しかしこちらは678三色をテンパイしていた本田が吉田に2,600の放銃。

瀬戸熊は「この本田の攻める姿勢が良い」と解説していたが、この後東4局でも、親番吉田の13巡目リーチに対して、ピンフドラ1テンパイからヤミテンのまま無スジの四万五索を勝負してテンパイ料を加点する。
まだまだ積極的に攻めていこうという姿勢が伺える。

南2局
吉田、親番内川の2者がリーチをかけており、山田はハイテイ牌をツモって手詰まりの状態。

 

100

 

100

 

打牌候補は四筒六万白三索あたりであろうか。内川のリーチ宣言牌のスジにあたる六万はドラが五万+ということもあり候補から外れているかもしれない。
吉田の第一打二筒をまたぐ打四筒四索五索が3枚ずつ見えている三索、トイツの白
山田が選択したのは打三索

それぞれの手牌はこうなっていた。

 

100

 

吉田は第1打の二筒をまたぐ一筒四筒待ち、内川はドラが内蔵された役無し三筒六筒であった。
本田が序盤からソーズ一色気味に進行していることから、四索五索のワンチャンスにかける方が良しと判断したのだろうか。1人ノーテンではあるが、放銃を回避したことによってリーチ棒2本が供託されてチャンスは残った。
しかし、この次局は本田が内川から2,000を出アガリ。
ドラ二索

二万三万四万一索二索三索三索四索五索九索九索六筒七筒  ロン八筒

オーラスで吉田が1,000オールをアガリ一
旦トップ目に立つも、最終的には本田が1,000、2,000をツモって再びトップに。
南4局ドラ一筒

一万二万三万五索六索一筒一筒七筒八筒九筒  ポン白白白  ツモ四索

オープニングから2連勝を決めた。

2回戦終了
本田+20.4 吉田+13.8 山田-14.0 内川-20.2
2回戦終了時のトータルポイント
本田+73.3 山田-2.1 吉田-31.3 内川-39.9

 

 

3回戦

東3局 ドラ三筒
絶好調本田に手牌が押し寄せる。なんと配牌がこちら。

五万六万六万六万七万三索三索五索六索五筒五筒六筒六筒七筒

第1打は三索を選択。
そして、6巡目こちらは日本プロ麻雀連盟Twitterの何切る企画でも取り上げられていた局面。

 

100

 

567の三色にリャンペーコー、その先には三色同刻やツモリ四暗刻も見える、なんとも贅沢な選択だ。
本田は打五索をチョイスしたが、皆さんなら何を打つだろうか?
結果は山田のリーチを受けた直後にこの形でツモアガリとなった。

五万五万五万六万六万六万六索六索五筒五筒六筒六筒七筒  ツモ四筒

なんとなく嫌な空気を感じているのは山田だ。
1回戦から何度も競り負けて、チャンス手を潰されてしまっている。こんな日はまず勝てない。もちろん科学的な根拠などないのだけれど、開局2局でアガリをものにして、この上ないスタートを切ったが、吉田のマークによって崩れ始め、それがまだ尾を引いているようでもある。

手牌が押し寄せ、展開が向いているのは間違いないのだが、その他の局でも隙の無い選択が見られた。
例えば3回戦の東1局、西家の本田は6巡目、
ドラ五筒

二万三万四万七万九万一索三索三索七筒八筒九筒西西  ツモ東

四索としたあと東をツモって打三索とする。
打点が着いてこなければ、東は絞り切るという選択だ。このときの親番吉田の手牌がこちら。

四万五万六万三索四索四索六索五筒六筒東東発発

吉田の6巡目までの捨て牌はわりと平凡なもので、東が鳴かれそうだという情報は出ていない。

九筒 上向き一索 上向き南西九万 上向き二筒 上向き

1枚切れではあるが、字風の西を生かした軽いアガリを目指すという選択もアリだとは思うが、本田はそうしなかった。

アガリをものにするときは思い切りよく攻め、中途半端な手牌では徹底的に防御策をとる。本田のフォームが崩れていないことが伝わる1局であった。

オーラスに2,000、4,000をツモアガった吉田がトップで終了。
本田、内川は浮きをキープ。山田は痛い1人沈みのラスとなってしまった。

3回戦終了
吉田+21.6 本田+6.3 内川+3.2 山田-29.1
3回戦終了時成績
本田+78.6 吉田-10.7 山田-31.2 内川-36.7

 

 

4回戦
起家から本田、吉田、山田、内川
東1局
11巡目に南家吉田がチーしてテンパイ。

三万三万四万四万五万五万二筒四筒五筒五筒  チー五索 左向き四索 上向き六索 上向き

チーした時の手出しは六万で前巡に八索が先に打たれているという、若干変則的な手順だ。
7巡目にも上家から五索が打たれてはいるが、それでも吉田のチーテンは高打点を想定される。
同巡、内川が高目三色のピンフリーチをかける。

六万六万七万八万九万七索八索九索五筒六筒七筒七筒八筒

対して、親の本田はチャンタ三色のイーシャンテン。

二万九万一索二索三索一筒二筒三筒九筒九筒発発発

仕掛けた吉田もリーチに対して無スジを飛ばし、引く気配はない。さらに山田も軽い押し返しを見せており、ドラを持っていない本田は多少引き気味に構えるだろう。。
この手牌から内川の宣言牌八筒を合わせたときにはそう思った。
しかし、本田はまず三索をプッシュ。吉田の仕掛けはカン五索からなので打ちやすくはあるが、内川には危険な三索だ。
この1牌だけを押すことは容易いかもしれないが、この後二万ないし九万も勝負する構えということである。
決まれば高いチャンタ三色のイーシャンテンではあるが、ドラは相手に内蔵されている可能性が高く、テンパイしても愚形が残る可能性も高い。
これまでのリードを踏まえると、ブレーキがかかってしまいそうな場面ではあるが、本田は押すことを選択した。
この攻めの姿勢が功を奏し、テンパイして親番をキープすることに成功した。

東3局1本場
この半荘を含め残り5回戦。どうしても親番をキープしたい山田が苦しい選択を迫られる。

 

100

 

内川、吉田にテンパイが入っていることは確信しているであろう。
価値感はそれぞれではあるが、一発裏ドラのない日本プロ麻雀連盟の公式ルールにおいて、ノーテン罰符の価値は高いとされている。
まして首位の本田とは約110ポイント差の山田にとっては親番を維持することにも大きな意味があるため、打牌候補は一索九筒の2択となる。
どちらで放銃した方が高くつくということよりも、放銃確率の低い方を選択する、というのが優先されるテーマで内川の最終手出し三索を見ると、一索が非常に打ちづらい。山田打った九筒は吉田に3,900は4,200の放銃となってしまう。
内川のテンパイ形は

一万二万三万七索八索九索一筒二筒三筒南  チー七万 左向き八万 上向き九万 上向き

であった。
仮にこれが1回戦目ならどちらも打たないという選択肢も出てくるし、放銃率は若干高くても、失点が少なそうな牌を打つという選択も出てくる。
各選手が優勝のみを意識したときに出てくるゲームの歪みはタイトル戦決勝特有のものだ。

東4局ドラ九筒
親番内川に5巡目テンパイが入る。

二万二万三万三万三万五万一索二索三索一筒三筒五筒七筒  ツモ六筒

三色などへの変化を待ち、打五万としてヤミテンに構えると、10巡目に待望の一万を引き入れてリーチ。
その宣言牌二万を南家の本田がチーしてテンパイ。

一索二索三索一筒二筒三筒三筒四筒九筒九筒  チー二万 左向き一万 上向き三万 上向き

親のリーチ相手だが、一切怯むことなく攻め切った本田に軍配があがり1,000、2,000のツモ。
南4局では吉田がツモアガらずの選択をして見事トップに立ったが、本田も浮きをキープ。
大きなリードを守ったまま、初日を駆け抜けた。

4回戦終了
吉田+11.3 内川+6.2 本田+4.0 山田-21.5
4回戦終了時成績
本田+82.6 吉田+0.6 内川-30.5 山田-52.7


良い手牌がきてくれさえすれば、誰でも勝てるのが麻雀ではある。今日の本田はまさしく優勝者のそれを感じさせるが、あとは落ち着いて自分の麻雀が打てるかどうか。
鳳凰位の吉田、十段位内川、A2首位争い常連の山田がよってたかって襲いかかってくる2日目となるが、果たして本田は冷静に自身の麻雀を打ち切ることができるのであろうか?
また、格上である3者は、このリードをどのように崩していくのか。

2日目に続く

編集部

何を切る? 2020年4月

第10期麻雀グランプリMAX 3回戦 東3局1本場 東家 本田朋広プロ

 

 

 

 

 

■ Twitterで実施したアンケートの結果

 

 

 

 

■プロ解答

五索切り

 

 

 

 

六索切り

 

 

 

 

六万切り

 

 

 

 

■実況・解説陣

 

 

日吉「リャンペーコーがある。その先には四暗刻があります。」
佐々木「牌の来方によっちゃ三色同刻もあるんじゃないですか?五索を切っておくとおもしろいですね。」
瀬戸熊「手牌が良すぎて難しい。リャンペーコーと三色の悩みって凄いね。」

 

 

■プロの視点
本田朋広プロ「まず、配牌からの構想としては、タンピン三色狙いで第一打から三索のトイツ落としとしました。七対子も見て打六万とする選択肢もありましたが、ここは河を作ることを重視しました。
分岐点のこの六索ツモで、リャンペーコー狙いに切り替えて五索切りとしました。第一にポイント状況から単純に広く受けて攻撃の手を緩めないということ。もちろんその先に三色同刻や四暗刻への渡りもあります。状況によってはタンヤオテンパイからの仕掛けも視野には入れていました。
七索引きのヤミテンも魅力ではあったのですが、ソーズの手応えもそこまで良く感じなくなっていたので、自分から見て一番使われづらいマンズの受けに比重を置きました。」

 

 

■終局図

 

 

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第19期関西プロリーグ A・B・Cリーグ 第1節レポート

Aリーグ第1節:中川保

今期は私がレポートします。
上手く書けるかどうか不安ですが、よろしくお願いいたします。

3卓(稲岡・米川・辻本・中川)
1回戦は米川、2回戦は中川がトップの後、3回戦。

東場2局 親辻本。

一筒二筒三筒五筒六筒六筒七筒八筒八筒八筒  ポン九筒 上向き九筒 上向き九筒 上向き  ドラ八筒

絶好のチャンス、ここから六筒をツモ。8,000オール。
その後もアガリを重ねて8本場。

ここは1,000+2,400でアガリ、親を流して持ってきた中川の渾身のリーチ。

六万六万七万七万八万八万三索三索三筒四筒六筒七筒八筒  ドラ七筒

しかし、米川がピンフの1,000でかわした。ここから米川に気合いが入る。
東場4局、5,800から小さいながら加点。30,000点以上も失点していたが、終われば2位になっていた。

3回戦終わって辻本が+78.7ポイントで突っ走る。そして、4回戦もトップを取って大きく他を引き離した。

1卓では吉本が横山、花岡を抑えて先行すれば、2卓では、高谷が好調で、城、藤川、辻井を突き放している。
辻井はAリーグ初、早く慣れて頑張ってほしいと思います。

 

 

Bリーグ第1節:杉田モン太

いよいよ2020年シーズンが始まりました。今期のBリーグレポートは私、杉田モン太がお届けします。
さて、今日注目するのは前期Bリーグ昇格を果たした北村プロ。彼が座った3卓は、第3戦を終えた時点で北村+29.0P、音羽+26.5P、上村▲29.8P、稲垣▲25.7Pと、北村が僅差ながら首位。このまま少しでもプラスを重ねて初日を終え、勢いを印象づけたいところです。

4回戦オーラス。東家北村41,900南家稲垣22,000、西家上村45,300、北家音羽9,800。 6巡目 北村の手牌は

二万四万六万八万八万二索三索四索六索八索三筒四筒四筒  ドラ五筒

カンチャンの多い2シャンテンですが、タンヤオやピンフ、三色、ドラなど、高打点も見込める手格好となっていました。
11巡目に七索をフーロし、12巡目にドラの五筒をツモのところで以下の形。

二万二万四万八万八万二索三索四索三筒四筒五筒  チー七索 左向き六索 上向き八索 上向き

ドラ引きで三色が崩れ、対面の上村の河に七万が2枚、三万が1枚切られていたことを見て、四万切りを選択。二万八万のシャボに受けます。ここでツモアガるか、トップ目の上村から直撃すればトップに躍り出る局面です。
是が非でもアガリたい局面ですが、動きのないまま迎えた15巡目、北村は四万を引き直します。直前に上村の手変わりもあり四万は切りにくい牌。小考の末、北村の選択は打二万。安全度を重視しカン三万の待ちに受け替えます。が、
ロン!

無情にも上村の手配が倒されました。牌姿は以下

二万四万五万六万二索三索四索四索五索六索五筒六筒七筒

上村は北村の当たり牌である二万をビタ止めし単騎待ちに構え、逆に北村から二万を出アガってトップ確定。見事な打ち回しで先輩の貫録を見せつけました。
とは言え、最終結果は、北村+43.3P、音羽▲1.7P、上村▲3.9P、稲垣▲37.7P。見事に1人浮きを決めた北村。後が楽しみな注目株の若手プロです。

 

 

Cリーグでは新人紹介をさしていただきます。
新人紹介1
新人36期生が集合しました。よろしくお願いします。

 

100

 

<左手前から奥、右手前に>
黒羽翔 若井翼 長谷川稜祐 猪鼻拓哉 小森雄太
山腰勇樹 三代凱 河野智士 岡本悠輝 森光平

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
分けて紹介していきます。
次の質問に答えてもらいました。

➀氏名
②出身地
③自分をアピールして下さい。
④好きな役
⑤好きな雀士(プロ、アマ問わず)
⑥プロになろうと思ったきっかけは?
⑦これからどうなれば良い、どうしていきたい?

 

100

 

① 山腰 勇樹 ヤマコシ ユウキ
② 福井県
③ 精一杯頑張ります
④ 三色同順
⑤ 滝沢和典
⑥ 親しくして頂いているプロ雀士の配信対局を見て自分もやってみたいと思ったからです。
⑦ G1タイトル目指します。

第5回麻雀プロアマオープン競技会 ベスト16~決勝戦レポート 新谷 翔平

前回の立岩知朗さん、松本裕也のなんとも珍しい同点優勝からはや半年。
日々、巣鴨道場でプロアマオープン競技会に参加している方々の中でも、成績優秀者が夏目坂スタジオに集合する。
トーナメントシステムは、一発、裏ドラありのWRCルール、半荘1回勝負で準決勝までは上位2名勝ち上がり。
暖冬を象徴するかのように夏目坂スタジオも熱気で溢れていた。
プロ5名アマ11名。どのような戦いが繰り広げられるのか。

ベスト16
A卓
松本裕也、立岩知朗さん、加藤はるみさん、山田樹さん

東2局に立岩さんがツモタンヤオピンフドラ3の3,000・6,000のツモアガリで大幅リードを得るも、その後、松本に8,000の放銃となってしまう。
更には、ラス目の加藤さんがタンヤオドラ4をトップ目だった山田さんから討ち取り大接戦。
オーラス、山田さんは安全圏に行っており、加藤さんと立岩さんの一騎打ちになったが、制したのは加藤さんとなった。

勝ち上がり 加藤はるみさん、山田樹さん

 

B卓
伊藤優孝、ケンタさん、水野裕来さん、藤次祐紀さん

開局早々、親のケンタさんがリーチ!しかし伊藤も負けじと追いかけリーチをし、リーチピンフイーペーコーを一発でケンタさんから討ち取る。そして捲った裏ドラが2枚乗り、いきなり12,000のリード&ビハインド。
南3局、何度もテンパイしてはアガれずの繰り返しだった藤次さんが、7巡目にドラ3のリーチをする。そしてやっと実った値千金の8,000をアガリ、2着となる。

勝ち上がり 伊藤優孝、藤次祐紀さん

 

C卓
ダンプ大橋、杉山俊彦、丹野賢一さん、松村祐輔さん

会場内一番最初のアガリは、杉山の元気のいい300・500から始まったが、続く東2局に第3期の優勝者、丹野さんが8,000を杉山からアガる。
そこからは杉山が少しずつ回復するも大きな動きはなく、南3局にダンプがリーチ七対子をアガリ、裏を乗せる!
この2つのアガリが勝ち上がりの決め手となった。

勝ち上がり ダンプ大橋、丹野賢一さん

 

D卓
森下剛任、厚地さん、阿部信一さん、市川幹人さん

この卓はいきなり嵐が吹き荒れる。東1局に厚地さんが、リーチツモ三暗刻ドラ6裏2という三倍満スタート。いきなり枠は1つ確定か。
残りの1席を3名で争うが南3局まで均衡が続く。その南3局2本場まで粘った、親の市川さんにドラ2のリーチが入った!勝負所とふんだ森下が前に出るが、7,700の放銃となってしまい勝負あり。

勝ち上がり 厚地さん、市川幹人さん

 

ベスト16では、なんといきなり前回ダブル優勝者の松本裕也、立岩知朗さんが会場を後にすることとなった。
ベスト16は同時進行のため、A卓のみ配信だったので会場内で観戦させてもらっていたが、準決勝からは両方の卓が配信となるため、ここからは配信画面で観戦させてもらうことにしよう。

 

 

準決勝A卓
市川幹人さん、藤次祐紀さん、山田樹さん、ダンプ大橋

東1局、市川さんが七対子ドラドラをツモる。ベスト16の均衡を打ち破った勢いをそのままに、1回戦勝負2人勝ち上がりではの大きなリードを得る。
東3局、親の山田さんがドラ九筒で、ペン七筒待ちのリーチドラ1で先制リーチ。下家のダンプが、宣言牌を四筒五筒六筒でチー、更には一筒をポンし攻め返す。

五筒六筒八筒九筒九筒西西 ポン一筒 上向き一筒 上向き一筒 上向き チー六筒 左向き四筒 上向き五筒 上向き ドラ九筒

13巡目に上記の形に五筒をツモリ、一旦迂回の選択で西を切る。が、直後のツモが西。押していれば四筒七筒待ちでテンパイしていた。
こうなると七筒をツモってしまうのも必然か。アガリ逃した格好となってしまい、山田さんとダンプの2人テンパイで流局。
開けられた山田さんの手を見てダンプはどう思っただろうか。

しかし東4局1本場、親のダンプにドラ2のいい配牌が入る。山田さんに先制リーチは取られてしまうも、ダンプも追いつきリーチ。残り2枚づつの捲り合いとなったが、ダンプが山田さんから捉え7,700のアガリとなり、市川さんとダンプの2人が4万点を超える。
山田も負けてられない。南1局、八万を暗カン、続くリンシャン牌で東も暗カン!そして起死回生となるか!リーチに踏み切る!

五索五索五索四筒五筒発発 暗カン牌の背東東牌の背 暗カン牌の背八万 上向き八万 上向き牌の背 ドラ五筒八索二筒

三暗刻確定だ。三槓子になりうる、さらなるカンの材料の五索もまだ山にある。
ほどなくして藤次さんもリーチ。手牌だけでドラが5枚ある、ドラとドラのシャンポン待ちだ。

三万四万五万二索三索四索八索八索一筒二筒三筒五筒五筒

が、開かれたのは山田さんの手牌だ。
三槓子こそならなかったが、ツモって裏ドラを1枚乗せてリーチツモ三暗刻ドラ2の3,000・6,000!!
これで山田さんも2着まで2,600点差になり、勝負の行方はわからなくなる。市川さん、ダンプはもうすぐそこだ。
しかし藤次さんも負けてられない。南2局はまずは1,500をアガると、つないだ1本場でリーチピンフドラ2の高めイーペーコーで攻めるが、これはアガれずに流局してしまう。

2本場になり、残り時間も迫る中、市川さんがリーチツモ純チャンイーペーコーの3,000・6,000。会心の一撃だ。
市川さんが1人抜け出し勝ち上がり当確ランプがつき、山田さん30,000、ダンプ33,600の2人の勝負になるか。
親がなくなってしまった藤次は厳しくなってしまい、時間切れの最終局はダンプが2着のまま、流局となった。

決勝進出 市川幹人さん、ダンプ大橋

 

 

準決勝B卓
伊藤優孝、厚地さん、加藤はるみさん、丹野賢一さん

東1局1本場、伊藤は三色が見える好配牌から、最終形はリーチタンヤオになってしまったが、ツモアガったのち捲った裏ドラは2枚!!4,000オールツモ。
さらに親番で加点し、東1局が終わったときにはすでに50,800になり、まず伊藤が抜け出す。

東3局、丹野さんが役牌を仕掛けてソーズのホンイツに向かっているところ、厚地さんがこっそり七対子ドラ待ちをテンパイ。
ドラは三筒で、丹野さんのホンイツにはいらないので掴んでしまうと御用となってしまうなぁ、なんて思っているそばからすぐに掴んでしまい、厚地さんの6,400のアガリとなる。
ソーズのホンイツの丹野さんがいるので、このヤミテンは好判断だろう。逆に丹野さんには痛い放銃になってしまった。

放銃してしまった丹野さん、東4局の親番で頑張りたいが、伊藤が役牌をポンしてすぐテンパイ。しかし厚地さんもテンパイしており、4巡目に厚地さんのアガリとなる。丹野さんは親番を全然させてもらえない。
南1局、追いかけたい加藤さんがリーチして攻める。加藤さん12,100、ターゲットの厚地さんは37,200。残り時間も少ないので、残りの局は全部アガリたいくらいだ。
しかし、親の伊藤が中ホンイツトイトイをテンパイしており、加藤さんが掴んでしまう。伊藤の持ち点は63,800となり勝ち上がり濃厚だ。対して加藤さんは箱下になってしまった。

南2局、35,700持ちの厚地さんを追いかける20,400丹野さんがリーチ、そして二筒を暗カン!ドラのない丹野さんにとっては、ドラを増やせるこの暗カンは渡りに船だ。

六万七万八万四索五索六索六筒六筒東東 暗カン牌の背二筒 上向き二筒 上向き牌の背 ドラ二索九筒

カンドラこそならなかったが、これをツモってしまえば裏がなくても次局満貫条件までに迫ることができるが…
実は伊藤も役牌を仕掛けていてドラを3枚隠し持って、数巡後テンパイ。これに丹野さんが捕まってしまい、勝勢、敗勢は決まってしまった。

決勝進出 伊藤優孝、厚地さん

 

 

決勝戦
起家から、市川幹人さん、伊藤優孝、厚地さん、ダンプ大橋

東1局は伊藤が積極的に東中を仕掛け、マンズのホンイツの1シャンテン。その仕掛けに対してテンパイを入れたダンプが五万、さらには二万と切って強く押し返す。
5枚切れの六索九索待ちのピンフドラ1だが伊藤が掴んでしまう。

東2局、厚地さんが仕掛けを入れてのタンヤオドラ1の500・1,000のツモアガリで静かな立ち上がりとなる。
続く東3局、配牌がよいのは親の厚地さんと西家の市川さん。しかし中々全員テンパイしない中、テンパイ一番乗りは伊藤。

三万四万五万三索五索八索八索二筒三筒四筒五筒六筒七筒 ドラ九万

一手替わりでタンヤオ三色のヤミテンをいれる。
ダンプもツモがよく、三索六索九索のサンメンチャンでリーチ。三索六索ならタンヤオだ。高めをツモって裏が1つでものれば大きなリードとなる。
対する伊藤は現物待ちということもあって押していく。が、サンメンチャンの強さで流石にダンプのツモアガリ。
結果は安めツモかつ裏もなしの500・1,000のアガリとなる。

東4局、相変わらず伊藤は配牌が悪い。準決勝までのエンジンはどこに行ったのか。
厚地さんが先制リーチをかけ、さっくりとリーチツモドラ1の1,000・2,000をツモアガる。

市川さん:28,000
伊藤:25,500
厚地さん:35,000
ダンプ:31,500

これで南入することとなった。厚地さんが少しリード、伊藤が少しビハインドではあるが、誰が優勝するのかまだまだまったくわからない。

南1局、親の市川さんがまずピンフをテンパイする。ドラ切りでテンパイのため、ポンされたらヤミテンやオリも選択肢に入れてだろうか。
するとその間に厚地さんがテンパイ、そしてリーチ。市川さんも負けじと追っかけリーチをするが、市川さんは一度もツモらせてもらうことなく、厚地さんの一発ツモ!!!リーチ一発ツモピンフの1,300・2,600で厚地さんは4万点を超えてきた。

南2局は追いかける2番手のダンプが、ドラ2確定の七対子を北単騎でリーチ。まだ親があるとはいえ勝負どころだ。
しかし追いかける市川さんも黙っていられない。カン二万待ちでリーチドラ1で追いかけ、ダンプから2,600をアガる。

南3局は、厚地さんが2番手に約15,000リードをつけている状態。やはり黙っていないのは市川さん。いや、ヤミテンという意味ではダマっているのだが、発暗刻、ドラがトイツでカン四万待ちでテンパイした。さらなるリードを広げたい厚地さんがテンパイしていたが、ラス牌の四万を厚地さんからロンアガリ!!!オーラスの点棒状況は以下の通りとなる。

市川さん:34,400
伊藤:24,200
厚地さん:34,800
ダンプ:26,600

2人はもう全くのアガリ勝負だ。ダンプは4,000オールをアガれば次局ノーテンと言える。伊藤は現状は跳満必要だが、リーチ棒さえ出ればたちまち満貫ツモでよくなる。
5巡目、厚地さんがすぐ1シャンテンとなる。しかしやっぱり黙っていないのは市川さん。白がトイツで親のダンプが絞っていたのだが打ち出されることとなり、ポンして1シャンテン。
8巡目に厚地さんがテンパイ一番乗り。タンヤオのカン六索待ちだ。しかし、山に2枚いるはずの六索は中々顔を見せず、14巡目に市川さんもテンパイをいれる。三万六万待ちだ。
その1巡後に決着を迎えることとなった。

開かれたのは市川さんの手牌。アガった後は1つ大きく深呼吸し、やりきったという素晴らしい表情を見せてくれた。
また、何度も劣勢の状況から粘る素晴らしい闘牌を見せてもらうことができた。

第6期プロアマオープン競技会の予選はもう始まっています。夏目坂スタジオまでの道は厳しいかもしれませんが、スタジオでこのような熱い戦いをしたい!と思われた方、ぜひぜひ巣鴨の道場で参加をお待ちしております。

優勝 市川幹人さん
2位 厚地さん
3位 ダンプ大橋
4位 伊藤優孝

 

100

第36期鳳凰位決定戦 最終日観戦記 荒 正義

これまでの総合得点はこれだ。
藤崎+54,6
古川+33,7
西川+13,5
吉田▲101,8

この時点で、吉田は4連勝が条件。1度でもトップを外したら、優勝の目は消える。
西川と古川は、藤崎との距離だけだ。逆転できる点差だ。3日目の西川の勢いは素晴らしかった。あの勢いをどうつなげるかが勝負だ。
古川は経験値が豊かで、老獪である。サーフィン打法で、相手を揺さぶる。今日もそれが吉と出るのか―。
藤崎は、相手が2人なったことで油断ができない。古川と西川は、打牌が強くなる。その分、打ち合いが多発し勝負に紛れが生じる。守っているだけでは勝てない。
藤崎がそれをどう切り返すのか、興味津々である。

 

100

 

13回戦。
親は西川で、順に吉田、古川、藤崎の並び。

東1局。ドラ二筒
7巡目、古川が仕掛ける。

四万五万六万三索三索四索六索七索二筒三筒五筒六筒北

ここから四筒八索を鳴いて、早くもテンパイ。

四万五万六万三索三索五筒六筒  チー八索 左向き六索 上向き七索 上向き  チー四筒 左向き二筒 上向き三筒 上向き

吉田が七筒を打ち上げて2,000点。

東2局。ドラ四筒
13巡目、藤崎にテンパイが入った。

九万九万二索三索三索四索四索四筒五筒六筒七筒八筒発  ツモ六筒

ここで、藤崎はリーチを選択。二索は、場に1枚出ているだけだった。
この後、西川もテンパイ。

一索三索五索五索五索六索七索白白白  暗カン牌の背東東牌の背

こちらはヤミテン。
すると16巡目、古川にテンパイが入った。

二万二万四万五万一索二索二索三索四索五索六索六筒七筒  ツモ八筒

六万は河に3枚で、藤崎の現物。巡目が遅いから、オリると思ったが打二索
これは・藤崎の頭ハネ。
意外だった。ライバルの藤崎に、7,700点の放銃。これは痛かった。アガった藤崎は、にんまり。

東3局は、古川の親番。ドラ二索
古川が12巡目、この手をリーチ。

三万三万三万五万六万六索七索八索二筒三筒四筒八筒八筒

しかし、流局で古川の1人テンパイ。

東3局1本場。ドラ西
次がこれ!

三筒四筒五筒八筒八筒白白  チー一筒 左向き二筒 上向き三筒 上向き  ポン北北北

早いサーフィン打法で、白を吉田から打ち取る。5,800と300点で、もう浮きに回る。早い回復力だ。
2本場はピンフのみで、藤崎が落とす。打ったのは西川で1,000と600点。

東4局は、親の藤崎が西川に1,300点の放銃。
このとき藤崎の手は、13巡目でこうだった。

七万八万九万七索九索七筒八筒東東東白白白  ドラ八索

決めたかったが、藤崎は残念!

東場が終わって、4人の得点はこうだ。
西川 吉田 古川 藤崎
30,0 20,9 33,4 35,7

上位の3人は競りだ、誰が抜けだすのか?

南1局。ドラ五索
古川から、10巡目に先制のリーチが入った。そして、4巡後にパシッと引きアガる。

四万五万四索五索六索一筒二筒二筒三筒三筒四筒七筒七筒  ツモ六万

1,300・2,600点で、藤崎を差してトップに立つ。

南2局。
今度は藤崎のアガリ。鳴きタンヤオの2,000点(+1,000)だった。しかし、親の吉田のリーチをかわしただけに価値がある。これで、藤崎が古川より100点上になる。

南3局。ドラ二筒
親は古川。藤崎が6巡目にテンパイ。河はこう。

一索 上向き九万 上向き中四索 上向き九筒 上向き八筒 上向き

手牌がこうだ。

五万六万七万六索七索八索一筒二筒三筒五筒六筒西西

リーチもありだが、しっかりヤミテン。確実にライバルの親を落とす腹だ。
五索を引いても、おそらくヤミテン続行である。6巡後、古川が掴んで2,000点の放銃。

南4局は、西川と吉田のリーチが入ったが、流局。
2本のリーチ棒は、供託となる。

13回戦の成績
西川 吉田 古川 藤崎
24,6 19,1 35,1 39,5

総合得点。
藤崎  71,8P
古川  42,8P
西川  4,1P
吉田▲120,7P (供託▲2,0)

 

 

14回戦。
出親は吉田で順に古川、西川、藤崎の並び。
西川は、トップが欲しい場面だ。藤崎は古川との差を保ちたい。自分が沈んでも、古川もマイナスならOKだ。古川は残り3回戦で、逆転を視野に入れて打つだろう。

東1局。ドラ七索
10巡目、藤崎に絶好のリーチが入った。

三万四万四万五万六万三索四索五索六索六索三筒四筒五筒

入り目は四筒で、二万五万は場に1枚も出ていなかった。
五万ツモなら三色の跳満で、藤崎が断然有利だ。ところが、である。親の吉田が、14巡目に追いかけリーチだ。すると藤崎が、一発で八筒を掴んで放銃。

 

100

 

七万七万七万二索三索四索七索七索二筒三筒四筒六筒七筒

藤崎「なに、するンだ!」
吉田「少しだけ…僕にも格好つけさせてください」

こんな心の会話が、あったかどうかは知らない。高目12,000点のツモのはずが、12,000(▲1,000)点の放銃になるとは…。
これが、黒沢明の映画『天国と地獄』である。

東1局1本場。ドラ一筒
これで、気を良くしたのは古川だ。13巡目に指がしなって、リーチがかかる。

一万二万三万六万七万二索二索二索八索八索二筒三筒四筒

打点は無いが、待ちは好形。
これに、藤崎が無筋の連打。怒っているのか、それともテンパイなのか?
すると、スッと四索を引き寄せた。

二万二万二索三索五索六索七索一筒二筒三筒四筒五筒六筒

なんだ、両方だった!
700・1,300(+300・1,000)点。

東2局。ドラ三万
西川が4巡目のリーチで、このアガリ。

四万五万一索二索三索四索五索六索一筒二筒三筒九筒九筒  ツモ三万

高目のドラのツモだから、気分がいい。1,300・2,600点。
これで、西川持ち点は34,400点。藤崎は19,700点。

東3局。ドラ三万
先にテンパイを入れたのは、親の西川。

七万八万九万六索七索一筒一筒  チー五筒 左向き六筒 上向き七筒 上向き  ポン東東東

しかし15巡目、追いついた古川に蹴られた。吉田の放銃で2,000点。

東4局。ドラ五筒
親は藤崎。8巡目、西川からリーチが入った。

九筒 上向き八万 上向き三筒 上向き東発六万 上向き
六筒 上向き一筒 左向き

一万一万四万四万一索一索四索四索二筒二筒五筒五筒南

一万四万一索四索。そして、ピンズの二筒五筒。このように、筋でトイツが残るときは、トイツ場である。期待は十分。しかし、どちらで待つかは難しい。三筒が3枚飛んでいたから、私は一筒で待つ。
なぜなら、吉田の河が国士無双だったからである。南は1枚切れで、一筒は初物。しかし、結果は正解。この南が、吉田から出たのだ。
このとき吉田の手は、こうだった。

九万一索三索九索九索東南南西西北白発中

南西も、1枚切れなのだ。8,000点のアガリで、西川がトップに立つ。一筒は3枚、山だった。

南1局は、親の吉田のリーチを蹴って藤崎のアガリ。1,000点だが、価値がある。
放銃は古川だった。

南2局。ドラ六万
親の古川が、8巡目のリーチだ。

北九筒 上向き南一索 上向き二索 上向き一筒 上向き
二索 上向き四筒 左向き

一万二万三万五万六万七万三索四索五索六筒六筒七筒七筒

足止めと引っかけ。ツモなら浮くから、これでいい。
しかし、思わぬ伏兵が現れた。次巡、吉田のリーチだ。
古川「君、なにすんじゃ!」
そして3巡後、古川が八筒を切ったら吉田がロンだって!

二筒二筒五筒五筒八筒南南西西白白発発

開けてびっくり、玉手箱。12,000(+1,000)点の放銃で、古川はラスに沈んだ。これで藤崎と古川は、吉田に対して痛み分けの、五分と五分。

南3局。
親の西川が3,900点のアガリ。打ったのは吉田。
1本場は流局。
2本場は、古川がアガって藤崎と並ぶ。

古川17,900。
藤崎17,800。
たった100点差だ。

南4局。ドラ二筒
古川がホンイチの仕掛け。

牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背  ポン北北北  ポン中中中

その河。

四万 上向き七万 上向き九索 上向き七索 上向き東一索 上向き
八筒 上向き八索 上向き

見るからにピンズの染め手。しかし、古川の最後の手出し牌が、八索だったのである。これまた妙だ。その前に、三筒を強打した藤崎。次に六筒を切ると、ロンだって!7,700点。
伏せられた7枚はこうだ。

一筒二筒三筒四筒五筒南南  ポン北北北  ポン中中中

古川の入り目は、三筒だったのだ。藤崎は、八索の手だしに騙されたのか―。
いや、そうではない。100点差のラス目の親だ。オリ無しの、全ツッパの構えだったのだ。

六万七万八万一索二索二索四索四索六索七索五筒六筒七筒(藤崎)

安全牌など、山ほどあった。これがこの勝負にかける、藤崎の気合いである。
西川が念願のトップを取った。これで藤崎は、西川の射程距離に入った。

14回戦の結果。
吉田 古川 西川 藤崎
38,5 25,6 45,8 10,1

総合得点。
藤崎 46,9P
古川 34,4P
西川 27,9P
吉田▲108,2P

 

 

15回戦。
親は西川で順に古川、藤崎、吉田。

東1局。ドラ三索
さあ、残り2戦。誰が勝つか分らない。親の西川がマンズの染め手に走る。
9巡目でこう。

一万三万六万七万七万八万九万九万中中  ポン南南南

次に引いたのが、ドラの三索。当然、切る。そしたら、藤崎からポンの声。
12巡目、西川にテンパイが入った。

一万三万六万七万八万九万九万中中中  ポン南南南

二万は初物で、期待は十分。しかし、2巡後五筒をツモ切ると藤崎の手が開いた。

八万八万六索七索八索三筒四筒六筒七筒八筒  ポン三索 上向き三索 左向き三索 上向き

藤崎はポンテンだった。7,700点。

東2局は流局で、西川の1人ノーテン。

東2局1本場。ドラ南
13巡目、藤崎がリーチ。

四万五万六万七万八万九万三索四索五索四筒五筒南南

続いて、西川もリーチ。

四万五万六万四索五索五索六索七索八索四筒五筒南南  ツモ六索

八索は藤崎の現物。で、これを切る。上手く決まれば3,000・6,000点だ。
しかし、この八索が鳴きタンヤオの古川に掴まる。古川はリーチ棒込みで、2,800点の収入。

東2局2本場。ドラ二索
今度は、藤崎のヤミテンツモ。

七万八万一索二索三索六索七索八索四筒四筒六筒七筒八筒  ツモ六万

九万が3枚切れだから、ヤミテンは当然。直前に西川のリーチ棒が出ていたが、これも頂き。藤崎、9,600点の収入。藤崎は47,300点持ちで、トップは早くも決まりか。
古川の持ち点は29,600点(西川・18,200)。

東3局。ドラ六索
藤崎の親番。ここは、リーチで西川が蹴る。打ったのは古川で、3,900点。
ラス目の西川がアガリ、古川が沈む。藤崎にとっては、好い流れだ。

藤崎「使えるな、西川君!」
と、思ったら違った。

東4局。ドラ三万
古川がポン、ポンと早めの仕掛け。
11巡目で、まだこうだ。

二索四索五索発発中中  ポン六索 上向き六索 左向き六索 上向き  ポン八索 上向き八索 左向き八索 上向き

2度もツモを飛ばされた西川が、怒ってリーチをかける。

17巡目、古川のテンパイ形。

二索二索二索発発中中  ポン六索 上向き六索 左向き六索 上向き  ポン八索 上向き八索 左向き八索 上向き

発中は、3枚生きている。ハイテイが西川に回った。

古川「掴め、西川!」

ホウテイなら跳満だ。誰だって、このくらいの念力はかけるだろう。

そしたら、ハイテイ牌を引き寄せた。それがドラの三万

 

100

 

ハイテイで倍満だって!
これで西川は、浮きに回った(34,2P)。

南1局。ドラ八筒
親は西川。その西川のチャンス手。7巡目でこうだ。

七万七万六索六索六索三筒八筒八筒南中  ポン白白白

南中が重なれば18,000点の手。
しかし、このとき藤崎にリーチがかかった。西川も、もう一歩。

七万七万九万六索六索六索三筒四筒八筒八筒  ポン白白白

しかし、軍配は藤崎に上がる。

六万七万八万九万九万二索三索四索六筒七筒西西西  ツモ五筒

安めを引いて1,000・2,000点。

南2局は、西川がリーチで藤崎から3,900点のアガリ。
藤崎も手牌4枚。ホンイチのテンパイだから、仕方がなかった。
これで、2人の持ち点はこうだ。
藤崎43,400
西川36,100
倍満のツモから、西川のアガリが続いている。

南3局。ドラ六万
14巡目、西川のリーチだ。

三万四万五万六万七万八万五索五索六索七索八索五筒六筒

入り目が七万だから、手応えがある。案の定だ、すぐに七筒を引いて2,000・4,000点。ついにラスからトップまで、躍り出たのだ。西川の爆発力が、ついに出た―。

 

100

 

南4局も西川が決めて、1,000・2,000点。

15回戦の成績。
西川 古川 藤崎 吉田
48,1 17,7 38,4 15,8

15回戦までの総合成績。
藤崎  56,3P
西川  54,0P
古川  18,1P
吉田▲130,4P

これで、藤崎と西川は着順勝負だ。古川は大トップで、2人を沈めることが大事。さあ、どうなるのか―。

 

 

最終戦。
規定により、藤崎がラス親。順に親が西川で古川、吉田の並び。

東1局。ドラ六索

8巡目、親の西川にテンパイが入る。

七万七万八万四索四索四索五索七索九索九索北北北  ツモ六索

絶好のドラのツモだ。ここで西川は、なんと、八万切りのリーチをかけたのだ。
九索七万は、場に1枚ずつ出ていた。なのに、八万

(西川)
二筒 上向き七筒 上向き四万 上向き三万 上向き一万 上向き南
一索 上向き八万 左向き

親である。優勝は着順勝負だ。ここは一発を狙うより、確実なアガリを取るべきと思うが、どうだろう。ならばこれ!

七万八万四索四索四索五索六索七索九索九索北北北

出て4,800点だし、ツモなら2,600オールだ。ツモなら親権確保だし、藤崎とは10,400点の差ができるのだ。

次巡、古川のリーチがかかった。めくり勝負だが、勝ったのは古川だった。

二索三索四索六索七索一筒二筒三筒五筒六筒七筒発発

西川が八索を掴んで、あえなく放銃。両面に取れば、リーチ後に古川が六万を打っていた。アガリが放銃。この差は大きい。東2局は、古川の親番。
ここから、古川の快進撃が始まった。

 

100

 

○まず、テンパイで親権確保。+1,500。(藤崎▲1,500点)
○1本場は、+1,500(1,000・300)点のアガリ。藤崎のリーチ棒を召し取る。
○2本場がこれ!ドラ八索

六万六万七万七万八万八万六索七索八索北北白白  ツモ北

リーチで引いて、4,200点オールだ。

○3本場。ドラ西

一万二万七索八索九索一筒二筒三筒西西  ポン一索 上向き一索 左向き一索 上向き  ツモ三万

乗ってくるとこんな待ちでも、あっさりツモだ。2,000・300点オールだ。
これで、藤崎と古川の持ち点はこうだ。
古川・57,4P。藤崎・22,0P。―この差は35,4P。(これに順位点が加わる)

16回戦に入る前の2人の差は、38,2P。順位点があるから、すでに逆転!
藤崎が勝つためには、浮かなければならない。それは西川も同じ。

4本場は、藤崎が落とした。500・1,000(+1,200)点。

東3局。ドラ中
13巡目、藤崎にテンパイが入った。

 

100

 

南は1枚切れで七筒は生牌。ここで、藤崎は七筒に受けた。
七対子なら七筒を切って、南に受けるのが常道。しかし、このとき西川と古川にタンヤオの仕掛けが入っていた。

西川はこう。

四万五万六万三索四索五索二筒二筒四筒六筒  チー六索 左向き七索 上向き八索 上向き

古川はこうだ。

三万四万五万五万二索二索二索四筒五筒六筒  チー三索 左向き四索 上向き五索 上向き

吉田は、ピンズの染め手の河だった。案の定、ここで、吉田の仕掛けが入った。
2枚目の九筒が出てポン。次に白が出る。これもポン。

一筒三筒三筒三筒五筒六筒七筒七筒  ポン白白白  ポン九筒 上向き九筒 左向き九筒 上向き

ここで、アガリにかけるなら七筒切りだが、西川と古川を警戒し打一筒
藤崎、残念!
しかしこの後、藤崎のツモがラス牌の七筒だったのだ。

 

100

 

この3,000・6,000点は大きい。これで藤崎は、持ち点が37,200。古川は53,000。
今度は古川が、追い詰められた。
古川が勝つためには、藤崎を沈める必要がある。でなければ、2万点以上の打点が必要なのだ。

東4局は藤崎の親番。
ここは流局で、西川の1人ノーテン。

東4局1本場。
藤崎が古川に2,600(+300)点の放銃。藤崎の浮きは5,300点、あと一歩だ。

南1局は、藤崎のかわし手が決まる。七対子で1,600点。打ったのは吉田だった。

南2局は、古川の親番。ここで決めなければ、逆転のチャンスはない。
まず、これで足止めのリ―チ。

一索一索七索八索九索三筒四筒五筒六筒八筒北北北

この後七筒を引いて、1,300点オールだ。七筒はラス牌だった。
南2局1本場。ドラ九万

七万八万九万四索五索六索七索八索九索八筒  チー三索 左向き一索 上向き二索 上向き

次はこの苦しい受けを、藤崎から打ち取る。2,900は3,200点。直撃だから大きい。

南2局2本場。ドラ八筒
今度は、6巡目のリーチで吉田との勝負。

(古川の手)
二万三万四万六万七万一索二索三索三索四索五索北北

吉田の手はこれだ。八筒を打てば、古川は終わる。

三万三万一索一索八索八索一筒一筒八筒東東西西

しかし、結果は流局。藤崎はノーテンで、▲1,500点。

南2局3本場。ドラ一筒
今度は古川、タンヤオの仕掛け。

五万五万六索七索七索七索八索  チー六万 左向き四万 上向き五万 上向き  チー二筒 左向き三筒 上向き四筒 上向き

薄い待ちながら、吉田から五万を打ち取る。リーチ棒2本の供託をせしめて、4,400点。この時点で、藤崎30,900。古川が68,900。
古川、怒涛の追い込みである。あと一息だ、藤崎を沈めれば、勝ちが見える。

南2局4本場。ドラ六万
今度は、藤崎が決めに行った。8巡目のリーチだ。

一万二万三万五万六万七万九万九万六索七索一筒二筒三筒

4巡後、八索を引いて1,300・2,600点。4本場の積み場を入れて、7,400点の追加。
古川の追い込みも、ここまでだった。ここから藤崎が沈むことなど、ありえない。

南3局は、古川が1,300点を藤崎から取る。しかし、藤崎はそれでも7,000点の浮き。

南4局。ドラ東

藤崎は、沈まなければ勝ち。流局でも勝ち。
16巡目、西川のリーチがかかる。

八万八万八万二索二索二索三索三索四索四索北北北

三索四索ツモなら、西川の優勝。しかし、すでに空テン。
流局して、藤崎の優勝が決まった。2度目の鳳凰だ。

16回戦の成績。

西川 古川 吉田 藤崎
10,8 63,2 9,0  36,0

16回戦までの総合得点。

藤崎  +66,3P
古川  +59,3P
西川  +30,8P
吉田 ▲159,4P  (供託3,0)

予想の第一本命は、藤崎だった―。期待に応えたのも、素晴らしい。

おめでとう、藤崎さん!

 

100

 

第2期雪華王戦 決勝観戦記 真光 祐尚

2020年1月17日正午、聖地夏目坂で第2期雪華王戦の決勝が行われた。メイン解説には瀬戸熊直樹プロ。冒頭のインタビュアーは実況の古橋崇志プロ、解説の北海道本部長である喜多清貴プロが各選手に意気込みと選手紹介を。
北海道のAリーグプロが全国放送で紹介される姿は同じ仲間としてもこの上なく嬉しいものだ。放送をご覧になれなかった方のためにここで再度紹介したい。

 

首位通過 加藤晋平 27期生 三段


100

 

北海道Aリーグでは最年少。2年連続決定戦へ首位通過。喜多本部長からも中心選手と紹介されるほど存在感のある選手。攻めの意識で今期こそ雪華王をと意気込む。

 

2位通過 山屋洋平 33期生 三段


100

 

言わずとしれたサイコロジー麻雀の使い手であり、現雪華王。今年も解説を唸らせる鳴きで3連覇なるか。

 

3位通過 西野拓也 11期生 六段


100

 

冒頭のインタビューでこう語った。
「僕は特別技術が優れている訳ではなく、メンタルも強い方ではない。あまりいい所ないのですが総合力勝負なので、自分自身を分析して勝ち筋をイメージしてきた。」北海道本部の中では古参、副本部長を務めながらプレイヤーとしても研鑽を怠らない。選手の兄貴分。今回は結果に拘ると、本人の口から聞いていただけに今日に賭ける想いを感じた。

 

4位通過 須賀智博 23期生 四段


100

 

初めての映像対局だが実績は抜群、気負わず冷静にミスなくこなし、結果的にいい結果が出ればいいと爽やかに回答。
笑いありのインタビューで各選手の緊張が和らぎ穏やかに対局が開始される。

 

1回戦 (起親→加藤、西野、山屋、須賀)※文中敬称略

開局は静かに西野がピンフをツモアガるも次局ゲームが動く。
東2局 5巡目加藤の手牌

 

100

 

三万三万三万七万八万八万三索三索三索八索九索白白  ツモ七索  ドラ七索

加藤の選択は七万切りリーチ。ツモ三暗刻の高目跳満を狙う。1回戦の東場、場に八万が1枚切られていることもあり、両面でリーチの手もあったがここは強気にシャンポンリーチ。
そこに山屋が同巡、ドラ無し、役無しのカン三万で追いかけリーチ。

二万四万四索五索六索一筒二筒三筒六筒六筒八筒八筒八筒

山屋の宣言牌は六万。1回戦東2局子番での追いかけリーチだが、このリーチには2つの可能性があるのではないかと思う。1つはシンプルに6巡目で共通安パイの無い2人から筋の三万が河に放たれ自分が失点しないで加点出来る可能性を追った局収支重視の選択。

もうひとつは加藤の手が勝負手だった場合に、1回戦の東2局で加藤を優勝争いから脱落させる程のダメージを負わせることが出来る心理面での選択。言い換えれば、山屋はここで仮に放銃失点してもそれを取り戻せる自信があって、天秤にかけた場合、加藤のメンタルを削る事のほうが上回り、リスクを先に取って1人潰しに行ったとも思える。
しかし、加藤に暗刻で持たれている純空のリーチではいくら山屋でも厳しい。

三万三万三万八万八万三索三索三索七索八索九索白白  ツモ八万

負ける可能性のないめくり合いを加藤が八万で引きアガリ2,000・4,000で大きなリードをもぎ取る。解説の喜多も暗刻で持たれている待ちでリーチした山屋のピントのズレを指摘。今後の戦い方に注目が集まる。

東3局南家須賀4巡目

三万四万四万六万八万八万二索三索四索五索六索八索九索六筒  ドラ白

ここから打四万として次巡ツモ七索で打六筒としピンフ一気通貫の1シャンテンに構える。
同巡の山屋以下の牌姿

 

100

 

リャンペーコーが丸見えな七筒引きだがここはツモ切りとして、七対子に固定するも須賀から間髪入れずのリーチ宣言。

 

100

 

出アガリの可能性が若干上がる捨て牌に。加藤も宣言牌をチーして参戦すると、山屋のツモ牌はテンパイを逃した形の七筒。実況席も思わず声をあげる。すぐに狙い通りの二筒を引き七対子のドラ白単騎で2枚生きのリーチするも須賀が五万をツモり2,000・4,000。

東4局は加藤が1人テンパイで南1局。
好配牌をもらった西野が4巡目

二万四万六万七万三索四索五索九索九索九索四筒五筒六筒  ツモ六索  ドラ六万

打牌候補が沢山ある中、西野の選択は二万。打牌候補は三索との比較で三色を追いながらソウズが両面か3面張変化すれば四万も切る構えか。3巡後ツモ八索ときて打三索。456の三色はまだ見切らない。
次巡、残した八索を重ねて打四万リーチ。

六万七万四索五索六索八索八索九索九索九索四筒五筒六筒

出来合いの三色だが、ドラ表示牌と考えれば景色のいい八万でのアガリが優先となるか。
宣言牌の四万を親番の加藤がポンして参戦するも、西野が1,000・2,000のツモアガリ。

六万七万四索五索六索八索八索九索九索九索四筒五筒六筒  ツモ八万

南2局は配牌でダブ南がカンツだったラス目の山屋が道中暗カンして2,000・4,000のツモアガリ。劣勢の山屋だがこのアガリで勢いを取り戻せるか。
しかし南3局は山屋が西野へ2,600の放銃となり全員が圏内のオーラスに。

加藤34,200 西野29,000 山屋25,300 須賀31,500

親番の須賀4巡目に

六万七万七万八万五索五索二筒三筒四筒五筒七筒八筒九筒  ツモ七筒  ドラ三万

こうなるが、こんな物はテンパイじゃないとばかりにツモ切り。一旦テンパイを取ってからの六筒引きフリテン一通リーチや、八筒引きの高目ピンフイーペーコー、一筒引きの高目ピンフ一通、その他ピンフテンパイが2種なので取る人も一定数居そうだが須賀の選択は打七筒

2巡後六万を引き入れリーチとして、次巡即ツモで2,600オール。

六万六万七万七万八万五索五索三筒四筒五筒七筒八筒九筒  ツモ八万

持ち点を4万点近くまで伸ばし1本場。須賀が丁寧に配牌をまとめ上げ、12巡目に以下のテンパイ。

二万二万五万六万六万七万八万三索四索五索四筒五筒六筒  ドラ八万

リーチして一気に勝負を決めに行く選択もあるかと思うが冷静にヤミテンを選択。狙い通り加藤から5,800は6,100を直撃して1人浮きに。
2本場は加藤が1,000は1,600をアガリ結局須賀の1人浮きで1回戦が終了。

1回戦結果
須賀+25.8P 加藤▲3.9P 西野▲6.6P 山屋▲15.3P

 

 

2回戦(起親→西野、山屋、加藤、須賀)

1回戦いきなりの1人浮きでスタートした須賀を沈められるかが勝負だ。
そしてこちらは1回戦ラススタートとなった山屋。2回戦の東1局いきなり難解な手牌。
打牌候補は西四索二索四筒八万四万
解説席の3人は西、山屋の選択は打四万

 

100

 

連盟公式ルールで序盤にこの手を貰えれば超チャンス手になる可能性がある。234、345、456の三色にリーチタンヤオピンフ、とにかく夢のある牌姿だが山屋は四万
ここからの進行はツモ牌で未来が変わりそうだが、マンズの上のペンチャン、カンチャンでもリーチを打つという事なのだろう。とにかくよくも悪くも山屋らしい一打が出た。そして澱みのない進行から

四万五万六万七万八万二索二索三筒四筒四筒五筒五筒西  ツモ六筒  ドラ八万

ここから打西のリーチと打って出る。山屋の先切り四万によって高目の三万は全員が危ない。

全員が受けに周り14巡目に山屋がツモ。

四万五万六万七万八万二索二索三筒四筒四筒五筒五筒六筒  ツモ九万

安めながら1,300・2,600をアガる。

東2局、解説席が加藤の打ち筋に言及。年々場況にスピードを合わせるようになったと。
加藤の良さは麻雀がワガママなところにある。時に場況に沿わない打牌が他者の判断を狂わせるし、受ける方が嫌になって痺れを切らす程に続くメンゼンリーチ攻撃も加藤の良さだ。今決定戦は手牌に恵まれなかった事もあるが、やはり鳴きが上手く行かなかったように思う。
スプリントの決定戦は型のぶつけ合いでいい。自分が一番得意な型を最高に発揮出来れば、それがその時損な選択でもどこかで風が吹く。鳳凰戦のAリーグを見ていると毎回思うのが型を崩すと隙の無いメンツは逃さない。後に加藤は苦境に立たされる。

その加藤が7巡目。

一万一万八万八万六索六索一筒一筒七筒八筒八筒北北  ドラ三筒

七対子でテンパイを入れる。待ち頃の牌を探して次巡、生牌の南を引くもヤミに構える。この間に須賀がタンヤオの三万六万テンパイ。加藤が11巡目に一索を引きリーチと打って出る。
だがドラを重ねた七対子1シャンテンの西野から、加藤の現物三万が放たれて1,000の横移動となる。

東3局は西野が1,000・2,000をツモリ東4局親は須賀。

ドラ八筒がトイツの須賀が軽快に白二筒をポンで仕掛けて5巡目。

山屋が動く

一万二万四万五万六万七万八万九万四筒六筒六筒北北  ドラ八筒

メンゼンで頑張れば2,000・3,900まである手だが、親が2フーロという事もありここから五筒をチーしてテンパイ。

一万二万四万五万六万七万八万九万北北  チー五筒 左向き四筒 上向き六筒 上向き

打牌候補に三万がある勝負手になっている西野からこぼれそうな待ちであったが

西野6巡目

二万三万三万三索四索四索四索五索一筒二筒三筒七筒八筒  ツモ五索  打二万

この形で放銃を回避。大物手を成就させるチャンスは続く。
こうなると山屋はピンチとなって8巡目

三万三万三索四索四索四索五索五索一筒二筒三筒七筒八筒  ツモ六筒  打四索

このリーチが飛んでくる。放銃の危機が一転して大チャンス、5枚山に居る待ちで西野が手を伸ばしてツモった牌は・・・・・無情にも山屋の上がり牌である三万だった。山屋ピンチを脱してエンジン全開となるか?

須賀1人テンパイ、2人テンパイと連続で流局した南2局、親番の山屋だったが、西野に1,300は1,900の放銃となりいまいち波に乗れないまま親権を手放してしまう。
ジリジリと点棒を減らした南3局親の加藤は親権維持のために3フーロしてドラ1の白の後付けで押し切ろうとするも、この高速でツモ切った四索が須賀に捕まりピンフの放銃。1人沈みのままオーラスを迎えることとなる。

 

100

 

今期の北海道Aリーグを引っ張ってきた山屋、加藤は苦難の決勝となっているが、オーラスなんとしても須賀のトップは阻止したいところ。

オーラスは山屋が南のみの300・500をツモアガリ3人浮きだがトップを取って2回戦が終了。

2回戦結果
山屋+12.4P 須賀+6.2P 西野+1.0P 加藤▲19.6P

2回戦まで
須賀+32.0P 山屋▲2.9P 西野▲5.6P 加藤▲23.5P

 

 

3回戦 (起親→須賀、西野、加藤、山屋)

ここまで須賀が1人浮きと、この半荘次第では優勝が決まってもおかしくない3回戦となった。開局に解説の喜多が後手を踏んだサイコロジーを見てみたいと話す注目の半荘。

まず先手を取ったのは西野8巡目。

二万二万三万四万五万八万八万三索四索五索二筒三筒四筒  ドラ二筒  先制リーチ

同巡、加藤も追いつき

四万四万七万七万八索八索一筒一筒七筒七筒九筒九筒東

こちらはヤミテンを選択。
加藤ヤミのまま3段目まで押し二筒を引きリーチと打って出る。こちらは山に1枚、西野は2枚。加藤がリーチ後に五万を掴み、直後の須賀が以下から二万を打ち抜いて放銃決着。

三万三万五万六万六万七万七万二索三索四索三筒四筒南  ツモ二万

現物は今通った五万のみで南は1枚切れ。親番での勝負を決められる1シャンテンとなっていた須賀の放銃は責められないが、須賀にしては珍しい放銃に見えた。優勝が見えてきたプレッシャーはあるのだろうか。

二万二万三万四万五万八万八万三索四索五索二筒三筒四筒  ロン二万

西野にとっては大きい5,200の直撃となった。

東2局親番の西野6巡目

二万四万三索三索四索四索二筒四筒六筒六筒七筒八筒九筒  ドラ六筒

上家から出た二索をチー。解説陣も珍しいと口を揃える西野の仕掛けだが、これが裏目に出てテンパイを入れていた加藤が大事な三万をツモる

一万二万五万六万七万三筒三筒七筒八筒九筒  ポン中中中  ツモ三万

500・1,000。直後、有効牌を食い下げてアガリが出た西野の表情。

 

100

 

普段なら鳴かないのかもしれない、勝ちたい気持ちが鳴かせたのかもしれない。
天を仰ぐ西野はここでギアを入れ替えられるかが勝負だ。

東4局親の山屋が先制リーチ

六万七万八万五索六索七索八索八索二筒三筒三筒四筒四筒  ドラ三万

これをアガれば一気に頂上が見えてくる。山屋もここが勝負とばかりにツモに力が入るが終盤後がない加藤が最年少Aリーガーの意地を見せる。

 

100

 

三索は現物五索は無筋でドラを早々に手放した山屋の手はそこまで安くない。現状トータルラス目の加藤はここで放銃に回ると脱落濃厚。ドラが2枚とはいえ、待ちはカンチャン待ちに取るしかアガリ目は無さそう。それでも加藤は腹に力を入れてリーチの発声。

一万二万三万四万五万三索五索五索一筒一筒一筒七筒七筒  ツモ三万  リーチ五索 左向き

ここが勝負と加藤自分を信じたカン四索待ち。決着は1巡。腹をくくった加藤見事なツモアガリで2,000・4,000このアガリは加藤を奮い立たせる。かに思えた・・・

ここは北海道の麻雀プロが必ず見てほしい部分である。勝負手をあがって南1局、須賀を現状ラス目に落として全員に優勝の可能性が出てきた。加藤はここでおそらく麻雀人生で一番後悔した1局を迎える。

 

100

 

超勝負手のメンチンテンパイ高目倍満。八筒を切れば、一筒二筒四筒五筒六筒七筒の6面チャン。結果から言うと加藤は河に置かれた一筒に声が出なかった。

メンチンは麻雀の花形の1つだ。先日も寿人プロと、滝沢プロのノー理牌メンチンを解説の勝又プロが瞬時に解いて話題になったばかりだ。牌理に明るいのは強者の条件なのだが、書いている私自身も決してメンチンは得意ではない。おそらくこの手が入った時に、メンチンテンパイとわかってしまう時間をかけて慎重に切ると思う。間違ってはいけないという重圧が緊張に変わってしまうのだ。夏目坂の控室で連日対局まで1時間以上ずっと不安でメンチンのゲームをやっていた私には加藤の気持ちはよくわかる。ここで冒頭の西野の「麻雀は総合力のゲーム」という言葉を引用すればメンチンの得意不得意はさして勝負には影響しない。もっと頻度の高い、押し引きや攻守バランスのほうが成績に直結する。しかし、この超勝負手がチョンボと隣り合わせの手だとすれば、それはプロとしてとても不幸な事になる。プロならばこの手が入った時、即座に待ちを理解してメンチンだとわからない程の速度で切ることが理想だ。しかし、全てのプロがそうなれるとは限らないのなら、「待ちがわかるまでは切らない」事も大事だ。時間打ち切りのあるタイトル戦の予選などでは、わからなくても切る位の速度感が無いとダメだと思うが、制限のない映像対局では常識的な時間であれば後悔しない選択を出来るに越したことはない。偶然この手が入って、偶然映像対局で、偶然すぐに一番見落としやすい一筒が出て、偶然そこに座っていたのが加藤プロだった。自分がその場に座った時には1秒でも早く切れるように稽古や練習をして臨むよう北海道のプロはこれを自分の事と思って取り組まなくてはならないし、もちろん書いている私が一番そう思っている。そして加藤、今回のミスはきっとこれから続く麻雀人生で今のタイミングでミスしなければならない事だったのだと思う。これから加藤は雪華王だけではなく多くの映像対局に出られるだけの力があると思う。頻度の少ない事に取り組む時間は無いのかもしれないが、今回の事を真摯に受け止め、次にメンチンが来た時には華麗にアガリきって欲しい。ミスは他人事ではなく自分の事、きっと北海道のプロは皆そう思った出来事だった。

さて本題に戻って、この局の結末は一筒を見逃された須賀、そして同巡テンパイを入れていた西野が2人ともドラ単騎の八万で張っていて次巡加藤の引いた牌はドラの八万。止められる術もなく河に置かれた八万に2つの声が交差するも頭ハネで須賀のアガリ。

五万五万五万八万六索七索八索二筒三筒四筒  チー四万 左向き二万 上向き三万 上向き  ロン八万  ドラ八万

トータルトップ目の須賀にとっては大きすぎるアガリ。そして追いかける3者にとっては痛すぎるアガリとなった。こうなると息を吹き返した須賀の1人舞台。

同1本場

二万三万五筒五筒  チー二筒 左向き三筒 上向き四筒 上向き  ポン七筒 左向き七筒 上向き七筒 上向き  ポン発発発  ツモ四万  ドラ四筒

1,000は1,100オール。
同2本場

二万三万四万五万五万六万六万七万七万五筒六筒西西  リーチ  ツモ四筒  ドラ九万

2,600は2,800オールで一気に突き抜ける。
盤石の須賀が親落ちからオーラスまでうまく回してオーラスは1人浮き状態。

全員が最低浮いて終わりたいオーラス西野がリーチをかけて

二万三万四万四索五索六索六索一筒二筒三筒四筒五筒六筒  ロン三索  ドラ六索

加藤から7,700をアガリ終局。なんとか浮きの2着となり最終戦に望みをつなげた。

3回戦結果
須賀+23.0P 西野+5.4P 山屋▲10.1P 加藤▲18.3P

3回戦まで
須賀+55.0P 西野▲0.2P 山屋▲13.0P 加藤▲47.8P

 

 

4回戦 (起親→西野、山屋、加藤、須賀)

大きなリードを持って迎えた最終戦。須賀のラスは絶対条件で共闘できるか、が勝負の鍵となる。
まずは東1局西野好配牌から4巡目

二万二万四万四万六万六万七万八万九索九索三筒四筒四筒五筒  ドラ七万

いきなり落とせない親番で難解な手牌。七対子は見切って四筒打ちとした。九索切りか四筒か七対子固定かで意見が分かれそうだが、シンプルに速度を保つ打牌として次巡

二万二万四万四万六万六万七万八万九索九索三筒四筒五筒  ツモ三万

六万の先制リーチ

二万二万三万四万四万六万七万八万九索九索三筒四筒五筒

これをアガって反撃の狼煙を上げられるかが勝負だが流局。七対子に固定すれば6,000オールだったが、落とせない親で固定するのは無理か。1人テンパイで同1本場を迎える。
またも好配牌の西野4巡でこの手牌。

 

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追う一番手として絶対に間違えられないチャンス手である。ここはシンプルに七万を打って受け入れ重視とする。次巡ドンピシャのドラ七索を暗刻としてリーチの発声

三万四万七万八万九万五索五索七索七索七索三筒三筒三筒  ドラ七索

あっさり五万をツモで4,000は4,100オール。

三万四万七万八万九万五索五索七索七索七索三筒三筒三筒  ツモ五万

追撃の態勢は整ったか。同2本場、またも好配牌の西野だが、これ以上2人に離されると条件のなくなる加藤が、ここは捌きのピンフで西野東場の親番はここで終了。1,000は1,600。

四万五万六万一索一索四索五索六索七索八索七筒八筒九筒  ロン三索  ドラ六筒

しかし、親が落ちた西野にまたもドラ対子の勝負手が入り9巡目

四索五索五索六索六索六索七索七索八索五筒五筒六筒七筒  ドラ五筒

この超勝負手をテンパイ。
丁寧にヤミテンとして13巡目に西野の手元に舞い降りたのはドラの五筒

四索五索五索六索六索六索七索七索八索五筒五筒六筒七筒  ツモ五筒  ドラ五筒

3,000・6,000のツモアガリ。
メンゼン派の西野が4回戦に勝負手を連続でアガリ持ち点を5万超えとし、これで須賀に肉薄。
この時点で須賀と西野のポイント差は6.4ポイント差。勝負は須賀、西野2人の争いになったかと思ったが、ここまで見せ場のなかったこの男が今日一番の勝負所を迎える。

 

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現雪華王山屋洋平。
サイコロジー麻雀という独自の理論に基づく雀風でデビュー即2連覇の絶対王者。
鳴きという扱いの難しい武器を難なく操る彼は私の良き理解者でありライバルである。

 

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山屋6巡目最大のチャンスが訪れる。これをツモれば一気に3連覇が現実的な物になる。この時点で山に3枚。そしてテンパイを入れていた須賀が山屋のリーチでオリに回って雰囲気は最高潮。解説の瀬戸熊、喜多の両プロ、実況の古橋プロ、雪華王決勝を見ていた全員が固唾をのんで見守る。尋常ではない山屋の力の入り方はツモ牌が変わるんじゃないかという程の圧力だったが結果は流局。山屋の3連覇の夢はここで絶たれた。

同1本場は、須賀が得意の仕掛けから1,000は1,300をアガリ、優勝に向けて西野に条件を押し付ける。
須賀は親を流して西野が最後の親番。
西野またもドラトイツの勝負手を15巡目にテンパイ。

三万四万五万三索四索五索六索六索二筒二筒四筒五筒六筒  ドラ六索

しかし、この手はこの時点で山に無しでテンパイ料で差を詰める。
南1局2本場は加藤が仕掛け、須賀のオリを見て西野もオリを選択。加藤の2着を守り、須賀が3着4着になる可能性を上げて、現状はまだ須賀より下の状態で親権を流した。

南2局3本場10巡目に親の山屋からリーチ。

三万五万七万七万一索二索三索四索五索六索七筒七筒七筒  ツモ四万  ドラ六索

2,000は2,300オール。山屋のこのアガリで須賀がラスに落ち、西野と須賀の差はわずかに1.7P。

加藤が意地を見せ浮きに回ってまたも差が開いたが南3局3本場。
ついに西野が男を見せる。8巡目西野

 

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本場と供託でアガリたくなる4枚目の上家の五筒を見送ってすぐにテンパイ。先ほど鳴いて天を仰いだ西野、ここは自分の型で勝負を決めに行った。六索を切って勝負のリーチ!

五万五万五万六万七万八万六索七索二筒三筒四筒六筒六筒  ドラ西

優勝に向けてツモられる訳にはいかない須賀の祈りの時間は果てしなく長い。決着は終局間近の17巡目五万を暗カンしてゆっくりと嶺上に手を伸ばす西野。互いの祈りが交錯するそこに眠っていたのは・・・・

 

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「居たあああああああああ」解説席も大きな声を上げる8枚目の八索を嶺上からツモりあげ決着。第2期雪華王は西野拓也となった。

六万七万八万六索七索二筒三筒四筒六筒六筒  ツモ八索  暗カン牌の背五万 上向き五万 上向き牌の背  ドラ西

4回戦結果
西野+44.3P 加藤▲6.0P 山屋▲11.3P 須賀▲27.0P

最終結果
西野+44.1P 須賀+28.0P 山屋▲24.3P 加藤▲47.8P

 

最後まで優勝争いを繰り広げた須賀は、初の映像対局だが須賀智博という名前を全国にしっかりと残せたと思う。よどみない進行から手順に正確なリーチと、局収支を最大限にしようと毎局やれる事をやる姿は、プロとしての矜持を感じさせる。また雪華王決勝で戦って欲しいと皆が思う素晴らしい麻雀だったと思う。

さて話を西野に戻そう。私と北海道Aリーグ所属の石田雅人プロは時に「西野組」と呼ばれる。建設会社ではないが西野拓也を慕って止まない2人の後輩は西野の気持ちの弱さを幾度となく見てきた。
ある日3人で西野宅に泊まると夜も更けた頃にメンタルの話になり「俺たちは駅前で歌も歌ったほうがいい」と西野が言った。そう、人前で格好つけるのでは無く、自分をさらけ出してその姿を見ている人が感動してくれたり、自分の持てる力を最大限に発揮する姿を人は見たいと思うのだ。
映像対局で自分の思う通りの牌を切るのはとても難しい。
1つのミスが勝負を決める事になったり、麻雀プロとしての評価を落としてしまう事にもなりかねない。
だからこそ「普段の自分」をどれだけ出せるかが勝負なのだと西野は語ったのだと思う。

今回の西野は勝ちに拘った。自分のやりたくない麻雀もやったと思う。それでも泥臭く、そして最後は自分らしく、普段の自分を出し切った西野拓也を見た。後輩としてこの上なく嬉しく思う。
最近は対局で会えないので、西野と話しをする機会もめっきり少なくなったが、この先プロを続ける限りずっと西野が先にいる安心感は私だけでなく、連盟北海道全員が思っている事だと思う。来期はディフェンディングとしてまた決勝で素晴らしい麻雀を見せてくれるだろう。西野さん心からおめでとうございます!!!

 

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第22期北陸プロアマ混合リーグ第1節レポート

2月23日に、第22期北陸プロアマ混合リーグが、石川県金沢市の麻雀店にて行われました。
レポートは前回の北陸プロアマ混合リーグに引き続き、梅本が担当致します。何卒よろしくお願い致します。

ルールは前回の「連盟公式ルール」と違い、1発、裏ありの「WRCルール」となっております。
参加人数は合計31名での開催となりました。

まずは大事な初戦、大きく抜け出したのは鍛冶さん。
1121の連対率100%で勝利を飾った。
トータルポイントは+117.2P!最高の出だしだ。

渾身の1局
3回戦 南3局 1本場 南家
16,000点持ちで迎えた1局、鍛冶さんが配牌を開く。

三万六万一索一索八索九索一筒六筒七筒九筒西西白中  ドラ西

ドラの西が2枚あり、チャンタが見えるような手。3本場も積まれているため、何としてでも本田の親を蹴って、自分の親を迎えたいところ。
鍛冶さんの第一打は思い切っての六万。しかし、9巡目に親の本田からリーチがかかる。本田の河には字牌が多く、ヒントは六筒のみ。
鍛冶さんの手は以下の通り。

三万一索一索七索八索九索一筒一筒一筒六筒七筒九筒西西

1シャンテンだったが、ここを勝負所と感じ、五筒引きを考えて、現物の六筒切りでなく、無筋の三万をプッシュ!次巡に本田から打たれた西をポンし、打六筒。カン八筒テンパイ!
次巡に力強く八筒をツモり、2,300・4,300のアガリを攻めの姿勢で勝ち取った!

試合後のコメント
「あのアガリで、良い状態のまま自分の親番を迎えることができ、2着まで上り詰めることができました!WRCルールはポイントが大幅に動くので、今のポイントを削らないように守備意識を高めながら頑張りたいと思います!」
最高のスタートダッシュとなった鍛冶さん。前回のプロアマリーグでは、決勝まであと一歩のところだったが、惜しくも届かなかった。今回はその雪辱を晴らすために、かなりの気合が入っているように感じられた。

鍛冶さんに続き2位につけたのは恵比寿さん。

渾身の1局
2回戦目、東3局に藤本の先制リーチに恵比寿さんが追いかけリーチ!
追いかけられた藤本が掴んだ牌はドラの北!ロンの発声と共に開かれた恵比寿さんの手。

二万三万四万六万七万八万東東東北北発発  ドラ北

ゆっくりと捲られた裏ドラ表示牌はなんと西!リーチ、メンホン、東、ドラ6の三倍満炸裂!!
その後3連勝を飾り、トータル+87.8Pでこの日をまとめた。

次は約2年ぶりの参加となった戸村さん。北陸麻雀界では知る人ぞ知る有名人だ。
3回戦までは334と我慢の展開が続き、スコアが▲42.1Pまで行くも、4回戦で大トップをとり、トータルは▲0.1P。辛い展開が続いても傷を少なくするのが強者の証だろう。

渾身の1局
4回戦 東2局 東家
大きな動きのないまま迎えた親番。
3回戦まででスコアはマイナスなので、絶対に落としたくない親番。5巡目に以下の牌姿でテンパイ。

一万二万三万六万七万七索八索九索二筒二筒二筒三筒四筒  ドラ西

この時点で八万が3枚切られているが、親番で先制という事もありリーチ!
終局間際に五万をツモ!裏ドラをめくると、裏ドラ表示牌は僥倖の一筒
リーチ、ピンフの手が6,000オールに!これがWRCの面白さであり、怖さでもあるだろう。
その後も加点し、持ち前の守備力を発揮し、大きく崩すことなく試合をまとめた。

今回初参加の岡田拓也さんも、スコアは▲12.2Pだったが、道中は豪快な跳満をツモアガるなど気合十分だった。

長くなりましたが最後まで読んで頂きありがとうございました。
次節の開催は現在未定となっていますが、会場は金沢麻雀サロン富士にて、開催予定となっております。

順位 名前 プロ/一般 1節 2節 3節 4節 5節 合計
1 鍛治 愛美 一般 117.2         117.2
2 恵比須 均 一般 87.7         87.7
3 岡田 雅文 一般 70.9         70.9
4 瀧根 克登志 一般 61.4         61.4
5 浦田 豊人 プロ 55.4         55.4
6 梅本 翔 プロ 42.9         42.9
7 小泉 陽平 一般 21.5         21.5
8 阿戸 翔太郎 プロ 12.8         12.8
9 安城 るい プロ 12.0         12.0
10 成田 理良 プロ 10.2         10.2
11 中西 正行 一般 8.1         8.1
12 平澤 憲一 一般 7.9         7.9
13 飯田 輝雄 一般 5.9         5.9
14 西田 大志 一般 4.7         4.7
15 戸村 聖一 一般 ▲ 1.0         ▲ 1.0
16 木戸 僚之 プロ ▲ 5.5         ▲ 5.5
17 南 和之 プロ ▲ 10.4         ▲ 10.4
18 岡田 拓也 一般 ▲ 12.2         ▲ 12.2
19 本田 朋広 プロ ▲ 15.5         ▲ 15.5
20 宮川 悟 一般 ▲ 22.4         ▲ 22.4
21 小林 和樹 一般 ▲ 25.2         ▲ 25.2
22 森田 有一 一般 ▲ 28.6         ▲ 28.6
23 里木 祐介 プロ ▲ 29.5         ▲ 29.5
24 獅坂 祐一 プロ ▲ 32.6         ▲ 32.6
25 美咲 優菜 プロ ▲ 34.9         ▲ 34.9
26 後藤 正博 プロ ▲ 37.6         ▲ 37.6
27 荒谷 誠 プロ ▲ 40.4         ▲ 40.4
28 光岡 大幸 一般 ▲ 42.0         ▲ 42.0
29 藤本 鉄也 プロ ▲ 47.2         ▲ 47.2
30 藤田 竜弥 一般 ▲ 49.4         ▲ 49.4
31 表 勝正 一般 ▲ 87.2         ▲ 87.2